社会保障 単語


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シャカイホショウ

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社会保障とは、国家や都道府県・市町村といった行政機関の主導で、所得の再分配をおこなうことによって、
国民が背負う様々なリスクを、防止・軽減・解消することを目的とした制度である。

日本の社会保障概要

日本における社会保障は、以下の5項目に分けられる。

  • 社会保険 ・・・ 公的医療保険(健康保険)・国民年金保険(老齢年金・障害者年金)・厚生年金・介護保険・労災保険・失業保険
  • 公的扶助 ・・・ 生活保護
  • 社会福祉 ・・・ 高齢者福祉・児童福祉(子ども手当含む)・障害者福祉・母子福祉
  • 公衆衛生 ・・・ 公衆衛生・医療整備(伝染病対策・地域保健)
  • 老人保健  ・・・ 後期高齢者医療制度

厳密にはこれらの項目に分けられるが、広く捉えると住宅補助も含まれる。
また、公衆衛生として上下水・ごみ処理・火葬場(墓地)・道路などの整備も含まれるが、
日本ではもはや社会保障としての運営されておらず、行政またはその外郭団体によって担われている。

これら、社会保障の財源は、保険原則もしくは扶助原則の2通りに分けられる。

  • 保険原則 ・・・ 特定の目的に対し、保険加入者が毎月拠出する保険料を財源とする原則。
  • 扶助原則 ・・・ 国・都道府県・市町村の税収を財源とする原則。

日本の社会保険諸制度は、保険料のみによって運営される、厳密な意味での社会保険ではなく、公的資金が多分に投入されている。
なお、社会福祉・公衆衛生の財源は、公的扶助原則にのっとる。

保険者(社会保険の運営主体)や制度の運営主体は、国・都道府県・市町村単位といった地域や、職域によって分けられる。
各制度の区分方法は割愛する。 

日本の社会保障の道程

社会保障前史

現在の社会保障制度に相当する制度は、戦前の日本にも存在した。
職域によって分けられた労災・失業・医療保険や、第二次大戦中に全国民を対象とした医療保険などがそれにあたる。
日本以外の諸外国でも、イギリスの救貧法(18世紀)や、ドイツの社会保険3部作(19世紀)などが、著名である。
日本の制度はドイツの制度を参考にしたものであった。
が、当時は、そもそも「社会保障」という言葉も生まれておらず、国民の最低生活の補償という現在の役割とは異なり、
社会主義運動の抑圧や、国威発揚などがその目的とされた。

社会保障の誕生

「社会保障」という言葉は、1935年、ニューディール政策の一環でおこなわれた「Social Security Act(社会保障法)」にて初めて使われた。
この政策は、当時アメリカで細々と運営されていた社会保険や、社会福祉政策の拡大を目的としたものであった。
ではなぜ、「社会保障」という言葉は戦後、西側諸国注目されるようになったのか。

そのきっかけの1つは、1941年の米英による大西洋憲章である。
これには戦後の世界での秩序構築について述べられ、その中で「社会保障の拡充」の必要性が記されている。
そして、戦後、イギリスでは『ベヴァリッジ報告』(1942年)に基づく、社会保障と完全雇用を両輪とする、福祉国家体制を目指した。
また、多くの西側諸国もそれに見習い、また戦前の反省を生かし社会保障の拡充に務めた。
一方、アメリカは、自由主義を基調とした風潮のもと、他の西側諸国のように社会保障を拡充することは無かった。
歪みねぇな。 

社会保障が戦後注目されるもうひとつのきっかけはILO(国際労働機関)による、『社会保障のへ途』である。
この報告書の意義は、それまで定義付けされていなかった社会保障という言葉の定義付けをおこなったところにある。
しかし、その定義も、
「社会保障は、社会がしかるべき組織を通じて、その構成員が晒されている一定の危機に対して与える保障」
という、極めて曖昧なものであった。
だらしねぇな。

そのため戦後まもなく様々な国で、社会保障という言葉の解釈を巡り混乱が生じていた。
象徴的なのが、 日本国憲法の第25条2である。
「日本国憲法25条2 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」 
1950年の社会保障制度審議会において、日本の社会保障は上記の5項目から老人保健を除いた4項目に整理されるが、
憲法の解釈では、本来、社会保障に包含されるはずの、社会福祉と公衆衛生が、社会保障と並列して扱われている。
おそらく社会保険と勘違いしたんだろうな…。
無論、改憲はおこなわれていないので、条文はそのままである。 
仕方ないね。 

社会保障という言葉の定義は、上記の通り、曖昧で広義的なものであった。
それゆえ各国が執りおこなった政策は、多様性に富んでおり、一元的に捉えることは難しい。
しかし、多くの西側諸国で社会保障関連政策は、積極的に採用され、戦後の世界を大きく突き動かしていくことになる。

皆保険への道

戦後まもなく、日本の社会保障は、GHQによる占領政策としておこなわれた。
具体的には戦災孤児や浮浪者を対象とした社会福祉政策や、上下水整備やスラム撤去といった公衆衛生政策、
また国立病院を中心とした医療機関の整備がおこなわれた。

現在の社会保障の根幹である社会保険の整備は、これらに遅れる形で1950年代なかばから本格的に開始される。
戦災から復興する過程で、サラリーマンや工場労働者を対象とした職域による被用者保険(医療・年金・労災・失業保険を包括している)は、
徐々にその機能を回復しつつあったが、農民や自営業者を対象とした、戦中の地域保険(主に医療を対象)は、 
もともと基盤が脆弱で、戦災からの復興で自治体が財政的に疲弊していたため、事実上機能しなくなっていた。
このような状況であったため、一から新たな社会保険制度を創設するのではなく、
機能している職域保険はそのままで、そこから漏れている人を対象に、追加的な社会保険制度の創設がのぞまれた。

そこで、1958年に誕生したのが、「国民健康保険(以下、国保)」である。
職域による被用者保険の未加入者は、市町村を単位とした国保が受け皿となった。
なお、1961年までに全ての市町村で国保が組織され、医療保険の皆保険が制度的に達成された。
同一の保険制度で、職域保険と地域保険が混在するのは、世界的に極めて珍しい例であり、現在もなお日本の医療保険はこの枠組で運営されている。

また、年金保険制度は1959年に「国民年金保険法」が制定され、これもまた被用者保険の未加入者を対象とするものであった。
年金保険は、国保とは異なり、管轄は国家単位でおこなわれた。
現行の基礎年金制度と厚生年金制度による2階建ての構造は、1985年に施行されたものであり、当時の枠組みとは異なる。
制度の変遷に関する詳しい説明は割愛する。

国保の保険料は、国民健康保険税として扱われ、開設当時から納付が義務とされたため、
全市町村で国保が整備された時点で、原則的には医療保険の皆保険が達成されたと言える。
が、国民年金保険料の納付は、給付が「納入期間に応じる」ものであったので、
1986年に、20歳以上の保険料納付が義務付けられるまでは、原則的には皆保険ではなかった。

かくして、1960年代には、社会保険の骨子である、公的な医療保険制度と年金保険制度が整備され、
日本の福祉国家体制は加速していくこととなる。

福祉元年と福祉国家の危機

1960年代は、池田内閣の「所得倍増計画」や、東京オリンピックによる好景気に象徴されるように、
日本が先進国への道を突き進んだ時代であった。
国民所得の増大は、税収や保険料の増加を意味し、
社会保障政策においても、医療保険給付率や年金給付額の引き上げと、その給付内容が拡充された。

さらに、政治の世界では、社会運動の流れもあってか、革新政党の躍進が目立った。
1967年には東京都で社会党・共産党推薦の美濃部亮吉が知事選で当選し、全国に先駆けて高齢者の医療費(窓口負担)の無料化をおこなった。
これに負けじと、自民党田中角栄内閣も、1973年を「福祉元年」と定め、
全国で高齢者の医療費(窓口負担)無料化と、老齢年金の賃金物価スライド制を導入した。

しかし、その矢先、第一次オイルショックが勃発する。
日本国内では物価が高騰し、加工貿易に頼っていた国内産業では生産が滞り、1973年は戦後初のマイナス成長となった。
日本の高度経済成長は終りを告げ、低成長時代へと突入する。

その中で、今まで好調だった税収や保険料収入はが滞ることは必然であった。
しかし、社会保障制度は、高成長期の水準で勘案されていたため、
その後、膨れ上がる社会保障関連財政は、国家予算を大きく圧迫することとなる。

こうした事態は、日本に限ったことではなかった。
西側諸国で高福祉国家の代表格であるイギリスは、手厚い保障の対価である重税から国民の労働意欲の低下を招き、
オイルショックによる失業率の上昇が、社会保障財政を悪化させていった。
また、西ドイツでも「社会保障費(特に医療費)の急激な拡大」と「貧困人口の増加」が指摘された。
本来、社会保障は国民のリスクを軽減するための政策であるが、
それが拡充しているにも関わらず、困窮する国民が増加するという、矛盾に満ちた状態に陥ったのである。

くしくも、ローマクラブが市場主義による『成長の限界』を説いた数年後に、
市場の失敗を補うはずの社会保障生政策を旗印とした、福祉国家体制はその危機を迎えたのである。

次回「高齢化にともなう制度改革」絶対見てくれよな!

ぶっちゃけ80年代~90年代は細かい変更が多すぎて、全部書く気にはなれない。















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