神様、仏様、稲尾様 単語


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神様、仏様、稲尾様とは、1958年の日本シリーズにおいて西鉄ライオンズに所属していた稲尾和久が見せた快投に対する最大級の賛辞である。

この単語から派生して伝説的な活躍をしたプロ野球選手は「神様、仏様、○○様」と讃えられる事がある。(神様、仏様、イチロー様等)

概要

1958年、三原脩監督率いる西鉄ライオンズはペナントレースにおいて7月24日の時点で首位の南海ホークスと11ゲーム差をつけられ優勝は絶望的と思われていたが、8月以降は36勝10敗2分という驚異的なペースで南海を追撃し、9月27・28日の直接対決でも南海のルーキー兼エースである杉浦忠を打ち砕いて首位に立つと以降はその座を譲らず、そのまま大逆転優勝を成し遂げる。
この優勝の原動力となったのが、この年72試合に登板して373回を投げて33勝10敗、防御率1.42という成績を残した稲尾和久である。ちなみに稲尾はオールスター以降では17勝1敗というこれまた驚異的な勝率を誇った。

そして迎えた日本シリーズ、相手はこの年入団したゴールデンルーキーこと長嶋茂雄を擁する読売ジャイアンツ、56年・57年に続き西鉄の3年連続日本一を懸けて10月11日、戦いの火ぶたが切って落とされた。

第1戦 10月11日 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 R
西鉄ライオンズ 0 0 0 0 1 0 0 0 1 2
読売ジャイアンツ 1 0 1 1 0 0 6 0 9
[西]●稲尾-島原-河村-若生-畑
[巨]藤田-○大友
[本](西)豊田(巨)広岡、長嶋

後楽園球場で迎えた第1戦、巨人は藤田元司、西鉄は当然稲尾和久を先発に立てるが、稲尾は5日前に熱でダウンしていたこともあり本調子には程遠く、初回に長嶋にタイムリーを浴びると、3回には広岡達朗に本塁打を許し、結局4回3失点でマウンドを降りた。その後は7回に西鉄の河村久文が長嶋に本塁打を浴びるなどしてこの回だけで6点を失い、打線も藤田に代わって5回途中からマウンドに上がった大友工を打ち崩すことが出来ないまま9-2で巨人の勝利となった。

第2戦 10月12日 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 R
西鉄ライオンズ 0 0 1 0 0 0 0 2 0 3
読売ジャイアンツ 7 0 0 0 0 0 0 0 7
[西]●島原-畑-西村-河村
[巨]○堀内
[本](西)豊田

第2戦、巨人は堀内庄、西鉄は島原幸雄が先発するが、西鉄の島原は初回から制球が定まらず、先頭の広岡に四球を与えると、坂崎一彦・与那嶺要に連打を浴びて満塁とし、長嶋には押し出しを許すなど、わずか17球で巨人に先制点を与えてしまう。
三原監督は島原に代え、畑隆幸をマウンドに向かわせるも畑も巨人打線につかまり、初回だけで7失点を喫する。
西鉄は3回に相手のエラーで、8回に豊田泰光の2ランで計3点を取るが、初回の7失点が重くのしかかり7-3で巨人の2連勝、堀内に完投勝利を許した。ちなみにシリーズで唯一2戦目は稲尾和久・藤田元司が登板していない

第3戦 10月14日 平和台

1 2 3 4 5 6 7 8 9 R
読売ジャイアンツ 0 0 1 0 0 0 0 0 0 1
西鉄ライオンズ 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
[巨]○藤田
[西]●稲尾
[本]

舞台を平和台に移した第3戦、先発は1戦目と同じく稲尾和久と藤田元司。
第1戦では5回持たずに降板した両者だが、この日は両者最後までマウンドを譲らなかった。
試合は3回に巨人の広岡が放ったタイムリー二塁打が決勝点となり、藤田は西鉄打線を4安打完封、巨人は3連勝で王手をかけた。
稲尾は1戦目とは対照的な投球を見せ、巨人をわずか3安打に抑えるも援護がなく敗戦投手となった。

第4戦 10月16日 平和台

1 2 3 4 5 6 7 8 9 R
読売ジャイアンツ 2 1 0 0 0 0 1 0 0 4
西鉄ライオンズ 0 3 0 0 1 1 1 0 6
[巨]大友-●藤田-義原
[西]○稲尾
[本](巨)広岡(西)豊田2

本来は15日に行われるはずだった第5戦は雨のため16日に順延となり、あとが無くなった西鉄は1日休養を得た稲尾を先発させる。
だが稲尾は初回に長嶋の犠牲フライなどで、2回にも坂崎にタイムリーを浴びるなど2回までで3失点を喫する。
しかし西鉄はその裏満塁で大友に代わって登板した藤田から稲尾の押し出し、高倉照幸のタイムリーで同点とすると、5回に豊田の本塁打、6回に関口清治の犠牲フライ、7回には再び豊田の本塁打でリードを広げ、稲尾も計4失点ながら完投し6-4で勝利、西鉄はシリーズ初勝利を挙げる。

第5戦 10月17日 平和台

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 R
読売ジャイアンツ 3 0 0 0 0 0 0 0 0 0 3
西鉄ライオンズ 0 0 0 0 0 0 2 0 1 1X 4
[巨]堀内-藤田-●大友
[西]西村-島原-○稲尾
[本](巨)与那嶺(西)中西、稲尾

第5戦、巨人は堀内、西鉄はこの年完全試合を記録した西村貞朗が先発。
しかし西村は広岡に四球を与え、坂崎に二塁打を許すと、与那嶺に3ランを浴びて1死も取れずに交代、4回からは稲尾を送り込むが、打線はなかなか点を取れずにいた。
そのまま試合は終盤へと向かおうかという時、なんと試合が終了していないにも関わらず、巨人の勝ちと見た関係者たちが表彰の用意をし始めている所を西鉄の選手たちは目撃する。
この侮辱行為に等しい行いに対して怒った選手達はたちまち奮起、7回に中西太の2ランで1点差に詰め寄ると、9回に小淵泰輔が三塁線を破る二塁打を放つ。この二塁打が長嶋のグラブをかすめて抜けたため、長嶋と巨人の水原監督は「ファウルだ!」と抗議するも覆らず、巨人はあと1アウトという所で水を差され、この嫌な流れに呑まれたのか関口に土壇場で同点タイムリーを許す。
試合は10回表を3人で抑えた稲尾がその裏自らレフトスタンドにサヨナラホームランを叩き込むという劇的な形で勝利を挙げ、これで西鉄の2連勝となった。

第6戦 10月20日 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 R
西鉄ライオンズ 2 0 0 0 0 0 0 0 0 2
読売ジャイアンツ 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
[西]○稲尾
[巨]●藤田
[本](西)中西

球場を後楽園に戻し、シリーズ3度目となる稲尾・藤田の先発で始まった第6戦。
西鉄は初回に広岡のエラーから豊田が出塁し、続く中西が藤田の初球をレフトスタンドに叩き込んで2点を先制。
稲尾は初回から7回まで3者凡退に抑え、8回に藤尾茂、川上哲治に連打を浴びたが後続の打者を打ち取り、9回にも味方のエラーなどでピンチを迎えたものの、最後は長嶋をフライに打ち取って巨人を完封し、これで西鉄が逆王手となる3連勝。
藤田は2回以降は西鉄を4安打に抑えたが援護に恵まれず、皮肉にも第3戦とは対照的な結果となった。

第7戦 10月21日 後楽園 

1 2 3 4 5 6 7 8 9 R
西鉄ライオンズ 3 0 0 0 2 0 0 1 0 6
読売ジャイアンツ 0 0 0 0 0 0 0 0 1 1
[西]○稲尾
[巨]●堀内-藤田-義原-大友
[本](西)中西(巨)長嶋

両者王手の第7戦、巨人は堀内、西鉄はこのシリーズ実に6度目の登板及び5度目の先発となる稲尾和久。
西鉄は初回に1死1・3塁から中西の3ランで先制すると、巨人は堀内をあきらめこちらもシリーズ6度目の登板となる藤田を送り込む。
しかし連戦の疲れからか、藤田は5回に豊田・中西に連続タイムリーを浴びて差を広げてしまう。
一方の稲尾は疲れを感じないのか巨人打線を8回までスイスイと抑え、8回表には自ら犠牲フライを放っている。
巨人は9回長嶋が西鉄の守備の乱れの間に意地のランニングホームランを放つも反撃はここまで、稲尾は後続を3者凡退に打ち取り、見事西鉄を3年連続日本一に導いた。

稲尾は当然ながら日本シリーズMVPに選ばれ、稲尾の活躍に対し地元新聞は「神様、仏様、稲尾様」という見出しで稲尾を大いに称えた。

このシリーズにおける稲尾和久の成績

試合 完投 完封 勝利 敗戦 投球回 被安打 被本塁打 四球 死球 三振 暴投 失点 自責点 防御率
6 4 1 4 2 47 30 3 4 0 32 0 9 8 1.53

このシリーズで稲尾和久が作った記録

  • 日本シリーズ4完投(杉下茂とタイ)
  • 日本シリーズ4勝(杉浦忠とタイ)
  • 日本シリーズ47投球回
  • 日本シリーズ32奪三振
  • 日本シリーズ26イニング連続無失点

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関連項目

  • 稲尾和久
  • 西鉄ライオンズ
  • 神様
  • リアルチート
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