私人逮捕(しじんたいほ)とは、一般人が誰かを逮捕することである。
通常「逮捕」とは司法警察職員(警察官、麻薬取締官、海上保安官など)がする行為だが、現行犯逮捕に関してのみ、刑事訴訟法213条の規定で、誰でも行うことができるとされている。
現行犯人は、何人でも、逮捕状なくしてこれを逮捕することができる。
ただし、犯人が現行犯人または準現行犯人に該当し、なおかつ30万円以下の罰金・拘留・科料にあたる罪の場合は犯人の住居・氏名が明らかでなく、または犯人が逃亡するおそれがある場合でなければならない。該当しないで私人逮捕をすると、かえって監禁罪などの罪に問われるハメになってしまう。法制度上は現行犯逮捕は逮捕手続を簡略化した司法行動類にあたるため、警察官以外の私人の決済にて完結する私人逮捕は実は全て違法である。
犯人を私人逮捕したとしても、私人が犯人をそれ以上どうこうすることもできず、速やかに司法警察職員らに身柄を引き渡さなければならない。
司法警察職員が犯人を捕らえようとする時は、警察官職務執行法に基づいて、ある程度強引な手段を取ることが認められる。しかし一般人の逮捕行為では「状況からみて社会通念上逮捕のために必要かつ相当であると認められる限度内の実力」を行使することしかできない。それを過ぎるようなことがあれば、むしろ犯人から傷害罪などで訴えられかねない。そのために、警察官の一般捜査であっても、捜査令状や逮捕状の発行が成され、それを先に提示して、警察手帳を見せることでキチンと合法的に職務を執行しているのである。
私人逮捕はあくまで、目の前で起こっている犯罪を食い止めるための制度なので、事件を目撃したならまず真っ先に警察を呼ぶようにすることが重要である。
2020年代頃よりこれを行うことで再生数を稼ぎ、収益を出す事を目的とした自称正義の動画配信者が人気を集めているものの、実態は恫喝であったり、本来一般ピープルが行ってはならない捜査権を行使していたりといった軒並み違法行為を違法行為で身勝手に取り締まるものばかりで、配信者本人も元・犯罪者と言うことが少なくない。動画でよく行われる商業施設などで何かを疑い、別室に連れて行って氏名や住所を聞く行為はかなり危なく、この行為自体が警察官に許可された事情聴取に該当し警察官職務執行法違反となる可能性が高い。警察ですら、えん罪の可能性を考慮して捜査や事情聴取には非常に慎重になっている。
また、チケット転売やカルト宗教、マルチ商法などに潜入して身勝手に潜入捜査(おとり捜査)し、取り締まる配信者もいるが、こうした犯罪は背後に大きな組織が控えている可能性も高く、本職の警察ですらそれらに察知されないよう水面下で動き、慎重に捜査して逮捕状を取れる裏取りをしっかりと行った上で接触を図っているような事が多く、身勝手な取り締まりは却って警察の足を引っ張って背後に控える反社会的勢力や暴力団、海外犯罪集団などの、より大きな組織を取り逃がし、一網打尽や組織壊滅のチャンスを潰すことにも繋がりかねない。
事実、素人逮捕系動画配信者は大半の場合、警察からの感謝状すら贈られていないことが殆どである。この辺りは、探偵漫画や事件ドラマなどでの過剰な正義の描写での悪影響も少なからずあると思われる。
警察の捜査が腑甲斐ないからと言って、何の権力も有していない一般ピープルが己が正義に基づいて取り締まりを行うのは単なる私刑である。
そんなに犯罪を取り締まりたいのなら警察の求人に応募し、教養、面接、体力試験などからなる公務員採用試験を突破し、警察学校で逮捕術や犯罪学を学んだ上で卒業し(高卒10ヶ月、大卒6ヶ月)、そして警察官となって地域の犯罪を取り締まるのが正統かつ日本国家内において唯一の合法的な方法となる。捜査権、逮捕権、拘束、取り調べなどを行える警察官はそれなりに難関試験を突破して資格や権利を有しているのである。その警察官ですら先述したように令状が出てからでなければ動けない。犯罪捜査とは、配信者が売名目当てで行って良いようなものではなく、非常に慎重に行うべきなのだ。
それ以上に、こうした私人逮捕によって警察に引き渡したところで、事件として正式に立件されていたり、被害届などの書面が出されている事はほぼ無いため、身柄拘束となったり、警察に実際に逮捕、さらに検察にて起訴されることは殆ど無い。大半は嫌疑不十分ですぐに解放されることから、そもそもの行為がただ単なる炎上目当ての自己満足となっているという指摘もある。事件で無ければ警察は動かないとはよく言われるが、きちんと理由があっての事である。
それができないのであれば、基本的に事件は警察官に任せるべきである。
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最終更新:2025/12/07(日) 00:00
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