経路特定区間とは、二通りの経路がある一部の鉄道区間において運賃および料金の計算経路として短い方のみを用いる制度である。
概要
原則として、運賃および料金は乗車券類で指定された経路に依存し、旅客は乗車券類で指定された経路のみを乗車できる。ただし、特定の区間を通過する乗車券類を発券する場合には例外的に二通りの経路のうち短い方で運賃および料金を計算することを強制し、長い方の経路も同じ効力で乗車することができる。本制度は、鉄道事業者側の都合(並行する複数経路の需要平準化や急勾配回避など)により遠回りの経路で直通列車が運行されている区間において鉄道利用者側の追加費用負担を回避するための措置として設定されている。
具体的な区間
- 大沼~森間(定期乗車券を含む)
- 日暮里~赤羽間(定期乗車券を含む)
- 赤羽~大宮間(定期乗車券を含む)
- 品川~鶴見間(定期乗車券を含む)
- 東京~蘇我間(定期乗車券を含む)
- 山科~近江塩津間(定期乗車券を除く)
- 大阪~天王寺間(定期乗車券を除く)
- 三原~海田市間(定期乗車券を除く)
- 岩国~櫛ヶ浜間(定期乗車券を除く)
列車特定区間との違い
経路特定区間は、すべての乗車券類に関してその経路とするのに対して、列車特定区間は特定の列車に乗車する場合に限り適用する。現在は以下の5区間が指定されている。
- 赤羽以遠(川口方面)と池袋以遠(目白方面)との間を山手線・東北本線経由で直通運転する列車に乗車する場合(赤羽線経由で計算)
- 具体的には湘南新宿ライン・東武線直通特急などが該当する
- 代々木以遠(新宿方面)と錦糸町以遠(亀戸方面)との間を山手線・東海道本線・総武本線経由で直通運転する急行列車に乗車する場合(中央本線・総武線各駅停車経由)
- 岡谷以遠(下諏訪方面)と塩尻以遠(洗馬または広丘方面)との間を辰野経由で直通運転する急行列車に乗車する場合(みどり湖経由)
- 尼崎以遠(塚本方面)と和田山以遠(養父方面)との間を山陽本線・播但線・山陰本線経由で直通運転する急行列車に乗車する場合(東海道本線・福知山線・山陰本線経由)
- 赤羽以遠(川口・北赤羽方面)と品川間、もしくは品川以遠(西大井・大井町方面)と赤羽間を山手線・東北本線経由で直通運転する列車に乗車する場合(東海道本線・東北本線経由)
- 具体的には湘南新宿ライン・品川から大宮直通していた時代の成田エクスプレスなどが該当する
- なお、赤羽以遠-品川以遠と書かない理由は、電車大環状線の規則により、通過する場合は定期乗車券使用時を除いてカバーできるためである
- 例えば湘南新宿ラインで横浜方面から乗車し赤羽で下車した場合は、以下のように計算することになる
- 経路特定区間により鶴見・品川間は川崎経由
- 列車特定区間により品川・赤羽間は東京・王子経由
選択乗車との違い
経路特定区間は、乗車券・料金券双方に適用される発券規則および効力規則なのに対し、選択乗車は乗車券のみに適用される効力規則である。したがって、
- 経路特定区間は遠回りの経路ではなく近道の経路での発券を強制する。料金に関しても適用される。途中下車は、100kmを超える、同一大都市近郊区間で完結しない乗車券で特定都区市内発着のその都区市内でなければどちらの経路でも可
- 選択乗車はどちらの経路で発券してもよく、どちらの経路で乗車してもよい。料金は実際の乗車経路通りに計算する。別経路での途中下車の可否は区間に依存する
関連項目
- 鉄道関連項目一覧
- JRの運賃・料金特例による取り扱いの一覧
- 選択乗車