航空戦艦とは、航空機を運用するための設備が施された戦艦、もしくは対艦攻撃用の兵装を搭載した航空母艦の俗称である。公式な艦種としては存在しない。
航空戦艦と同様の呼称として「戦艦空母」、「戦闘空母」というものもある。
一般的には、対艦攻撃の可能な砲等の兵装と、航空機を運用するための設備の両方を搭載した艦艇を航空戦艦と呼ぶ場合が多い。
しかし、公式に存在しない艦種であるうえ、実際の艦種の定義に多少なりとも曖昧な部分があるため、具体的にどのような艦艇を航空戦艦と呼ぶかに対して一定の取り決めは無い。
現実に航空戦艦と呼べるような艦艇はいくつか実在したが、実戦で航空戦艦が航空機運用と艦砲戦を同時に行った事例は存在しないため、航空戦艦の運用実態については未知数な部分が多い。
戦艦と空母の長所の両立が理想ではあるが、実際は戦艦と空母の長所を相殺しているという見方が強い。
その理由として、
等が挙げられる。
第二次世界大戦までは様々な国家が航空戦艦について思案し、計画段階まで進んだ場合もあったが、航空戦艦に対する懸念やワシントン海軍軍縮条約による艦艇の新造制限等があり、いずれも実現することはなかった。
戦時中に改装を受けた日本の伊勢型戦艦が、世界初にして現在まで唯一の航空戦艦となる。
史実上で唯一となる航空戦艦が大日本帝国海軍の伊勢型戦艦である。
第二次世界大戦のミッドウェー海戦において、日本は空母4隻を損失した。その空母の補完を目的として、大和型戦艦を除く巡洋艦以上の既存の艦艇全てに、空母への改装が検討された。
戦艦では扶桑型と伊勢型が改装の候補となったが、伊勢型二番艦「日向」が五番砲塔を喪失していたこと等が理由となり、伊勢型戦艦の改装が決定した。
本格的な空母への改装は時間や資材の不足から不可能であったため、苦肉の策として船体後部だけを平甲板に改装し、航空機用の格納庫を設けた。
搭載機は水上機である「瑞雲」と、射出機に対応するために機体を強化した「彗星二二型」を予定していた。
滑走可能な飛行甲板は施せないため、航空機の発艦は一式二号火薬式射出機で行い、彗星は攻撃後、味方の空母や陸上基地に帰還し、瑞雲は水上に着水後、クレーンで回収することが検討された。
しかし艦載機の生産配備が間に合わず、伊勢型戦艦は艦載機を搭載することなく戦線に復帰した。艦載機運用は断念し、後部甲板上に多数の対空兵装を搭載した。
これが対空攻撃に役立ち、また、格納庫は北号作戦の物資輸送で役に立った。
航空戦艦としての本来の運用は出来なかったが、結果として改装そのものは実戦で役に立ったと言える。
通常の戦艦や巡洋艦にも偵察や対潜哨戒、着弾観測を目的とした水上機が搭載されているが、水上機を多数搭載可能な巡洋艦は世界的に多く実在し、戦果も多く上げられている。
巡洋艦は哨戒や偵察目的でも運用されており、速力が高く、攻撃を回避しやすい。このような点が水上機と相性が良かったため、史実での戦果に繋がっている。
日本では水上機運用のために改装された最上型重巡洋艦がこれに該当し、他には利根型重巡洋艦も艦砲を船体前部に集中させ、船体後部を航空艤装にすることで水上機の運用能力を高めている。
艦隊司令を専門とした軽巡洋艦「大淀」も、連合艦隊旗艦として改装されるまでは水上機が6機搭載可能であった。
現代では正規空母を運用可能な国家が少なく、航空機としてヘリコプターが実用化されたため、巡洋艦、駆逐艦にヘリコプター搭載能力を備えた艦艇が多い。また、軽空母やヘリ空母に対艦攻撃用の兵装を搭載した艦艇も存在する。
日本はヘリコプター搭載護衛艦(DDH)という艦種を制定しており、いずれも駆逐艦程度の艦艇としては哨戒ヘリコプターの搭載数が多い。特に、ひゅうが型護衛艦以降は全通甲板となり、艦艇そのものによる攻撃能力より、ヘリコプターの運用能力が重視された設計となっている。
日本以外ではロシアの重航空巡洋艦も航空機運用能力と対艦攻撃能力を併せ持っている。キエフ級とアドミラル・クズネツォフがこれに該当する。いずれも固定翼機が運用可能な艦艇だが、モントルー条約による政治的な配慮により、巡洋艦という扱いをされている。
仮想戦記を始めとする、フィクション作品における航空戦艦の人気は高い。特にSF作品に登場する宇宙戦艦は、戦闘機や機動兵器を搭載している場合が多々見られる。
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最終更新:2025/12/11(木) 23:00
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