豪血寺一族とは、アトラスから発売されていた対戦型格闘ゲームのシリーズ。
ニコニコ動画上ではゲーム中に使われた曲「レッツゴー!陰陽師」が非常に有名だが、元ネタであるこのゲームそのものは割と知られていない。というか興味を持たれていない。2009年4月の今日まで記事がなかったくらいだ。ちきしょう。
概要
初代「豪血寺一族」は1993年にアーケードゲームとして発売され、2009年4月現在までに5作品のシリーズが作られている。後にアトラスのアーケードゲーム開発が縮小(後に完全撤退)したこともあって、4作目の「GROOVE ON FIGHT」から5作目「新・豪血寺一族 闘婚 -Matrimelee-」まで非常に長い期間が開いている。「新豪血寺一族」以降は、「レイジ・オブ・ドラゴンズ」の制作で知られるノイズファクトリーが開発していた。豪血寺一族 先祖供養では久々に販売がアトラス名義となっている。
玉石混淆の格闘ゲームブーム黎明期に登場した作品であり、そういった数々のゲームの中でもとりわけ世界観がぶっ飛んでいたのが非常に印象的であった。「ほぼ全員が親戚」「70歳超のババアが主人公」など、時代がすすんだ今でもまず見かけない設定が目白押しであった。ちなみに、そのババア以下イカしたキャラクター達を描いたのは当時アトラスの社員であった村田蓮爾氏。
単なるイロモノゲーではなく、2段ジャンプやダッシュ攻撃など当時の格闘ゲームとしては斬新なシステムを多く導入していた。特にキャラの変身(モードチェンジ)が有名で、ババァが相手に吸いついて生気を奪い乙女に変身する技は豪血寺を代表するイロモノ技である。システムによる高い機動力を発揮するためにステージも広く、特に格闘ゲームとしては初めて縦方向に広さを持たせたゲームであった。
シリーズ通して作曲はでんちゅう(田中敬一)が担当している。昔SNKの餓狼伝説でリチャードマイヤーや(思えばこれも歌入りだった)ライデン、ギースなどの有名曲も手がけたことのあるぐらい力量があるのにもかかわらず、このようなはっちゃけた作曲もできちゃうのはすごいというか紙一重というか。まぁ、とにかくすごい。ちなみに、ババアの変身時に吸い付く音は、自らの腕を吸い付いて作成した渾身のSEである。
また、有名な「陰陽師」に代表されるように、ほとんどのステージに歌入りのBGMが入っている(2作目から)。実のところ、ゲームの内容よりBGMのほうが話題にされていたのは今も昔も同じだったりする。昔は容量の大きい歌入りBGMを入れることはかなりの労作(最古の歌入りゲームはSNKの「アテナ」)で、そういう点も評価されていたのかもしれない。
それもあってか、やたらと高く跳びあがる対空技(3画面くらい上昇)がいっぱいあった。他にもクセの強い必殺技が多い。最新作ともなるとだいぶおとなしくなったが、それでも判定と隙のおかしい技が目白押しだったりする。
ゲーメストで攻略ムックが出るなど、ちゃんと評価はされていた作品シリーズである。しかし、あからさまなイロモノ臭から当然プレイヤーを選び、今もってマイナー作品として扱われている。
システム
4ボタン制で、Aが小パンチ、Bが小キック、Cが大パンチ、Dが大キックに割り振られている。シリーズによって、同時押しで「ごっつい攻撃(ふっとばし攻撃)」や「黒子呼び(肉の盾として使える)」なども使える。
初代から全キャラとも2段ジャンプ・ダッシュができるので、攻め込むにもジャンプとダッシュの両方を混ぜることができる。特にダッシュ攻撃での性能変化は通常技だけでなく、必殺技もダッシュから出すと性能が変化するシリーズもある(闘婚など)。
一発奥義(超必殺技)は2から導入された。当時の主流であった体力ゲージ依存ではなく、画面下のゲージを溜めてから放つ方式であった。このゲージはサムライスピリッツの怒りゲージと似たようなもので、自分が攻撃を食らったときにしか増えない仕様であり、1試合中に何度も撃てるものではなかった。後の作品では他にも溜める手段ができたが、それでも他のゲームに比べると溜まりにくいほうである。ゲージが1本満タンになると、怒り爆発のエフェクト(発動中無敵、攻撃判定あり)が発生する。攻め込まれている時にこれで返せることもあるが、発動で動けない隙を狙って起き攻めを仕掛けられることも。
「変身」は一部のキャラが使用可能で、シリーズによって使えるキャラが大きく異なる。使用条件もキャラによって違い、お種・お梅などは通常投げから、花小路クララは必殺技の飛び道具から変身するなど多岐にわたる。多くは時間経過で解除されるが、孤空院干滋はラウンド開始時に変身、超必殺技を使うと変身が解けるといった特殊な変身をする。
シリーズの歴史
アーケード版作品を中心に解説。
- 豪血寺一族
- 1993年発売の第1作目。プレイヤーキャラは8人で、主人公は豪血寺お種(78歳)。
ラスボスは富と権力の象徴、お梅ワールドに君臨するお種の双子の姉、豪血寺お梅。
- 5年に一度の豪血寺財閥の当主を決める"当主決定格闘技大会"に出場し、現当主のお梅を倒すことが目的のストーリー。
ボス仕様のお梅さんは技性能がお種さんより高かったが、後の作品ではプレイヤーキャラ仕様になっている。
- 家庭用ではSFCやMDなどがあるが、移植度とかはあまり期待しない方がいいといいつつも、それなりにアーケードのテイストは守られているので、好事家の間での評価は高い。(どっちだよw)
- 豪血寺一族2
- 魔法少女クララのCVに三石琴乃を起用し、魔法少女が変身するという超悪ノリオープニングで、前作で免疫がついているはずのユーザーすら度肝を抜いた、まさかの続編。
- 1994年発売。前作から一年後の話。、悲願の優勝を果たしたお種(79歳)は、お梅ワールドを改造し、お種ランドを作り上げた。しかし、お種ランド完成式典前夜に、突如お種が行方不明となったため、5年を待たずして当主決定格闘技大会が急遽開始されることになる。
お種が使えなくなった代わりにお梅がプレイヤーキャラになり、ほかに5人の新規キャラクターが入っている。変身するキャラも新たに3人増えてもうなにがなんやら。
- ラスボスは失踪(?)していたはずのお種。技性能は前作とあまりかわらないが、奥義「森羅鏡」という超性能の技を使ってくる。くらってもガードしても同じぐらい減るなかなかの極悪技。ちなみにエンディングにてお種の失踪事件の全容を知ることができる。
- 純粋な家庭用移植作品はなく、次回作「最強伝説」の要素を取り入れた「豪血寺一族2 ちょっとだけ最強伝説」がプレイステーションで発売されている。移植度は変身時にロードしたり、背景が寂しかったりといろいろと残念だが、BGMだけなぜかすべて「よい音」バージョンであるため、一部のBGMマニアにはなかなか受けがよかった。(中古が安かったし)
- 豪血寺外伝 最強伝説
- 1995年に発売された、実質3作目。前作の大会を孤空院干滋が優勝し、当主になった干滋が戯れで開催したタッグ大会の設定。当主決定戦でないこともあり、シリーズで初めて血族でない「外部の格闘家」を招いている。
- お種を含む前作のキャラクター全て、およびタッグパートナー専用キャラの黒子(いちおうコレも一族の一員)が使用可能。また、一部の変身キャラが変身前・変身後で別キャラとして独立している。隠しコマンドでラスボスの外部格闘家・チャックが使える。タッグといえば普通は2キャラ必要だが、実は同キャラでもタッグを組める。BGMはPCMで半分以上容量を使用していたために、ほぼ2のアレンジで構成されている。
- GROOVE ON FIGHT 豪血寺一族3
- 1997年登場の実質第4作目。ちょいと未来の2015年の話。そして2015年でもってちょうど種梅の年齢設定が100歳という偶然が怖い。まさにセカンド(ババア)インパクト! お志摩はなんとか生きているが、不整脈のため大会参加は不可能とのこと。
- 前作に続いてタッグ制がとられている。時代設定が前作よりも大幅に進んでおり、例のババアは2人とも出るのに他のキャラは全員欠場している。犬猿の仲であったババア達も高齢を理由についに和解し、「2人でひとり」扱いのほぼ別キャラで大会に挑んでくる。実質的に全キャラが入れ替わったようなものである。
- 連続入力式の特殊技などが取り入れられたほか、タッグを生かしたシステムも導入されている。なかには、倒れたパートナーを飛び道具として投げるという技もあった。まさに外道。
- ラスボスのデザインは「悪魔絵師」こと金子一馬氏。どうみてもメガテンです、ありがとうございました。
- アーケード基板はST-Vであったため、家庭用ではセガサターン版がある。家庭用追加キャラ・ダミアンのエンディングは見もの。
- 新・豪血寺一族 闘婚 -Matrimelee-
- 誰もが忘れていた頃の2003年になって登場した、シリーズ第5作目にして新シリーズ。基板はMVS&ネオジオ。
旧シリーズのように年齢と西暦を合わせていた設定はとりあえず無効化。絵は村田蓮爾ではなく、実は中野友和氏が似せて描いている。あと、お種とお梅のデフォルトカラーがなぜか入れ替わった。
「GROOVE ON FIGHT」よりも以前の設定で、新キャラに混じって2の頃のキャラが多く登場する。ただしこの作品では変身がない。キャラデザインが大きく変わり、誰だお前はと言わざるを得ないキャラが複数いたりする。慣れろ。ババア使いは我慢しろ!!
- 本作より開発がノイズファクトリーであるが、代表取締役の伊集桂子氏はこのゲームを企画した元アトラス社員の開発者ネーム、「ちゅうこ」さんであるため、どうみても豪血寺です、本当にありがとうございました。
- システムにも大きな変化が多数組み込まれており、以前のシリーズと「レイジオブドラゴンズ」のシステムが融合したような操作感になった。闘婚以降は一部の通常技を特殊技に繋ぐことができるようなり、連続技のバリエーションが増えている。
- ストレスゲージが3本まで溜められるようになり、1ゲージ技の「ストレスシュート」と2ゲージ技の「一発奥義」が全キャラに用意されてい る。一部のキャラには隠し一発奥義(禁じ手)がある。やたら難しいコマンドの奥義が複数あるので、キャラによってはゲージはあっても出すことがままならな いなんてこともある。
- また、開発元にちなんでレイジのキャラが4人参戦しており、COM戦でも条件次第で3ステージ目に乱入してくる。この乱入の条件はとても緩く、普通に格闘 ゲームの心得がある人は簡単に見られる・・・のだが、例の「レッツゴー!陰陽師」が流れる珍念のステージは3ステージ目、つまり条件を満たすと確実に例のステージは拝めないのである。寝ている珍念の隣でリンと戦っている人、残念でした。
- 新・豪血寺一族 煩悩解放
- 2006年にプレイステーション2用に発売された、シリーズの最新作。実質的に「闘婚」の移植作だが、レイジのキャラが出ない代わりにボビー・オロゴンが出る、変身技が復活しているなどの違いがある。
- 本当は2006年2月23日日に発売予定だったが、ボビーが所属事務所でトラブルを起こし、乱闘。
- その余波で5月25日に発売は延期されてしまった。
- ニコニコでも見られる「レッツゴー!陰陽師」のPVは、これに収録されていたものである。
- 豪血寺一族 先祖供養
- 2009年7月31日正式に稼動した新作。
新たにババアが二人追加され、またもやキャラクター達の平均年齢が上昇した。
- またBGM過去作のリミックスや、どぎつい新曲も入り乱れ、相変わらずカオスなBGMになっている。
- 全般にグラフィックやアニメーションと操作感覚が大幅に向上し(闘婚では昇竜コマンドが出しにくかった)、浮かせ技からエリアルを入れていくようなコンボゲー的な要素も追加された。
- このゲーム一片の歪みなし。
ニコニコにおける豪血寺
陰陽師。以上。
・・・というのもアレなので、この節ではニコニコで確認できる陰陽師以外の豪血寺一族について紹介。
陰陽師以外のBGM・PV
前述の「煩悩解放」には陰陽師以外にもPVが収録されている。最近では貧乏人間カネナイジャーが一時的に話題になっている。また、特徴的なBGMはMADなどにも使われているようで、歌もの楽曲を使ったアイマス系のMADも見かけられる。
闘婚、煩悩解放
豪血寺一族1~3
ちなみにゲーメストムックに付いていたサウンドトラック音源(よい音ヴァージョン)は、
PS版にてすべて聞くことができる。
MUGENにおける豪血寺キャラ
他の格闘ゲームの例に漏れず、豪血寺のキャラもいくらかMUGENに実装されている。あまり出番が多いものではないが、シシー(闘婚ラスボス)やお種(闘婚仕様)が見かけられる。特にババアの人気は高いようで、出てくるたびに「ババアーッ!俺だーッ!成仏してくれーッ!」、「ババアーッ!俺だーッ!財産くれーッ!」などの、よその高齢者とは一味違う声援が送られることも。
関連動画
MAMEによるプレイ動画などがあがっているが、MAMEのヴァージョンが古いため、
一部のBGM、背景などが正常に動作していない。(最近対応され、正常に動作するようになった)
関連商品
関連コミュニティ
関連項目