高度情報処理技術者試験とは、日本の国家資格である情報処理技術者試験の中でも特に難易度が高いとされている複数の区分の総称である。
単に高度試験と呼ぶこともある。
概要
基本情報技術者試験(旧・第二種情報処理技術者試験)や応用情報技術者試験(旧・ソフトウェア開発技術者試験、第一種情報処理技術者試験)より上位に位置する、複数の試験区分の総称。
現在は8つの区分が該当する。(情報処理安全確保支援士試験を含めると9区分)
いずれの区分も各専門分野に特化した内容であり、出題範囲は狭いがその代わり深い知識が問われるため難易度は非常に高い。
「技術者向けの区分」と「管理職向けの区分」の2種類のタイプがある。前者は各専門分野に関する高い技術力が、後者は経営学の知識と論文作成能力が要求される。
高度情報処理技術者試験に該当する試験区分の一覧
特に人気の高い情報処理安全確保支援士試験を除き、年1回のみの実施となっている。(情報処理安全確保支援士試験も2008年までは年1回のみだったが、2009年から年2回実施となった。)
2020年10月から、4月と10月のそれぞれに実施される区分が入れ替わった。(新型コロナウイルス感染症流行の影響で2020年4月の試験が中止となったため)。例えば2019年10月まではITストラテジスト試験などは10月に、システム監査技術者試験などは4月に実施されていた。
ほぼ全てがITエンジニアまたは管理職向けの区分だが、2008年までは一般利用者向けの区分も存在した。
毎年4月に実施
- ITストラテジスト試験
- 経営戦略のスペシャリスト。主に企業の幹部やITコンサルタントなどを対象としている。
- 旧名称は「システムアナリスト試験」。
- システムアーキテクト試験
- 上級のシステムエンジニアを対象とした区分。開発や設計に特化している。1971年から実施されており、高度情報処理技術者試験の中で最も歴史がある区分である。
- 旧名称は「アプリケーションエンジニア試験」「特種情報処理技術者試験」。
- ITサービスマネージャ試験
- 運用管理のスペシャリスト。
- 旧名称は「テクニカルエンジニア(システム管理)試験」「システム運用管理エンジニア試験」。
- ネットワークスペシャリスト試験
- ネットワークエンジニアのための資格。高度なセキュリティの知識も要求される。
- 旧名称は「テクニカルエンジニア(ネットワーク)試験」「オンライン情報処理技術者試験」。
毎年10月に実施
- プロジェクトマネージャ試験
- 中間管理職向けの資格。その名の通り、プロジェクトマネジメントに特化した区分である。
- システム監査技術者試験
- 特殊な区分で、会社などのITシステムが正しく運用されているかどうかを「第三者の視点」から確認する人(システム監査人)向けの資格。
- 旧名称は「情報処理システム監査技術者試験」。
- データベーススペシャリスト試験
- データベースエンジニアのための資格。
- 旧名称は「テクニカルエンジニア(データベース)試験」。
- エンベデッドシステムスペシャリスト試験
- 組み込みシステムのスペシャリストのための資格。
- 旧名称は「テクニカルエンジニア(エンベデッドシステム)試験」「マイコン応用システムエンジニア試験」。
毎年4月と10月に実施
- 情報処理安全確保支援士試験
- セキュリティエンジニア向けの資格。高度情報処理技術者試験の中で最も人気が高く、唯一年2回実施されている区分。
- 厳密に言えば(現在は)情報処理技術者試験には含まれない。
- 旧名称は「情報セキュリティスペシャリスト試験」「テクニカルエンジニア(情報セキュリティ)試験」。
過去の試験区分
- プロダクションエンジニア試験
- アルゴリズム(プログラミング)のスペシャリストのための資格。2000年まで実施されていた。
- ただし出題範囲の一部はソフトウェア開発技術者試験とアプリケーションエンジニア試験に引き継がれた。
- 上級システムアドミニストレータ試験(上級シスアド)
- 一般利用者向けの区分だが、小論文の課題があったため難易度は非常に高かった。主に経営戦略に特化した区分だが、同じく経営戦略に特化していたシステムアナリスト試験とは立場が異なる。2008年まで実施された。
- ただし出題範囲の一部はITストラテジスト試験に引き継がれた。
- 情報セキュリティアドミニストレータ試験
- 一般利用者向けのセキュリティに特化した区分。2008年まで実施された。
- ただし出題範囲の一部は情報セキュリティスペシャリスト試験に引き継がれた。
- 2016年からは似たような内容の区分である「情報セキュリティマネジメント試験」が追加されたが、午後が多肢選択式であるため高度情報処理技術者試験には含まれない。
試験形式
高度情報処理技術者試験は全部で4科目(情報処理安全確保支援士試験のみ3科目)あり、その全てに合格しなければならない。
共通問題。試験時間は50分。問題数は全部で30問で、全て四択問題である。
セキュリティ、データベース、ネットワーク、ハードウェア・ソフトウェア、マネジメント、経営戦略などIT全般から出題される。難易度は応用情報技術者試験と同じくらいだが、出題範囲が非常に広いので厄介。
試験時間は40分。問題数は全部で25問で、全て四択問題である。
それぞれの区分の専門分野の問題が半分以上を占めており、残りの数問がそれに付随する関連分野の問題となる。
ちなみに2014年以降は全ての区分でセキュリティの問題が必ず出題されるようになっている。
試験時間は90分(情報処理安全確保支援士試験を除く)。長文の事例解析問題で、解答方式は記述式である。
大問を2〜3つ選択して解答する。
情報処理安全確保支援士試験のみ、2023年10月から午後Iと午後IIが統合された影響で試験時間が150分になっている。
試験時間は120分。解答方式は記述式または論述式(小論文)。
ITストラテジスト試験、システムアーキテクト試験、プロジェクトマネージャ試験、ITサービスマネージャ試験、システム監査技術者試験、エンベデッドシステムスペシャリスト試験では小論文が課される。エンベデッドシステムスペシャリスト試験は2023年10月から論述式に変更された。
ネットワークスペシャリスト試験とデータベーススペシャリスト試験では午後Iよりも大規模な事例解析問題が出題される。大問1つを選択して解答する。
情報処理安全確保支援士試験でも2023年4月までは午後II(事例解析)があったが、午後Iに統合された。
科目免除制度
以下のいずれかに該当する人は2年間だけ午前Iが免除される。
- 応用情報技術者試験に合格した人。
- 高度情報処理技術者試験のいずれかの区分(情報処理安全確保支援士試験を含む)に合格した人。
- 午前Iのみ合格した人。(この場合、午前Iさえ合格していれば、途中で帰宅してもOK)
過去の試験形式
2008年までは午前、午後I、午後IIの3科目で構成されていた。
試験時間は100分。問題数は全部で55問で、全て四択問題である。
システムアナリスト試験、プロジェクトマネージャ試験、アプリケーションエンジニア試験の3つは午前の問題が共通となっていた。また、この3つに限り2年間だけ有効な午前免除制度が存在した(対象者は3つの区分のいずれか、またはソフトウェア開発技術者試験の合格者である)。
試験時間は90分。長文の事例解析問題で、解答方式は記述式である。
大問を2〜3つ選択して解答する。
試験時間は120分(情報セキュリティアドミニストレータ試験のみ90分)。解答方式は記述式または論述式(小論文)。
システムアナリスト試験、アプリケーションエンジニア試験、プロジェクトマネージャ試験、テクニカルエンジニア(システム管理)試験、システム監査技術者試験、上級シスアドでは小論文が課される。
小論文が無い区分では午後Iよりも大規模な事例解析問題が出題される。大問1つを選択して解答する。
各試験区分の出題範囲
共通問題の午前I以外は、以下の出題範囲に従って問題が出題される。
太字はその区分の最重要分野である。
- ITストラテジスト試験
- ストラテジ系(経営戦略、IT戦略、企業活動)、セキュリティなど
- プロジェクトマネージャ試験
- プロジェクトマネジメント、開発・設計、運用管理、セキュリティなど
- システムアーキテクト試験
- 開発・設計、データベース、ネットワーク、セキュリティなど
- ITサービスマネージャ試験
- 運用管理、プロジェクトマネジメント、監査・法律、セキュリティ、ネットワーク、データベースなど
- システム監査技術者試験
- 監査・法律、セキュリティ、ネットワーク、データベース、ストラテジ系など
- エンベデッドシステムスペシャリスト試験
- 組み込みシステム(ハードウェア・ソフトウェア)、開発・設計、セキュリティ、ネットワークなど。
- 2023年からはストラテジ系の内容も追加されている。
- ネットワークスペシャリスト試験
- データベーススペシャリスト試験
- 情報処理安全確保支援士試験
- セキュリティ、ネットワーク、データベース、開発・設計、運用管理、監査・法律など
- また、午後に限りセキュアプログラミングの問題も出題される。基本情報技術者試験と異なり選択問題なので回避することも可能だが、その代わり出題されるプログラミング言語は固定ではなく(ただしC++、Java、ECMAScriptのいずれかである)、予告無しでランダムなので注意が必要である。
関連項目
- 経済産業省
- 情報処理推進機構(IPA)
- 情報処理技術者試験
- 国家資格
- 難関資格
- IT資格
- 資格の一覧
- 情報処理技術者試験の歴史
- システムエンジニア
- 弁理士、技術士…高度情報処理技術者試験のいずれかの区分に合格することで科目免除が使える。
- 中小企業診断士…高度情報処理技術者試験の一部の区分の合格者は科目免除が使える。