魔界転生(まかいてんしょう)とは、山田風太郎の小説作品である。
1964年から大阪新聞などに連載され、1967年に単行本化。
もともとのタイトルは『おぼろ忍法帖』だったが、1978年に角川文庫に収録された際に『忍法魔界転生』と改題される。
さらに1981年の映画化に伴い、現在の『魔界転生』というタイトルに落ち着いた。
柳生十兵衛を主役とした十兵衛三部作『柳生忍法帖』『魔界転生』『柳生十兵衛死す』の中編作。
山田風太郎の代表作の一つであり、ファンの間では最高傑作の呼び声も高い快作である。
その人気から複数回の映画化やOVA化が行われている。
石川賢による漫画化の他、せがわまさきによる漫画『十〜忍法魔界転生〜』が2012年から月刊ヤングマガジンにおいて連載中である。
前作『柳生忍法帖』で快刀乱麻の活躍をした十兵衛。
彼を苦しめる今作の敵は、いずれも名の知れた魔界から甦りし大剣豪たち。
天下の転覆を狙う怪人・森宗意軒が操る秘術『魔界転生』。
それは並外れた剣の技量の持ち主が、死の間際になって生に強い執着を持っている状態でのみ発動させることが出来る術。直前にまぐわった女性の肉体を介して、新たな身体と精神を持った転生衆として甦らせるというものであった。
復活後は生前の知識こそ持っているもののその人格は全く別物になる。剣聖と呼ばれるにふさわしかった人格者が、血縁者を斬り捨て、無実の娘を楽しみの為に犯し殺す、悪鬼羅刹へと生まれ変わる。
彼ら転生衆は森宗意軒の意のままに動く存在となり、次のターゲットである十兵衛に向かってくるのであった。
それぞれの執着から、現世に復活した7人の魔人。
宮本武蔵、田宮坊太郎、柳生宗矩、柳生如雲斎、荒木又右衛門、宝蔵院胤舜、天草四郎時貞。
はたして十兵衛は彼らを退けて、その裏にある森宗意軒の企みを防ぐことが出来るのか。
昨今の創作作品では珍しくない、過去の武芸者が甦り対戦を繰り広げる設定の作品。
特筆すべきはこれが50年近くも前に書かれたものだという点だろう。今読んでも古臭さを感じさせず、まさに夢の対決を描いた少年バトル漫画の原点とでもいうべき作品である。
後の創作作品に対しても、この作品が与えた影響は大きいと考えられる。
例えばTYPE-MOONのFateシリーズはこの作品がモチーフとなっている。
作中の描写に目を向けると、戦闘描写そのものは実のところあっさり決着がつくものが多い。長々と剣を打ち合ったりすること無く、剣豪同士の対決らしくほとんどは一合のもとに決まっている。
また十兵衛が自分のみの力で勝利を得る事が少なく、仲間の手助けを受けたり、何らかの策にはめたりして敵を倒していることがほとんど。しかし単純な力勝負に頼らない戦闘描写こそ、能力バトルの元祖とも言われる山田風太郎らしさを表した見所であると言えよう。
大まかな力関係を表すと以下のようになる。
転生衆(強)≧十兵衛≧転生衆(並)>>>>>越えられない壁>>>>>根来組>>>>柳生十人衆>>>>>>>>>>>>一般兵士
世に名の知れた隻眼の剣豪。柳生宗矩の嫡男。30代半ば。
飄々とした性格で一見すると軽薄そうだが、その実仲間思いで頭の切れる傑物。
その実力から森宗意軒に目をつけられ、転生衆になるべく誘われるが、対決する道を選んだ。
転生衆によりさらわれた柳生の娘達を救うべく、また転生衆の野望を打ち砕くべく立ち上がる。
抜刀術の開祖・田宮家の若き剣士。父の仇討ちを成し遂げたが余命幾ばくもない体であり、ただ復讐に捧げた己の人生を後悔して転生した。最初の刺客として十兵衛と戦う。
「槍の宝蔵院」の異名を持つ宝蔵院流の二代目。第二の刺客として三段壁で激突。
『最初の一合で左足を切り落とされ、子供を人質にそこからの離脱を図るも十兵衛の追撃の一撃を受け海中に沈む。』
尾張柳生の初代。柳生宗矩の兄・柳生厳勝の息子。尾張の入道。
『最初の対峙で右目を切られ失明。その後女を人質にその場を離れ、再度十兵衛との対決の場を設ける。十兵衛を鍔迫り合いで押し込むも、仲間であったはずのくノ一お品の裏切りによって残った左目を負傷。盲目状態になったところを十兵衛に切り込まれ城から落下して死亡。』
島原の乱の首領。転生衆の中では只一人剣豪ではないが、本作では恐るべき威力を持った忍術「忍法髪切丸」の使い手として描かれている。最初の転生衆であり、森宗意軒の弟子。
映画作品では、森宗意軒の代わりに魔界転生の使い手としてボス扱いされている。
『如雲斎がお品の裏切りによって打ち倒されたことを看破し彼女を捕らえる。そして自らの術の糧として彼女を犯し十兵衛と対峙するが、お品が自らの命と引き換えに図った策によって術が不発。十兵衛に顔面を割られ、さらに仲間から止めを刺され死亡。』
将軍家の剣術の師範。十兵衛の父親である。
執着により転生を遂げ、変わり果てた父の姿は十兵衛に大きな衝撃を与えた。
『父・柳生石舟斎が残した秘伝の書を餌に呼び出され、十兵衛と一騎打ちを行う。しかし秘伝の書は十兵衛が用意した真っ赤な偽物だった。十兵衛と刀を交えるまさにその瞬間、十兵衛が放り投げた秘伝の書(偽)が刀の通り道に落下。宗矩は咄嗟に刀を止めたが、十兵衛はその書ごと宗矩を両断した。』
柳生流の剣士で、十兵衛の兄弟子。「鍵屋の辻の決闘」で知られる剣豪。
『荒木又右衛門を装った十兵衛の奸計により、自 身を十兵衛と誤認され生き残りの根来組と共に仲間の紀州侍の鉄砲の射撃にさらされる。根来組は全滅するが又右衛門は間一髪地に伏せ十兵衛と対峙。十兵衛の 先をとり一合を交わすが、切り下ろしたはずの又右衛門の刀が折れ敗れた。十兵衛の推測によれば射撃によって刀と腹部に傷を負っていたことが勝因。』
言わずと知れた大剣豪。二刀流「二天一流」の使い手。
『操り人形であるはずの転生衆でありながら森宗意軒に反旗を図り、彼を殺害し暴走。最後の転 生衆として船島で十兵衛と相対し、長大な木剣を用いて十兵衛を追い詰める。しかし上段からの振り下ろしを地の影から測った十兵衛の見切りにより木剣ごと斬 られ、最後の力で二刀を振るうがかわされ絶命する。他者の助けや謀を挟まない逆に珍しい対決。』
森宗意軒
由井正雪と手を結び、幕府転覆を謀る怪老人。
かつてはキリシタンであり、島原の乱を生き抜いた魔人。美貌のくのいちを従え、忍法魔界転生によって名だたる剣豪を復活、配下として操る。
この忍法の完成には彼の指を用いる事が必須であり、先述の七人に加えて柳生十兵衛、紀州大納言頼宣、そして森宗意軒自身を転生させようとしていた。
『十兵衛を仲間に引き入れようとするが敵対され、最終的に束縛を嫌い反旗を翻した宮本武蔵により殺害された。』
フランチェスカお蝶
森宗意軒配下のくのいち。柳生の里を訪れて十兵衛に接触し、転生衆にしようと試みた。
『不穏を知った十兵衛により返り討ちに合い死亡。』
クララお品
森宗意軒配下のくのいち。狂女を装い十兵衛一行に加わり、内偵を続ける。
『最終的に森宗意軒を裏切って十兵衛に加勢。天草四郎時貞によって命を落とすが、最後の最後でその技を封じて十兵衛の勝利に貢献した。』
ベアトリスお銭
森宗意軒配下のくのいち。主の許を離れず、魔界転生に用いる娘達の監視を続ける。
『紀州大納言頼宣を魔界転生させようと準備していた所を、武蔵に化けて近づいた十兵衛によって唐竹割りにされ死亡。』
紀州大納言頼宣
紀州徳川家初代藩主にして、天下を望む野心家。
由井正雪、森宗意軒以下転生衆を紀州に招き入れた。
『後に森宗意軒に謀られて陰謀が幕閣に知れる所となり、追い詰められて魔界転生する事を決意する。しかし直前で介入した十兵衛により儀式は阻止され、また制御を離れて暴走していく武蔵を止める為に、十兵衛に武蔵を討ち果たすように依頼する。』
十兵衛に付き従う柳生の剣士たち。
柳生の中ではかなりの使い手たちではあるが、超人ぞろいの転生衆相手には雑魚同然の扱いであり、根来組とも大きな力の差が有る。
捨て身の活躍によって十兵衛を助けるも、一人また一人と倒れていく。
現在、原作小説は角川文庫と講談社文庫で入手可能。
田島昭宇による角川文庫版の下巻の表紙絵は十兵衛の眼帯が逆になっている(十兵衛は右目が盲目)が、気にしてはいけない。
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最終更新:2025/12/12(金) 22:00
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