「上杉景勝(うえすぎ・かげかつ)」とは、戦国大名のひとりであり、豊臣政権における五大老のひとり。上杉謙信の甥・直江兼続の主君である。(1555~1623)
概要
偉大な先代謙信の背中を追うあまり己を律すること激しく、とにかく無口・無表情であったと有名である。「生涯で笑ったのは一度だけ」だとか「家臣達も景勝の声を丸一日聞かないようなことがあった」とかいう話もあるほどの無口キャラ。喋らない・笑わない・常に怖い顔をしていることから家臣達には敵以上に恐れられたともいわれる。
元々は越後の上田長尾家の生まれであり、長尾政景の次男。実母は上杉謙信の実姉・仙洞院(綾御前)である。次男ではあったが長兄が早逝したために長尾家嫡男として育つ。しかし9歳の頃、父・政景が突然の溺死を遂げたために叔父である謙信に引き取られて育てられ、実父の跡を継ぎ長尾喜平次顕景と名乗った。
妻子の無い謙信は、姉の子ども達を我が子のように可愛がったと言われ、喜平次少年に宛てても母性愛情溢れる手紙を多数送っている。
その後、22歳の頃に正式に謙信の養子となり上杉景勝の名と弾正小弼の官名を与えられ、後継者の一人と目されるようになる。
軍神の後継
謙信が49歳で亡くなると、謙信がはっきりと後継者を明言していなかったためにもう一人の謙信の養子であった上杉景虎(北条氏康の子)と争いが起きた。御館の乱である。上杉景虎の実家北条家はもちろん、武田勝頼の妻は上杉景虎の妹であったため、両国とも景虎派。その他諸国が軒並み景虎派に付いて軍を出してくるという四面楚歌に陥る。
このころ景勝は「春日山城を枕に自決する覚悟はできている」とまで書いている。
しかし謙信の側近たちの多くが景勝に付いていたこともあり、当初劣勢だった事態を猛然と挽回。また北条家への不信を抱いていた勝頼と和睦することにより事態を打開。上杉家当主となった。
景勝が内乱に勝利し上杉家当主となったものの、更なる苦難が待ち受けていた。上杉が内乱に明け暮れているうちに越中まで侵攻してきていた織田信長の北陸方面軍である。北陸方面軍団長は柴田勝家、その与力に前田利家や佐々成政ら、そうそうたる顔ぶれであった。武田勝頼が天目山の戦いで討ち死にすると、越後は信濃からは鬼武蔵、関東口からは滝川一益に圧迫されて更に戦況は苦しくなる。
越中の上杉側最後の砦であった魚津城が悲惨な落城を遂げるころには、景勝も滅亡を覚悟したのか
…就中景勝好時代出生、携弓箭、六拾余州以越後一国相支、遂一戦可令滅亡事、死後之思出、
景勝幅ニ者甚不相応候歟、若又出万死、於令一生者、日域無双之可為英雄歟、死生之面目、
歓悦天下之誉、人々其羨可為巨多歟、兼者常州之儀、頼朝已来承伝…(ざっくり現代誤訳)景勝は良き時代に生まれました。全国六十余州(の支配者=信長)に対し、越後一国で相対するのです。滅亡しても歴史に名を残せる、それは景勝にとって不相応な程の扱い。もし生き残ることが出来れば、日ノ本無双の英雄と呼ばれるはず。死んでも生きても私は天下の誉れとされ、人々から大いに羨まれる。源頼朝公以来の武士の名誉と思われませんか…。
しかしこの悲壮な覚悟は果たされることはなかった。魚津城落城のその前日、本能寺の変が起こり織田信長は討たれていたのである。
天下の趨勢の元で
信長の死後、その後継争いから羽柴秀吉が柴田勝家と対立すると、景勝は勝家との確執から秀吉との同盟を選んだ。この時諸国よりもいち早く秀吉の手を取った事から、秀吉が天下を握ると豊臣政権の重鎮の一人として重きをなし、後年豊臣五大老のひとりと呼ばれることになる。
しかし大老の中でも最も強大な力を握っていた徳川家康の抑えとするべく、越後から会津へと国替えを命じられることとなった。この国替えにより全国第二位の領地を持つ大大名となったのだが、父祖の地であり心血賭けて守ってきた越後を離れさせられることは上杉家にとって複雑な思いがあったようである。
秀吉の死後、天下を目指した家康にとって、江戸の背後に位置する会津の大大名は邪魔以外の何物でもなかったらしく謀反の疑いありと征伐軍を起こされた。関ヶ原の戦いの引き金となった上杉征伐である。
一説には景勝の側近・直江兼続と、秀吉の幕臣たる石田三成の共謀による家康挟撃策であったとか、兼続が直江状によって家康を怒らせたためだとかいう話もあるが、直江状とは別に景勝自身も家康への回答として十一箇条の書付を送っており、またこの征伐に際して家臣たちに
「公儀は何を言ってもこちらが悪いとばかりに一方的で、かくなる上は全国を相手に戦うものであり、この滅亡に納得できない者は出ていけ」と言い放っているあたり、景勝自身の意思であったようである。
景勝は上杉一国で征伐軍十万に対抗するために士卒はおろか領民さえもかき集めて数万にも及ぶ軍勢を布陣し家康を待ち構えていた。
が、またしても景勝に滅亡が訪れることはなかった。石田三成の蜂起によって家康が江戸へと引き返したのである。
腹心直江を最上領侵攻に送り出し、越後では元家臣たちに一揆を命じ、後顧の憂いを絶って関東へと軍を進めるつもりであったようである。が、三成と家康の戦いがまさかのたったの一日で決着してしまい、手の届かぬところで敗戦が確定してしまった。
上杉家は米沢30万石へと大幅減封されたものの、直接戦って敗北した訳でもなかったために、家康に対峙したという武名を保った。
三度も滅亡を覚悟しながら(うち二回は信長・家康相手)本人の与り知らない要因で助かった上杉景勝には不思議な悪運があったようだ。
なお、大坂冬の陣にも参戦しており、冬の陣最大の激戦である鴫野・今福の戦いにおいて自軍に倍する豊臣方を退ける活躍を見せ、尚武の上杉の武名を高めている。この時の上杉軍の余りの峻厳さから無数に逸話が残ったようである。
評価について
景勝自身はそれなりに大きな日本史の出来事に関わっている人物である。転戦を繰り返しており、実績は決して悪いものではない。
しかし先代「上杉謙信」と腹心「愛の人直江兼続」の華々しい知名度になんとなく影が霞んでいる感じは否めない。前田慶次も一応景勝の家臣である。
特に直江兼続は史実では景勝の腹心であり、一番の側近でもあった。景勝からの信頼が非常に厚く、執政体制と呼ばれるほど近しい関係の主従であり、二人三脚で戦国の動乱を乗り切ってきたような仲である。おかげで景勝の事跡を全て兼続が吸収してしまったり、果ては謙信の後継者は兼続であるというような扱いすらされたりもしている。(*実際は直江兼続は景勝以外に仕えたことは生涯一度としてないのだが)
史実的には上杉家中の信望が景勝から失われるようなことは無く、景勝は死ぬまで上杉家当主として精力的に活動している。
寡黙で表情が読めないという個性も内面で何を考えているか分からないという想像の余地が大きいため、作品によっては優柔不断だったり不器用なだけだったり心優しかったり酷薄だったりブレが激しい。
一応、寡黙でどんな事態にも顔色を変えない非常に豪胆で冷静な人物であった、と言われている。
腹心直江兼続に対する厚い信頼や、長年子供に恵まれなかったにもかかわらず正室・菊姫(武田信玄の娘)以外になかなか女性に手を付けなかった事から、アッー!疑惑も掛けられたりしている。景勝・菊姫夫婦は謙信の(義理の)息子と信玄の娘のカップルということで人気もあるのだが。
威圧感がある雰囲気に反して体格は小柄であったらしい。また刀剣収集家であり目利きもあったらしく、所蔵の刀数百本の中から特に気に入った名刀を「御手選三十五腰」として選んでおり、この中には国宝・重要文化財が多数含まれている。
創作物に関して
基本的に謙信と兼続の「関係者」扱いである。軍神の後継者であることから能力評価は意外に高めに付けられることも。
戦国大戦
「軍神から受け継ぎし力、示す!」
Ver1.1からRで登場している。なお上杉景勝の名でクレジットされているが十台後半ほどの年頃の容姿であり、若い時代の姿であるようである。たぶんそのうち大名になったあとの景勝もSRとかで出るのではなかろうか。
2コストの騎馬隊武力7・統率5、制圧持ちとまずまず。右腕の兼続も制圧を持っている。
計略の「義侠心の目覚め」は、味方の上杉家の最も高い武力に応じて自分の武力を上げる計略。相手依存だが超武力になる「鬼に金棒」や短時間だが高武力になる「金剛力」を持つ鬼小島弥太郎、最終的に超武力になる「漆黒の暴威」を持つ柿崎景家、勿論軍神である「毘天の化身」の上杉謙信とも相性が良い。これらの計略ならば武力だけでなく移動速度も上がり殲滅力が向上する。
更に言えば、姉である華姫の「一心同体」がかかった高武力の味方を対象にしても高い効果を見込むことができる。よって姉とも相性は良い。そのせいか、会話つき戦国大戦で彼が登場する場合は超高確率で重度のシスコンに陥ってることが多い。しきりに姉に一心同体をせがむ弟…近親相姦とかアウトだろJK…
Ver2.0になったら大名になった景勝がSRで登場した。大名の割には特技が魅力しかなかったりとやや寂しい。
計略は「義のもとに」。上杉家の味方の武力と統率を上げる大名采配。 武力は味方のそれぞれの統率が高い程上がり、統率は武力が高い程上がる。三国志大戦で言うと「英知の大号令」みたいなもの。あれとは違って知力に当たるものも上がるが。
同時期に片腕の直江兼続が上杉家の味方の統率を上げる陣形「愛のために」を持ってきており、この2名によるシナジーも見込まれる。また統率を上げることで効果が上がる義計略を更に重ねることもできる。
信長の野望シリーズ
軍神の後継者であるという補正か比較的軍事能力は高く、実父のおかげか政治もそこそこ高い。謙信から受け継いだ車懸り持ちでもあるので戦闘ではなかなか使える。何故か直江兼続も車懸りをもっていたりして、一時は兼続が景勝の上位互換状態になったりしたこともあったが、大体は軍事面では景勝・政治面では兼続が長じているというような評価に落ち着いたようだ。
軍事能力 | 内政能力 | |||||||||||||||
戦国群雄伝(S2) | 戦闘 | 85 | 政治 | 89 | 魅力 | 95 | 野望 | 76 | ||||||||
武将風雲録(S3) | 戦闘 | 83 | 政治 | 70 | 魅力 | 85 | 野望 | 75 | 教養 | 68 | ||||||
覇王伝 | 采配 | 85 | 戦闘 | 83 | 智謀 | 48 | 政治 | 72 | 野望 | 37 | ||||||
天翔記 | 戦才 | 166(A) | 智才 | 110(C) | 政才 | 162(A) | 魅力 | 91 | 野望 | 75 | ||||||
将星録 | 戦闘 | 85 | 智謀 | 70 | 政治 | 83 | ||||||||||
烈風伝 | 采配 | 85 | 戦闘 | 74 | 智謀 | 66 | 政治 | 82 | ||||||||
嵐世記 | 采配 | 78 | 智謀 | 62 | 政治 | 77 | 野望 | 66 | ||||||||
蒼天録 | 統率 | 79 | 知略 | 61 | 政治 | 75 | ||||||||||
天下創世 | 統率 | 79 | 知略 | 63 | 政治 | 75 | 教養 | 63 | ||||||||
革新 | 統率 | 93 | 武勇 | 87 | 知略 | 71 | 政治 | 84 | ||||||||
天道 | 統率 | 90 | 武勇 | 87 | 知略 | 71 | 政治 | 84 | ||||||||
創造 | 統率 | 83 | 武勇 | 80 | 知略 | 70 | 政治 | 82 | ||||||||
大志 | 統率 | 81 | 武勇 | 76 | 知略 | 78 | 内政 | 78 | 外政 | 76 |
戦国無双シリーズ
4よりPCとして参戦。
身長190cm 声優:竹内良太(片倉小十郎と一緒) 武器は双鉈刀という三枚刃のどでかい刀、なぜか真ん中の刀だけ回転する。
アクションはチャージ攻撃タイプ。動きは遅いが威力は高い。敵としてでてきたらえらく防御が固い。
史実通り「強面・無口・仏頂面」という見た目の持ち主。それゆえ味方からも「何を考えているのかわからない」と評されている。綾御前の息子で上杉謙信の養子であるため、日々軍神の息子として研鑽を積んでいるが、ある日北条家から北条三郎(上杉景虎)が来たことにより事態が変わってくる。景虎からは何かとライバル視されるが、景勝自身は景虎の支えになりたいと思っている。見た目と違い繊細で優しい心の持ち主なのである。
しかしながら、父謙信が死に、後継者争いの御館の乱が発生する。これにより、自分自身の手で景虎を殺めることになる。その後は上杉家当主としてがんばっていく。
上にも書いた通り、寡黙ゆえに考えていることを伝えられない。なのでイカ愛の戦士・直江兼続が通訳を務めている。兼続のことを信頼しているが、自身が話そうとする前に兼続に割り込まれて代弁される形になることが多い。まぁあの兼続だから仕方ないとしか言えないけど…。
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