ゴエモンコシオリエビとは、深さ1000mかそれ以上の深海底に生息する甲殻類の一種である。
概要
大きさは5cm程度で普通のカニくらい(コシオリエビの仲間としては大型)。沖縄トラフという、琉球列島の北側に沿った海底のくぼみに生息している。
学名をShinkaia crosnieriシンカイア・クロスニエリという。まさに日本の深海を代表する生き物というわけだ。
そもそもコシオリエビとは、広い意味ではエビの仲間と言えないこともないが、異尾類、つまりヤドカリの仲間に属する生き物である。
大きなハサミや甲羅がある見た目はカニに似ているが、甲羅の幅が狭く、また尻尾状の部分が大きいところは少しエビに似ている。エビが腰を曲げたままにしているように見えるので「腰折り海老」。
異尾類は短尾類、つまりカニの仲間とも関係があるようだ。
まったく光が届かないくらい深いところにいるので複眼は退化している。また他の生き物からも見えないので全身が白い。色素自体を失っているので、白いというより生成りの甲羅といったところか。赤くなる色素がないのでゆでても赤くならない。
同じ深海性のオオコシオリエビが青い光だけはかすかに届く200m程度の深さにいるため赤い甲羅と大きな複眼をもっているのとは対照的である。
コシオリエビの仲間は深海だけでなく明るい珊瑚礁などを含む様々な場所に生息しているが、ゴエモンコシオリエビは深海の中の熱水噴出孔の周囲に特別に生息している。
ゴエモンコシオリエビが生息する水深1000m以上の深海ともなると水圧により水温が100℃以上になっても水が沸騰せず、液体のまま保たれる。
そのため、深海に噴き出す温泉は非常な高温となり、様々な物質が溶け込んでいる。これが熱水噴出孔である。
硫化水素が含まれる熱水にはその硫化水素を分解することでエネルギーを得るバクテリアが生息するようになり、これにより光の届かない深海でも栄養源が確保されることとなり、これを基にした生態系が生まれた。ゴエモンコシオリエビもその一員である。
ゴエモンコシオリエビの胸元に当たる部分には体毛が密集したところがあり、ここに硫化水素を分解するバクテリアが生息している。ゴエモンコシオリエビは栄養源であるバクテリアを自分の体に常に確保して生活しているのだ。ときどきハサミで体毛からバクテリアの粘膜をこそげ取り食べる。
他にもカニの一種ユノハナガニ、エビのオハラエビ、二枚貝のシンカイヒバリガイ、鰓曳動物類のチューブワームなどがこのような化学合成生物群集に属する。
名前のゴエモンとは、深海の温泉に生息することから釜茹での刑に処された石川五右衛門にちなむ。といっても水温自体は冷めた部分で生活している。
近年、JAMSTECと新江ノ島水族館が飼育に成功している。潜水病を防いで生きたまま引き上げるのが難しいとのこと。
関連動画
関連生放送
JAMSTEC公式サイトでは2014年4月6日まで中継が続けられ、その間産卵が確認された。関連リンク参照。
関連リンク
Webナショジオ 海の研究探検隊 JAMSTEC 第1回 胸毛がワイルド!ゴエモンコシオリエビ生け捕り作戦
関連項目
- 1
- 0pt