エンシトレルビルとは (エンシトレルビルとは) [単語記事]

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エンシトレルビル（Ensitrelvir）とは、抗ウイルス薬である。販売名はゾコーバ^®。

概要

有機化合物
エンシトレルビル

基本情報
英名	Ensitrelvir
化学式	C₂₂H₁₇ClF₃N₉O₂
分子量	531.88
化合物テンプレート

エンシトレルビルは、抗SARS-CoV-2 薬であり、3C様プロテアーゼ阻害薬である。SARS-CoV-2（新型コロナウイルス）のもつ加水分解酵素3C様プロテアーゼ（3CL プロテアーゼ）を阻害し、ウイルスの増殖を抑制する。SARS-CoV-2による感染症（COVID-19）の治療に用いられる。北海道大学と塩野義製薬株式会社の共同研究をもとに創製された。塩野義製薬株式会社より、ゾコーバ^®の名で製造販売されている。ゾコーバ^®（Xocova^®）の由来は、“XO（ノックアウト、～がない）”+“COVID-19”。

SARS-CoV-2 感染症は、2020年 3月に世界保健機関（WHO）よりパンデミック（世界的な大流行）が表明されたウイルス感染症であり、本邦でも2022年 10月時点で累積の陽性者2,200万例、死者4.6万例が報告されている^[1]。すでにいくつかのワクチンおよび治療薬が開発され、臨床で使用されているが、ゾコーバ^®も治療薬の選択肢の一つとして2022年 11月に緊急承認された。

エンシトレルビルは、薬物代謝酵素CYP 3Aの基質であり強いCYP 3A阻害作用、およびP糖タンパク質（P-gp）や有機アニオン輸送ポリペプチド（OATP）などの薬物トランスポーター阻害作用があることから、薬物相互作用が多く、併用禁忌や併用注意の薬剤が多い。医薬品の飲み合わせについて不安があれば、医薬品添付文書を参照するか医師や薬剤師に相談すること。また、動物実験において催奇形性や流産が報告されているため、妊婦や妊娠している可能性のある女性への投与も禁忌。投与中は適切な避妊が必要となる。

抗SARS-CoV-2薬

SARS-CoV-2 感染症（COVID-19）の治療に用いられる低分子量の抗ウイルス薬を参考程度にまとめておく。実際にどの医薬品が推奨されるかは、患者の年齢や重症度、重症化リスク因子の有無、入院の要否、感染している変異株の種類などによって異なる。ほかにも抗体医薬や副腎皮質ステロイド薬などが治療に供されているが、ここでは割愛する。

販売名	ベクルリー^®	ラゲブリオ^®	パキロビッド^®	ゾコーバ^®
一般名	レムデシビル	モルヌピラビル	ニルマトレルビルリトナビル	エンシトレルビル
承認	2020年 5月	2021年 12月	2022年 2月	2022年 11月
薬価	100 mg/バイアル 63,342円	200mg/カプセル 2357.8円	NMV 600mg + RTV 200mg/シート 19805.5円	125 mg/錠 7407.4円
作用機序	RNA合成酵素阻害 ↓ RNA合成抑制	RNA合成酵素阻害 ↓ RNA合成抑制	プロテアーゼ阻害 ↓ タンパク質合成抑制	プロテアーゼ阻害 ↓ タンパク質合成抑制
剤形	注射剤	経口剤	経口剤	経口剤
適応症	SARS-CoV-2 感染症（COVID-19）
用法用量	初日200mg 2日目以降100 mg 1日1回3～10日間点滴	1回800 mg（4カプセル） 1日2回5日間内服	NMV 300 mg（2錠） RTV 100 mg（1錠） 1日2回5日間内服^†	初日375mg（3錠） 2～5日目 125 mg（1錠） 1日1回5日間内服
小児	体重3.5kg以上なら投与可（用量調節必要）	小児投与不可 18歳以上のみ	12歳以上かつ体重40kg以上なら投与可	12歳以上なら投与可（臨床試験では体重40kg以上も条件に含む）
妊婦	有益性投与^‡	禁忌（胎児毒性）	有益性投与^‡	禁忌（催奇形性）
備考	重症例に投与可。 COVID-19治療薬のうち最も使用経験が豊富。	経口のCOVID-19治療薬としては併用禁忌薬が少ない。	腎機能や肝機能を考慮して投与する。^† CYP 3A阻害による薬物相互作用がある。	CYP 3A阻害による薬物相互作用がある。