Jacobsthalの不等式とは、数学において相加平均と相乗平均の差に関して成り立つ以下の不等式のことである。
n(An-Gn) ≧ (n-1)(An-1-Gn-1) ...[1]
ただしここで An,Gn はそれぞれ n 個の正の数 x1,...,xn の相加平均と相乗平均である。
概要
相加平均と相乗平均の商のあいだにもJacobsthalの不等式に似た次の不等式が成り立つ。
(An/Gn)n ≧ (An-1/Gn-1)n-1 ...[2]
相加平均≧相乗平均を証明するときの補題として示されたりすることがある。[1],[2]を繰り返し用いると
n(An-Gn) ≧ (n-1)(An-1-Gn-1) ≧ ... ≧ A1-G1 = 0
(An/Gn)n ≧ (An-1/Gn-1)n-1 ≧ ... ≧ A1/G1 = 1
となり、An ≧ Gn が示される。
逆に相加相乗平均の関係を使ってJacobsthalの不等式を示すこともできる。詳細は後述。
証明
相加平均≧相乗平均を使わないもので微分をするものとしないもの、相加平均≧相乗平均を使うものを紹介する。[1]と[2]の両方の証明を紹介する。
証明1(相加平均≧相乗平均を使わず微分をしないもの)
まず[1]を示そう。ベルヌーイの不等式より xn ≧ nx-(n-1) が成り立つので
n(An-Gn) = (n-1)An-1 + xn - nGn = (n-1)An-1 - nGn + Gn-1*(Gn/Gn-1)n
≧ (n-1)An-1 - nGn + Gn-1*(nGn/Gn-1 + n-1) = (n-1)(An-1-Gn-1)
となる。
[2]もベルヌーイの不等式で示せる。[2]を整理すると示すべきことは An-1*(An/An-1)n ≧ xn であるがベルヌーイの不等式より
(左辺) ≧ An-1*(nAn/An-1 - (n-1)) = nAn-(n-1)An-1 = xn
となる。
証明2
微分を用いて相加平均≧相乗平均を示そうとすると自然に導かれる不等式である。
f(t) = (x1+...+xn-1+t)/n - (x1*...*xn-1*t)1/n とおく。
f'(t) = 0 とすれば 1/n - (x1*...*xn-1)1/nt(1-n)/n/n = 0 なので t = Gn-1 で極小値(最小)であることがわかる。よって
f(xn) = An-Gn ≧ f(Gn-1) = (x1+...+xn-1+Gn-1)/n - (x1*...*xn-1*Gn-1)1/n = (n-1)/n*(An-1-Gn-1)
となり、整理すれば定理が従う。
証明3(相加平均≧相乗平均を用いる方法)
[1]から示す。
(左辺)-(右辺) = nAn-(n-1)An-1 + (n-1)Gn-1 - nGn = xn + (n-1)Gn-1 - nGn
ここで相加平均≧相乗平均より xn + (n-1)Gn-1 ≧ n*(xnGn-1n-1)1/n = n*(xn*x1x2...xn-1)1/n = nGn なので
これより定理が従う。
[2]を示そう。整理すると Ann ≧ xnAn-1n-1 を示せば良いが、An = (xn+(n-1)An-1)/n なので相加平均≧相乗平均より定理が従う。◻︎
一般化
重みをつけたバージョンに一般化できるようである。詳しくは→Weighted generalization of Rado’s inequality and Popoviciu’s inequality
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関連項目
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