ザ・マンとは、漫画・アニメ『キン肉マン』に登場するキャラクターである。
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この項目は、ネタバレ成分を多く含んでいます。 ここから下は自己責任で突っ走ってください。 |
かつては天上界に住まう超人の神々の一人“慈悲の神”であった。現在は自らを超人閻魔と称し、また正体を隠すためにオーバーボディを使用しストロング・ザ・武道として活動する。なお作中での試合ではザ・マンとしての姿は見せず、ストロング・ザ・武道の姿を通していた。
名前の由来は、英語のThe manという言葉。この言葉は「第一人者」「男の中の男」という意味を持つが、同時に「あやつ」「あの男」などの負の意味も持っている(作者ゆでたまごは「始祖は全員「○○マン」という名前にするのを決めており、その中でも彼は「男の中の男」ということで名づけた」と前者であると語っている)。
超人強度は9999万パワー。超人の神の1億パワーに1万だけ足りない。
これは神から超人に降りた時に減少したものと思われる。
特徴的な口癖は「グロロロー」。神であった時から変わっていない。
太古の昔、凶悪だった超人たちが神々の怒りによって滅ぼされようとした時に「超人を生かすべき」と考えた神々を取りまとめていた“慈悲の神”である。
当時の神々は堕落した超人たちに見切りをつけ、抹殺という決定を下しており、ザ・マンは他の神々に対して反発。「超人の中にも今の世界を変えようと努力している者たちもいる」と反論し、彼らのような種を途絶えさせないために自ら神の座を捨て、地上に降り立って超人たちを指導すると提案した。
この際に神々からは「お前ほどの男が神の座を!」と驚かれ、止められたものの、「彼らを完璧に育成し、超人という種が産まれたことは間違いではなかったことを証明したい」と朗らかな笑顔で天上界を去り、地上に降り立った。
そして邪悪がはびこる地上の中にあってなお、正義の心を持つ超人たち10名を選抜。厳しい修行の末に完璧なる存在へと鍛え上げた。こうして超人となったザ・マンと弟子を併せた、11名が後に完璧超人始祖と呼ばれることになる。
その後、完璧超人たちは地上で繁栄していたが、やがて下等超人が生存していた事を知ると異空間「超人墓場(聖なる完璧の山)」を造り上げて移住。自分たちは直接関わらずに彼らの動向を見守ることになった。
しかし、直接指導する者もいない下等超人たちが自力で成長する事はなかなか無く、それどころかカピラリア七光線の照射以前と全く変わることがない、邪悪な超人が蔓延り、善良な超人たちが虐げられていく様がそのまま続くこととなり、ザ・マンは次第に下等超人に失望していく。
ついには自ら出撃して邪悪な超人たちを粛清。それ以降、超人墓場から以前よりも積極的に超人たちに干渉するようになってしまい、果ては下等超人の魂すら管理し始める。この頃から自らを「超人閻魔」と名乗りはじめた。次第に変わっていくザ・マンのことを認めることができなかった完璧超人始祖たちは「超人閻魔」とは呼ばずに、ただ「あやつ」とだけ呼ぶようになる(サイコマンだけは「閻魔さん」と呼ぶ)。
そして完璧超人始祖たちの中から、最初にゴールドマンが、次いでシルバーマンが地上に出て、下等超人に直接指導を始める(この指導が正義超人と悪魔超人の誕生に繋がる事となる)。
地上で対立した彼らがジャスティスマンの裁きによって相打ちになると、地上の超人たちの発展は再び停滞。結果、超人墓場による管理体制が続いていくことなる。
だが、いつしか地上の超人たち(下等超人)の中に、イレギュラーな力を持つ者たちが現れるようになると、自分たちの力を超えかねない力(特にキン肉マンの火事場のクソ力)は危険なものであると考えるようになり、完璧・無量大数軍を作って危険分子の粛清へと舵を切る。そして、自らも無量大数軍の1人ストロング・ザ・武道として行動するようになった。
なお武道の正体は、ネメシスたち他の無量大数軍のメンバーには知らされておらず、唯一完璧超人始祖であるグリムリパー(サイコマン)のみが知っていたようである。
ちなみにストロング・ザ・武道のコスチュームは当初、自らの正体を隠すためのものだったと考えられていたが、後に同じ武道の装束を纏って登場したリヴァイサンの証言から、ザ・マンのオリジナルのものではなく、天界に伝わる古代ゆかしき「発心の鎧」というものであり、神が襟を正し何事かに一心に取り組む際に身に纏う正装とも言えるものであることが明らかになる。
この頃は、死後に超人の魂が行き着く場所「超人墓場」の支配者、超人閻魔として登場している。
完璧超人ネプチューンマンが死亡したにも拘わらず超人墓場に来ないことから、オメガマンに「殺してでも連れてこい」と依頼。同時にネプチューンマンに協力するキン肉マン・チーム全員の抹殺を依頼する。(……が、キン肉マン達はネプチューンマンの復活に協力していたわけではなく、これは冤罪だったりするのだが)
この時は現行設定(完璧超人始祖編)と大きく異なっており、(悪魔将軍ほどでは無いものの)現在の設定から考えると台詞の意味が全く変わってしまったりもする。
例.「超人墓場はいいところだ。お前も早く来いーっ」
旧設定:死んであの世に来い
現設定:完璧超人軍の本拠地に戻って来い
さらに『キン肉マンII世』では悪魔将軍と仲良く並んで座ってる場面があったりするのだが……。完全に和解した後に記念写真でも撮ったのだろうか?(都合の悪いことは忘れよ、だってゆでだから)
また、アニメ版王位争奪編ではさらに設定が追加され、超人閻魔は五大邪悪神を従える真のボスになっており、スーパーフェニックスが敗れた際に真紅のマントに封印された。
こうなると現行設定のザ・マンとは全くの別人としか言いようが無くなってしまう為、これはアニメオリジナルとして解釈した方が良さそう。
ネプチューンマンを代表とする完璧超人の一部が正義超人・悪魔超人と不可侵条約を結んだため、その撤回を宣言するために完璧・無量大数軍の一人<完武>ストロング・ザ・武道として地上に姿を現す。
更に正義超人の粛清を掲げ自らも戦闘を開始、アパッチのおたけびを発動しようとしたジェロニモを一撃でKOし、タイルマンやカレクック、ベンキマンの超人パワーを奪い、人間にしてしまうなど実力の一端を見せつける(そしてカナディアンマンとスペシャルマンを竹刀でしばいたりもした)。
こうして正義超人との戦いの幕が上がり、そこに突如悪魔超人も参入したことで、正義&悪魔VS完璧による全面対抗戦が勃発した。
武道は当初、アメリカのグランドキャニオンに特設された空中リングで、テリーマンと戦うつもりだったが、乱入により7人の悪魔超人の1人ザ・魔雲天と戦うことになる。
ザ・魔雲天との試合中、先にキン肉マンに敗れたピークア・ブーが、完璧超人の掟である敗北者の自決に従わない事を一喝する。
武道自身は、魔雲天の必殺「マウンテン・ドロップ」や柔道技を受けてもビクともせず、逆に単純な打撃で魔雲天の体を砕いて格の違いを見せ、更にボロボロになりながらも任務を遂行しようとする魔雲天に対し、「零の悲劇」で超人パワーを奪い人間にしようとするが、魔雲天はこれを拒絶。最後は<完武>兜砕きでKOしたものの、魔雲天の執念で空中リングごと谷底に落とされしばらく姿を消す(これに関して武道は、下等のわりにはよく頑張ったと評価している)。
だが、武道がこうして足止めされている間に本拠地の超人墓場が悪魔将軍に侵攻され陥落。完璧・無量大数軍、完璧超人始祖の多くを失ってしまう。
悪魔六騎士と完璧超人始祖の戦いが一段落した後、キン肉マンたちの前に突如その姿を現す。そして、一同をかつて超人オリンピックが行われた国立競技場へと誘導すると、そこへ悪魔将軍も出現。そこで悪魔将軍からストロング・ザ・武道の正体が超人閻魔であり、真の名がかつて神であった”完璧・零式”ザ・マンであることが明らかにされる。
その後の「許されざる世界樹」の戦いでは悪魔将軍、シルバーマンに糾弾され、更に正義超人の可能性を信じるようになったジャスティスマンまでもが離反、最後まで超人閻魔を守ろうとしたサイコマンも倒れ、しかもサイコマンも本心では超人閻魔と化したザ・マンを認めていなかったことも判明する。
ここに至り、さすがの彼も精神的な動揺を見せ始め、ネメシスに対し「私は何か間違っていたのか?」と問う場面もあった。
だが最後の砦となったネメシスがキン肉マンに敗れると、あくまで掟に従いネメシスを処刑しようとするが、これに異議を唱えるネプチューンマンとピークア・ブーが身を盾にしてネメシスを守ろうとする。
ネプチューンマンから一騎打ちによって白黒つけようと提案があり、武道もそれに応じるものの、そこへ悪魔将軍が割って入り、結果ネメシスたちの処分は一時保留となり、かつての弟子である悪魔将軍との対決が始まることとなる。
数億年にも渡る師弟の因縁の戦いの場は、かつての特訓の場であったオーストラリアのエアーズロック。
試合は、始祖たちをも超える戦闘能力で悪魔将軍を圧倒、本来回避不可能なはずの悪魔将軍の技も強靭なボディによって跳ね除け、地獄の断頭台ですら通用せず、硬度10ダイヤモンドパワーも悪魔将軍のそれを上回るものを発揮。
そして「完璧・零式奥義 千兵殲滅落とし」を放ち、悪魔将軍をKO寸前にまで追い込む。だが、もはやこれまでかに見えた悪魔将軍が立ち上がってくると、さすがに驚きを隠せずにいた。
そして試合は、悪魔将軍が本来扱えなかった感情のパワーを対ザ・マン限定で発動し、その感情の力がダイヤモンドパワーを超える硬度10#ロンズデーライトパワーに達したことで形勢逆転。
ザ・マンのダイヤモンドパワーが通用しなくなり、悪魔将軍の攻撃によって大きなダメージを受けるようになり、全力で放った千兵殲滅落としも耐えきられ、逆に片足を砕かれてしまう。
そして最後は地獄の断頭台・改「神威の断頭台」を受け、武道の仮面を破壊されザ・マンとしての素顔をあらわにして倒れる。その表情は、弟子が自分を乗り越えた事に満足する、彼本来の穏やかな笑みに戻っていた……。
戦いに敗れた事で悪魔将軍にも自分を討つように促すが、そこにキン肉マンが割って入りザ・マンの助命を請願。悪魔将軍もその請願に応え、ザ・マンを含む完璧超人の不老不死の解除と超人墓場への隠棲という形で決着となった。
そのため、いつの日か寿命によって亡くなる運命となったが、本来不老不死の神である彼の自然な寿命がいつ終わるのかは定かでは無い。その為「自然状態でこの世の終わりまで生き続ける」という可能性も無くはない。
とりあえず「不老不死を解除したとたん急激に老衰して死亡」というパターンではなく、オメガ・ケンタウリの六鎗客編でも変わらぬ姿で存命である。
戦いの後は約束どおり超人墓場で静かに過ごしている。「超人墓場から二度と出ない」というゴールドマンとの約束を守り、自ら牢に入ることでその意思を周囲に示している。
大魔王サタンによって超人墓場が封印された際にも泰然自若としており、表情には余裕さえ感じられる。
のんびりレコード聴いてるあたり、彼にとっては大魔王サタンですら緊急事態でもなんでも無かった様子。
また、「零の悲劇」で人間化させたカレクックやベンキマンはいつの間にか超人へと戻されており、新たな敵勢力「オメガ・ケンタウリの六鎗客」に立ち向かう事になった。
六鎗客を率いるオメガマン・アリステラはザ・マン抹殺を一族の悲願としていたが、ブロッケンJr.やキン肉アタルの説得と激闘の末に怨念を捨てる事に同意。ザ・マンも、彼らは戦うべき敵ではなく、真の敵は他にいる事を見抜いていた。また、かつてオメガの民を宇宙に放逐した事についても、過ぎし日の行為を反省する様子が見られる。
アリステラを利用してザ・マンを倒そうと目論んでいたサタンをジャスティスマンが一蹴し、事の真相をザ・マン本人から聞くためにとアリステラ、アタル、キン肉マンらを伴い超人墓場へ帰還。
ザ・マンは超人墓場の最奥まで案内された彼らを歓迎し、かつて超人たちを抹殺すべきと唱えていた神々の勢力をまとめていた“調和の神”の存在を語り、神々に目を付けられていたオメガの民を粛正すると見せつつ宗家の者たちは地球外に脱出させていた事を説明。そのために苦難の歴史を歩ませてしまった事を詫び、アリステラも涙を流して真相を受け入れた。
また、カピラリア光線を照射するための装置を108のピースに分割、そのうち1つをザ・マンが所持しているため“調和の神”たちもカピラリア光線照射を強行できない事を明らかにした。
キン肉マンスーパー・フェニックスが超神たちを地球上の四カ所に誘導すると、その位置を推察し、「超神対策本部長」として超人たちの指揮を執り、正義超人たちを4チームに分けて派遣。完璧超人は超人墓場でザ・マンが所持する欠片を守り、アリステラたちオメガの民は母星を救うため帰還する事になった。
フェニックスらが4人の超神を撃破すると“調和の神”と語らい、超人に天に昇る資格を与えるよう提案。“調和の神”もそれを了承し、天上界へ続く「バベルの塔」の試練を受ける8人の超人を選出する事となる。このとき、自分を含めた完璧超人始祖は隠居の身であるため参加しないことを表明し、あくまで現役世代の超人たちが試練に挑む方針を打ち出す。超人たちが立候補によって8人の代表を決めると、バベルの塔へ導く門を創り出して超人たちを戦場に送り出した。
超人と超神の戦いが進んで行く傍ら、スクリュー・キッドとケンダマンを何者かの偵察に向かわせる。二人は撃退されてしまうが、スクリュー・キッドはなんとか生還して新たな脅威の存在をザ・マンに報告。かつては「敗北したら死刑」「敵に背を向けたら死刑」であった完璧超人の掟を曲げて「生きて戻ってきただけでも十分な評価だ」と寛大な対応でスクリュー・キッドを労った。この事は、「一度の失敗ですぐに死刑にするからせっかく育てた人材が失われてしまう」というシルバーマンの指摘を素直に受け入れ、改善を目指す姿勢の現れと言えるだろう。
そして、今後も重大な事態が待ち受けている事をネメシスに告げる。ザ・マンの側にはいつの間にかネメシス一人が近侍するだけになっており、ジャスティスマンとピークア・ブーの姿が見えなくなっている。彼らも別の任務に出動しているのだろうか……?
バベルの塔の全ての戦いが終わった後、頂上で戦いを終えたキン肉マンたちの前に巨大なスクリーン越しに姿を見せる。まずは超人たちの戦いを労い、そしてリアル・ディールズの面々が目撃した光景について説明。そこで宇宙全体のパワーバランスを崩す力を超人が持ち始めた結果、オメガの星で怒った天変地異などのひずみとして宇宙全体に表れ始めたものだという衝撃の事実を明らかにする。
そこへバッファローマン戦を終えたばかりのザ・ワンが登場。ザ・ワンは、能力ある超人を『神の椅子』に座らせるというザ・マンの主張は正しかったと認め、超人を粛清すればいいという傲慢な発想から抜け出せなかったことが天界の堕落を招いたと主張。神にふさわしい超人は神に引き上げ、逆にふさわしくない神は超人に落とし、資質のない超人は人間にする事でパワーの増大を抑制するという超人殲滅の考えから譲歩したザ・ワンの改革案を聞く。ザ・ワンが譲歩に至った理由は、キン肉マンの持つ友情パワーこそ宇宙の危機を救うかもしれない爆発的なパワーであると気付いたからだった。
ここでザ・マンは「友情パワー」を超人パワーを増強したものではなく、友情という心の動きによって他の超人からパワーを借用したものだと説明。この画期的な方法は、キン肉マンを発生源として使用できる超人が他にも増えており、弟子のゴールドマンがこのパワーによって自らを倒したときにこれこそ超人を救うカギだと理解するに至った。
そこでザ・ワンに対し、「キン肉マンをモデルケースとした成長法が、このまま全超人に広がることが実現すれば、問題はすべて解決できる可能性がある」と主張。この考えに同調したザ・ワンだったが、それを待っているだけでは間に合わない主張。その理由はザ・マン、ザ・ワンの二大巨頭ですら一目を置く、「刻の神」と彼によって生み出された「時間超人」が本格的に動き出したからだった。
その後、バベルの塔から戻って来たキン肉マン、ネプチューンマン、ウォーズマンを迎え入れ、テリーマンも招集し、対時間超人について語ろうとしていた。そこへ、バールベックの調査からケンダマンが帰還。戦いの一部始終と五大刻の存在、そしてサイコマンに瓜二つなファナティックについての報告を受ける。そして五大刻に対抗するその場にいる5人の超人の一人テリーマンが左足が使えないことから戦力になれないことを申し出る。だが、その問題に対応する人物としてなんとキン骨マンを呼び寄せ、無事テリーマンの義足の問題は解決する。あらためて5人の超人に時間超人との闘いを要請するが、先にサグラダ・ファミリアへと出向いたジャスティスマンが音信不通となっていること、さらに神であった者同士が戦うことは絶対的禁忌事項であるため自身は闘いに参加できないことを明らかにする。
そして、時間超人の拠点となっている5か所へと続く通路を出現させ、キン肉マン、テリーマン、ウォーズマン、ネプチューンマン、ネメシスを現地へと送り出す。
正統派にして壮絶無比。ただのパンチやキックが超必殺技のような破壊力を持っている。
完璧超人始祖たちの師匠であるだけに、攻撃力・防御力・瞬発力の全てが弟子の始祖たちを上回る圧倒的強さ。
ゴールドマンが得意とするダイヤモンドパワーも元はザ・マンの能力で、より強固に発動させることができる。
他には悪魔将軍の地獄の九所封じを即興で返し、ダブル・スピンアーム・ソルト、ダブル・ニークラッシャー、超人圧搾機をやってのけた。
特殊な能力として、超人パワーを剥奪して人間に変えてしまう「零の悲劇」という超能力を使う。
これは強靭な精神力で抵抗できるようで、魔雲天はこの能力に耐えきって見せた。
基本的には厳格な完璧主義者であり、その点においては過去から一貫して変わっていない。
長い年月の間に変貌していった人物として描かれており、過去の回想シーンと現在の言動は大きく変わってしまった一面もあり、また現在でも昔から変わっていない一面もある。
過去においては厳しくも温かく弟子達を育てあげ、彼に見込まれた10人の超人達は全員それに応えて一人の脱落者も無く完璧超人始祖へと成長した。また、一度は完璧超人たちの黄金時代を築き上げ、地上に平和をもたらしたことは確かである。
しかし、その裏では密かに「完璧にまで育てあげた弟子たちが自分を超えていかないこと」に不満を抱いていた。そのため、完璧なる自分が最上の存在であるなら、その自分によって永遠に管理された世界こそが正しいのではないかと考えるようになっていった。
こうして、当初は「超人達の育成に成功するか、地上の超人達が全滅したら完璧超人始祖も消滅する」という、すなわち「自分たちの時代はいつか終わりが来る」という事を前提にしていたはずだったのに、いつしか「自分たちの管理体制が永遠に続く」ことが目的に変化し、最初に願っていた「超人達の育成に成功して、自分たちは引退・消滅する」というハッピーエンドが永遠に来ない状態を作ってしまった。
なお存在する力はなんとか活用方法を見出してみようという考えがあったようで、
「暴虐を繰り返す太古の超人達の中から善良な者を救出」
「マグネット・パワーが発見された時に研究を許可」
「下等超人が生存していた事が判明した時に抹殺せず間接的指導を試みる」
「後に主立った下等超人を粛清するものの、ガンマンが主張する全員抹殺案は退ける」
「オメガの民の先祖を粛清するものの、地球から逃亡する彼らを皆殺しにせず見逃す」
など、周囲の反対を受けても可能性があるものを伸ばしてみようとし続けていた。
しかし、最終的には火事場のクソ力を危険視して排除に動いている。これに対し悪魔将軍は「ザ・マンだった頃の貴様なら祝福していたことだろう」と変質を指摘している。
この結果、時を経るにつれ「高い理想と強固な意志」という部分が「自説を頑なに曲げず他人の言葉を聞き入れない」という形に変わってしまっている。
実は遙かな昔、ゴールドマンが地上に行く以前に、下等超人の有様には「すでに見切りを付けた」と発言していた。それにも拘わらず彼は超人墓場による超人管理を止める事が無く、数億年間に渡って無駄だと自分で思っている事をやり続けていたのである。
結局、彼はゴールドマン、シルバーマンのように新たな道を模索する事も、かつての神々やガンマンのように下等超人を切り捨てるという決断もできなかった。それは超人達への愛情が残っている証でもあり、自分の方針が間違いだったと認められない頑迷さの現れでもある。
一方では出奔するゴールドマンに対して、自分が間違っているのなら正しに来てほしいと告げており、自身の欠点を理解していた面もある。現代でも「自分で自分の事を完璧だと思えなくなった」と発言したり、「私は何か間違っていたのか?」と弱気な言葉を漏らす一面も時折見せる。それでいて悪魔将軍に対しては険悪な言動に終始しているのは、去って行った弟子に対して「お前にだけは言われたくない」という個人的感情が先に立っていたようである。
また、悪魔将軍との対戦前にはネプチューンマンやネメシスらが必死に自分を守ろうとする姿には心打たれたものの、それに応じる事ができず、人の善意を素直に受け入れる事ができないことが彼の最大の欠点と言える。
このように、一人の人物の中で相反する要素を備え、「類型的な悪役像」ではなく複雑な心情を持つ人物として描かれているのが魅力である。
悪魔将軍ことゴールドマンとは互いに似た者同士であったと語っており、ミラージュマンをはじめ多くの始祖たちもそれを肯定している。超人という種を守るために神から超人になって天上界から去ったザ・マンと、下等超人たちの進化を信じ完璧超人から下等超人になって超人墓場から出て行ったゴールドマンは、行動や思考も瓜二つである。哀しいことに、超人閻魔となった今の彼は「同じ穴の狢」「己の決めた掟の中でしか生きられん」と悪い方に受け取るばかりで、ゴールドマンが自分の美点を受け継いでくれている事には気づいていないようであるが……。
そんな悪魔将軍に対しては、戦いの最中も「自分のもとを去って行った裏切り者」ではなく「弟子」として接する様子が多く見られた。彼らの会話の多くは「悪魔超人軍と完璧超人軍の思想性の違い」を離れ、「弟子が師を乗り越える」という彼らの本来の関係性に終始しており、呼び方もほとんど「ゴールドマン」「ザ・マン」と本来の名で呼び合った。自分が倒されても、「敵が自分を打ち負かした」「自軍が敵軍に敗れた」事を嘆くよりも先に、まず「弟子が師を越えた」事を喜ぶ表情を浮かべている。
また、完璧超人始祖編では語られなかった調和の神の存在が明らかになった事で、上述した内容も意味が変化してきた部分がある。
たとえば「目に余る下等超人を虐殺する」「超人たちが自分を超えて行かないのなら、自分が全てを支配した方がいい」という発想は、それだけなら孤独な独裁者といった趣だが、「(調和の神から見て)目に余る超人を(全滅はしないよう手加減しつつ)虐殺する」「超人たちが自分を超えて行かない(=調和の神が攻めてきたら超人たちだけでは生き残れない)のなら、自分が全てを支配した方がいい(そうすれば調和の神も攻めてくることは無いだろう)」という補足が加わることで、超人という種を守るために彼なりの事情があったためだったと分かってきた。
超人たちを庇護してやりたいという当初の大志、弟子たちに自分を超えて行って欲しいという師としての願望、ゴールドマン・シルバーマンの離脱によって揺らいでしまった「完璧」への自信、常に地上の超人達を滅ぼそうと虎視眈々と狙い続けている調和の神の存在、キン肉マンが現れるまで数億年間成果が見られなかった下等超人育成の実情、それでいて調和の神から目を付けられるほどのイレギュラーが現れる事態……と、複雑な事情が絡み合い、思うに任せぬ日々が長年続いたために、彼をしても精神的な疲弊を招いてしまったのだろう。
それらの事情が解消された六鎗客編では、成長を遂げた超人たちの姿に、ジャスティスマンと満足そうな笑みを交わしている。
……などなど、この人本当に怖いラスボスなのだろうかと疑う面白い行動も散見される。
悪魔将軍との戦いを終えて優しい性格に戻ってからは、ますますその傾向が増している。
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最終更新:2025/02/18(火) 02:00
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