ビブロフィリアの聖地とは、本についての、それぞれの人の想いが集まる場所のことである。
本と言うものが、いつから人とともに有るのかは分からない。文字が作られ、紙が作られ、手書きで、或いは印刷によって、見知らぬ果てまで続く世界が小さな束に記されるようになり、既にかなりの年月が過ぎ去っている。
石板や、粘土板では気軽に持ち歩くことは難しい。どのような知識も、胸躍る英雄たちの活躍も、どこか封じ込めておけないのならいつか儚く四散する。けれど私たちには本があった。そのちいさな文字や絵の列に触れるたび、いつの日か、自分にも新しい世界が描けるだろうと誰でも信じることが出来た。
それでも人間は弱く、いつも、現実とはつらいものである。誰もがその一生の中で、幾度となく挫折を繰り返す。
迷いも、痛みも、絶望も、そして何より大切に思っていたものを失うことさえ、いつか大いなる手に掬い取られるその日まで、人は届かない声を張り叫びながらその心に刻み続けなければならない。
けれどよく見るならば、そんなとき足元に絡みつく塵芥の中にも、何か埋もれていることがある。それは探していたものか、それともとうに忘れていたものかは分からない。ただ分かるのは、ようやく埃を払ったとき、「人の想い」とのみ書かれた書物と再びまみえることが出来るということ。そして
古びた、日に焼け痛んだ一冊が、時には何よりの救いとなる
そう思う、大切な本を持つ人たちの気持ちに偽りが無いこと、それだけである。
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最終更新:2024/12/01(日) 11:00
最終更新:2024/12/01(日) 10:00
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