τ(タウ)とは、円に関する数学定数である。
円周の半径に対する比。ある円の円周が、半径の何倍であるかを表す値である。
広く知られている円周率πは、円の直径に対する比である。
したがって、τ=2π=6.283...である。
一部の数学者が、円周に関する数学定数はτの方が自然であると主張している。
通常、数学で円を議論する際は半径を基本にすることが多く、直径は工学などを除けば円周率を決めるときぐらいしか出てこない。
円周はπを用いて表記すると2πrであるため、円が絡む数学公式には多くの場合係数2が書かれている。
τを用いれば、多くの公式が簡単に(そして主張者によれば「本質的に」)書けるという主張である。
「自然かどうか」「本質的かどうか」は感覚によるもので、数学の議論ではない。
また、πは古代ギリシャ時代から使われている定数であり、今更これを変えようという議論が支持を得ているわけではない。
πの代わりにτを使っても数学の性質が変わるものではないため、使いたいなら(断りを入れた上で)使えばよいし、それでは混乱するような場合は適宜πに置き換えればいいだろう。
角度をラジアン(弧度法)で表記したとき、「1周=τ」と表せるのが最大の利点である。
現在は高校の数学Ⅱで弧度法を学習するが、πが「半周」であることに違和感を覚えた人は多いだろう。
例えば、45°は1/8周なのに、πを使うと1/4πと表記しなければならない。
τを使えば、1/8周は1/8τであり、直感的である。
lを円周、rを半径とすれば
l=τr
l'を扇形の弧の長さ、θを中心角とすれば、
l'=rθ
円周の長さを、係数を用いずに表すことができる。これは定義より明らかである。
扇形の弧の長さの公式はπを用いた場合と変わらないが、中心角が1/6τと表記されていれば「円周の1/6だから円周を6で割ればいいんだな!」と直感的な表記になる。
円の面積をSとすれば
S=(1/2)τr²
扇形の面積をS'とすれば
S'=(1/2)r²θ
扇形の面積については弧の長さと同様の議論なので省略する。
円の面積だけは、係数1/2をかけなければならない。
今のところこれが最もわかりやすいτへの反論であろう。
しかし、円の面積は円周の積分である。
1次式を積分しているのだから係数1/2がかかるのはむしろ自然ではないかという反論もできる。
小学生レベルの反論としては、面積の公式は多くの場合「÷2」があるので、今更1つ増えたぐらいで覚える手間はさほど変わりないといえる。
そもそも、算数の教科書をひもとけば、円の面積を導出する際、途中で「円の面積=半径×円周÷2」という表現が出てくる。これは、アルキメデスが導出した円の面積の公式と同じ表現であり、「なぜ円の面積がこの公式になるのか」を考える上ではこちらの方がより本質的である。
球の表面積をSとすれば、
S=2τr²
体積をVとすれば、
V=(2/3)τr³
πに対するτの優位性は特にないが、τr³は球に外接する円柱の体積なので、アルキメデスが導出した「球の体積は、それに外接する円柱の体積の2/3である」という性質が係数として端的に示される。
sin x, cos xの周期は、τ
tan x の周期は、τ/2
eiτ=1
史上最も美しいといわれるオイラーの等式を、より簡潔に表記することができる。
これもτを導入する利点として挙げられるが、そもそもオイラーの等式は、オイラーの公式eiθ=cosθ+isinθにおいて、偏角θに「キリのよい数」を代入したものであることを思い出そう。
θにπを代入した場合、偏角に「半周」を代入したことになる。
θにτを代入した場合、偏角に「1周」を代入したことになるので、より「キリがよい」。
すなわち、「偏角が1周だから、コサインは1でサインは0だな!」と納得しやすいのである。
hをプランク定数とすれば、ディラック定数ℏは、
ℏ=h/τ
角周波数など、「1周」で割ったりかけたりするものは、係数2を省略できる。
ただし、クーロン力定数のように、2πにさらに係数がかかっている場合、あまり手間は変わらない。
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最終更新:2025/12/11(木) 03:00
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