そうりゅう型潜水艦 単語


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ソウリュウガタセンスイカン

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そうりゅう型潜水艦とは、海上自衛隊が保有する最新の潜水艦である。
広大な日本周辺海域で行動するため、通常動力潜水艦としては世界最大級のサイズを有する大型潜水艦。
計画時は予算年度にちなみ「16SS」型と呼ばれていた。 

概要

そうりゅう

先代のおやしお型潜水艦をベースにした、海上自衛隊で初めての実用AIP潜水艦である。

AIP[1]

AIP(Air Independent Propulsion:大気に依存しない推進)を実現するシステムとしては原子力の他に、燃料電池、スターリング・エンジン、クローズド・サイクル・ディーゼル、MESMA等のシステムが実用化レベルになっている。そうりゅう型ではこのうちのスターリング・エンジンをAIP機関として採用している。(技術研究本部ではAIPシステムとして燃料電池の研究を行っていたのだが、この時は採用を見送っている。)

そうりゅう型には従来のディーゼル発電機に加え、スウェーデンのコックムス社のスターリング発電機(タンクに保存した液体酸素からの酸素とケロシンを燃焼させて発生した熱を利用する)をライセンス生産したものが搭載されている(60kW✕4台)。

従来の通常動力潜水艦では、シュノーケルを海面上に出しディーゼルで発電し、バッテリーに充電した電力の範囲内で潜航を行うが、スターリング・エンジンはシュノーケルが使えない潜航中でも発電が出来るため、そうりゅう型は一旦潜航を開始してから浮上するまでの航続力が飛躍的に伸びている。水中航続力の具体的な数字は公開されていないが、同じくスターリング・エンジンを搭載しているスウェーデンのゴトランド級(水中排水量1599t)ではAIPを使用して速力5ノットで14日間の潜航が可能とされている。もし液体酸素やケロシンを使いきれば、後は通常のディーゼル・エレクトリック潜水艦と同じになる。

スクリューを回す電動機もそうりゅうでは新しく永久磁石交流電動機(5900kw)が採用されている。

AIPシステム自体の発電能力はまだまだ低いため、戦闘時等、水中で高速力が必要な場合はバッテリーに充電した電力と合わせで電動機を駆動することになる。

その他

外見的特長は、前級である「おやしお」型の葉巻型の船体を引き継いでいるが、艦尾がこれまでの十字舵から新たにX舵に変更されている。X舵に変更したことで十字舵よりも手動操作時の舵の扱いが難しくなったが、高い水中運動性を得られるほか、一つの舵が故障しても他の舵を効かせることで艦の操舵が可能になるため、舵損傷に強くなるというメリットがある。

また他にも、それまでの光学式潜望鏡だけではなくカメラとモニタの組み合わせによる非貫通型の潜望鏡や、メンテナンスのほとんど不要な交流モーター推進機など、様々な新機軸を搭載している。

注目されないが戦闘システムそのものが大きく更新されており、光ファイバーで構築された艦内LANに様々な機器やコンピュータがつながる分散型コンピューティング構造となっているため、どこかの機器が壊れても、全体でカバーし合うことで機能を維持するので損傷に強く、また新機能の追加が容易になっている。

武装は潜水艦の基本的武装である魚雷(89式長魚雷)のほかに潜対艦ミサイル、ハープーンblock2を搭載。実はこのハープーンblock2、巡航ミサイルとまではいかないが対地攻撃能力をもつ。つまり「そうりゅう」は既存の護衛艦が持ちえていない地上攻撃能力をもったということになる。なお機雷の敷設も可能。

搭載するZQQ-7ソナーシステムは、前型であるおやしお型潜水艦の搭載ソナーのZQQ-6の発展改良型であり、艦首ソナーアレイだけでなく、船体側面に設置されたフランクアレイソナーや曳航式ソナー、逆探ソナーなど船体各所に設置された複数のソナーをまとめて一つのソナーシステムとする大規模なソナーシステムであり、強力な長距離精密探知能力を持つだけでなく、高度な目標の動きを解析する能力も持っているとされており、探知した6目標の同時追尾・同時攻撃すら可能と言われる。

発展と今後

そうりゅう型は建造途中からいくつかの新装備への変更・追加が行われている。

2番艦「うんりゅう」からはソナーを改良型の「ZQQ-7B」に変更。
7番艦「じんりゅう」からは高速通信が可能な新型通信衛星に対応した「Xバンド衛星通信装置」を搭載。
8番艦「せきりゅう」からは「潜水艦魚雷防御システム」(Torpedo Counter Measures:TCM)を搭載。 
また、そうりゅう型最後となる11番艦ではAIPを廃止しリチウムイオン蓄電池を搭載する。

リチウムイオン蓄電池の搭載は当初5番艦で検討されたと言われているが、高価なため見送られていた。(実際11番艦は船価が100億円ほど増加している)
リチウムイオン蓄電池は高価で可燃性があるなど問題点もいくつか存在するが、従来の鉛蓄電池と比較すると圧倒的なまでの高性能を誇り、充電終期の水素ガス発生がないこともあり高速充電が可能であるばかりでなくメモリ効果による蓄電能力の低下なども低く、蓄電量は従来の鉛蓄電池にくらべて2.5倍。(技術研究本部発表)
さらには維持整備も簡単になるなど、大幅な性能向上となるため期待されている。

そうりゅう型の整備は11隻で終了し、以降は完全新型設計の「28SS」型の建造に移行する予定。
そうりゅう型11番艦へのリチウムイオン電池採用は、28SSに向けた予行練習と言える。 

新型の28SS型とそうりゅう型11番艦では、今までのそうりゅう型が搭載してきたスターリング・エンジンや開発中の燃料電池などのAIP機関は搭載せず、その空間を使って大量のリチウムイオン電池を積むことによりAIP搭載艦と同じレベルの連続潜航能力だけでなく、高出力での運転ができないAIPでは出力不足で不可能な、短時間高速航行や高速巡航が可能となり、既存の通常動力潜水艦を遥かに凌駕する性能が得られるとされる。……猛烈なスピードで発達した蓄電池技術によりAIPが不要とされるとは、一体誰が予想しただろうか。

オーストラリアへの輸出?(コリンズ級後継)

2012年7月、オーストラリア海軍がコリンズ級潜水艦後継として計画している新型通常動力型潜水艦について、日本の「そうりゅう」型に興味を示しており、導入を検討しているという報道がなされた。

しかしオーストラリアではその後政権が交代、新政権のもとで次期潜水艦の導入については入札が行われることになった。フランスがバラクーダ型原潜の小型版、ドイツが216型の新版、日本がそうりゅう型の改造版を提案している。予定では2016年に受注企業を決定する。[2]

艦名について

それまで潜水艦は「~しお」という名称基準があったが、2007年に行われた海上自衛隊の名称基準の改正で、潜水艦に「瑞祥動物(縁起の良い動物)の名」が使用できることになった。これにより今まで使われなかった龍、鳳凰、雉、麒麟などの命名が可能となった。

五行思想の五龍(五竜)に由来する「そうりゅう(蒼龍)」の名前が艦名に使われるのは、海上自衛隊とその前身の大日本帝国海軍において、通算で三代目となる。
(初代は明治時代で御召艦として使われた木造船。二代目は言わずと知れた大日本帝国海軍の空母「蒼龍」)

二番艦「うんりゅう」も大日本帝国海軍の空母「雲龍」から艦名を継いでいる二代目である。[3]

三番艦「はくりゅう」は五行思想の五龍(五竜)の一つである、「白龍」に由来するもので大日本帝国海軍の艦艇名を引き継がない、日本の艦艇名として初登場の艦名である。

四番艦の艦名「けんりゅう」も同様に初登場の艦艇名となった。

瑞祥動物の青龍(=蒼龍)・赤龍・黄龍・白龍・黒龍の五龍(五竜)の内、「蒼龍」と「白龍」、「黒龍」と「赤龍」が使用済みとなったため、五龍の他の瑞祥動物は「黄龍」のみであり、今後命名に利用出来そうな「~りゅう」名前の数はそれ程無さそうだ。

他に命名の可能性がある「~りゅう」は、「瑞龍」、「昇龍」と言った感じのいかにも縁起が良い・幸運そうな名前が想定される…。

同型艦

艦名 艦番号 竣工 所属 艦名(漢字)
そうりゅう SS-501 2009年3月30日 第1潜水隊群第5潜水隊(呉基地) 蒼龍
うんりゅう SS-502 2010年3月25日 同上 雲龍
はくりゅう SS-503 2011年3月14日 同上 白龍
けんりゅう SS-504 2012年3月16日 第1潜水隊群第3潜水隊(呉基地) 剣龍
ずいりゅう SS-505 2013年3月6日 第2潜水隊群第4潜水隊(横須賀基地) 瑞龍
こくりゅう SS-506 2015年3月9日 同上 黒龍
じんりゅう SS-507 仁龍
せきりゅう SS-508 赤龍
25SS(建造中) SS-509
26SS(計画中) SS-510
27SS(計画中) SS-511

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関連項目

  • 軍事関連項目一覧
  • 軍用艦艇の一覧
  • 海上自衛隊
  • 潜水艦
  • スターリングエンジン
  • おやしお型潜水艦

脚注

  1. *世界の艦船2009.11 特集・新型SS「そうりゅう」のすべて
  2. *http://jp.wsj.com/articles/SB10589961604557044643904581362932368447602
  3. *雲竜と言えば、大相撲横綱の土俵入り二つの型の一つが「雲竜型」で知られている。
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