そうりゅう型潜水艦 単語


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ソウリュウガタセンスイカン

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そうりゅう型潜水艦とは、海上自衛隊が保有している潜水艦である。

概要

世界最大のディーゼル潜水艦で、潜航時間を伸ばすことができる非大気依存推進(AIP)機関を海上自衛隊として初めて搭載した。

AIPは10番艦まで搭載され、11番・12番艦はAIPの代わりにリチウムイオン蓄電池を搭載している。

計画通り12番艦まで就役しており、2020年に後継である「たいげい」が進水している。

動力

AIP[1]

AIP(Air Independent Propulsion:大気に依存しない推進)を実現するシステムとしては原子力の他に、燃料電池、スターリング・エンジン、クローズド・サイクル・ディーゼル、MESMA等のシステムが実用化レベルになっている。そうりゅう型ではこのうちのスターリング・エンジンをAIP機関として採用している。(技術研究本部ではAIPシステムとして燃料電池の研究を行っていたのだが、この時は採用を見送っている。)

そうりゅう型には従来のディーゼル発電機に加え、スウェーデンのコックムス社のスターリング発電機(タンクに保存した液体酸素からの酸素とケロシンを燃焼させて発生した熱を利用する)をライセンス生産したものが搭載されている(60kW✕4台)。

従来の通常動力潜水艦では、シュノーケルを海面上に出しディーゼルで発電し、バッテリーに充電した電力の範囲内で潜航を行うが、スターリング・エンジンはシュノーケルが使えない潜航中でも発電が出来るため、そうりゅう型は一旦潜航を開始してから浮上するまでの航続力が飛躍的に伸びている。水中航続力の具体的な数字は公開されていないが、同じくスターリング・エンジンを搭載しているスウェーデンのゴトランド級(水中排水量1599t)ではAIPを使用して速力5ノットで14日間の潜航が可能とされている。もし液体酸素やケロシンを使いきれば、後は通常のディーゼル・エレクトリック潜水艦と同じになる。

スクリューを回す電動機もそうりゅうでは新しく永久磁石交流電動機(5900kw)が採用されている。

AIPシステム自体の発電能力はまだまだ低いため、戦闘時等、水中で高速力が必要な場合はバッテリーに充電した電力と合わせで電動機を駆動することになる。

リチウムイオン電池

防衛省では平成14年度から潜水艦用のリチウムイオン電池の研究を行っていた。平成20年度に建造する潜水艦に搭載を予定していたが、これは予算の問題から先送りになり、平成27年度予算で建造するそうりゅう型11番艦ではスターリングエンジンを無くし、リチウムイオン電池を搭載することが決まっていた。[2]

スターリングエンジンの代わりにGSユアサのリチウムイオン蓄電池を搭載したそうりゅう型11番艦「おうりゅう」は2020年3月に海上自衛隊に引き渡された。12番艦「とうりゅう」も2019年11月に進水しており、2021年3月に海上自衛隊に引き渡された。

その他

外見的特長は、前級である「おやしお」型の葉巻型の船体を引き継いでいるが、艦尾がこれまでの十字舵から新たにX舵に変更されている。X舵に変更したことで十字舵よりも手動操作時の舵の扱いが難しくなったが、高い水中運動性を得られるほか、一つの舵が故障しても他の舵を効かせることで艦の操舵が可能になるため、舵損傷に強くなるというメリットがある。

また他にも、それまでの光学式潜望鏡だけではなくカメラとモニタの組み合わせによる非貫通型の潜望鏡や、メンテナンスのほとんど不要な交流モーター推進機など、様々な新機軸を搭載している。

注目されないが戦闘システムそのものが大きく更新されており、光ファイバーで構築された艦内LANに様々な機器やコンピュータがつながる分散型コンピューティング構造となっているため、どこかの機器が壊れても、全体でカバーし合うことで機能を維持するので損傷に強く、また新機能の追加が容易になっている。

武装は潜水艦の基本的武装である魚雷(89式長魚雷)のほかに潜対艦ミサイル、ハープーンblock2を搭載。実はこのハープーンblock2、巡航ミサイルとまではいかないが対地攻撃能力をもつ。つまり「そうりゅう」は既存の護衛艦が持ちえていない地上攻撃能力をもったということになる。なお機雷の敷設も可能。

搭載するZQQ-7ソナーシステムは、前型であるおやしお型潜水艦の搭載ソナーのZQQ-6の発展改良型であり、艦首ソナーアレイだけでなく、船体側面に設置されたフランクアレイソナーや曳航式ソナー、逆探ソナーなど船体各所に設置された複数のソナーをまとめて一つのソナーシステムとする大規模なソナーシステムであり、強力な長距離精密探知能力を持つだけでなく、高度な目標の動きを解析する能力も持っているとされており、探知した6目標の同時追尾・同時攻撃すら可能と言われる。

新装備

そうりゅう型は建造途中からいくつかの新装備への変更・追加が行われている。

2番艦「うんりゅう」からはソナーを改良型の「ZQQ-7B」に変更。
7番艦「じんりゅう」からは高速通信が可能な新型通信衛星に対応した「Xバンド衛星通信装置」を搭載。
8番艦「せきりゅう」からは「潜水艦魚雷防御システム」(Torpedo Counter Measures:TCM)を搭載。

オーストラリアへの輸出?(コリンズ級後継)

オーストラリアでは6隻保有している潜水艦を2030年代に世代交代させ、最大12隻まで増強する計画を立てており、当初は日本と共同開発を行い、代替艦を日本国内で製造することを検討していた。しかしオーストラリアではその後政権が交代、2015年2月にフランス、ドイツ、日本の3国の提案を比較する入札に変更、2016年4月にフランス案(5000tの原子力潜水艦「バラクーダ」の動力をディーゼルに変更)、ドイツ案(2000t級の「214型」を大型化)、日本案(そうりゅう型ベース)の中からフランス案を採用することがターンブル首相より発表された。[3]

艦名について

それまで潜水艦は「~しお」という名称基準があったが、2007年に行われた海上自衛隊の名称基準の改正で、潜水艦に「瑞祥動物(縁起の良い動物)の名」が使用できることになった。これにより今まで使われなかった龍、鳳凰、雉、麒麟などの命名が可能となった。

五行思想の五龍(五竜)に由来する「そうりゅう(蒼龍)」の名前が艦名に使われるのは、海上自衛隊とその前身の大日本帝国海軍において、通算で三代目となる。(初代は明治時代で御召艦として使われた木造船。二代目は言わずと知れた大日本帝国海軍の空母「蒼龍」)

二番艦「うんりゅう」も大日本帝国海軍の空母「雲龍」から艦名を継いでいる二代目である。[4]

三番艦「はくりゅう」は五行思想の五龍(五竜)の一つである、「白龍」に由来するもので大日本帝国海軍の艦艇名を引き継がない、日本の艦艇名として初登場の艦名である。

四番艦の艦名「けんりゅう」も同様に初登場の艦艇名となった。

瑞祥動物の青龍(=蒼龍)・赤龍・黄龍・白龍・黒龍の五龍(五竜)の内、「蒼龍」と「白龍」、「黒龍」と「赤龍」が使用済みとなったため、五龍の他の瑞祥動物は「黄龍」のみであり、今後命名に利用出来そうな「~りゅう」名前の数はそれ程無さそうだ。

他に命名の可能性がある「~りゅう」は、「瑞龍」、「翔龍」と言った感じのいかにも縁起が良い・幸運そうな名前が採用されたが、12番艦「とうりゅう」は兵庫県加東市の名勝「闘竜灘(とうりゅうなだ)」が由来となっている。

同型艦

艦名 艦番号 竣工 所属 艦名(漢字)
そうりゅう SS-501 2009年3月30日 第1潜水隊群第5潜水隊(呉基地) 蒼龍
うんりゅう SS-502 2010年3月25日 同上 雲龍
はくりゅう SS-503 2011年3月14日 同上 白龍
けんりゅう SS-504 2012年3月16日 第1潜水隊群第3潜水隊(呉基地) 剣龍
ずいりゅう SS-505 2013年3月6日 第2潜水隊群第4潜水隊(横須賀基地) 瑞龍
こくりゅう SS-506 2015年3月9日 第2潜水隊群第6潜水隊(横須賀基地) 黒龍
じんりゅう SS-507 2016年3月7日 第1潜水隊群第1潜水隊(呉基地) 仁龍
せきりゅう SS-508 2017年3月13日 第1潜水隊群第5潜水隊(呉基地) 赤龍
せいりゅう SS-509 2018年3月12日 第2潜水隊群第6潜水隊(横須賀基地) 清龍
しょうりゅう SS-510 2019年3月18日 第1潜水隊群第1潜水隊(呉基地) 翔龍
おうりゅう SS-511 2020年3月5日 第1潜水隊群第3潜水隊(呉基地) 凰龍
とうりゅう SS-512 2021年3月24日 第2潜水隊群第6潜水隊(横須賀基地) 闘竜

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関連項目

  • 軍事関連項目一覧
  • 軍用艦艇の一覧
  • 海上自衛隊
  • 潜水艦
  • スターリングエンジン
  • おやしお型潜水艦

脚注

  1. *「特集・新型SS「そうりゅう」のすべて」世界の艦船2009年11月号
  2. *潜水艦とスマホの悩ましい共通点 静かにしたい潜水艦は増える電力消費にどう対処?2018.3.24
  3. *豪潜水艦の共同開発相手は仏に軍配、日本敗れる 2016.4.26
  4. *雲龍と言えば、大相撲横綱の土俵入り二つの型の一つが「雲龍型」で知られている。
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