エレクトロキューショニスト 単語


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エレクトロキューショニスト

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エレクトロキューショニスト(Electrocutionist)は、2001年生まれの元競走馬。

桁外れの柔軟性を武器に様々な条件で活躍を見せ、また日本馬の前に幾度も立ち塞がったことで日本でも名を轟かせたが、将来を嘱望された矢先に心臓麻痺で早世した悲劇の名馬である。
馬名は「電気椅子による死刑の執行人」の意。

概要

血統

父Red Ransom(レッドランサム)、母Elbaaha(エルバーハ)、母父Arazi(*アラジ)という血統のアメリカ産馬。

父レッドランサムは故障のため重賞には出走すら無いまま3戦2勝で引退したが、デビュー戦でコースレコードを出していたことからスピード能力を見込まれて種牡馬入りすると初年度産駒からいきなりGI馬を出して1994年の新種牡馬ランキング1位となったという経歴を持つ馬。1998年にクイーンアンステークス(英GII)を圧勝し、同年のジャック・ル・マロワ賞に遠征したタイキシャトルの最大の強敵になりうると言われた名マイラー・インティカブなどがこの時点での代表産駒で、エレクトロキューショニストは10世代目に当たる。

母エルバーハは現役時代11戦1勝で、エレクトロキューショニスト以外の産駒に目立った馬はいない。ただしその姉ダンスオンザステージは独ダービー馬を輩出しており、また伯父にはアスコットゴールドカップ(英GI・20F≒4000m)連覇、ロワイヤルオーク賞(仏GI・3100m)勝利など長距離のGIで大活躍したアルドロスがいるのでそこまで悪い牝系というわけではない。

母父*アラジはデビュー戦2着の後7連勝でブリーダーズカップ・ジュヴェナイル(GI)を制し、2歳にして欧州年度代表馬に選ばれるという快挙を達成した名馬だが、種牡馬としては失敗とはいかないまでも大成功とまでは言えない程度の成績だった。

3歳時

イタリアのヴァルフレッド・ヴァリアーニ調教師に預けられたエレクトロキューショニストのデビューは3歳の4月にサンシーロ競馬場で行われた1800m戦だった。ここでは15頭立ての7番人気とお世辞にも「遅れてきた大物」的な評価を受けていたとは言えなかったが、蓋を開けると2着に6馬身差をつけ圧勝。これを皮切りに2戦目を2馬身半差、3戦目は6馬身差で圧勝して3連勝を飾った。

4戦目は重賞・GI競走ともに初出走となるジョッキークラブ大賞(2400m)となったが、この時点では破った相手の実績が3戦目の2着馬ディスタントウェイの伊ダービー4着くらいしかない状態だったエレクトロキューショニストはまだほとんど評価されておらず、独ダービー馬シロッコをはじめとした重賞馬が上位人気を占める中で9頭立ての6番人気にとどまった。

しかしレースでは中団後方からよく追い込んで、最後はシロッコと200mほどにわたる叩き合いを演じ、最後はハナ差後れて2着に敗れたものの、3着馬を5馬身突き放すという好内容の競馬を見せた。シロッコは翌年にブリーダーズカップ・ターフ(GI)を勝つ馬なので、GI初出走にしては上々のレースだったと言っていいだろう。

4歳時

年明け初戦となる5月のカルロダレッシオ賞(GII)では単勝1.04倍という支持を受け、その人気に応えて6馬身差で圧勝。前年の勝ち馬セネックス、前走のイタリア共和国大統領賞で2着だったヴォルデニュイらを抑えて単勝1.22倍の圧倒的人気に支持されたミラノ大賞(GI・2400m)では果敢にハナを切り、800mの長い直線で繰り広げられたヴォルデニュイとの叩き合いでは内ラチに接触する場面もあったが、何とか盛り返してヴォルデニュイに3/4馬身差をつけGI初制覇を達成した。

この後、エレクトロキューショニストはイギリスに遠征し、8月に行われるインターナショナルS(GI)に参戦。対戦相手にはプリンスオブウェールズS2着などGIで善戦を続けていたエース、前年のキングジョージVI世&クイーンエリザベスダイヤモンドS(GI、以下「キングジョージ」)の勝ち馬ドワイエン、そして日本から遠征してきた武豊騎手騎乗の年度代表馬ゼンノロブロイなどがいた。

マイケル・キネーン騎手に乗り替わったエレクトロキューショニストはエース、ゼンノロブロイに次いで3番人気に支持され、レースでは最後方を追走。そのまま最後の直線に入ると、外へ持ち出したゼンノロブロイの更に外から豪快に追い込み、5頭横一線の争いから2着ゼンノロブロイをクビ差差し切って優勝した。

更に、今度はカナダに飛んでカナディアンインターナショナルS(GI)に出走。コロネーションカップ(GI)を勝ち、翌年から4年連続でカルティエ賞最優秀ステイヤーを受賞することとなるイェーツ、ソードダンサーS(GI)の勝ち馬キングズドラマ、前年の愛ダービー馬グレイスワローらを抑えてここでも1番人気となった。しかし降雨に祟られて馬場が悪化していた上、直線で並走していたグレイスワローの騎手が入れたムチがぶつかるというアクシデントにも見舞われ、勝ったリラックスドジェスチャーから5馬身以上も離れた4位入線(グレイスワローの降着により3着に繰り上がり)という結果に終わった。

このレース後、エレクトロキューショニストはゴドルフィンにトレードされ、ゴドルフィンの専属調教師であるサイード・ビン・スルール師(UAE)の管理馬となった。

5歳時

新たにランフランコ・デットーリ騎手を主戦に迎えたエレクトロキューショニストは、ドバイワールドカップを目指して、その前哨戦となるアル・マクトゥームチャレンジラウンド3(当時GII・ダート2000m)に出走。初ダートながら鋭い切れ味を見せ、2着となった前年の勝ち馬チキティンに7馬身差をつけて圧勝した。

本番となるドバイワールドカップ(GI・ダート2000m)では、チキティンやインターナショナルSで3着に破ったマラーヘルといった対戦済みのメンバーに加え、3連勝でドンハンデキャップ(GI)をレコード勝ちして勢いに乗る米国馬ブラスハットが参戦。更に日本からもジャパンダートダービー・ダービーグランプリ・ジャパンカップダート・フェブラリーステークスとダート路線を総ナメにしていたカネヒキリと3年前の東京大賞典を勝った古豪スターキングマンが出走し、これらを含めた11頭立てとなった。レースでは中団の好位から追走し、直線を向くと外へ持ち出して前を猛追。先頭に立っていたブラスハットを残り50m辺りで豪快に差し切り、1馬身半差をつけて優勝した[1]

次走はイギリスのプリンスオブウェールズS(GI)となった。ここでは前年の英チャンピオンS(GI)を勝ち、ドバイデューティーフリー(GI)を3連勝で制した*デビッドジュニア、英愛オークスなどGI4勝の名牝ウィジャボード、インターナショナルSの後にBCターフでシロッコの2着に入ったエースなどがいてかなりハイレベルな戦いとなり、エレクトロキューショニストはスタートから逃げてそのまま押し切ろうとしたが、後方から飛んできたウィジャボードに半馬身差し切られて2着に終わった。

続けてキングジョージに参戦。ここでは前年の凱旋門賞馬・欧州年度代表馬のハリケーンランと、ドバイシーマクラシックを4馬身差で圧勝してきた日本馬ハーツクライがいて、日本馬とはこれで3回目の対戦となった。単勝オッズはハリケーンランが1.83倍で1番人気、ハーツクライが4倍で2番人気、本馬が5倍で3番人気に推され、ドバイワールドカップ以来の対戦となるマラーヘルが4番人気ながら15倍と、ハリケーンラン・ハーツクライ・エレクトロキューショニストの3強対決と見られていた。

レースが始まるとエレクトロキューショニスト陣営が用意したペースメーカーのチェリーミックスが好スタートからそのまま逃げ、ハリケーンラン、ハーツクライ、エレクトロキューショニストの順で続いた。しばらくその隊列だったがデットーリ騎手はじわじわと位置を上げていき、最終コーナーではハーツクライとハリケーンランを交わしながら2番手に上がって、直線でこの2頭との叩き合いに持ち込んだ。最初はハリケーンランが一歩後れていたものの、エレクトロキューショニストとハーツクライが熾烈に叩き合っている間にハリケーンランも並んできて、3頭での叩き合いとなった。そして最後はハリケーンランが僅かに先んじてゴールを通過し、エレクトロキューショニストは一旦完全に先頭に立っていたハーツクライこそ差し返したものの、半馬身差で惜しくも2着に敗れた。

そしてエレクトロキューショニストは10月の英チャンピオンSを目標として調整に入ったが、キングジョージの激戦からおよそ1ヶ月後の9月9日、大きな悲報が競馬界を駆け巡った。

エレクトロキューショニスト、心臓発作により急死

5日前に心臓に異常が見つかったエレクトロキューショニストは検査のため入院していたのだが、治療も叶わずこの日の未明に亡くなってしまったのだ。

逃げてよし、差してよし、芝でもダートでも関係なしという柔軟さを武器に活躍した優駿の死を、デットーリ騎手やサイード師、そして競馬メディアは「勇敢な馬だった」「いつも戦いを楽しんでいた」「どのような条件でもチャンピオンだった」と異口同音に悼んだ。

5歳を迎えてなお翳らぬ強さを発揮し続けたエレクトロキューショニスト。その活躍はどこまで伸びていたのか、そして種牡馬としてどんな産駒を輩出していたのか。そんな想像に対する答えは、永遠に出ることはない。

血統表

Red Ransom
1987 鹿毛
Roberto
1969 鹿毛
Hail to Reason Turn-to
Nothirdchance
Bramalea Nashua
Rarelea
*アラビアII
Arabia
1977 鹿毛
Damascus Sword Dancer
Kerala
Christmas Wind Nearctic
Bally Free
Elbaaha
1994 栗毛
FNo.23
*アラジ
Arazi
1989 栗毛
Blushing Groom Red God
Runaway Bride
*ダンスールファビュルー Northern Dancer
Fabuleux Jane
Gesedeh
1983 栗毛
Ela-Mana-Mou *ピットカーン
Rose Bertin
Le Melody Levmoss
Arctic Melody

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関連項目

  • 競馬
  • 競走馬の一覧
  • ゼンノロブロイ
  • カネヒキリ
  • ハーツクライ

脚注

  1. *ブラスハットはこの後薬物が検出されて失格となった。このため2着にはブラスハットの3馬身後ろで入線したウィルコが繰り上がり、5位入線のカネヒキリ、7位入線のスターキングマンの順位も一つずつ繰り上がった。

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