テイルズオブゼスティリア炎上騒動

テイルズオブゼスティリア炎上騒動とは、2015年1月22日に発売されたRPG『テイルズオブゼスティリア』の内容と事前の宣伝方法に著しい乖離が見えた事を発端とした炎上事件である。

発端

事の発端は、プレイアブルキャラクターであるアリーシャ・ディフダが、物語の序盤でパーティを離脱してしまうというプレイヤーの一報から始まった。

ここで注釈しておくと、テイルズオブシリーズにおいて、アリーシャと同様ストーリー途中でパーティを離脱してしまうキャラは古くはPS版『テイルズオブデスティニー』から存在しており、毎作ではないものの最近でも『テイルズオブヴェスペリア』や『テイルズオブグレイセス』でも同様に物語の都合上、途中離脱するキャラクターがいる。

にも関わらず今回ここまで大きな騒動に発展してしまったかと言うと、事前の各媒体でのタイアップの仕方と実際のゲーム内での活躍に大きな乖離が見られるからである。

前述した近作のスポット参戦キャラである『ヴェスペリア』のフレン、『グレイセス』のリチャードは、早い段階（プロフィール公開やPV）から主人公と確執がある事や物語全体の中核に位置する存在である事が視聴者側に汲み取れるようになっており、特に問題視はされていなかった。

が、『ゼスティリア』のアリーシャについては

• 各媒体で主人公であるスレイと並んだピンナップが何枚も書き下ろされるといったいわゆるヒロイン待遇を受けている。
• 主人公のスレイよりも早い段階で1/8フィギュア化が決定している。
• PVでもテロップで「導師スレイを支える騎士・アリーシャ」など、主役クラスの存在である事が前面に押し出されている。
• 予約特典のラバーストラップ、歴代秘奥義DLCにも選抜されている。
• PVのキャスト欄にアリーシャ役・茅野愛衣の名前がスレイ役・木村良平に次ぐ2番目に位置している。

と、タイアップ面だけで見れば『ゼスティリア』に興味のない人でもアリーシャがその作品においてどれだけ重要なポジションに位置するかわかるほどの好待遇を受けている。

にも関わらず、アリーシャは物語の序盤、疫病に冒された街・マーリンドでの一件を解決した直後にパーティを離脱してしまう。

離脱する理由については後述するが、その後は当分の間主人公一行に関わることがなく、再会するまでは一切の描写がない。

しばらく経った後、ストーリー中盤で少し顔見せがあるが、ここでは軽い挨拶をしてお別れとなる。一部キャラに関しては本編中で直接顔を合わせるのがこのシーンのみとなる。

その後は一部イベントにちらほら登場するものの、大抵ひどい目に遭う。そして一部始終を見ていた主人公たちからはあろうことか放置される。

そういったイベントを経て、最終決戦も間近となったストーリー終盤でようやくの再加入を果たす。そして直後のボスを倒すと、以降二度とプレイアブルとして復帰する事はない。

シリーズ恒例の決戦前夜イベントにおいても、同じ町にいるにもかかわらず主人公一行は挨拶すらなしで旅立っていく。

以降は世界的にこそ重要な立場の人間となるが、同時に主人公一行の目的とは一切関わりのない立ち位置となり、その後祖国のために奮闘するアリーシャの姿はEDムービーとサブイベントで少しだけ見ることができる。

…なお、そういったイベントでも主人公たちとの会話などは一切ない。見守って終了である。

蓋を開けてみれば、ヒロインどころか使えるだけでもマシな名有りの重要NPCという、あんまりにもあんまりな扱いであった。

早期離脱とミスリードによる弊害

ここまでなら単なるヒロイン詐欺で済むのだが、それによりゲームの内外においていくつかの弊害や齟齬が生じている。以下参照。

• 予約特典である特別な秘奥義3点にアリーシャのものもあるが、秘奥義発動の操作が解禁されるのはアリーシャ離脱の後であり、実質的には終盤のイベント参戦でのみ使用可能となる。しかし参戦中に行ける範囲は最序盤のフィールドのみであり、終盤相当のレベルでは発動する前に戦闘が終わってしまう。よって発動できるチャンスは離脱直前のボス戦ぐらいしかない。予約特典のはずが隠し技レベルの発動難易度と化している。
• ゲーム内のにおいて、序盤に離脱した後のショップや一部宝箱でもアリーシャの専用装備が入手できる。終盤での加入時はほぼ最強装備に自動更新されているため装備としての使い道はない。
• アリーシャ用の有料ダウンロードコンテンツ（主に衣装）を使えるタイミングが非常に限られている。衣装類は後に入れ替わりで加入するキャラ・ロゼと共通で着用可能なのだが、発売当初にそういった表記は一切なく、アリーシャ専用コンテンツとして扱われていた。（現在は修正されているが、これについて公式からの告知はない模様。ソース求む）
• 前述の通りアリーシャは物語のヒロインではないが、各種関連商品において「ヒロインである」と明記されている物が散見された。

  ヒロイン表記があったもの	備考
  テイルズオブアスタリア	アリーシャのカードにおけるキャラ概要の説明文において 「ゼスティリアのヒロイン」表記。現在は誤表記として修正されている。
  アルター製フィギュア	アリーシャとスレイのフィギュアにおいて、 商品説明でアリーシャがヒロインであるとの表記。 現在は修正されている。
  以下情報求む

上記修正に関して、基本的に公式からの告知が一切ないことも騒動に拍車をかけている模様。

不可思議な離脱理由

「マーリンドの事を報告しにハイランドへ戻らなければならない」というのが離脱イベントでアリ－シャが語るパーティ離脱の理由なのだが、プレイヤー側はそれが建前である事がわかるようなイベントがいくつか点在する。

それが「従士契約が導師に与える影響」である。

この物語には天族（神様、あるいは幽霊に近い）という存在がおり、普通の人間には感じることが出来ない彼らを知覚し、契約を結ぶことで強大な力を得たのが導師である。天族を感じる力は作中で霊応力(れいのうりょく)と呼ばれる。

そして従士は、導師と契約を結ぶことで自身の霊応力を高め、導師の補佐役となる者のことである。

物語の最序盤、スレイが導師となった後でアリーシャと面会した際、当初天族が見えなかったアリーシャが同行を申し出る。その際にスレイと契約した天族であるライラから勧められたのが従士契約である。

アリーシャは特殊な境遇で育ったスレイほどではないにせよ高い霊応力があり、スレイとの関係も良好。従士としてうってつけの人材であったため、二人はほぼ即決で従士契約を結ぶことになる。

…のだが、その後に契約の代償としてスレイの視力が徐々に失われる、不意に意識を失うなどの多大な問題が発生。

そのせいでスレイが敵から不覚を取ったこともあり、アリーシャは立場もあって一行からの離脱を余儀なくされる…というのが、序盤ストーリーでアリーシャが離脱するまでの流れである。

…鋭い人はここで感づくと思われるが、導師を補佐するシステムのはずがなぜか逆に多大な負担をかけるという従士契約の致命的な欠陥がこの時点で垣間見えてしまうのである。

一応契約直前にライラからスレイへの説明はあったようだが、同時にアリーシャの優れた才能に関する言及もある。

また、後述するロゼの存在から従士自身の霊応力が高ければ問題はないようなのだが、そのロゼの才能は導師に匹敵するほどのものとされている。

つまり導師級の力がなければ従士は導師に負担をかけることになるが、力があるならあるでもう導師二人になればいいんじゃね?となり、従士契約の存在意義すら危うくなっている。

にも関わらず、アリーシャ離脱後に「従士契約の影響」についてのイベントがほぼない（中盤での再開時に触れられるが、ロゼとの契約では問題がないためサラッと流される）ため、プレイヤーからは「この設定自体がアリーシャ離脱のために急遽用意された後付設定ではないか」とも言われている。

炎上の最大の理由、穢れなき暗殺者・ロゼ

今作の炎上騒動の火種ともいえる存在がもう1人のプレイアブルキャラクターであるロゼである。

というのも、彼女は一次創作者が生み出したメアリー・スーとでも言うべき数々の設定が盛り込まれているのである。

• 従士でありながら導師にしか使えないはずの『神衣』を発現する極めて高い霊応力
• 商人ギルドは仮の姿、その実態は暗殺集団「風の骨」
• 若くして暗殺者ギルドの頭領を務め、実力は折り紙付き
• 民に影響を及ぼすような悪なら要人でも王でも導師でも殺すというポリシーを掲げている
• 暗殺者という血に塗れた職業にも関わらず穢れ（≒憎しみ、怒り、罪の意識など負の感情…らしい）を生み出さない

など。

彼女は中盤での加入以降ほぼ常時パーティに存在しており、物語の最後まで主人公一行の力となる。

暗殺の是非については一切触れられることもないままで。（一応スキットは存在するが、不自然なほどあっさりと受け入れられる）

また穢れの設定において考察の障害となるのもこのキャラであり、基本的に悩んだり憎んだりするといった負の感情が根源とされる穢れを暗殺という血生臭い仕事にもかかわらず一切発していない…つまり、悩みも苦しみも罪悪感を感じることもなく人を殺せるという、明らかに異質な存在なのである。控えめに言って敵キャラ。

ユーザーの中ではそういった価値観に馴染めず、また特に言及もなく「穢れを生まないからすごい」の一言で受け容れる主人公一行を疑問視する声も大きい。

そういった疑問が積もっていく一方でアリーシャは話の本筋にも名前を見せなくなり、スキットなどでは「（意訳的に）才能がないから別れた」といった貶める発言も目立ち、最終的にアリーシャはスポット参戦のまま終わる事が発覚した段階でニコニコ大百科、amazonレビュー、公式コミュニティなどが次々に炎上しはじめる。

発売日からおよそ3日、2015/1/25の事だった。

再炎上・追加DLCエピソード配信

それから3日後の1/28、発売から6日という異例の速度でアリーシャを主人公とした追加DLCエピソードの配信が発表され、明らかな本編切り売り商法もさる事ながら1300円というとんでもない値段が告知されるや否や「今回は残念な作品だった。次回作に期待しよう」と前向きな気持ちでいた購入者の怒りに火をつけ、twitterなども巻き込んで再炎上する。

同時期、ニコニコ大百科の馬場英雄のページにプレミアム規制がかかり、公式コミュニティやamazonレビュー、ゼスティリア関連の動画で火消しが行われ始める。

これを受けてか、急遽公式はDLCを期間限定で無料配信する事を発表。なおこの公式サイトでの発表には当初、「PalyStation® Store」というミススペルがあった。

再々炎上・未完の追加DLC

追加DLCエピソード配信日、そのあまりの内容のひどさに各所が再び沸き立ちだす。

• 総プレイ時間約1時間半
• アリーシャに対してひどい仕打ちを繰り返すロゼにプレイヤーのヘイトが溜まる
• エドナがアリーシャに「お前なんて仲間じゃない」とマジもんの毒を吐き、エドナファンがブチギレる
• ロゼが導師に、アリーシャが従士になる
• その際、アリーシャに従士としてスレイがつけた真名「笑顔のアリーシャ」を『そぞろ涙目のアリーシャ』へ変更する。そぞろとは「これと言った理由もなしに」「心が落ち着かない様」などと言った意味があり、見下しているとしか思えない
• 異常に長く、内装に代わり映えもない延々と歩くだけのダンジョン
• 「to be continued...」と続編を匂わす終わり方

・・・何なのだ、これは!どうすればいいのだ?!

留意点

上述の通り、本編や発売後のDLCシナリオに批判が殺到しているが、批判の対象であるロゼの声優である　小松氏やイラストレーターの藤島氏、更に純粋にこのゲームを楽しんでいるプレイヤー層には何の落ち度も無く、叩いていい理由にはならないので、くれぐれも注意する必要がある。

テイルズを知らない人やゼスティリアを楽しめたユーザーにはなぜ今作がここまで炎上しているのか驚くであろうが、今作がテイルズシリーズの記念すべき20周年作品であったこと、それにともない公式側も事前に本作のアニメを公開する等宣伝にも特別力を入れていた事、公式が本作を原点回帰と謳っていたので多くのユーザーが清々しい王道ストーリーを期待していたにも関わらず、実際は破綻したストーリーと特定キャラの異常な持ち上げ、戦闘面でも劣悪なカメラワークを強いられる等シリーズ最高傑作にはほど遠いもので、楽しみにしていたユーザー程悲しみを背負うことになってしまった。

更に発売後も以前までは「ヒロイン」としてプッシュされていたアリーシャを各情報媒体から「ヒロイン」の文字を削除させたり、発売6日後という尋常ではないスパンでDLCシナリオを発表し、本来なら真っ先に釈明しなければならない筈の開発側が急遽ニコ生を中止する等、その後の対応・火消し活動にも今作が炎上している大きな原因であることを理解していただきたい。

テイルズオブゼスティリアの大百科の記事とイラストの凝りようを見れば分かる通り、本当にみんな楽しみにしていたのだ。

　

関連項目

• テイルズオブゼスティリア
• 真の仲間