フェアリーファンタジア菅野智之とは (フェアリーファンタジアスガノトモユキとは) [単語記事]

フェアリーファンタジア菅野智之とは、読売ジャイアンツに所属する菅野智之投手につけられた別称である。本稿ではこの名称が誕生した経緯について説明する。

概要

twitterで発覚

2014年6月29日、「sugatomo18」というtwitterユーザー（当初は非公開）が読売ジャイアンツ所属の小山雄輝や今村信貴と焼肉を食べに行くと呟いた。菅野のものではないかと噂されるなか、翌30日にこのアカウントが公開されると、「お気に入り」に登録されたツイートの中から「【2chまとめ】出会い系でセクロスできるのか検証してみる」というリンクや楪望（女性アナウンサー）のブログ記事が見つかり、瞬く間にネットで話題になった。

このアカウントは登録されてから2年半以上放置されていたもので、最初は菅野を名乗る偽者の釣りだと疑われた。しかし、小山が菅野・今村と29日夜に焼肉を食べている写真をtwitterに掲載したことや、澤村拓一が「智之がtwitter始めました」と紹介したことで菅野本人のアカウントと確定。菅野のお気に入りツイートが白日の下に晒される事態になった（現在は問題となったツイートのすべてがお気に入りから削除されている）。

読売ジャイアンツのエースと目される菅野が演じた失態に、野球ファンをはじめ多くのネットユーザーが注目。特に関心を集めたのは、お気に入りの中に『フェアリーファンタジア』というゲームのリンクが含まれていたことだった。

フェアリーファンタジアとは

『フェアリーファンタジア（Fairy Fantasia）』はDMM.comが運営するオンラインゲームである。PC/スマホの両対応で遊べるカードバトルRPGで、2012年12月28日からサービス開始。キャッチコピーは「業界初!イカせアニメ搭載」。

悪の生命体「イヴ」が封印から解き放たれた！
君は伝説の戦士となり奪われた地を奪還し妖精の国を救うのだ！
妖精と契り（SEX）を交わす事で仲間を増やし、敵に支配された妖精はイカして正気に戻せ！
ソーシャルゲーム初イカせアニメバトルシステム「タップi」を搭載。
臨場感あふれる超エロカードバトルゲームここに誕生！　　　　　　　　　　（公式HPの紹介文から引用）

もはや説明するまでもないが、これは成人向のアダルトゲームである。スマホのタップ機能（PCの場合はクリック）に対応したゲームシステムが特徴で、画面に映る女の子をタップして反応させ、ゲージを溜めて絶頂させるHなプレイ（アニメーション付き・フルボイス仕様）を堪能出来る。プレイヤーはかつて「イヴ」と対峙した「アダム」の血族として、女の子の姿をした妖精と契りを交わして仲間にし、イヴに操られた妖精たちを解放していくのがゲームの基本的な流れとなる。アイテムを入手するためには課金が必要だが、無料でも遊べる余地が多い仕様になっている。

とまぁ、ゲームの説明はさておき、

「スマホで遊べるタップ機能付きのアダルトゲームを、菅野がtwitterでお気に入りにしていた。」

という話題はネットで大きな盛り上がりを見せた。この騒ぎは菅野のアカウントに伝えられ、お気に入りのツイートは速やかに削除されたが、この失態と『フェアリーファンタジア』という単語は野球ファンの間で広く認知されていった。

発覚後、突然の成績不振・登録抹消

菅野はプロ一年目の2013年にチームトップタイの13勝をマークし、続く2014年も新人ながら開幕投手としてスタート。6月終了時点で14試合に登板し8勝3敗、防御率1.71の好成績を残していた。シーズン序盤から中5日の厳しい登板間隔を強いられるも、抜群の安定感でリーグ年間最多勝や最優秀防御率のタイトルを狙える位置にいた。

しかし、発覚直後の2014年 7月は4試合に登板し1勝2敗、防御率6.12と不振にあえぎ、中でも25日の中日戦では自己ワーストの8失点を記録。騒動の直後に思いがけない不調に陥ったことがネット上で盛んにネタにされ、「フェアリーファンタジア菅野智之」の呼称が徐々に定着していった。

フェアリーファンタジア発覚前　14試合　105回　8勝3敗　防御率1.71

フェアリーファンタジア発覚後　　*4試合　*25回　1勝2敗　防御率6.12

実はこのとき、菅野は右手中指の腱に炎症を起こしており（7月16日のヤクルト戦でゴロを打った際に負傷）、8月4日に病院で診断を受けそのまま選手登録を抹消されてしまう。それまでチームを牽引してきた大黒柱の離脱が悔やまれる一方、ネット上では「アダルトゲーム疑惑で注目されているさなかにあろうことか指を痛めた」ことがネタとして捉えられ、「菅野がアダルトゲームにハマり、タップをやりすぎて怪我をした」などと誇張も交えながら面白がられていった。

スガーヌォーグの出現

さらに、この騒動は思わぬところから新展開を迎える。2014年8月1日から開催されていた『フェアリーファンタジア』の公式ゲームイベントにて「スガーヌォーグ」という名前の妖精が新たに出現することが発覚。菅野を暗に示唆しているとしか思えないネーミングが大きな反響を呼んだ（実際に運営が菅野を意識したかは不明である。ネット上ではこの名前の由来が考察され様々な意見が交わされたが、「読売ジャイアンツ所属の菅野智之」を意味する「菅野G」から「SUGANOG」→「スガーヌォーグ」になったという説が最も支持されている）。また、スガーヌォーグが出現する8月9日は奇しくも「野球の日」であり、「どう考えても運営の悪意ある便乗だ」とネットユーザーの間で大ウケした。

ちなみに、スガーヌォーグはピンクの髪にリボンをつけた巨乳の少女で、夏イベントのキャラらしく祭の売り子の姿でヨーヨーを携えている。右手のヨーヨーの持ち方が野球ボールの握りになっており、心なしか顔も菅野に似ている。ゲームでは彼女の淫らな姿や卑猥な台詞を楽しむことが出来るが、ここではその説明を割愛する。

影響

twitterのお気に入りにアダルトゲーム（タップ機能付き）が発見される→突然の大乱調→利き手の中指を故障→ゲームのイベント開始と同時期に一軍登録抹消→野球の日（8/9）にイベントのボス「スガーヌォーグ」が出現

6月末のお気に入り発覚に始まり、わずか1ヶ月余りの間に起こった一連の出来事は奇跡的な偶然の連続を理由に多くのネットユーザーおよび野球ファンから好奇の目に晒され続けた。一時は「菅野智之」と検索すればサジェストに「フェアリーファンタジア」が出てきてしまうほどで、これは菅野にとっては不名誉極まりない状況と言える。

しかし、本来なら不祥事でしかないこの事態に反し、ネット上では「菅野に対する印象が（良い意味で）変わった」との好意的な声が多く上がっている。原辰徳の甥として英才教育を受け、巨人への入団経緯で問題を起こしている菅野はかつての江川卓のように野球ファンや巨人アンチはおろか、一部の巨人ファンからすらも「嫌われ者」とされてきたが、この騒動によって新たに「ネタキャラ」の地位も獲得した。

現在、

FF菅野
スガーヌォーグ智之
アダムの血族菅野智之
ウン出ィーネ菅野（スガーヌォーグの固有スキル「ウンディーネの加護」から）
球界初のイカせタップ投法
アダムの血族嫉妬民（菅野のアンチを指す呼称）

といった呼称が生まれ続けており、この先何年も語り継がれるネタになることは間違いない。また、これまで菅野は「マウンドでの不遜な態度や仕草が紳士らしくない＝巨人の選手にふさわしくない」との批判もたびたび受けてきたが、「マウンド外では（別の意味で）紳士だった」として評価の見直しがなされている。

なお、この騒動によって『フェアリーファンタジア』にも注目が集まり、DMM.comが発表しているランキングでは順位を上げて一時は週間5位に入る大躍進を遂げた。一歩間違えばプロ野球選手のイメージ失墜・ゲーム作品の非難にも繋がりかねないこの騒動は、結果的に菅野と運営の双方に対して思いがけない好影響をもたらしたと言える。

その後

菅野の登録抹消とイベント開始で騒動は一旦の区切りを迎えたが、ここではその後の展開について列挙していく。

菅野は8月14日までノースローによる調整を行った。これはイベント終了（15日）の間際までキャッチボールを控えていたことになり、一部のネットユーザーの間で「菅野はイベントで存分にタップ出来たようだ」とネタにされた。
8月21日には初のプルペン投球を行ったが、その後に腰の違和感を訴え、23日のブルペン入りを辞退。騒動の影響からか「『フェアリーファンタジア』のやり過ぎで腰も酷使したのではないか」と更なる疑惑が持ち上がった。
一軍復帰登板日である9月10日の昼、菅野のtwitterアカウントがアルバイト求人情報サイト「フロム・エー・ナビ」の広告リツイートを流す珍事態が発生（すぐに削除された）。アプリ認証すると自動でリツイートされるスパムを踏んだものと思われるが、ネット上では「課金のやり過ぎで金が無いのではないか」「アルバイター菅野」「フロムエー菅野」などと新たなネタが広まり、「アプリ認証でゲームのアイテムを得ようとしたのではないか」との憶測も囁かれた。
肝心の復帰戦（対阪神）では7回1失点の好投。40日ぶりの登板で10勝目を挙げ、入団以来二年連続の二桁勝利を記録した。中指の怪我について「携帯を持つのも辛かった」とファンの涙を誘うコメントを残したが、騒動を知る者は「あっ・・・（察し）」状態となった。どうして箸やペンでなく携帯をチョイスしたのかは謎である。
10月2日のヤクルト戦、最多勝のタイトルをかけて先発登板するが、初回に腰と右肘の違和感を訴え、2回で降板。病院で診察を受けたところ、「右肘じん帯の部分損傷」と診断された。2014年の最終成績は23試合に登板、158回と2/3を投げて12勝5敗、防御率2.33。最優秀防御率のタイトルは確定したが、最多勝にはわずかに届かなかった。
余談だが、読売ジャイアンツは2014年8月に「TAP PROJECT（タッププロジェクト）」という慈善事業に協力していた。これは開発途上国の子どもに清潔な水を届けようとするユニセフ主催の募金活動（「TAP」は「蛇口」の意味）だが、時期が被ったせいで球団まで騒動に便乗したかのようになってしまった。ちなみに同時期に『フェアリーファンタジア』に登場した妖精「スガーヌォーグ」は水属性のキャラクターである。偶然が一度にこれほど重なると恐ろしい。
これもまた余談だが、菅野のお気に入りツイートにブログ記事が登録されていた楪望はプライベートで2014年5月の巨人阪神戦（先発は菅野）を現地観戦しており、菅野のtwitter登録日は偶然にも彼女の誕生日にあたる。ネットであらぬ噂を立てられてもおかしくなかったが、『フェアリーファンタジア』のインパクトで全く話題にされなかった。

最後に

『フェアリーファンタジア菅野智之』の名称や派生する呼称の数々、発端となった一連の騒ぎは今後もさまざまな形で伝播することが予想されるが、「菅野が実際に『フェアリーファンタジア』をプレイしたかどうかはわからない」ことを明記しておく。あくまでtwitterのお気に入りに登録していただけであり、非公開設定のまま放置していたアカウントでそのような行動をするのも考えにくいことから、登録そのものも本人の意図しない形で起こったと推測するのが妥当である。しかし、菅野が自ら蒔いた種であることに変わりはなく、今後も本人の不注意による騒ぎが続くと予想される。