メイコン(飛行船) 単語

メイコン

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ZRS-5 メイコン/メーコン号(USS Macon)とは、アメリカ海軍によって建造され1933年から1935年まで使用された軍用飛行船である。アメリカ海軍の硬式飛行船(Zeppelin-Rigid)シリーズのひとつ[1]

本船および姉妹船のZRS-4 アクロン号の特徴は、偵察用の複葉戦闘機を4機~5機を搭載し運用することである。

概要

メイコンとアクロンは、当時「航空機の航続距離が短く」、「貨物搭載量も限られている」などの問題を解決する為に飛行船の軍事利用が模索されていた時代の中で誕生した実験的な船である。後のマクダネルXF-85ゴブリン等に連なる、いわゆる「パラサイト・ファイター」の実験母体であり、現代で言う早期警戒機に近い船でもある。

メイコンは「重量:108トン」「体積:184,000 m³」「全長:239 m (785 ft)」「直径:40.5 m (132.8 ft)」「全高:44.6 m (146.2 ft)」「最高速度:140 km/h (75.6 kt)」「搭載量:72トン」「乗員91名」で、ジュラルミンの船体と8基の560馬力のエンジン、そしてヘリウムを充填した気嚢を備えていた。最大のヘリウム産出国であるアメリカならではの飛行船である。

搭載機は飛行船内に収納されているが、飛行する時は専用の係留装置(乗組員たちは「フライング・トラピーズ」[2]と呼んだ)により、搭載機の上翼に取り付けられたフックに吊るされて使用された。また、フックは搭載機のパイロットによって簡単に外す事ができた。着艦する場合にも同じ係留装置が使用される。

また、観測員を載せた「スパイ・バスケット」と呼ばれる小型ゴンドラをワイヤーで数百メートル下に吊り下げる実験も(アクロンとメイコン両方で)行われた[3]

メイコンの名はジョージア州の都市から名付けられている。ここは当時、米国下院海軍委員会長[4]をしていた議員の選挙区となっていた。なおアクロンはグッドイヤー・ツェッペリン社の建造ドックのあった地名に由来し、ここでアクロンとメイコンは建造された。

メイコン号は1933年4月21日に初飛行を行ったが、奇しくも同月4日にはアクロン号がニューイングランド沖合で荒天により墜落し、死者73名を出していた。アクロンは乗組員用の救命ジャケットを搭載していなかったため、生存者はわずか3名。これは飛行船史上最悪の死亡事故とされる。
殉職者の中には「アメリカ海軍航空隊の父」と呼ばれたウィリアム・A・モフェット少将もいた。アクロン号の支持者であった彼を失った米海軍は、メイコン号を最後に軍用硬式飛行船から手を引き、軟式飛行船だけを運用するようになった。

1934年、ハーバート・V・ワイリー少佐の指揮するメイコン号はノーザンプトン級重巡洋艦ヒューストンの位置を突き止めることに成功し、更に艦上に新聞を投下するというパフォーマンスを行った。ヒューストンはフランクリン・ルーズベルト大統領を乗せてハワイからの帰途にあったため、飛行船に届いた返信には大統領がお褒めの言葉を述べていると記されていた。
ワイリーはアクロン号墜落事件での生存者3名のうちのひとりで、のちに戦艦ウェストバージニアの艦長としてスリガオ海峡海戦に参加することになる[5]

1935年2月12日にメイコンは事故で墜落し失われるが、カリフォルニア海岸沖に穏やかに着水した事と、暖かい気候、さらに姉妹船のアクロンの悲劇の後に導入された救命胴衣と膨張式救命いかだのおかげで76名の乗員中で死者は2名である。が、その2名の死因は水面との高度が適切でないのに飛び降りた事と、私物を取りに行こうとして沈没に巻き込まれた事が原因であり、実に残念な事であった。
飛行船の残骸はアメリカ合衆国国家歴史登録財(National Register of Historic Places)に指定されている[6]

搭載機

搭載機の複葉単座戦闘機カーチスF9Cスパローホークは偵察用であり武装は0.30インチ(7.62mm)の機銃2門のみである。また、メイコンアクロンの専用機でもある。あまりにも特殊な運用のために、着陸用の車輪を外したものや、着陸装置の変わりに燃料タンクを装備し航続距離を30%増大したものも存在する。

メイコンの複葉戦闘機は、着陸装置の変わりに燃料タンクを装備したものが標準的に使われるようになる。

生産数は、試作型が2機、量産型のF9C-2が6機のみ。なお、単に「スパローホーク戦闘機」と呼んだ場合はイギリスのグロスター社の複葉戦闘機(日本でも使われた)と混同しかねないので注意。

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下記短編集に収録されている海野十三の短編小説「空行かば」にメーコン(メイコン)号が登場する。いいところで終わっているので作者は早く続きを書く作業に戻るんだ。

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関連項目

  • 飛行船
  • 空母
  • 航空機
  • 軍事

脚注

  1. *記号のSはScout、偵察用の意味。
    他の機体は、ZR-1 シェナンドー/シェナンドア号、ZR-2 (イギリス飛行船R38になるはずだったが引渡し前に墜落した)、ZR-3 ロサンゼルス号、ZRS-4 アクロン号、の4隻/4機
  2. *Trapezeとは、空中ブランコ曲技に使われる、長いロープの先に棒がついている形式のブランコのこと。ヨット用語では、体重移動によって艇の傾きを保つために舷外へ乗り出すときに体を吊り揚げておくワイヤー、あるいはそのワイヤーの操作のことを指す。「ヨット トラピーズ」で画像検索してみよう。
  3. *Wikipedia英語版: Spy basket
  4. *米国下院海軍委員会は、のちに下院軍事委員会(HASC)に統合された。
  5. *戦艦ウェストバージニアのサイトにハーバート・V・ワイリーの情報が記載されている
  6. *Wreck of Airship USS Macon Added to National Register of Historic Places (NOAA, Feb. 11, 2010)

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