メンコとは、馬具の一種である。
概要
日本の競馬でよく見る、覆面のような馬具。
馬は草食動物であり、周囲の物音に敏感である。驚いて興奮したり、急に走り出そうとしてケガをすることもある。そのため、耳を覆う馬具がいくつか存在し、メンコはその一種である。
他にも、砂をかぶるのを嫌がる馬につけたり、ブリンカーやパシファイヤーメッシュなど視界を制限する馬具をつけるためにメンコをかぶる馬もいる。
ブリンカー用、おしゃれ用の場合は耳は覆わないこともある。音に馴れてきたら、耳覆い部分に穴をあけ、徐々に大きくしていく方法もある。また音に慣れてきたら耳の部分をあけるのではなく、そもそも耳の部分をあける場合もある。これは耳の部分を覆うのを嫌がったり、または音が聞こえなくなることでかえって落ち着かなくなったり、逆に音が聞こえなくなることによる恐怖心で委縮して走れなくなったりなどのケースがあるためである。
パドック内だけメンコをして、ゲート入り前に外してもよい。また、パドックで二重にメンコをして、ゲート入り前に外して一重にする場合もある。
障害馬のメンコは、ズレて目にかからないよう、目の穴が大きくなっている。
最もデザインに自由のきく馬具であることから、下記のように様々な柄がある。特徴的なメンコは馬主や調教師が自馬を見分けるのに役立つ。
馬自身にとってのおしゃれでもあり、個性的なメンコをつけて出走する姿は競馬場の華でもある。
柄の種類
馬主服と同柄
馬主服と同じ柄のメンコ。中央競馬では騎手の着ている勝負服と同じ柄だが、騎手がいないパドックでも馬主が分かるようになっている。
顔部分を胴柄、耳部分を袖柄にするのが基本。しかしそこからアレンジを加える場合も。
非常に多いので、アレンジが加わっている(馬がいる)場合について列挙する。
- 阿部雅一郎(ヒシ)
- 勝負服の「青二本輪」に見える柄でありながら、よく見ると上の横線が「菱形」である。
- 小田切有一
- 元祖珍名馬主であり、その名にちなんだアレンジがされることがある。
- ナゾは、模様が「玉霰」ではなく「?ナゾ?」または「謎」になっている。
- 竹園正繼(テイエム)
- テイエムプリキュアは、馬主服のメンコにプリキュアのアップリケをつけていた。
- 友駿ホースクラブ(シチー)
- オバマシチーは、馬主服柄だが額部分に「Yes, we can.」と書いてあった。
馬主服ではないが馬主共通
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佐々木主浩(水色、青鋸歯形、袖白青二本輪)
- 地色黒、額には水色と青の三角形がクロスした意匠に馬の名前が書かれている。
- ミルファーム(白、赤格子、袖赤)
- 牡馬は白地に赤い「ℳ」、牝馬は「♥」のマークが額につく。
厩舎共通
馬具は厩舎が用意するので、厩舎共通のメンコがある。
馬主のメンコがある場合、レースでどちらを使用するかは双方の相談の上で決まる。
レースでは別のメンコをする場合も、調教では基本的に厩舎のメンコを使用する。
- 加用正厩舎(ミツバなど)
- 地色白、下半分が赤で上半分が青の菱形、耳覆いは右が赤で左が青
- 国枝栄厩舎(アーモンドアイなど)
- 黒無地のメンコ、白い小さめのシャドーロール
- アカイトリノムスメは、オーナーの意向でシャドーロールをつけていない。
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鮫島一歩厩舎
- 武英智厩舎(メイケイエールなど)
- 手塚貴久厩舎(ユーバーレーベンなど)
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西浦勝一厩舎(ホッコータルマエなど)
- 西園正都厩舎(サダムパテックなど)
- 深山雅史厩舎(ヒノクニなど)
- 安田隆行厩舎(カレンチャンなど)
- 地色黒、イニシャルの「YT」を図案化した金のエンブレム
- 安田翔伍厩舎(オメガパフュームなど)
- 地色黒、「Y」を図案化した青いペガサスのエンブレム
- 矢野義幸厩舎
- 虎縞に虎マークが描かれたメンコ。矢野は熱狂的阪神タイガースファンで知られる
- 矢作芳人厩舎(ラヴズオンリーユーなど)
- 右下がりに斜めに染め分けて白、赤のメンコ。額に厩舎エンブレム
- 山内研二厩舎(ダンツフレームなど)
- 和田正一郎厩舎(オジュウチョウサンなど)
自身の名前
馬自身の名前やイニシャルが書かれていたり、名前の絵が描いてあったりする。いわゆる珍名馬は名前にちなんだ特徴的なメンコを持つものもしばしば。
- アイネスフウジン
- 勝負服の「桃・緑」に、「AF」と書かれている。ただし本馬の英語表記は「Ines Fujin」である。
- オウマタイム
- パドック用。黒地に御馬時間と縦書き。馬主が山口ステーブルなのでその下にPerfumeの3人が描かれている。レースでは外すが、代わりにチークピーシズに書かれている。
- カシノピカチュウ
- 黄地に、頬に赤い丸、耳の先が黒。つまりピカチュウであるが、ある時期から「カシノ」の勝負服柄と名前入りのものに代わった。
- クツシタヌゲタ
- 地色紺、額に、靴下の絵と「ヌゲタ」の文字。耳覆いは右だけ白く、二本線がある。これはバンデージと同じ柄であり、本馬の名前の由来である「右前脚に白がない」ことに引っかけて、脱げた靴下はここにあったというネタに見える。
- ジェンティルドンナ
- 真っ赤なメンコに白地で「Gentildonna」と書かれている。
- チャーハン
- 白地に、赤で「炒飯」と書かれており、周りを雷文(ラーメンどんぶりに描いてある四角いグルグル)で囲っている。
- ナイスネイチャ
- 勝負服の「赤・緑縦縞」に、「NN」または「Nice Nature」と書かれていた。
- ナカヤマナイト
- ナムラクレセント
- ニンジャ
- 手裏剣マーク・「忍」「参上」など、忍者関連の様々なメンコを持っていた。
- ネズコ
- 桃地に麻の葉模様、鼻先が白とえび茶の市松模様に縁取りが緑、そして黄緑色のシャドーロール。潔いまでに竈門禰豆子のコスプレである。
- ファニーフラッシュ
- 音楽記号の「フォルテッシモ」に似せた「ff」のマーク。
- ブタノカックーニ
- 豚の絵と「カックーニ!」とかかれたメンコ(名古屋移籍後)。
- ブチコ
- 額に「ぶちこ」とかかれたメンコを持っている。白地に文字と耳は茶色。
- マジックミラー
- マチカネコイノボリ
- パドック用に鯉のぼりのメンコを赤青2種類持っていたが、レース中の骨折により早逝したため実際に見ることのできた期間は少ない。
- メンタイマヨ
- マヨネーズのようなクリーム色に、明太子を思わせる赤の縁取りと耳。眉間にマヨネーズの絵と「明太」の文字。カラーがピンク色のものもある。
馬自身の毛色
毛色を邪魔しないように、合わせたコーディネイトがなされる馬も。
- ゼンノロブロイ(黒鹿毛)…黒
- ソダシ(白毛)…白(レース用)
- パドックでは金子真人カラーの二重メンコで、ゲート内で上のメンコを外す。
- ダノンハーロック(白毛)…白
- ニシノシタン(黒鹿毛)…黒
- ブチコ(白ブチ毛)…白・茶色
- 上記のメンコは、頬がブチ模様。文字がなくブチだけのものもある。
その他
その他の特徴的なメンコや、特別バージョン。
- ウタマロ(競走馬)
- 門別に移籍してから、パドックでは『ウマ娘 プリティーダービー』のコスプレをして登場している。本馬は牡馬であり、今のところコスプレしているのも牡馬が元のウマ娘。
二重メンコであり、レース中はコスプレの方は外す。
- サイレンススズカ(ウマ娘)
- ナイスネイチャ(ウマ娘)
- スマートファルコン(ウマ娘)
- エアグルーヴ
- 1998年ジャパンカップで、大阪オリンピック招致のマーク(五輪色のサクラの花)のついたメンコでパドックに現れた。レース時にははずしている。いつもは馬主服柄。
- ニシノチャーミー
- 2006年函館2歳ステークス勝利後左目を失明。そのために、以降のレースではハート型の眼帯がついたピンクのメンコで出走した。
- ハルウララ
- ファンシーな柄の布地を使っており、破れた部分にハローキティのアップリケをつけていた。のちにサンリオと公式にコラボしたグッズも販売されている。
- ヨカヨカ
- 2021年北九州記念には「九州マーク」のメンコで登場し、熊本県産馬初の重賞制覇を果たした。
- ラッキーライラック
- ラストランとなった2020年有馬記念では、ライラックの刺繍を施した特製メンコで出走した。
- 平田修厩舎 夏用メンコ試作品
- フェニックスループの調教中に使用。メッシュ生地で、熱を反射するように白く、赤地で梵字の「サク」が書かれている。これは十二支の午(うま)を意味する文字。このメンコは2021年夏の時点ではまだ使われていない。
メンコに似た馬具
イヤーネット
耳覆い「だけ」がついているもの。
競馬場では、主に誘導馬がつけている。馬術競技でも使用される。
ブリンカー/パシファイヤー
目の後方を覆うことで視界を制限し、前に集中させようとするもの。
ブリンカーはお椀状で、パシファイヤーメッシュ(日本では「パシファイヤー」で通じる)は網状。パシファイヤーの方は目に砂が入るのを防ぐ効果もある。
日本ではメンコに付属させることが多いが、頭絡に取り付けて使う目の周りだけのブリンカーもある。海外では、日本のメンコと同じく顔全体を覆うものも普及しており、色や柄をカスタムすることもできる。
虫除けマスク
馬の顔を覆うメッシュ状の馬具で、メンコと違って目の部分に穴がない。
目の周りにたかる虫を防ぐためのマスクで、牧場内で使用される。一見目隠しされているようだが、ちゃんと視界は確保されている。
眼帯
馬が目を傷つけたとき用のもので、プラスチックのカップ状のもの。透明だったり細かい穴があいていて視界を確保できるものと、全く光を通さないものがある。
片眼が見えればルール上は出走できるが、その状態での出走は著しく不利になるためまずなく、競馬場内での使用は極めて希。数少ない例に上述のニシノチャーミーがいる。
関連動画
※高松宮記念では、キングヘイローの特徴的なメンコがフィーチャーされた。
関連静画
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関連項目