新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に 単語

ジエンドオブエヴァンゲリオン

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だから
みんな、
死んでしまえば
いいのに…

失望の海
脆弱な心
偽りの微笑み
病的な被写体
自我の崩壊
残酷な他人
代理の異性
刹那な癒し
蔓延する虚脱
無への願望
閉塞した自分
分離への不安
一方的な勘違い
他人の恐怖
危険な思考
他者との拒絶
同調への嫌悪
傲慢な把握
弱者への憐れみ
不愉快な写真
過去の傷跡
曖昧な境界
常識の逸脱
孤独なヒトビト
価値への疑問
情欲との融合
胎内への回帰
空しい時間
破滅への憧憬
要らないワタシ

虚構の始まり
現実の続き
それは、夢の終わり

では、
あなたは何故、ココにいるの?

 

 

…ココにいても、いいの?

 

新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Airエアー/まごころを、君にとは、アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』シリーズの劇場映画第2作である。

英語タイトル表記はTHE END OF EVANGELION』。シリーズファンの間ではそれを略して「EOE」とも呼ばれる。

1997年7月19日公開。総監督・脚本は庵野秀明。TVシリーズ第弐拾四話から続き、本放送では抽象的な描写に終始した第弐拾五話と最終話のリメイクとして、そして劇場版前作『シト新生 REBIRTH』の完全版として制作された。

前編第25話/Air(EPISODE 25' / Love is destructive.)』(監督:鶴巻和哉)と
後編第26話/まごころを、君に(ONE MORE FINAL / I need you.)』(監督:庵野秀明)の2部構成となっており、前後編の間に映画全体のスタッフクレジット(と、庵野監督のメッセージ)が挿入され、後編終了直後に終劇となる。

『Air』は「アリア」を意味する英語で、作中でも使用されている音楽「G線上のアリア」(Air on the G String)から。『まごころを、君に』はダニエル・キイスの小説『アルジャーノンに花束を』の1968年の映画版の邦題『まごころを君に』から、それぞれ引用されている。

2021年現在では、「バンダイチャンネル」「U-NEXT」「Netflix」「Amazon Prime Video」「YouTube」「Google Play」「dアニメストア」などで有料配信されている(本記事最下部「関連リンク」参照)。

ちなみに2019年8月1日からはニコニコ動画でも有料動画として配信されており、購入すると一定期間のみコメント付きで視聴することも可能(本記事「関連動画」参照)。

2015年8月26日に発売されたBlu-ray BOXにも、テレビ版や劇場版第1作とともに収録されている。こちらは本作ラストの台詞の別バージョンなど、未公開音声なども収録されている(「関連リンク」参照)。

公開までの経緯

※劇場版前作『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 シト新生』の記事も参照されたし※

当時社会現象にもなっていた人気アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』は、そのテレビ版全26話のラスト2話において視聴者を置き去りにするかのような、良い言い方をすれば前衛的な、悪い言い方をすれば広げた風呂敷をたたまないまま放置するかのような終わり方をした。これは制作会社ガイナックスにとってもある意味不本意な形であり、最終回から1か月、本来構想した結末を描くため、完結版の制作が発表された。

1997年の春には「TVシリーズ総集編と新規製作の25話・26話」を、同年夏には「完全新作ストーリー」の劇場版をそれぞれ公開するという告知にファンは沸いた。上映当時のプロモーション映像などは、断末魔のような謎の絶叫音声が流れていたり、本作との関連不明の実写映像が流されるなど、かなり欝々とした雰囲気の作風が予想されるもの(「関連動画」参照)であり、更に期待と不安が煽られていった。

だが、未だガイナックスの制作体制はガッタガタのままであり(庵野監督に至っては鬱病に近い状態だったという)、それぞれ「春エヴァ(=後のシト新生)」、「夏エヴァ(=後の本作『EOE』)」と呼ばれた2作品の制作にも暗雲が立ち込めていく。遂には「春エヴァ」公開1か月前に制作未了のお詫びと、公開構成の変更が記者会見で告知されたのだった。

『シト新生』はTVシリーズの第壱話~第弐拾四話を総集編とした『DEATH』編と、第弐拾五話や最終話を新たに造り直した『REBIRTH』編(即ち本作に当たる部分)で構成されるはずであった。しかし『REBIRTH』編の制作が春の公開までに間に合わず、序盤部分(『Air』前半にあたる部分)までしか公開できなかった。そのため、夏までに時間をかけて『REBIRTH』編として公開されるはずだった残りの部分が制作され、本作にて第25話『Air』と第26話『まごころを、君に』と名前を変えて公開されたという流れである。

紆余曲折を経た本作は、庵野総監督の師匠的存在である宮崎駿の『もののけ姫』と同時期に公開されたが、同作のポスターキャッチコピー「生きろ。」と対照的な「だからみんな、死んでしまえばいいのに…」というネガティブにも程がある文面が使用されていたことは、後々までネタにされている。ここに翌年の劇場版『スプリガン』の「戦って、死ね」やWOWOWアニメ『ブレンパワード』の「頼まれなくたって生きてやる」を加えた生死四天王としてネタにされることもある。


本来の構想であれば劇場版エヴァは、第壱話~第弐拾四話総集編『DEATH』→25話『Air』→26話『まごころを、君に』と順に視聴されるはずのものであった。それを実現するものとして、翌年の3月には『REVIVAL OF EVANGELION 新世紀エヴァンゲリオン劇場版 DEATH(TRUE)2/Air/まごころを、君に』と編集された形式の映画も公開された。
ちなみにこの『REVIVAL OF EVANGELION』においては、『DEATH』が『DEATH(TRUE)2というタイトルに変更されている。劇場で公開された『DEATH』から衛星放送WOWOWでの放映に際して修正が加えられて『DEATH(TRUE)』へとタイトルが変更され、そしてこの『REVIVAL OF EVANGELION』向けにさらに修正が追加されて『DEATH(TRUE)2』になった。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』の開始後は、本作、『シト新生』、および『REVIVAL OF EVANGELION』などはまとめて『旧劇場版』(略して『旧劇』)とも呼ばれるようになった。

予告(ビデオフォーマット版)

最後のシ者は倒した。だが、現実に対処できないシンジは
固く心を閉ざしてしまう。そして、約束の時が来る。
迫りくるNERV全滅の危機、死の淵へ追いつめられるアスカ、
レイと共に発動へと導かれる人類補完計画。
己の現実に抗い、夢を受容する人々の頭上に
EVAシリーズが舞い降りる。
暴かれる欺瞞を嘲笑うかのように……

次回『Air』

遂に、阿鼻叫喚の現実を直視する碇シンジ。
その衝撃に耐えかねた彼は、自我を幻想へと委ねる。
そこに『真実』という名の『苦痛』はなかった。
そこに『自己』という名の『虚構』はなかった。
そこに『他者』という名の『恐怖』はなかった。
そこに『他人』という名の『希望』はなかった。
そこに……『自分』という名の『存在』もなかった。

次回。終局『まごころを、君に』

評価

アニメーション映像の質自体は、日本アニメ史上に残ると評しても過言ではない完成度を誇る。TVシリーズから積み重ねられてきた実写特撮風レイアウトに加えて、作画監督級の名アニメーターが結集した戦闘作画は一切破綻が無く、壮絶な死闘を克明に描き出している。

だが一方、そのストーリー展開は……

  • テレビ版最終盤の悲劇的な展開から、終始戦意を失ったままの主人公
  • 精神的に不安定になった主人公が、意識不明のヒロインのはだけた乳房を見て自慰行為を始める。その後、手についた精液を見つめて自己嫌悪の言葉をつぶやく
  • 味方組織の本拠地が軍事組織に攻略され、次々に味方職員が殺害されていく
  • 敵の新型機の集団によって、残虐に痛めつけられるヒロイン
  • ヒロインが白い巨人と化し、そしてその巨体が崩壊する(人体破壊)描写がねっとりと描かれる

などと、視聴者を精神的に追い詰めるかのような、前情報に違わず陰鬱で重い展開の連続となっていた。

さらに劇中のクライマックスで起きる現象「サードインパクト」についても、作中での説明は独自の用語が多用された理解しづらいものであり、そして最終的な物語の結末についても、バッドエンディングともとれるような、解釈が分かれるものであった。

また後半においては、「映画館で作品を鑑賞する人々」「庵野監督を非難する過激な文が映った画面」などの実写映像までもが織り交ぜられているという、メタフィクション的な演出もあった。

ファンの反応

強烈な映像描写と、わかるようなわからないような複雑なシナリオ描写のダブルパンチを喰らった観客たちの反応は、おおむね「お通夜状態」であった……とまことしやかに囁かれている(現在でもネット上で当時の感想を検索すると「帰路では一言も口を利く気になれなかった」「家族や恋人と観て後悔した」「これ以降エヴァを追わなくなった」などなど、真偽はともかく様々なネガ感想がヒットする)

上映後のファンコミュニティは単に映画の感想を話し合うだけではなく、少しでも物語と現実をすり合わせようと、自分たちなりの解釈を話し合う考察的な書き込みで溢れた。実写映像パートなどから「新世紀エヴァンゲリオン」に熱中しすぎるアニメオタクに向けての「目をさませ」といったような否定的メッセージを含んだ作品なのではないか……という説も登場した。

しかし、もしその説が制作者の意図を言い当てていたとしたら皮肉なことだが、「解釈が分かれるスッキリしない終わり方」であったことから、その後もシリーズのファンは貞本義行による漫画版・各種ゲーム版・新劇場版などでの「別の結末」に関する期待を持ち続けることになった。また、当時黎明期だったインターネット上などでは、カタルシスが得られるような別の展開を描こうとするファンフィクション(二次創作小説)の作者/読者なども急増していたという(碇シンジがまっとうに主人公として活躍する「スーパーシンジ」系など)

ある意味では、本作が「誰からも文句が出ない綺麗な終局」を迎えなかったことが、逆に「新世紀エヴァンゲリオン」というコンテンツを注目を浴び続ける、息の長いものへと導いたと言えるかもしれない。

トリビアなど

  • 本作ラストでは「主人公がヒロインに馬乗りになって首を手で絞める。だがヒロインに頬を撫でられた主人公は嗚咽を漏らしながら手を離す、その後ヒロインは『気持ち悪い』と呟く」という、陰鬱にも感じられるようなシーンで終劇している。
    ヒロイン役:宮村優子の記憶によれば、この「気持ち悪い」の台詞は台本では「あんたなんかに殺されるのは真っ平よ」となっていたが、何度も録り直した挙句に現在の台詞に変更になったという。
    • この変更の前には庵野監督と宮村の間に「宮村が部屋で一人で寝てたら眠ってる間に男が侵入してて、自分を見てオナニーしてるのを起きて発見したらなんて言う?」「『気持ち悪い』ですかね」といったような会話があったそうで、この宮村の解答を元にしてラストの台詞が「気持ち悪い」に変更されたと思われる。
  • 庵野秀明が岡本喜八の大ファンであり多大な影響を受けていることを公言していることを踏まえて、本作に岡本喜八監督の映画『激動の昭和史 沖縄決戦』からの影響が感じられる、という視聴者からの意見がある。
    • 例えば本作には「敵対する軍隊が火炎放射器を部屋の中へと噴射し、中にいた味方組織の職員が焼き殺される」シーンがあるが、『激動の昭和史 沖縄決戦』にも「米軍が洞窟内に逃げている者たちを火炎放射器で焼き殺す」シーンがある。
  • テレビ版からのレギュラーキャラクターが次々と退場していき、最終的に全人類が巻き込まれて消失するような大事件が起きる点などについて、富野喜幸総監督のアニメ映画『THE IDEON 発動篇』(伝説巨神イデオンの劇場版第2篇)との類似・比較がアニメファンから語られることがある。その場合、テレビ版で物語を完遂できず劇場版で補完した点、その劇場版の1篇目がテレビ版総集編で2篇目が新作である点なども両作の類似点として触れられる。
    • しかし、本作が前作『シト新生』と分けられたのは「制作が間に合わなかったために結果的にそうせざるをえなかった」という苦肉の策であって、元からの構想ではない。また、イデオンの劇場版は2篇に分けられてはいるが、本作と違って同時上映されている。
  • 本来「夏エヴァ」として上映されるはずだった「完全新作ストーリー」は、結局表に出ることが無かった。後の2014年東京国際映画祭にて、庵野監督は「角川に頭を下げてなかったことにしてもらった」そのプロットについてこう語った。
    • 「人類はほとんど滅びて、こもっているんですよ。そこに橋が1本あって、その橋でしか外に出られない。そこの壁はATフィールドに守られている。そこから外に出ると使徒が来るというもの」
    • 「そしてテレビでできなかったのが「人を食う」ということ。人間にとって一番怖いのは何かといえば、食われることですから。そしてその使徒に対抗するのはエヴァだけなんです。それもエントリープラグではなく、直接、腹の中に子供を埋め込んで、毎回摘出手術をする。さらにそれにはタイムリミットがあって、早く帝王切開をしないと人ではなくなり使徒になってしまう」
    • 「だから初めて『進撃の巨人』を読んだときは『あ、そっくり!』と思いました」
  • 刺激的なシーンが多い作品だけに、長きにわたってテレビ地上波全国ネットで放映されることはなかった。しかし2014年8月26日火曜に、日本テレビの深夜枠映画番組「映画天国」にて公開後約17年を経て地上波全国ネット初放送された(なお「映画天国」が「月曜深夜」を標榜する番組であるため、「2014年8月25日深夜」に放映されたと記録されている場合もある)。ただし一部のグロテスクなシーンや性的なシーンが隠されるなどの処置がとられた上での放映であった。ちなみに本記事掲示板の情報によれば、地方局であればこれより早い時期の放送例があったとの証言も。


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