人類補完計画とは、アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』に登場する架空の計画である。
本稿では計画の実行段階にて発生する現象・サードインパクトについても記載する。
特務機関NERVと、その後援者(支配者)である秘密結社ゼーレが推進する計画。テレビシリーズ序盤からその名前自体と関係者が登場しているものの、全貌は結局明言されずに終わる。
エヴァンゲリオン製造計画「E計画」、第一使徒アダムの復元計画「アダム計画」と並ぶNERV三大計画の一つであり、そしてゼーレが最も強力に推進している計画。立案者はNERV総司令・碇ゲンドウだが、実質的な計画遂行についてはゼーレが保有している預言書「死海文書(裏死海文書)」に沿う所が多く、完全にゲンドウが一から立ち上げた計画とは断言しづらい所がある。
NERV一般職員にも計画の存在自体は知られている(劇場版『Air』にて日向マコトが「(上役が戻るまでは)補完計画の発動まで自分たちで粘るしかないか」と発言している)が、その実態についてまで周知されていたかは疑わしい。少なくともNERV側で計画の全容を把握しているのは、ゲンドウと冬月コウゾウの2TOPを除けば、赤木リツコくらいのようだ。
中世暗黒期に誕生した宗教結社をルーツとするゼーレは、1900年代初めごろに最後の抵抗勢力を排除し、事実上世界を操る存在と化した。ゼーレは繁栄の膨張を続けつつ、芸術や学問のパトロンとして、ルーツである宗教結社の研究に手を出していたが、1947年頃に思いもよらない事態が発生する。
ヨルダン川近辺で、ゼーレの教義で存在が示唆されていた預言書が発掘されたのである。ゼーレは直ちにこれを隠蔽し、当たり障りのない内容に変更したものを「死海文書」として世界に公表させ、自分たちはこのオリジナルの文書──「裏死海文書」と、祖先の教義の研究を開始した。
この裏死海文書とは、第1使徒アダムと第2使徒リリスを生み出した異星人「第一始祖民族」によって記された、生命の種(=生命の起源)の概要だった。ざっくばらんに言えば「ここに書いてる通りにすれば生命を思いのままにリセットしたり作り替えたりできるよ! 暴走防止装置(ロンギヌスの槍)はこう使ってね!」「アダムから生まれる命の形(使徒)にはこんなのがあるよ!」というマニュアルである。それをゼーレ研究部が己の教義に当てはめつつ写本し、再解釈したことで、マニュアルは預言書となった。
ゼーレとしては祖先の教義『アダム・カドモンの道=不老不死に近づく道』など「先祖の世迷い話」と見なしており、預言書についても「どうせ現存してるわけない」と高をくくっていた。まさか実物の預言書が、完全に意味を成す形で出てくるとは思いもしていなかったのだが、出てきてしまったことでゼーレ中枢部は俄かに信心に立ち返った。失われた必要物をどうにか用意してこの裏死海文書の内容を再現できれば、優良な者(=自分達)を神か、神に限りなく近い存在にできるのだ。
人は神を拾ったらどうするか。自分も神になろうとするのである。かくしてゼーレは半世紀をかけて全世界を捜索・発掘し、リリスが眠る箱根の地下空間(黒き月)を発見する。1990年代末期には人類の行き詰まりを提唱した「人類限界説」を世間に流布し、その対策という建前で国連直属の人工進化研究所を設立させた。そして1999年、南極でアダムが眠る白き月とロンギヌスの槍が発見されるが、ゼーレの介入によりアダムが覚醒、セカンドインパクトが発生する。
セカンドインパクト後、ゼーレは人工進化研究所の下部組織として、NERVの前身である秘密組織ゲヒルンを設立。そして本来の目的を伏せた上で、国連内にNERVの予算源となる「人類補完委員会」を設立。リリスに接触してサードインパクトを起こし、全生命のリセットを試みようとする使徒たちの殲滅後に、補完計画を開始する手はずを整えたのであった。
『人の足りない部分を補完することで「神への道」が拓かれる』とするゼーレの教義に則った人類補完計画とは、一言で言うと「出来損ないの群体として既に行き詰まった人類を、完全な単体としての生物へ人工進化させる計画」(by葛城ミサト)である。
第2使徒リリスから生み出されたヒト(使徒名:リリン)。だがヒトは、アダムから生み出され、生命の実を与えられた単一生命体(第3使徒~第16使徒)とは違い、知恵の実しか持たない脆弱な群体生物であった。全てのヒトの知恵の実と生命の実を融合させることで、使徒と同じ完全な単一生命体に至ることがその目的である。見方を変えれば集団自殺からの集合新生と言える。
計画に必要なのは以下の3点。これらを組み合わせて「依代」とする。
ヒトを生んだ神リリス、もしくは人の造りし神となったエヴァを依代に、アンチA.T.フィールドを全世界に拡散して、全生命の肉体を強制的にL.C.L.化(サードインパクト)し、魂を集め、単一の生命に還元する。終了後にロンギヌスの槍を破棄/破壊して、誰にも滅することのできない生物を完成させるのである。
ここから推察するに、実際に補完の流れをコントロールするのはリリス、もしくはエヴァパイロットと思われる。このためか、ゼーレは対・第15使徒戦でロンギヌスの槍が失われた(後述)後、第17使徒タブリスの存在によってエヴァ初号機パイロット・碇シンジの精神状態を悪化させ、手駒として扱いやすくする工作を行っている[1]。
当初はゼーレの計画に賛同していたらしいゲンドウだが、妻の碇ユイがエヴァンゲリオン初号機との接触実験によって、初号機のコアと融合、消滅してしまったことをきっかけに、計画の私物化を図るようになった。
ユイとの再会を求めるゲンドウは、ユイの魂が宿るエヴァ初号機を依代とすることに強くこだわり、対・第15使徒戦においてロンギヌスの槍を使用し、都合よく月軌道上へ投棄してしまった。これによってリリスによる補完は不可能となる。
また、ゲンドウは再生したアダムの肉体を自らの肉体に融合させ、それを介してリリスの魂=綾波レイと融合、しかる後にリリスの肉体に融合し、そしてエヴァ初号機と融合しようと考えていたようだ。
一言でまとめれば「ゲンドウ自身が補完の流れを握る形で補完計画を遂行する(その結果計画自体がどうなろうが知らん)」と言ってしまってもいいかもしれない。
劇場版『Air』においてゲンドウは、一種の集団自殺であるゼーレの補完計画を否定し、エヴァと一体となる形での進化を求めるような発言をしている(これに対しゼーレは「我らは人の形を捨ててまでエヴァという方舟に乗る必要はない」と返している)。ここから推測すると、ゲンドウの求める補完計画は、結果として人類の単一化ではなく、人類をエヴァンゲリオンという神の器に適応させる結末を迎えるのかもしれない。もっとも作中ではその説明はされなかったため、全ては推測でしかないが……。
テレビシリーズではいつの間にか発動したらしく、「人類の補完は続いていた」と字幕で語られるだけで流されてしまう。こちらでは「ゲンドウが意図する形の補完が成った」と解説する書籍などもあるが、詳細は不明。
『Air/まごころを、君に』では一連の流れが描かれている。ただ、こちらではゼーレが意図する形での補完が始まったものの、度重なるイレギュラーにより完全な補完には至らず破綻することになった。
人類はあと一歩で単一生命となる筈だったが、レイとカヲルに最終決定を委ねられたシンジは、人類が個体として共存する従来の世界を望む。ロンギヌスの槍によってリリス(アダム入り)は崩壊し、エヴァ量産機も機能停止。エヴァ初号機はユイの魂を宿したまま、自らの意志で宇宙の彼方へ飛び去って行った。残ったのは人々が溶けあい、しかしその気になればいつでも人の姿に戻れる、中途半端な存在と化したL.C.L.の海。そして人に戻った碇シンジと、補完を拒絶し人の姿を保っていた惣流・アスカ・ラングレーのみだった。
ゲンドウの完全勝利
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最終更新:2025/12/06(土) 14:00
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