木村昌福

木村 昌福(きむら　まさとみ)とは、日本海軍軍人。最終階級は中将。
太平洋戦争時、日本海軍でも屈指の艦隊指揮官として知られる。

概要

海軍兵学校を後ろから数えたほうが早い順位(118人中107人目)で卒業する。日本海軍では兵学校の卒業成績（ハンモックナンバー）がのちの出世に響くため、出世とはほとんど無縁…だったように見えるがそうでもない。
海軍のもう一つの特色でもある「潮気の多い士官」つまり艦艇勤務(しかも駆逐艦乗り込みなど)の現場周りを厭わない士官で優秀であれば抜擢する気風も若干は残っており、若干名が将官にまでなったケースはある。その一人が木村提督であり昇進は遅かったとはいえ将官になったのだから逸材ともいえるだろう。
(その反面、司令部などでは海軍大学校出の士官達からはあまり快く思われていなかったという話も残っている)


大酒のみで豪快でさっぱりとした性格。部下を無闇にしかることもなく常に冷静な態度をくずすこともなかった。部下もそんな彼を「ショーフク」と呼んでいたという。

様々なエピソードにことかかない提督であり、作戦目的をよく理解して「待つ」ことが出来た数少ない将官の一人であり、いざ戦にあっては常に先頭に立って参加。敵味方に対しての人道的配慮を決して忘れず、撤退するにあたっても殿を務めたケースが多い。

提督を語る上でははずせないのはキスカ島撤退作戦だが、ここではその後のエピソードを紹介したい。
作戦後、提督はレイテの戦いに参加。ここで増援作戦の指揮をとる。ここでも木村提督の率いる艦隊は作戦に成功。輸送艦１隻を失うものの、無事輸送任務を成功させた。そのさい損傷を受けた輸送船乗組員救出のため自ら座乗する駆逐艦１隻のみで救出にあたったという。

レイテ周辺を巡る戦いはもはや制海権も失われ、制空権もほとんど米軍に取られたような過酷な状況であったものの、敵泊地に対して艦隊を突入を敢行するという「礼号作戦」を行うことになった。

作戦指揮は木村提督がとることになったが、提督はこの作戦に重巡ではなく身軽な駆逐艦での指揮を選んだ。様々な要素が重なり脱落する艦が出たものの参加艦艇に大きな損害はなく作戦決行が可能なところまで進出することに成功する。
作戦開始間際にあたって「挺身部隊ハ予定ドオリ突入ス。各隊ハ一層警戒ヲ厳ニシ、敵ノ奇襲ヲ未然ニ封ジ、全軍結束、作戦目的ノ達成ヲ期セ」という訓示を行い、泊地に突入する。
(これは作戦目的である米軍輸送船の撃破を目指せという意味で、第１次ソロモン海海戦で敵艦隊の撃破だけで輸送船団の撃破まで行わず撤退した場合や、最後まで作戦目標が曖昧なまま艦隊をすりつぶしたレイテ沖海戦の様子を考えると意義深い電文であるともいえる)

結果的に作戦は成功したものの、１隻の駆逐艦が沈没してしまう。木村提督は無事な艦に対して脱出を指示。提督の乗る駆逐艦のみが現場にとどまり(機関を停止し)、乗組員救助に取り掛かった。これはスクリューに溺者が巻き込まれる可能性を考えた結果だが大変危険な行為だった。
なにしろ作戦は成功したものの狭い泊地にはまだ無事な敵魚雷艇がいるほか、いたずらに時間をかけると航空機攻撃もあり得る状況であったのだ。
その状況下で殿(しんがり)としてとどまることを選択した提督の判断と行為に他の艦艇の艦長は命令に逆らって救助活動に参加。２時間の間、残った駆逐艦数隻による救出活動の間に重巡は敵魚雷艇の排除を行うなどして乗組員の大半を救出することに成功する。その後脱出を行い、残りの艦艇は無事生還を果たした。

この「礼号作戦」はのちに日本海軍最後の勝利を得た艦隊作戦行動として知られることになる。とはいえ作戦の困難さに比べれば戦果は乏しいものであったことは否めない。
だが、日本海軍の組織だった艦隊行動として、最後の勝利を得た戦いとして記憶されるに価値ある戦いだったと言える……特に戦果としてだけではなく、その指揮官や作戦に参加した者達が見せた振る舞いとしても。
困難な状況の中でこそ人間の資質が問われる中、木村提督は「礼号作戦」だけでなく幾度と無くその証を示した稀有な指揮官であった。戦後、敵であったアメリカ海軍・戦史関係者からも高く評価されているのも頷けるといえるだろう。

戦後、山口県で彼を慕う部下と共に製塩会社を興こす。家族のものは彼がどのような戦いをしたかも知らず、亡くなった後映画で彼の戦中の様子をしったという話が残されている。

関連項目

• 軍事 / 軍人の一覧