森信雄

森信雄（もりのぶお）とは、将棋棋士である。愛媛県四国中央市（当時は伊予三島市）出身。棋士番号126。

2017年5月に引退。プロ棋士の梁山泊である森信雄一門と、詰将棋の名手、ヨウム使いとして名高い。

概要

幼少時は貧しい生活を強いられ、また小学校でイジメに遭っていたが将棋を覚えてからは腕を上げ、高校を卒業してから母親を助けるため工場勤めのために上阪、そして後の師匠となる南口繁一九段の将棋教室に通う毎日だった。

プロ入りには紆余曲折があり、たまたま奨励会員が不足していた関西支部によって奨励会4級という異例の措置で入会（記録係が欲しかったそうだ）。そこからも住み込みの呉服屋を飛び出し実家に帰ったり、絶えず引退につながる年齢規定のプレッシャーに苛まされていたという。しかし24歳でようやくプロ入り。

1980年には当時若手の注目株だった島朗を破り新人王優勝。だが、そこまでがピークであり、以来万年C級2組に甘んじることになる。それで、プロとして食っていくため、棋書の出版、将棋教室での指導や弟子の育成に注力するようになる。2001年にはフリークラス転出。その規定でようやく七段に昇段し、引退。

…とまあ、棋士としては平々凡々すぎたのだが、それでも以下に挙げる弟子の育成などで棋界に多大なる、特に関西棋界にとっては果てしなく大きい貢献をしている棋士の一人でもある。

森信雄一門

今日、そしてかつての名門といわれた佐瀬勇次門下を凌ぎ、最もプロ棋士を輩出しているのが森信雄一門であり、故人を含め今までプロ棋士になったのは村山聖追贈九段、糸谷哲郎八段、山崎隆之八段、千田翔太七段を初め、増田裕司七段、安用寺孝功七段、片上大輔七段、澤田真吾六段、大石直嗣七段、竹内雄悟、西田拓也、石川優太の男性計12人、そして女流の谷口由紀、山口絵美菜、石本さくらの計15人という大所帯であり、東の名門所司和晴門下に対し、西の名門と呼ばれている。毎年5月、前年度にプロ入りした棋士を祝う「森一門祝賀会」でも知られ、それが恒例行事となっているほどである。

なお、自宅は兵庫県宝塚市にあり、阪神淡路大震災の際も被災した。そして弟子の一人を、自分が将棋に集中できるように手配したアパートを、建物倒壊で亡くすという事態が起き、責任を負った森はもう弟子は取らないつもりでいたが、遺族から「弟子を取り続けてください」と激励され、再度弟子を取るようになったという。そのときに一度広島に追い返されたのが山崎隆之八段であり、彼がここでもう弟子を取らなければ山﨑だけでなく、糸谷、千田、澤田といったプロ棋士が誕生したかはわからない。ここまでプロ棋士を輩出しているのも偏に森の人望と人徳が大きいからである。

また、怪童と呼ばれつつも大病で夭逝し、羽生善治とのライバル関係などが今も語り草になっている村山聖追贈九段との関係も色々と深いエピソードがある。このあたりは『聖の青春』を読んでいただきたいものである。ちなみにこの村山聖と森信雄の信頼関係が将棋界の評判を呼び、森信雄門下がだんだん知られていくきっかけとなっている。

詰将棋＋α

森信雄はまた詰将棋作家としても知られている。専門家向けの中手数作品も多数発表しているが、初心者向けの一手詰め、三手詰めの超短手数特化の詰棋書が非常に多く、『将棋世界』でも「あっという間の3手詰」というコーナーがあり、高難度化していく中で初心者向け詰将棋を貫き通している（一部七手詰専門の本もあるが）。

その短手数詰将棋へのこだわりは弟子の育成にも活かされており、森信雄門下では必ず短手数の詰将棋を解くことを日課としている。そして必ず類題を2問1セットで解かせるのがモットーで、これは後に同氏の詰棋書でこのスタイルで著述されたものもある。東の名門、所司和晴一門が詰将棋の必要性を疑問視しているのと対照的である。

また、詰将棋だけでなく、次の一手の名手でもありトリックシリーズは人気を博した。そのようにパズル好きな一面は次々と新しいスタイルの将棋問題集を生み出し、絶体絶命状態の玉を逃がす奇手を探す「逃れ将棋」、逆に必至を仕掛ける「詰めろ将棋」、詰将棋のルールに囚われず今ある局面から玉を詰ませる「詰ます将棋」も人気となっている。中でも革新的だった「逃れ将棋」はペンクラブ大賞も受賞した。

将棋以外では写真と動物好きで知られる。中でもヨウムの金太郎を愛玩しており、弟子たちにも人気がある。そして、ときどき山崎隆之の頭に乗っかる写真がニコ生に登場している。

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関連リンク

• 森信雄の写真あれこれ

関連項目

• 将棋
• 村山聖
• 山崎隆之
• 糸谷哲郎
• 詰将棋
• ヨウム