金剛型戦艦とは (コンゴウガタセンカンとは) [単語記事]

金剛とは日本海軍初の超弩級巡洋戦艦金剛型のネームシップをさす。

ここでは金剛型の同型艦についても取り扱う。

概要

1906年にイギリスで誕生した戦艦「ドレッドノート」は革命的な思想と能力で同時期の戦艦を一気に時代遅れとさせてしまった。イギリス海軍は続けてドレッドノートの思想を受け継い、攻撃力は戦艦並みだが防御力を巡洋艦レベルとして、代わりに高速性を得た巡洋戦艦「インヴィンシブル」も誕生させた。

当時の日本は日露戦争後ようやく戦艦、巡洋艦の国産に手がついたばかりでイギリスの建艦技術には到底及ばないこともあって、最新鋭艦の入手と合わせて国内建造を行うことでの国内建造技術向上を目指し、イギリス・ヴィッカース社に1番艦「金剛」を発注。同型艦の2番艦「比叡」以下三隻を国内で建造する計画を立てる。

ヴィッカース社はこの注文に（日英同盟など好条件も重なり）イギリス海軍最新鋭の「ライオン」級巡洋戦艦の発展型として「金剛」を設計。作ってみれば「ライオン」級巡洋戦艦よりも強力な巡洋戦艦が誕生することになる。
もっともイギリス側も善意だけで「金剛」を設計したわけではなく、さらに「金剛」をベースにして巡洋戦艦「タイガー」も建造し、「ライオン」ファミリーといえる艦艇が日英にあわせて８隻作られることになった。

第１次大戦ではイギリスが日本に金剛以下3隻の派遣を要請したとかしないとか。実現していれば、ジュットランド（ユトランド）海戦でライオンファミリーが勢ぞろいしたかもしれない。

第1次大戦後から第2次大戦までの戦間期に金剛型の四隻は大きくその姿を変えることなった。
軍縮時代にジュトランド海戦で明らかになった防御力不足を補う一方、軍縮によって建造数を制限されたため、すでにある戦艦の戦闘能力を強化する必要に駆られた日本海軍は旧式艦となりつつあった金剛型を大改造。一気に高速戦艦としてよみがえらせることなった。
ちなみ「比叡」は一度昭和天皇のお召し艦や練習艦扱いになったあと、その後建造されることになる「大和」に組み込まれる新技術テストベットとして他の姉妹艦とは違う改造を行われている。

こうして生まれ変わった金剛型戦艦は、太平洋を挟んだアメリカ海軍にとって非常に悩ましい艦となった。「金剛」型戦艦を撃破できる能力の既存の戦艦では「金剛」型の最高速力30ノットに追いつけず、速度で追いつける重巡洋艦レベルでは「金剛」型の攻撃力に対抗できない。非常に悩ましい高速戦艦だった。
アメリカ海軍が送り出した「アイオワ」級戦艦の誕生理由には「金剛」型戦艦の高速性に対抗するため、という説もある。

もっとも実際に日米間での戦争が始まると主役は一気に航空機と航空母艦を中心とした機動部隊同士の対決という思いもしない展開になる。日本海軍の中でもっとも旧式艦でありながら速力で機動部隊と随伴できる「金剛」型四隻は護衛部隊の中心として大車輪の活躍を示す。
旧式艦故に使いやすかったのか、ガダルカナルを巡る死闘では狭い海峡内に突入して戦艦による地上艦砲射撃を行い戦艦のもつ攻撃力を見せ付けたが、第三次ソロモン海戦で迎撃に向かったアメリカ海軍艦隊によって「比叡」「霧島」が戦没する。
その後残った二隻も戦争末期に立て続けに「金剛」が潜水艦によって撃沈され、「榛名」は呉で大破着底してその命を終えた。

戦争中、日本海軍は戦艦の使いどころを探しあぐねていたが、旧式艦でありながら使い勝手のいい性能をもった金剛型の四隻は日本海軍の主な戦いに参加していったことになる武勲艦でもあった。

戦後、日本海軍の末裔と自負する海上自衛隊初のイージス艦に「こんごう」の名前が冠せられたことは、海上自衛隊の期待を表しているといってもいいかもしれない。以後、「こんごう」型二番艦は「きりしま」と命名された。
（「ひえい」「はるな」も長らく海自の中心となった護衛艦として活躍。「はるな」が退役、「ひえい」も2011年までの退役が決定して、「ひゅうが」型護衛艦に後を譲ることなっている）