12ハロンのチクショー道 単語

ジュウニハロンノチクショードウ

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12ハロンのチクショー道とは、小説家になろうに掲載されている野井ぷら作のWeb小説である。2018年10月に完結済み。現在は外伝的な続編である12ハロンの閑話道が連載中。

2021年12月25に、書籍版第1巻が発売予定。

概要

『何を望む?』 超常の存在の問いに男はバカ正直な欲望を答えてしまう。

あまりの色欲から、男は競走馬にされてしまった。それは人間以上の厳しい競争社会。速くなければ生き残れない。生き残るためにもがき、やがて掴んだ栄光と破滅。だが、まだ彼の畜生道は終わっていなかった。

これは、競走馬にされてしまった男と、そんなでたらめな馬に出会ってしまった男達の熱い競馬物語。

本編紹介文より

人間としての前世を記憶したまま転生によって生まれた競走馬・サタンマルッコと、彼を取り巻く人馬たちが織りなすドラマを描く。

話としての主人公はサタンマルッコだが、あくまでも競馬という現実の人間社会の出来事が舞台なので、主人公と周囲の登場人物の間に言語による双方向のコミュニケーションが成立しないという特異な形式。

専門チャンネルやオイオイ民、Web掲示板など、現代競馬カルチャーやそれを取り巻くサブカルチャーの要素も取り込んで幅広く描かれる競馬群像劇である。

なお、「ハロン」とはヤード・ポンド法における長さの単位で、1ハロンは約200メートルに相当する。すなわち12ハロンは2400メートルであり、これは東京優駿(日本ダービー)や凱旋門賞の施行距離である。本作では、この2つのレースが物語上の重要なターニングポイントとなっていく。

登場馬

サタンマルッコ
本編主人公。九州の地方競馬・羽賀競馬の小箕灘厩舎に所属する競走馬。名前の由来は、額に大きな丸形の星(模様)があることから。
登録時の馬名は、本来はオーナーの冠号を付けた「サダノマルッコ」になるはずだったが、登録書類の字が汚かったせいで読み間違えられてしまったというエピソードがある。
父は三冠馬ゴールドフリートだが、そのゴールドフリートは産駒が碌に走らなかったことでも有名。
とはいえ、母系から受け継いだ天性のスタミナと、曾祖父から遺伝した脚の柔らかさにより、瞬間的な切れ味には欠けるがどこまでも伸びる脚と、人間記憶由来のスタートの要領の良さを併せ持つ先行逃げ切りの鬼[1]とでも言うべき競走馬として成長する。その才能は地方競馬の枠には到底収まらず、中央に進出し、やがては世界へと羽ばたいていくこととなる。
文字通りの意味で新聞を読む、観客席前でカメラポーズを取る、勝利後に客席前に行って嘶き声でコールアンドレスポンスをする、掛けられた言葉を理解するなど妙に人間くさい(何しろ中身は人間だ)仕草でファン人気を掴んでいく。
なお、母父アイネスフウジン、母母父トウカイテイオー(つまり母母父父シンボリルドルフ)、母母母父ミスターシービー、母母母母父シンザンという五代血統表にダービー馬6頭が居並ぶ錚々たるロマン血統の持ち主でもある(ロマンしかないとも言う)。
ダイランドウ
マルッコが間借りしている須田厩舎に所属する牡馬。マルッコと同い年。抜群の身体能力を持つが、精神面の幼さから実力を発揮できずにいる。
のちにマルッコと調教を共にする中で凄まじい覚醒を遂げ、短距離~マイルの古馬G1を総ナメする史上最強クラスのスプリンターとして日本競馬界に君臨してゆく。
ストームライダー
マルッコと同世代の2歳牡馬王者。日本馬産界の雄・竹グループが総力を挙げた血統設計の結晶だが、余りにも天賦の身体能力に恵まれすぎたが故に、息を入れる技術を身につける機会がなく、その弱点が露呈したダービー以降伸び悩む。
4歳時の安田記念でダイランドウの強さを目の当たりにしたことで覚醒し、以降は2000mで絶対的な強さを誇る中距離王者として成長していく。
スティールソード
マルッコと同世代の牡馬。加速力はイマイチだが優れたスタミナと操縦性の良さが持ち味で、特に2400m以上のレースで抜群に強い。
デビュー戦でマルッコとかち合って躓くも、青葉賞でリベンジを果たす。が、これによってマルッコから目の敵にされ、ことある毎に盤外戦を挑まれるようになる。
ラストラプソディー
欧州の中距離戦線で名を轟かせた名馬・ラングランソナタのラストクロップ。抜群の末脚の切れを持つが、勝ちきれないレースを続けている。
5歳春のドバイ遠征で末脚を生かした走法に開眼し、上がり3ハロン30秒9という神懸かった加速力を発揮。わずか200mで馬群中団から先行馬を全部まくり、かつ2着に6馬身差をつけるという滅茶苦茶な差し切りを見せた。
クエスフォールヴ
マルッコより1歳上の牡馬。凱旋門賞2着の実力者で、帰国後は日本競馬界のトップに君臨するスターホース。前目からハイペースで飛ばし、さらに末脚も使うという王道の強い競馬をする。
モデラート
マルッコより1歳上の牡馬。末脚の切れ味を武器に宝塚記念や天皇賞秋を勝った実力者だが、同世代のクエスフォールヴが覚醒して海外遠征から帰還し、さらに下の世代の台頭によってハイペース先行押し切りスタイルが競馬界の主流となったことで、変化に適応できず低迷してゆく。
キャリオンナイト
マルッコより3歳上の牡馬。能力は凄まじいがレースで手を抜く悪癖の持ち主で、G1戦線でコンスタントに好走はするものの優勝とは無縁の日々を送っている。
面倒くさがり屋ではあるが気性自体は荒いようで、当然の如くマルッコと大衝突。8歳春のドバイ遠征でマルッコを負かして以降、スティールソードと並んで盤外戦の常連となっていく。
ウーサワイアー
マルッコより1歳下の牡馬。皐月賞と菊花賞を制した高速ステイヤー。不作と言われる世代の中で、唯一マルッコ世代が潮流を作り出した超高速レースに適応する力を持つ。
サミダレミヅキ
マルッコより1歳下の牝馬。牝馬クラシック三冠を達成して歴史に名を残すが、実力的には古馬に及ばないとされる。
パカパカモフモフ
マルッコより2歳下の牝馬。微笑ましい名前と裏腹に、馬体重500キロ台中盤という生まれ落ちる性別を間違えたとしか思えない堂々たる馬格を誇る怪獣王。当然のように牝馬三冠を達成し、ついでとばかりに宝塚記念まで掻っ攫っていったバケモノ。
セヴンスターズ
アラブの競走馬シンジケートが所有する牡馬で、凱旋門賞連覇をはじめとしてG1だけでも11勝を誇る世界的スーパーホース。三連覇を懸けてマルッコ達日本馬陣営の前に立ちはだかる。
ネジュセルクル
本編より数年前に活躍していたフランスの競走馬。マルッコの前世。人間としての前世を記憶しており、それを武器に世界最強馬として君臨した。
毛色は違うが額の大きな丸い星など、外見や雰囲気がマルッコとよく似ていた(ネジュセルクルとはフランス語で「雪丸」の意)。
通常、スピードが乗って走行中の競走馬は交叉襲歩[2]で走るところ、直線で任意に回転襲歩[3]に切り替えて急加速する特技を持っていたが、それによる身体負荷が原因で凱旋門賞のレース中に腰椎断裂という前代未聞の故障を起こし、予後不良となった。

登場人物

競馬関係者

サタンマルッコ陣営

小箕灘健
羽賀競馬所属。マルッコの管理調教師。田舎のおっちゃん気質が抜けないところがあるものの、優れた戦術眼の持ち主であり、その技術はフランスでも通用した。
座間邦夫
小箕灘厩舎所属の厩務員。マルッコの担当。底抜けの楽天家で、割とせこい考えの持ち主だが、仕事はそつなくこなす。正装が似合うという意外な一面も。
書籍版では「登場人物に華がない」という理由で、座間邦子という女性キャラに置き換わっている。[4]
高橋義弘
羽賀競馬所属の若手騎手で、マルッコの最初の主戦。中央挑戦以降も条件戦まで鞍上を務めるが、全く乗りこなすことができず苦悩する。青葉賞への出走が決まった際、重賞のプレッシャーに耐えきれず自ら降板を申し出るが、以来吹っ切れたように精神面で成長を見せた。
横田友則
中央所属の騎手。青葉賞以降のマルッコの主戦。騎乗技術に長けた食わせ物のベテラン。条件戦で戦ったマルッコの走りに魅了され、自ら小箕灘に売り込む形で鞍上に収まる。
書籍版では、縦川友則という名前に変更された。[5]
クリストフ・ユミル
フランス出身の騎手で、世界的な名手。かつてネジュセルクルの主戦として人馬一体とも言うべき絆を結んでいたが、彼をレース中の事故で喪ったことで、精神的衝撃と自責の念から半ば廃人状態にあった。のちに日本でマルッコと巡り会ったことで復活を遂げ、海外遠征時の主戦となる。
以前、短期免許で中央競馬で騎乗していたことがあり、秋華賞やジャパンカップなどの勝鞍を持つ。日本語も流暢に会話できるが、語彙はやや独特。
書籍版では、ユリス・ユミルという名前に変更された。

他陣営

須田光圀
サタンマルッコ陣営が中央挑戦にあたって間借りしている須田厩舎の主。ダイランドウの管理調教師。一見人当たりは良いが、食えない性格と言動で相手を煙に巻くトリックスター気質。
「馬から言わせりゃ2400だろうが3000だろうが短距離だよ」という迷言を残す。
大河原拓也
須田厩舎所属の厩務員。ダイランドウの担当。
国分寺恭介
中央所属の騎手。ダイランドウの主戦。
細原文昭
中央の細原厩舎に所属する若手騎手で、スティールソードの主戦。今どきの体育会気質。
スティールソードが幼駒の頃からの付き合いであり、彼のことを幼名の「テツゾー」で呼ぶ。
細原大吾
中央競馬所属の調教師。文昭の父親。
竹田豊
ストームライダーの主戦を務めるベテラン。日本を代表するトップジョッキーの一人。
八源太
キャリオンナイトの主戦。文昭とは同期デビューの若手。飄々として掴み所のない性格。

その他

中川貞晴
サタンマルッコを生産した中川牧場のオーナー。お調子者で見栄っ張りの善人。
繁殖牝馬一頭だけとなって先のない牧場の現状を打開するため、借金で資金を掻き集めて三冠馬ゴールドフリートの種付権を購入するという勝負に出る。そして生まれたのがマルッコであった。
当初は「三冠馬の仔」という看板を売りにして競りで高値を付け、元を取ればいい、くらいに考えていたものの、想定外にマルッコの外見が貧相で売れ残ってしまったため、仕方なくオーナーブリーダーとして走らせ始めたところ、これが大当たりしてしまうのだから分からないものである。
一見、場当たり主義者にも見えるが、羽賀競馬の平日馬券販売にインターネットを活用する計画を提唱して経営改善に成功するなど、ただの考えなしではない。
中川ケイコ
貞晴の妻。マルチタレントな才媛で、豪運の持ち主。
竹中
競馬専門チャンネルの名物解説者。マルッコの才能をデビュー戦で見抜く。
ジェイク
アラブの競走馬シンジケートを率いる大富豪の王族。セヴンスターズのオーナー。馬のこととなるとムキになる悪癖を持つが、基本的にはお人好しな正直者。
安達満
中央デビュー戦のパドックからマルッコを追いかけているファン。匿名掲示板の競馬板では「写真の人」で通っている。
放牧中のマルッコに会うため羽賀を訪れた際、中川夫妻と知り合ってWebサイトの写真を任された。
何気にマルッコの応援馬券を中央デビューからダービーまで転がして数億稼いでいる幸運児。
ミーシャ
獣医志望のフランス人女性。ネジュセルクルを生産したロンデリー牧場のオーナーの一人娘。その関係で、クリストフとも旧知の仲。
マルッコがセルクル時代からデレデレの相手。

関連リンク

関連項目

  • 小説家になろう
  • 競馬

脚注

  1. *超強いツインターボ
  2. *左↔右の足使いで走る、いわゆる正統派のギャロップ。スピードとスタミナを両立できるが、片側の脚だけが疲れやすい難点がある。これに対処するため、多くの競走馬はレース中特定のタイミング(大抵はスパートの掛かる直線の手前)で左右の足使いを入れ替えるように訓練されている(これを「手前を変える」と言う)
  3. *前↔後の足使いで走る、ネコ科の肉食獣がダッシュなどで使う走法。加速力と運動性に優れる。競走馬も発走直後はこの走り方をしているので、興味のある人は競馬中継動画などでよく観察してみよう
  4. *まあ、ダービーまでの範囲だと本気で名前ありの女性キャラって中川オーナー夫人くらいしかいないし……
  5. *Web版の設定では捻りが足りないと判断されたか

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最終更新:2025/12/11(木) 19:00

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