K1とは、韓国陸軍が運用する戦車である。ここでは改造型であるK1A1も扱う。世代としては第2.5~3世代に当たる。
韓国軍は朝鮮戦争以来、M48パットンなどのアメリカのおさがり戦車を運用していた。しかし隣接する北朝鮮はT-62ベースの天馬号を装備するなど確実に力をつけていた。そのために新たな戦車が必要とされた。
しかし韓国には当時戦車開発能力はなく、設計開発をM1エイブラムスでおなじみのクライスラー・ディフェンス(現:ジェネラル・ダイナミクス・ランド・システムズ)に頼むこととなった。ただし、生産自体は韓国であるし、車体の要求性能を決めたのも韓国である。ここ大事。
当初、ソウルオリンピックに引っ掛けて88戦車と呼ばれたこともあったが、これを推していた盧泰愚がいろいろやらかして失脚してからと言うものこの名前は使われなくなった。
設計思想が若干特殊であり、側面装甲と火力を犠牲にしても軽量化と低視認性を図り、機動性を重視するものとなっている。そのため車体は小さく、砲塔後部の弾薬ラックまで省略している。弾薬は装填手の足元にのみある。なお、車体全体のデザインは前述の開発経緯もあってどことなくM1エイブラムスに似ている。
改造型のK1A1では後述の通り120mm砲を搭載している。ちなみにこの改造にはクライスラー社は無関係。ここも大事。
現在K1の各ロットの合計が1,027両、K1A1が484両配備されている。
ベトナム戦争半ばの1969年に発表された「ニクソン・ドクトリン」は、それまでアメリカが直接米軍を派兵して同盟国の防衛を行っていたものを軍事技術や情報、資金面での支援のみに切り替え、同盟国自身に自国防衛を担わせアメリカの負担を軽減するという宣言だった。これを受けて在韓米軍も1971年までに約2万人が引き上げられ、代わりに韓国軍が韓国の防衛を一挙に担う事となった。また、このような状況は同時にそれまで米軍から貸与・供与された兵器ばかりだった韓国に独自の兵器開発の必要性を求める事となった。これに合わせて政府は1975年に国土防衛に必要な財源を確保することを目的とした「防衛税」を新設し、軍戦力増強計画である「栗谷事業」がスタート、各種国産武器・兵器の研究開発がスタートした。
K1戦車もこのような経緯から開始された。
1970年代初頭、当時劣悪であった韓国軍と比して、北朝鮮は既に独自の戦車生産能力を備えただけではなく、T-55、T-62などの戦後第1世代戦車も1600台以上保有していると見積もられていた。朝鮮戦争において北朝鮮軍のT-34/85に「戦車ショック」と呼ばれるほどの恐怖と衝撃を与えられていた韓国軍は、この状況を打開するためすぐさま新型戦車関連事業をスタートさせた。
1976年12月、韓国国防部内に新型戦車開発を担当する戦車事業事業団が設置された。しかし、当時の韓国は戦車の開発はおろか、ライセンス生産すらしたことがなく、新型戦車の独自開発など夢のまた夢であった。
新型戦車開発が遅延することを予測した韓国軍は北朝鮮機甲戦力への暫定的な対応策として、既存のM48に105mmライフル砲、新型FCS、ディーゼルエンジンなどを装備す性能改良事業を計画。これはM48A3K及びA5Kとして実行・配備される事となる。このM48改良事業は、国防部戦車事業管理団が管理し、国防科学研究所の支援の下、現代精工(現 現代ロテム)が主導した。この改良事業自体は新型戦車と直接的な関連は無かったものの、新型戦車の生産に必要な技術の蓄積という大きな役割を果たした。
また、このM48改良事業と並行してアメリカ政府にM60戦車の供与及びライセンス生産の要請がなされたが、「北朝鮮の現実的な脅威が低い」という理由で拒否されてしまった。アメリカにライセンス生産を拒否された韓国は、ドイツから技術援助を受けて開発を進めようと考えていた丁度その頃、ドイツ連邦軍で西側初の戦後第3世代であるレオパルト2の開発・配備されることとなった。韓国としてもレオパルト2は非常に魅力的であったが、NATO諸国以外への輸出が可能なのか不透明な状況であったため、「もうレオパルト1の改良型でも開発・生産してお茶を濁そうや…」という半ば諦めムードの中、韓国新型戦車の開発路線は決定した……
アメリカ「ちょ、待てよ!待てよ!」
ドイツとの契約締結直前、これに驚いたアメリカが突如として新型戦車に名乗りを上げ「韓国の防衛は私たちが責任を負う(ドヤァ」と言い放ち、「ROKIT(Republic Of Korea Indigenous Tank=韓国次期戦車)」を提案した。結果的に、M60の輸出を拒否された事が巡り巡って新型戦車開発に繋がった訳である。まさに塞翁が馬。そして
これがいわゆる韓国軍釣り伝説の1つである。
当時の最先端の120mm滑腔砲ではなくM48A5Kと同じ、イギリスのものをライセンス生産した105mmライフル砲を用いている。
これは、朝鮮半島が山がちで長距離砲撃戦が起きづらいこと、T-62相手でもAPFSDSを使えば対抗できるとされたこと、120mm砲は弾が重いので好まれなかったことなどが理由であると言う。
ただし、改造型のK1A1では毎度おなじみラインメタル製120mm滑腔砲をライセンス生産したものを採用している。
なお、どちらも自動装填装置は無く人力である。
防御面は砲塔正面がアメリカ製のブラックボックス化された複合装甲・・・と言われているが定かではなく、ただの空間装甲である可能性も高い。側面に関しては空間装甲になっている。また、車体部分は張り出し部がメルカバと同じく燃料タンクを利用した装甲になっている。
ちなみに、アメリカは結局高性能な複合装甲の開発に失敗、劣化ウラン装甲に走ったことに留意されたし。
前述の通り山がちな地形のためか、油圧サスペンションとトーションバー併用であり、第1、2、6転輪が油気圧式、残りの3輪がトーションバー式になっている。姿勢変更は前後上下のみ。
機動性は(当時としては)良かったようで、その足の速さで合同演習でエイブラムスを翻弄したと言う噂がある。
とまぁここまで見ればわりと普通な戦車であるが、それでは済まされないのが韓国兵器の常。設計開発はクライスラーだけど。
いろいろ問題ありげ。主にK1A1。
とまぁこんな有様である。なお、いろいろこき下ろしてはいるが元々のK1は機動性を重視した戦車として攻守のバランスも悪くはない、当時の韓国陸軍を支えた重要な戦力である。
問題は、車体のキャパシティを無視した改造と後継車の開発遅延による陳腐化であるといっていい。北朝鮮と隣接しているのだから、アジアのパワーバランスのためにもXK-2の開発も含めもうちょっと国防に気を使ってもらいたいものである。
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最終更新:2025/12/14(日) 19:00
最終更新:2025/12/14(日) 18:00
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