ザフトとは、テレビアニメ『機動戦士ガンダムSEED』と続編の『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』に登場する軍事組織である。資料ではZAFTとも表記される。
概要
『機動戦士ガンダムSEED』では敵軍として、『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』では主人公が属する自軍として登場する組織。名前の由来はZodiac Alliance of Freedom Treaty(自由条約黄道同盟)の頭文字から。ザフトはプラントの国軍として最高評議会の決定に従って方針を決める。元々は黄道同盟という組織名だったが、リーダー格のパトリック・ザラがモビルスーツの本格配備と軍備拡充を行ったため、ザフトと改めた。
ザフトは志願制となっており、志願者は士官学校(アカデミー)と呼ばれるところで訓練を受け、それから部隊に配備される。入学に関しては男女の区別無く出来、またクルーゼのように卓越した技術とセンスがあれば(身分を偽った上で)ナチュラルでも入れるようだ。士官学校を卒業する際、成績が10位内の者にはエリートとして赤服を纏う権利が与えられ、それ以下の者は一般兵を表す緑服となる。赤服、緑服以外にもザフトには様々な色の軍服が存在し、指揮官・艦長クラスが袖を通す白服、副官クラスが袖を通す黒服がある。砂漠の虎ことアンドリュー・バルトフェルドは黄服を着用していたが彼オリジナルなのか黄服を着ている軍人は彼以外に居ない。
コーディネーターで構成されるザフト軍は地球軍よりも科学技術が進歩しており、ニュートロンジャマーやモビルスーツ等を開発して10倍以上の体力差がある地球軍に対し善戦、誰もが信じて疑わなかった地球軍の勝利という予想を覆して戦況は膠着状態に陥った。しかしプラントでは年々出生率が低下し、人口減少に悩まされ続けている事から人的資源に余裕が無く、ザフト軍は常に薄氷を踏む戦いを強いられていた。
ザフトが生み出した人類初の軍用モビルスーツ「ジン」は地球軍との戦いにおいて目覚ましい戦果を挙げた。これを見てザフト軍はモビルスーツの開発を続行するとともに、戦闘以外にも偵察・通信・電子戦など何でもかんでもモビルスーツにやらせてしまおうというモビルスーツ偏重主義に陥ってしまった。一応アジャイル(攻撃ヘリ)や戦車は存在するもののせいぜいモビルスーツの支援兵器止まりである。
ザフト軍は他の軍隊とは一線を画す要素を持つ。特筆べき点は以下の通り。
- ザフトは義勇軍であり職業軍人が存在しない
ザフト軍に所属する者は必ず何かしらの本職を持ち、平時はその本職をこなして生計を立てている。例としてニコル・アマルフィはピアニスト、イザーク・ジュールは最高評議会文官下位議員の本職がある。
- 年少兵がいる
コーディネーターは個人の基礎レベルが高いため、14~15歳の年齢でも成人として扱われて最前線に送られる。劇中で年若い者が多く見られるのはこのため。
- 階級が存在しない
ザフト軍には階級が無い。部隊長、司令官、艦長といった枠組みがあるだけで、将校と兵士には上下関係があるが、兵同士に上下関係は無い(ハイネが緑服だろうが赤服だろうが一緒という旨の発言をしている)。これは個人のレベルが高いので、現場の兵に指揮に委ねる事で柔軟な指揮系統を実現している。またエースを凌ぐほど戦果が著しい者にはFAITH(フェイス。信頼の意味)という特別な立場を与えられ、国防委員会直属の特務隊の一員となる。発言力は現場の指揮官よりも強く、時には作戦の立案や実行、変更さえも出来るという。
黄道同盟結成からザフトまで
ザフトの前身は黄道同盟といい、プラント内での自治権及び貿易権獲得を目的としてC.E.50年にシーゲル・クラインとパトリック・ザラが結成した。しかし理事国は黄道同盟を弾圧、コーディネイターたちの反発を招いた。黄道同盟は地下に潜り、密かに力を蓄え続けた。シンパも着々と増やしていき、C.E.57年にはパトリック・ザラが最高評議会議長となった事で更に力を増す。8年後、活動を活発化させた黄道同盟は名称を「自由条約黄道同盟(ザフト)」に改名。賛同者やシンパを拡充させ、確固たる地位を築いた。翌年にはモビルスーツ第一号のジンがロールアウト。マイウス市の一部を極秘工場に改造し、量産を始める。プラントの舵取りを行う評議会はザフト派議員で占められ、自由貿易権と自治権獲得を最優先とする決議が採択された。当然理事国はこれを見逃すはずが無く、示威行動に出るが、プラント側も軍備拡張で対抗している。膨張を続けるプラントを制裁するため、理事国は食糧の禁輸を課した。
クライン議長は南アメリカ合衆国と大洋州連合に交渉を持ちかけ、食糧の供給を取り付けた。しかしC.E.68年、南アメリカからの食糧を積載したプラント籍の輸送船マンデルブロー号が理事国の攻撃で撃沈。この事件を契機に、パトリック主導でザフトは解体・再編成。政治結社から軍事力を伴った組織へと変貌し、劇中のような組織となった。ここからは強硬な手段を用いるようになり、理事国から禁じられていた食糧の生産体制を築き上げる。理事国との関係は更に悪化し、C.E.69年には理事国のモビルアーマー部隊が威嚇行動に出ている。が、これをザフトのジンが撃破。圧倒的少数ながら勝利をもぎ取ったジンは世界中に公表され、鮮烈なデビューを飾った。この敗退により宙域の進駐軍は壊滅、理事国は宇宙での戦力を失う。
その後、プラント・理事国間で話し合いの場が設けられたが、C.E.70年1月1日、理事会に向かうプラント側議員団がテロに遭遇し議員1名が死亡。ブルーコスモスが犯行声明を出したが、背後に理事国がいた事が明らかになり、一気に緊張が高まる。この仕打ちに激怒したプラントは地球への物資の輸出を停止。地球上の国家が窮乏する事になる。それでも2月5日、月面都市コペルニクスにて再度話し合いの場が設けられたが、爆弾テロが発生(コペルニクスの悲劇)。これにより国連の首脳陣や理事国側の代表者が軒並み死亡した。一方、クライン議長はシャトルの遅れにより難を逃れている。プラントの代表者だけ助かった事から、理事国はプラントによるテロだと断定。崩壊した国連に代わる地球連合を発足させ、2月11日に宣戦布告を行った。こうして地球とプラントによる戦争が始まった。
劇中での経緯
ガンダムSEED(C.E.70-72)
C.E.70年2月11日、地球連合軍の宣戦布告により戦争状態に突入。さっそく月面のプトレマイオス基地から地球軍の艦隊が出撃し、プラント本国に迫った。これをザフト軍がモビルスーツ部隊で迎撃し、プラント近海で戦闘が生起する。2月14日、ブルーコスモス派将校のウィリアム・サザーランドによってアガメムノン級戦艦ルーズベルトに持ち込まれていた1発の核弾頭がユニウス・セブンに命中(血のバレンタイン事件)。結果、ユニウスセブンは崩壊し、住民24万3721名全員が死亡した。この事件はプラント側の戦意と敵意を最高潮にし、4日後に徹底抗戦を宣言。完全に和平の道が断たれる事となった。ちなみに地球軍は「プラント側の自爆作戦」と非難している。戦闘自体はザフト軍の勝利に終わり、地球軍艦隊は撃退された。2月20日、地球軍の南アメリカ合衆国侵攻に反発した大洋州連合が親プラントを表明し、地球軍から宣戦布告を受ける。
2月22日、ザフト軍は地球軍の勢力下にある月への足がかりを求め、「世界樹」に侵攻。地球軍が第1から第3艦隊を派遣した事で世界樹攻防戦が生起する。本戦闘でラウ・ル・クルーゼはメビウス37機と戦艦6隻を撃沈し、ネビュラ勲章を授与された他、ザフト軍は試験的にニュートロンジャマーを投入。有用性を実証したが、双方に大損害が発生。戦闘の余波で世界樹が崩壊してしまい、ザフト軍の月面進出は失敗に終わった。3月8日、食糧確保と地上侵攻の目的で地球軌道上より南アフリカのビクトリア宇宙港に向けて降下。初めてジンが地球の大地へ降り立ったが、地上からの支援を受けられなかった事で敗北。地球進出は成らなかった。この敗北を機にオペレーションウロボロスが採択され、4月1日にニュートロンジャマーの地上散布が実行された。原子力発電が使用不可となり、餓死などの理由で10億人もの市民が死亡。地球の各国家は深刻なエネルギー不足に悩まされ、その窮状は「エイプリル・フール・クライシス」と呼ばれた。誘導兵器や核兵器が封じられた事によりモビルスーツが台頭する時代を作り上げたが、同時に反コーディネイター感情が過激化。続く4月2日、ザフト軍は大洋州連合のオーストラリア北岸に向けて基地の施設を分割投下。48時間でカーペンタリア基地の基礎を築く。大洋州連合は親プラント国家であり、土地は提供されたものだった。異変を察知した地球軍は太平洋艦隊を出動させたが、新型モビルスーツ「ディン」の活躍で壊滅させられ、ザフト軍は初めて地上の拠点を得た。
4月17日、地球軍はプトレマイオス基地より第5及び第6艦隊を出撃させ、再度プラント本国に侵攻。資源衛星ヤキン・ドゥーエ近海でザフト軍が迎撃した事で第一次ヤキン・ドゥーエ攻防戦が生起した。戦闘はザフト軍が勝利を収め、最高評議会の決定によりヤキン・ドゥーエの要塞化に着手する。月の地球軍に手を焼くザフト軍は5月3日、月面の裏側にあるローレンツクレーターにプトレマイオス攻略用の前線基地を設営。グリマルディクレーターを境界として地球軍・ザフトの小競り合いが始まる(グリマルディ戦線)。5月22日、カーペンタリア基地を完成させたザフト地上軍は地上への侵攻を本格化させ、地中海進出を目指して大西洋にボズゴロフ級潜水空母の艦隊を派遣する。5月25日、カサブランカ沖でユーラシア主力の地中海艦隊と激突し、第一次カサブランカ沖海戦が生起。この戦闘でザフトは水中用MSグーンを初めて実戦投入して地中海艦隊を壊滅。勝利したザフトはジブラルタルに基地を設営するとともに地中海へ入り、5月30日に北アフリカ北岸のエル・アラメインに上陸。マーチン・ダコスタ率いるザウート部隊とモーガン・シュバリエ大尉率いる戦車部隊が交戦する。シュバリエ大尉の巧みな戦術によりザウート部隊は敗北寸前にまで追いやられるも、救援に駆け付けたアンドリュー・バルトフェルド率いるバクゥ隊により逆転勝利。アフリカに上陸したザフトは南部にあるビクトリア宇宙港を目指して南下を始め、アフリカ戦線が形成される。
ジブラルタルとカーペンタリア、この2つの拠点は地球上におけるザフト軍拠点として機能、地球軍と干戈を交える前線基地となった。ザフト軍は領土を広げる戦争をしている訳では無いので、むやみに勢力図を広げる事はせず拠点の維持に努めた。
6月2日、月面のグリマルディ戦線にてザフトが攻勢に転じ、地球軍の資源供給基地エンデュミオンクレーターにて地球軍の第3艦隊と交戦。ムウ・ラ・フラガ駆るメビウス・ゼロがジン5機を撃墜する。またラウ・ル・クルーゼも戦闘に参加し、ジン・ハイマニューバで出撃したともローラシア級戦艦ガルバーニから指揮を執ったとも言われる。形勢不利と見た地球軍は基地の放棄も兼ねてサイクロプスを暴走させ、残余の味方ごとザフトを粉砕。地球軍は第3艦隊を失い、ザフトは月面からの全面撤退を行ってグリマルディ戦線は終結した。
それから半年後のC.E.71年1月25日、地球連合軍が極秘裏にMSを開発しているとの情報を得て、クルーゼ隊を中心にオーブの資源コロニー『ヘリオポリス』を強襲、初期GAT-Xシリーズ(デュエル、バスター、ブリッツ、イージス)を奪取する事に成功するも同シリーズの試作機であるストライクの抵抗でヘリオポリス崩壊を招いてしまう。
その後、5月5日に地球軍が保有する唯一のマスドライバーがあるパナマ基地を攻略する作戦『オペレーション・スピットブレイク』を発動するも新議長になったパトリック・ザラが土壇場で地球連合軍最高司令部があるアラスカ(JOSH-A)を進路変更し、予定変更された事によって3日後の8日に全戦力を以て作戦開始された。しかし目標地点変更をラウ・ル・クルーゼを通して把握していた地球軍上層部が仕掛けたサイクロプスによる自爆で大失敗に終わり、地上の戦力が半減。ここから一気にミリタリーバランスが崩壊した。その後ザフト軍は生き残った戦力を集めてパナマ基地を攻略するも地球軍の勢いは止められず制圧したビクトリア基地を奪還された。地球での戦線は最早地球軍の勝利に決まったも同然で、カーペンタリア基地は死守したもののジブラルタル基地を失陥しヨーロッパからの撤退を強いられた。
一方、宇宙での勝敗は決していなかったが勢いづいた地球軍にザフトの軍事衛星ボアズを核兵器で落とされ、進退窮まったザフトは最終兵器ジェネシスを起動。地球軍の艦隊とプトレマイオス基地を粉砕し、地球にも照準を向けたが、すんでのところで三隻同盟に食い止められ地球は撃たれなかった。
その後、地球軍とザフト軍は停戦し、かつての悲劇の地ユニウスセブンでユニウス条約を結んだ。ユニウス条約はプラントにとって不利な条件であったが戦争が終わるならば、と耐乏したという。
前大戦での地球上の拠点はカーペンタリアとジブラルタルのみであったが、地球軍拠点スエズ攻略の足がかりとしてマハムール基地を、地球軍から解放した黒海の都市を基地化したディオキア基地をそれぞれ新たに設営している。ちなみに失陥したジブラルタル基地はユニウス条約でザフトに還され、再びザフトの基地として機能している。
ガンダムSEED DESTINY(C.E.73-74)
ユニウス条約が締結してから2年後のC.E.73年10月2日、アーモリー・ワンでの新型MS強奪事件やザラ派テロリストによるユニウスセブン落下事故を契機に再び武力衝突を行ってしまう。ロゴスの扇動により地球市民から憎悪の目で見られ、地球軍とも激しく戦う羽目になったが、ザフト側の対応は終始紳士的であった。積極的自衛権の行使という名目を掲げ、無意味な戦闘を回避。同時に地球軍の圧制に苦しむ人々には救いの手を差し伸べ、解放するなど人道的行動を実施。その甲斐あってか地球市民の憎悪は次第に薄れていき、ザフト派に鞍替えするナチュラルも出始めた。更にザフト軍が押さえたロドニアのラボでの非人道的行為の証拠映像や、地球軍のベルリンでの無差別攻撃を世間に公表し、ブルーコスモスの母体であるロゴスを糾弾。これにより連合内部は2つの勢力に分裂、国際世論は完全にザフトに味方した。ロゴスとブルーコスモス派は、ザフト軍と離反した地球軍の猛攻を受け、アイスランド所在の最高司令部ヘブンズベースを失陥。ロゴス主要メンバーの大半が逮捕された。
だが、ロゴスの主要メンバーでブルーコスモスの盟主でもあるロード・ジブリールが 他の幹部を見捨てて逃亡し、オーブ(ロゴスと繋がりのあるセイラン家に半ば脅迫して匿わせた)や月面ダイダロス基地への逃亡劇の末に討伐したが、ジブリールがプラントの首都、アプリリウスを撃つ奥の手として、軌道間全方位戦略砲『レクイエム』によって、ヤヌアリウスやディセンベルの6基崩壊という代償を得た。
これで戦争が終わるかに見えたが、突如デュランダルから人類最後の防衛策として 遺伝子による管理政策『デスティニープラン』をなんの断りもなく宣言され、世界中から『そんな話聞いてない』とでも言いたげなほどの混乱を見せた。さらに追い打ちをかけるようにして、レクイエムを密かに修復して運用、大西洋連邦大統領のいるアルザッヘル基地を壊滅という穏健さをかなぐり捨てる暴挙に出た。
この一撃でオーブ・クライン派の連合国と激突するが、本物のラクス・クラインをロゴスが用意した偽物と決めつけるというモラル・ハザードが蔓延され、旗艦エターナルを攻撃しようとするザフト兵が少なからずいた。 またこの戦いで、レクイエム運用という議長の裏切りに憤怒したジュール隊を含む一部のザフト兵は、オーブ・クライン連合軍に寝返る事態も発生し、 宇宙要塞メサイアの射線上に友軍がいるにも関わらずの ネオジェネシス発射という戦略ミスも相まって、空母ゴンドワナを中心とする部隊は戦意喪失。メサイアとレクイエムは完全破壊され、デュランダルは近縁者と共に心中。 ユニウスセブン落下事故から始まった戦乱も終結した。 エターナルからの停戦信号をゴンドワナ内の最高司令官も受諾し、 プラントも議長の言葉を鵜呑みにした事や クライン派とオーブを討とうとした責任による手打ちを迫られる事になった。
C.E.74、ラクス・クラインの仲介によりオーブ連合首長国とプラントは停戦協定を締結。 プラント最高評議会は新たにラクス・クラインを招聘し、戦後の再編を図った。 またその一環として、それまで義勇軍(体を張ったボランティア)であったザフトを 『国防軍としての扱いにする為』と『他国との共同作戦を円滑にする為』に階級制度を設けた。
ザフト軍の主力モビルスーツ
ザフト軍所属の人物
- アスラン・ザラ(途中脱走)
- イザーク・ジュール
- ニコル・アマルフィ
- ディアッカ・エルスマン
- ラウ・ル・クルーゼ
- シン・アスカ
- レイ・ザ・バレル
- ルナマリア・ホーク
- タリア・グラディス
- アーサー・トライン
- ハイネ・ヴェステンフルス
関連項目
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