「三銃士」(原題:Les Trois Mousquetaires)とは、フランスの小説家アレクサンドル・デュマ(大デュマ)による小説作品。
曖昧さ回避
概要
長編小説シリーズ『ダルタニャン物語』(D'Artagnan)の第一部に当たる。1844年にフランスの新聞に連載された。
実写、アニメ、人形劇等により何度も映像化されている。
表題の『銃士』(ムスケテール)は、当時最新式のマスケット銃を装備した乗馬歩兵のこと。
下層階級からも広く隊員を集めた為、出世街道に乗りたい若者の参加が相次いだ。そのため隊風はかなり荒っぽく、作中でも真剣を使った手合せを行っているさまが確認できる。
平時にはパリで近衛兵を務め、士気の高さもあってルイ13世のお気に入りだったと伝えられている。また、その気質から宮廷やパリ市民からの人気は高かった。
なお作中ではマスケット銃は活躍せず、ほぼ剣での戦闘となる。なので最初は違和感があるかも知れない。
あらすじ
フランスの片田舎・ガスコーニュ出身の若者、ダルタニャンの最初の物語。
田舎貴族の息子ダルタニャンは、銃士になる事を目指してパリに上京する。ところがその道中で謎の騎士とその仲間を相手に諍いを起こし、奮戦するも返り討ちに合う。更には気絶している間に、父に書いてもらった紹介状を盗まれてしまった。
どうにか銃士隊隊長トレヴィルとの謁見には成功するが、謎の騎士が再び現れ逆上、追いかけようと部屋を飛び出してしまう。だがそこで銃士隊でも高名な「三銃士」の一人アトスと揉め事を起こし、決闘する羽目になった。
結局、謎の騎士を見失ったダルタニャン。更に悪い事は続き、「三銃士」のポルトス、更にアラミスとも揉め、時間をずらして三人全員と決闘する運びとなる。
覚悟を決めて三銃士との決闘に赴くダルタニャン。アトスの介添人としてポルトスとアラミスも登場し、一同は奇妙な成り行きに驚きつつも、まずアトスとの決闘を行おうとする。ところが決闘が始まった途端、リシュリュー枢機卿の護衛隊が現れた。銃士隊と護衛隊の反目は長年の因縁で、ここぞとばかりに彼らは私闘を理由に一堂を逮捕しようとする。ダルタニャンと三銃士は共闘し、剣客で知られる護衛士ジュサックを下す戦功を上げた。
この事件によってダルタニャンは三銃士と和解、生涯の友情を誓う事となった。トレヴィル、ひいては国王ルイ13世からもその活躍は注目され、一目置かれる存在となる。
フランスの宰相・リシュリュー枢機卿は母国フランス、ひいては自身の利益の為、仇敵たるハプスブルグ家出身の王妃アンヌを排除しようと、密かに暗躍していた。
腹心の悪女ミレディー、謎の騎士ことロシュフォール伯爵を使い、大使として来仏したイギリスの宰相・バッキンガム公と、密かに想いを通じる王妃の秘密を知る。この不倫が国王に知れれば、王妃は不貞の罪によって国を追われる事だろう。
いまだ銃士ではないものの、ダルタニャンはパリでの暮らしを満喫していた。そんな折、家主のボナシューから「行方不明になった妻を探してください」と持ち掛けられ、義侠心からこれに同意する。
ボナシューの妻コンスタンスは王妃の侍女として宮廷に出仕していた。バッキンガム公と王妃の逢瀬を取り持つ役として密かに動いていたコンスタンスだが、リシュリュー枢機卿の手の者に誘拐されて利用されようとしていたのだ。
無事にコンスタンスを救出したダルタニャンだったが、若く美しい人妻に一目で恋してしまう。コンスタンスもまた、自分を救いに来た騎士に想いを寄せるのだった。
やがて王妃と公爵の道ならぬ恋は、国を揺るがしかねない大事件へと至る。窮地に追いやられた王妃を救うべく、イギリスへの決死行に赴くダルタニャンと三銃士。
苦難を乗り越えて共に戦う彼らの活躍を描いた、一大冒険譚である。
登場人物
- ダルタニャン
ガスコーニュ地方の田舎貴族の子。若さ故の勇気と血気を兼ね備える青年。小柄でやせぎす。貴族としての礼節を弁えるが、ちょくちょく失敗をやらかす。
銃士を目指してパリに上京、成り行きから三銃士との友情を結んだ。案外女性にモテる体質で、作中ではコンスタンスとのロマンスのほか、ミレディーとの危険な関係も見られる。
同名の実在人物がモデル。後のシリーズでは銃士隊隊長、更には元帥にまで出世する。 - アトス
「三銃士」の一人。四人の中では最年長で、落ち着きがあるまとめ役。誠実で高潔な性格だが、若い頃は酒乱で博打好きというだらしない男だったらしい。
「アトス」は偽名で、本名はラ・フェール伯爵。実はかつてミレディーと夫婦だった。 - ポルトス
「三銃士」の一人。大柄で力持ち、派手好きで豪放磊落な好漢。
一方で油断しやすく、見栄っ張りな性格が欠点。頭もあまりよろしくなく、およそ「陰謀」の2文字からは程遠い。 - アラミス
「三銃士」の一人。元は神学生で、内心では聖職者としての生き方を望んでいる。色男で、女性関係は派手。ダルタニャンと決闘した原因も女性がらみだった。
剣の実力は高く、一人で二人を相手どって勝利する腕前。後のシリーズでは信念の違いからダルタニャンと敵対するが…… - トレヴィル
銃士隊隊長。実在人物。ダルタニャンの父とは幼馴染だった。
部下、および友人の息子のダルタニャンには何かと便宜を図ってくれる。 - ジャック・ミシェル・ボナシュー
ダルタニャンの家主。妻が行方不明になった為、問題解決をダルタニャンに依頼した。
後にリシュリューに篭絡され、妻の心を奪ったダルタニャンへの嫉妬もあり、枢機卿側のスパイとなる。 - コンスタンス・ボナシュー
ボナシューの妻で、夫とはかなり年が離れている。王妃アンヌの侍女で、彼女とバッキンガム公の間を取次していた。その関係でリシュリュー枢機卿の手の者に狙われる。
自分を助けてくれたダルタニャンと道ならぬ恋に落ちるが、悲しい結末を迎える。 - リシュリュー
フランス宰相、枢機卿。実在人物。ハプスブルグ家の排除を目的とし、アンヌ王妃の秘密を暴露しようとする。私心はあるもののその行動原理は国益にあり、完全な悪人という訳ではない。
物語終盤ではダルタニャン達の実力を認め、自分の部下にしようと考える。 - ミレディー・ド・ウィンター
リシュリューの腹心。目の覚めるような美女で、才気渙発。だが実際には様々な名を持ち、多くの男を手玉に取った悪女でもある。
過去に罪人として裁かれ、肩に百合の焼印を押されている。ダルタニャンを色仕掛けで篭絡しようとしたが焼印を見られてしまい、即座に殺害しようとするなど、極めて冷酷。
ちなみに名前は「(ウィンター)夫人」という意味となり、「ミレディー」は本名ではない。 - ロシュフォール伯爵
リシュリューの腹心。頬に傷を持つ謎の騎士。物語冒頭でダルタニャンと諍いを起こし、紹介状を奪った。そのほかにもコンスタンス誘拐を指揮するなど、リシュリューの忠実な部下として暗躍する。
終盤でダルタニャンと決闘を行い、3度目で彼の実力を認めて和解、友人となった。でも映画では大体悪役。 - ルイ13世
フランス国王。実在人物。柔弱な性格で、宰相であるリシュリューを信頼している。
密かに王妃の不貞を疑っている。リシュリューに唆され、彼女に送った首飾りにかこつけて事実かどうか確かめようとした。 - アンヌ・ドートリッシュ
フランス王妃。実在人物。父はスペイン王フェリペ3世。ハプスブルグ家出身。
国王とは政略結婚。大使として訪問したバッキンガム公に道ならぬ恋を抱いてしまい、これが一連の事件のきっかけとなる。 - バッキンガム公(ジョージ・ヴィリアーズ)
イギリスの宰相。実在人物。同盟のため訪れたフランスで、王妃に夢中になってしまう。
王妃の立場をこれ以上悪くさせないようにと帰国するが、その際に王妃から送られた首飾りが騒動を引き起こした。後にミレディーに唆された男により暗殺される。
補遺
- 特定の分野で秀でた3名をまとめて「〇〇三銃士」と呼称するのは、現在では定番となっている。
- 有名な言葉に、ダルタニャンと三銃士の合言葉「一人は皆のために、皆は一人のために」(Unus pro omnibus, omnes pro uno)がある。
- 『ダルタニャン物語』はその後第2部 『二十年後』、第3部 『ブラジュロンヌ子爵』と続く。このうち最も長いのは第3部で、全体の半分以上となる。
関連動画
関連商品
関連項目
- 小説
- 小説作品一覧
- 鉄仮面
- フランス王国
- フランス(フランス共和国)
- フランス王の一覧 - 本作中はルイ十三世の時代である
- ブルボン朝
- アニメ三銃士
- 四天王
- 巌窟王 - デュマの別作品「モンテ・クリスト伯」の邦題、あるいはそれを元にした日本のテレビアニメ。
- ゴーストライター - 実はデュマ一人で書いたのではなく、オーギュスト・マケと言う人物の草稿を元にして書かれた作品だと言われている。上記の「モンテ・クリスト伯」も同じ。
- 椿姫 - 本作の作者のアレクサンドル・デュマ(大デュマ)の、同名の息子(小デュマ)による作品。
- 闘魂三銃士
- ラーメン三銃士
- クソエイム三銃士
- おとぎ銃士 赤ずきん
- アクマイザー3 - 本作をモチーフとしている。
- 未来ロボ ダルタニアス - 同上。
- ゼルダの伝説 トライフォース3銃士
- モンスターストライク - 四人とも登場する
- フィリップ・キャンデロロ - 元フィギュアスケーター。長野オリンピックでのFS「ダルタニャン」で知られる。
- ACCEED三銃士
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