共同浴場とは、複数の人々が共同で利用する浴場である。共同湯とも。特に、そのうちいわゆる「銭湯」や「寮や宿泊施設内の大浴場」を除いたものを言う事が多い。
概要
現在の日本では主に、「温泉地にあり」「宿泊施設に付設された大浴場ではないもの」を言う事が多い。この場合は「来訪客向け、あるいは地元民向けの温泉」といった性質のものである。こちらの用法についてはWikipediaが詳しい。
しかし「自宅には浴室が無い」という家庭が一般的であった時代には、「公営住宅」「雇用促進住宅」「同潤会アパート」など、集合住宅(いわゆる「団地」)に、その団地の住民が共同利用する浴場として設置されている例も少なくなかった。おそらく大正末期から昭和中期までの時代に建設された団地に見られるものかと思われる。
江戸川アパートメントの特長は、緑がいっぱいの中庭、共用部分にあたる社交室・共同浴場・理髪室、そして5〜6階に設けられた4.5〜6畳の独身部屋です。子ども達が遊ぶ中庭や社交室、共同浴場などは、まさにコミュニティ機能満載。ここから居住者同士のつながりが育まれていったのでしょうか。
いわゆる「銭湯」を国民の多数が利用していた時代であり、「その住宅の居住者が利用できる銭湯がわり」としての存在価値があったと思われる。この場合、屋舎内に共同利用の大浴室が存在している場合もあれば、敷地内に別棟として存在している場合もあった。
法律の条文にもその名残があり、「国家公務員宿舎法(昭和二十四年法律第百十七号)」「公営住宅法(昭和二十六年法律第百九十三号)」「住宅地区改良法(昭和三十五年法律第八十四号)」の条文内には、2021年現在でも「共同浴場」という語句が残っている。[1]
それは、公営住宅法では、団地敷地内に建設できる建築物は、集会所と共同浴場に限定されていたからである。集会所は住民の集まる場所として当然必要として、共同浴場はなぜなのか? 読者の皆さんは想像し難いかもしれないが、公営住宅法が制定された当時は、住宅内に浴室を持つ国民は一部であり、多くは銭湯(公衆浴場)に行くのが当たり前だったのである(ということは、当時の公営住宅には浴室設備はなかった)。
(月刊「ノーマライゼーション 障害者の福祉」2017年11月号(第37巻 通巻436号)掲載記事
「時代を読む97-公営住宅法の改正(平成8年)」より引用)
2021年現在では集合住宅であっても各戸に浴室があることが一般的であり、また老朽化した団地は徐々に取り壊されていくため、こういった「共同浴場」が存在する団地は稀有な存在となっている。ただし存在が消失しきってしまっているわけではないようだ。
例えば近年にこういった団地物件がリノベーションして販売された際に、共同浴場を残したケースの実例があるようだ。各戸に浴室を設け直す場合もそうでない場合もあり、前者の場合は共同浴場は「入居者の気分によって各戸の浴室と利用し分けることができる、プラスアルファ要素」となる。一方後者の場合は各戸に浴室が無いという少々の不便さが残るためか、家賃が低廉に抑えられているようだ。
- 雇用促進住宅をリノベーション。10万戸の賃貸住宅オーナー「ビレッジハウス」の戦略|不動産投資の健美家 (2020年7月2日の記事。共同浴場の写真有り)
- 目白団地(東京都豊島区)−団地R不動産− (2021年3月6日閲覧時点で、2018年3月27日最終更新の記事。共同浴場の写真有り)
また「温泉地にある団地」では「共同浴場が温泉であった」というレアケースもあるようで、そういった共同浴場は本記事冒頭で述べたような「温泉地の共同浴場」として、団地住民だけでなく来訪者にも利用可とするかたちに切り替えて残存している場合があるようだ。
関連項目
脚注
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