シヨノロマン(Shiyono Roman)とは、1985年生まれの日本の競走馬。栗毛の牝馬。
同期の皐月賞馬の片想いの相手としても知られる、「天才を天才にした馬」になりそこねた馬。
主な勝ち鞍
1988年:ローズステークス(GⅡ)
1989年:名古屋市制100周年記念(地方重賞)
父リードワンダー、母シンシラオキ、母父シンザンという血統。うーん、渋い。
父はアローエクスプレス産駒で、きさらぎ賞をレコードタイで快勝しクラシック有力候補に名乗りを挙げたが骨折で断念。復帰後はパッとしなかったが、種牡馬入りすると父の貴重な後継として人気を集め、中央重賞馬5頭を送り出すなど中堅どころの種牡馬として活躍した。シヨノロマンは2年目の産駒。
母は未出走。その名の通り、数々の名馬を輩出した伝統のシラオキ牝系に属する。
母父は言わずと知れた五冠馬。種牡馬としても内国産のエースとして大活躍した。
1985年3月14日、様似町の平野喜良牧場で誕生。
オーナーは「シヨノ」冠名を用いた庄野昭彦で、所属は栗東の庄野穂積厩舎。苗字が同じというところから察せられる通り両者は血縁者で、オーナーは調教師の甥っ子。オーナーは門別にある庄野牧場の元代表で、その次男がスワーヴリチャードやニシケンモノノフを管理した庄野靖志調教師である。
※この記事では当時の表記に合わせ、馬齢を数え年(満年齢+1歳)で表記します。
デビューは遅れ、1988年2月の京都ダート1400m、4歳新馬戦でようやくデビューしたシヨノロマン。春の牝馬クラシックまでは2ヶ月しかなかったが、このデビュー戦で4番人気だった彼女は、なんと逃げてそのまま1番人気ハッピースズランを9馬身ぶっちぎる圧勝デビューを飾る。
遅れてやって来た新星の、その背中に跨がっていたのはデビュー2年目、昨年同厩舎同馬主のシヨノリーガルで重賞も勝っている新人最多勝騎手。そう、ピカピカの18歳だった武豊であった。
中1週で京都芝1600mの400万下・こぶし賞に向かうと、ここでは武豊が別の馬に乗っていたので石橋守が騎乗したが、10番人気の伏兵ミヤマポピーの追撃を振り切り連勝。
勢いに乗り、武豊に戻して当時はまだオープン特別だった桜花賞トライアル・チューリップ賞(OP)に向かうと、ここも2馬身差で快勝。デビューから1ヶ月で、一気に桜花賞有力候補へと躍り出た。
というわけで迎えた桜花賞(GⅠ)。この年の桜花賞は本命不在の混戦ムード、1番人気は4歳牝馬特別(西)を勝ったスカーレットリボン(ヴァーミリアンの祖母スカーレットローズ、ダイワメジャー・ダイワスカーレット兄妹の母スカーレットブーケの全姉)で単勝3.5倍。シヨノロマンは5.9倍の4番人気であった。鞍上の武豊はこれが5度目のGⅠ騎乗。単勝1桁オッズの馬でのGⅠ挑戦はこれが初めてのことである。
最内の1枠1番から好スタートを切ったシヨノロマンは、逃げを図るアイノマーチと、外から猛然と上がって来たリキアイノーザンを前に行かせて3~4番手の好位につけた。そのまま逃げるアイノマーチの後ろにぴったりとつけて最内の経済コースを通ったシヨノロマンは、前の脚色が鈍ると直線で内ラチ沿いのスペースから一気に抜け出しを図る。シヨノロマンが先頭に立ったときには場内の盛り上がりも最高潮。武邦彦の息子、昨年新人最多勝記録を作った天才が19歳にしてクラシック制覇か!
――しかしその直後、若造にやすやすとクラシックを獲らせるものかと、襲いかかってきた人馬がいた。
武豊の兄弟子、牝馬の河内洋を背に乗せた、同じ庄野穂積厩舎所属、5番人気アラホウトク!
あっという間にアラホウトクに差し切られたシヨノロマンは、1と3/4馬身差で無念の2着。庄野厩舎のワンツーフィニッシュとなったわけだが、武豊のGⅠおよびクラシック初制覇は言わずと知れたこの年の秋――スーパークリークの菊花賞へ持ち越しとなった。もしここで勝っていれば、「天才を天才にした馬」の称号は彼女のものだったのかもしれない。
続いて的場均が騎乗した4歳牝馬特別(東)(GⅡ)もアラホウトクに敗れて2着。武豊が戻った優駿牝馬(GⅠ)では2.2倍のアラホウトクに次ぐ、6.7倍の2番人気に支持された。レースは中団から4コーナーで押し上げていき、桜花賞同様に最内を突いたが、最後の伸びを欠いて5着に終わった。
夏休みを挟み、秋はローズステークス(GⅡ)から始動。またアラホウトクに次ぐ2番人気だったが、好位で進めて直線で外に持ち出すと鋭い末脚を繰り出し、粘り込みを図ったホロトアイフルをクビ差捕らえきって勝利。重賞初制覇を果たし、アラホウトクが6着に沈んだこともあって、ラスト一冠、エリザベス女王杯へ視界良好といった感じであった。
11月6日、武豊はスーパークリークで菊花賞を圧勝しGⅠ初制覇。競馬界のスーパースターの伝説がいよいよ始まろうとしていたその翌週。エリザベス女王杯(GⅠ)で武豊の騎乗するシヨノロマンは単枠指定、2.7倍の1番人気に支持された。アラホウトクはオークス以降パッとしないし、オークス馬コスモドリームは骨折で回避。こうなれば武豊の2週連続GⅠ制覇に大きな期待が集まるのも当然であった。
そしてシヨノロマンもその期待に応えるレースを見せる。最内枠から好スタートを切ってインの好位を確保すると、9番人気キャッチミーが大逃げする展開を、前目のインコースという絶好のポジションで折り合いをつけて進める。3コーナーでキャッチミーが沈み、2番手につけていた8番人気マチカネイトハンが抜け出すが、それをぴったり後ろから追ったシヨノロマンは直線で外に出して前をかわしにかかる。残り200mで先頭。先行抜け出し押し切りの完璧な立ち回り。武豊2週連続GⅠ制覇だ!
――そこへ、外から猛然とカッ飛んできた馬がいた。
この年大暴れしていたタマモクロスの妹、前走ローズS4着、6番人気ミヤマポピー!
しかし今度はシヨノロマンもそうやすやすとは抜かせない。猛然と詰めてきたミヤマポピーに、シヨノロマンも脚色衰えず押し切りを図る。
残り150mで完全に2頭のマッチレースとなり、馬体を併せての熾烈な追い比べ。
残り100mでも、まだシヨノロマンが押し切る流れだった。
残り50mでも、まだシヨノロマンが押し切る流れに見えた。
――だが、ゴール板を駆け抜けた瞬間、僅かにハナ差、差し切ったのはミヤマポピーだった。
あと一歩、あとほんの少しの距離にあった栄冠は、ぽろりとその手からこぼれ落ちた。
結局、武豊の「初めての女」は翌年の桜花賞――シャダイカグラでのこととなる。
「逆指名」のスーパークリーク、「わざと出遅れ」伝説のシャダイカグラ。牡馬牝馬それぞれの初GⅠにこうした「天才」を演出するような伝説がつくのが武豊のスーパースターたるゆえんなのであれば、シヨノロマンに足りなかったのはそんなエピソードや伝説だったのだろうか。いや、武豊の初めての女になっていれば、シヨノロマンだってきっと何かしらエピソードが出ていたのかもしれないが……。
この時代の牝馬なので、その後の戦績にはあまり語ることはない。4歳ラストの阪神牝馬特別(GⅢ)は1.6倍の1番人気に支持されたが4着。5歳となり、シルクロードステークス(OP)と、中京で開催された地方の単発重賞・名古屋市制100周年記念を勝利し、高松宮杯(GⅡ)ではメジロアルダンの3着に好走(と言っても1秒以上離されたが)したが、宝塚記念(GⅠ)は9着、朝日チャレンジカップ(GⅢ)では心房細動を起こして最下位、マイルチャンピオンシップ(GⅠ)は10着に終わり、現役引退となった。通算15戦6勝 [6-3-1-5]。
引退後は三石町の田中春美牧場で繁殖入り。7頭の仔を産み、初仔のツキノロマン(父*ミルジョージ)がスイートピーS(OP)2着でオークス出走を果たしたが、それほど目立った仔は出ず、牝系の血は国内では既に絶えてしまっている。
スタッドブックなどの記録によると、孫のディプロマティストの2009が中国に輸出され(実際1歳時のセールでそれらしき落札記録がある)、玉龍玫瑰(Yu L Mei Gui)という馬名で繁殖入りし、あちらで牝系の血が現在も繋がっているらしい。
シヨノロマン自身は2013年まで長生きし、28歳で死亡した。
シヨノロマンを語る上で外せないのが、ヤエノムテキの「シヨノロマン片想い伝説」である。
同期の皐月賞馬ヤエノムテキは、庄野厩舎……ではなくその近所の荻野光男厩舎の所属だったのだが、4歳(現3歳)の頃、シヨノロマンが近くを通ると立ち止まってじっと見つめ、調教のときにはシヨノロマンが現れないかとそわそわしながら待って、なかなか走り出そうとしなかったという。
そんなヤエノムテキに対し、シヨノロマンの反応はというと……全く気にせずガンスルー。同期のやんちゃ坊主のことなど眼中になく、ヤエノムテキが6歳まで走ったのに対し、5歳でさっさと引退して繁殖入りしてしまった。ヤエノムテキも四白流星のなかなかのグッドルッキングホースなのに、つれない。
この片想いは、担当厩務員によって言いふらされ、気性難で知られたヤエノムテキのかわいい&かわいそうエピソードとして競馬ファンに広く知られた。ゲーム『ウイニングポスト』シリーズでは、このエピソードを拾った「ターフに咲くロマンス」というイベントがあったりする。
ヤエノムテキも引退後は種牡馬入りしたが、残念ながら交配は実現しなかった。オグリキャップとホーリックスといい、ダイタクヘリオスとダイイチルビーといい、競走馬も恋(?)はなかなか実らないものである。
リードワンダー 1978 鹿毛 |
アローエクスプレス 1967 鹿毛 |
*スパニッシュイクスプレス | Sovereign Path |
Sage Femme | |||
*ソーダストリーム | Airborne | ||
Pangani | |||
キクノホウラン 1971 鹿毛 |
*フィダルゴ | Arctic Star | |
Miss France | |||
ロイヤルベエンチヤ | *ロイヤルチャレンヂャー | ||
*ネヴアーヴエンチユアー | |||
シンシラオキ 1978 栗毛 FNo.3-l |
シンザン 1961 鹿毛 |
*ヒンドスタン | Bois Roussel |
Sonibai | |||
ハヤノボリ | ハヤタケ | ||
第五バツカナムビユーチー | |||
フーセン 1973 鹿毛 |
*ハードリドン | Hard Sauce | |
Toute Belle | |||
ゴーフウ | ハタカゼ | ||
コンゴーセキ |
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最終更新:2025/03/26(水) 14:00
最終更新:2025/03/26(水) 13:00
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