スチーフンイワサザイとは (スチーフンイワサザイとは) [単語記事]

スチーフンイワサザイとは、スティーヴンズ島にかつて生息していたスズメの仲間である。絶滅動物の一種。

スティーブンイワサザイなどとも呼ばれる。

概要

現在判明しているスズメの仲間の中で、唯一飛ぶことが出来なかった鳥である。

1892年、3人の灯台守と、それらの家族がスティーヴンス島へと足を踏み入れた。彼等は、妊娠した猫をこの島に連れ込んでいた。

元々この島には、二種類のイワサザイがいると、灯台を完成させた建築士の報告があった島でもあった。

4ヶ月ほど経ったある日、灯台守のデヴィッド・ライオールの元に、飼い猫が一羽の小鳥を狩り、運んできた。見覚えのない鳥だったため、ウォルター・ブラーという自然学者に標本を送ってみると、ブラーはそれが新種の鳥だと断定した。

さらにトラヴァースという男にこの鳥を見せると、すぐにトラヴァースはこのイワサザイの貴重性に勘付いて、9羽の標本を手に入れた。そして彼は、ウォルター・ロスチャイルドという、ブラーとは違う 学者に高い値段で売りつけた。
ロスチャイルドもまたそれが新種の生き物だと見抜き、喜んで標本を買い取り、研究を開始した。そして、後からこのイワサザイに食いついたロスチャイルドは、ブラーより先に論文を発表することとなった。
先に新種と見抜いたブラーは憤慨し、長きに渡って2人は不毛な批判合戦を繰り広げたと言われている。

さて、トラヴァースはこの鳥がさらなる金を生むだろうと確信していた。彼は3人の助手を伴って、スチーフンイワサザイを捕獲しようとして、意気揚々とスティーヴンス島へとやってきた。
しかし、既に悲劇は始まっていた。その頃になると猫は既に人間の元から離れて野生化し、繁殖を繰り返していた。
トラヴァースが島を調査した頃には、もう島特有のイワサザイはおらず、野生化した猫だらけになっていたという。
元々スティーヴンス島にはこういった凶暴な動物がおらず、スチーフンイワサザイのように羽が退化して地上で生活するようになっていった生き物には最後の楽園だった。

鳥の気配など完全になくなったスティーヴンス島の惨状を見て、トラヴァースは捕獲を断念。やがて新聞の社説には「スチーフンイワサザイは絶滅した」という記事が載ることとなる。

外来生物が固有の生態系を破壊したことで、絶滅へと道を辿った顕著な例であり、このことは「一匹の猫によって絶滅させられた生き物」として有名である。日本ではトリビアの泉でも紹介された。
絶滅したのは本格的な調査が始まる前であるとされており、妊娠していた猫が子供を産み、数を増やしたことで、本来発見されるはずだったスチーフンイワサザイもあっという間に狩り尽くされたと考えられる。
つまり、一匹の猫によって……というのは間違いではないものの、厳密には繁殖した猫達に狩られたというのが真相のようである。
これらは後の研究で明らかになったことであるが、さらにこの後、この猫達は繁殖しすぎたことで島の自然をも脅かし始めた。これは由々しき事態と判断され、やがてこの猫達は人間によって全て駆除されたといわれている。

スチーフンイワサザイ発見された個体数は15、16羽程度であり、生態を研究される前に絶滅したため、この鳥についての詳しいことはわかっていない。
一応判明していることは昆虫を食べていたということ、メスのほうが大きいということ、そしてこの島に追い込まれるまではもっと広く分布していたが、ネズミに卵を襲われ徐々にこのスティーヴンス島のような小島へと追いやられていったということである。