エリート主義(英:elitism エリーティズム)とは、思想の1つである。選良主義とか精鋭主義とも表記する。
反対の言葉はポピュリズムである。類似の言葉は貴族主義(貴族制)である。
エリート主義とは、優秀な人物(エリート)に財産や権力を与えて社会の発展の原動力にしようという思想である。
エリート主義を支持する者は、大衆の知性の低さを問題視する傾向があり、衆愚政治を警戒する傾向がある。「愚かな大衆に政治を任せられない」「馬鹿な大衆は政治に関わる資格がない」と言い放って大衆の発言権を剥奪し、「エリートに政治を任すべきだ」「賢いエリートは政治に関わる資格がある」と言ってエリートに発言権を集中させるというのが、エリート主義の支持者の傾向である。
エリート主義と貴族主義は、一部の点で異なっているが、多くの点で共通している。
エリート主義は、「筆記試験などで能力を証明したエリートに財産や権力を与えるべき」という思想である。一方で貴族主義は「世襲貴族や『世襲貴族のような存在』に財産や権力を与えるべき」という思想である。
世襲貴族や「世襲貴族のような存在」の中には、筆記試験で能力を証明できる者もいるが、筆記試験で能力を証明できない者がいる。しかし世襲貴族や「世襲貴族のような存在」は、ほとんどの場合において「育ちが良くて上品で優雅な振る舞い」「おっとりとした明るい性格」といった特徴を持つ。
「育ちが良くて上品で優雅な振る舞い」「おっとりとした明るい性格」といった特徴を一種の能力とすれば、世襲貴族や「世襲貴族のような存在」は高い能力に恵まれている人々ということになり、貴族主義は一種のエリート主義ということになる。
新自由主義(市場原理主義)という経済思想がある。この思想を支持する者は所得税の累進課税を弱体化させてエリートの可処分所得を増やす政策を支持する傾向がある。
株主至上主義(株主資本主義)という経営思想がある。この思想を一言で言うと、企業の従業員に支払う人件費を減らして、企業の株主に支払う配当を増やそうというものである。この「企業の従業員」を「大衆」に置き換え、「企業の株主」を「エリート」に置き換えると、エリート主義になる。
成果主義や能力主義という経営思想がある。これらの思想を一言で言うと、成果を出せなかったり能力が低かったりする者の給与を減らし、成果を出したり能力が高かったりする者の給与を増やそうというものである。この中の「成果を出せなかったり能力が低かったりする者」を「大衆」に置き換え、「成果を出したり能力が高かったりする者」を「エリート」に置き換えると、エリート主義になる。
『自助論』という書物がある。自助をすることができず他人の助けを求めてばかりの人を軽蔑し、自助をしっかり行って他人の助けを求めない人を尊敬する著者が書いた書物である。この中の「自助をすることができず他人の助けを求めてばかりの人」を「大衆」に置き換え、「自助をしっかり行って他人の助けを求めない人」を「エリート」に置き換えると、エリート主義になる。
「働かざる者食うべからず」という思想がある。この思想は「能力が低くてロクな働きができない者は食えない程度に給与を減らしてよく、能力が高くて目覚ましい働きができる者は腹一杯に食える程度に給与を増やすべきである」という考えを導くものである。この中の「能力が低くてロクな働きができない者」を「大衆」に置き換え、「能力が高くて目覚ましい働きができる者」を「エリート」に置き換えると、エリート主義になる。
「自由及び権利には責任及び義務が伴う」という思想がある。この思想は「実力が低くて責任及び義務を果たせない者は自由及び権利を行使すべきではなく、実力が高くて責任及び義務を果たせる者が自由及び権利を行使すべきである」という考えを導くものである。この中の「実力が低くて責任及び義務を果たせない者」を「大衆」に置き換え、「実力が高くて責任及び義務を果たせる者」を「エリート」に置き換えると、エリート主義になる。
優生学(優生思想)という思想がある。「無能を死なせてしまえ、有能を生き残らせろ」という思想である。エリート主義を極端にすると優生学になるので、エリート主義は優生学の入り口ということができる。
租税財源説という税制思想がある。「政府は、支出をまかなう財源として租税を徴収している」と考える思想であるが、「政府の支出の全体像についてよく知らない者は租税に関する議論に参加すべきではなく、政府の支出の全体像をよく知っている者のみが租税に関する議論に参加すべきである」という考えを導きやすい思想である。そして「政府の支出の全体像についてよく知らない者」を「大衆」に置き換え、「政府の支出の全体像についてよく知っている者」を「エリート」に置き換えると、エリート主義になる。
格差社会や階級社会といった社会形態は、エリート主義との親和性が高い。
制限選挙や不平等選挙といった選挙制度は、エリート主義との親和性が高い。
カルト宗教団体は、エリート主義を体現する存在である。
カルト宗教団体は、①「人々の生命・身体・自由に危害を加える悪がすぐそこに存在する」と言って不安を煽って困惑させ、②「そうした悪を退治できるのは我が教団の教祖だけである」と言って教祖に対して心酔させ、③「我が教団の教祖が悪を退治することを助けるため寄附をしよう」と言って寄附金を信者から巻き上げる存在である。
「高い能力を持つ優秀な教祖に寄附金が集まるようにして、優秀な教祖が教団を引っ張っていくようにしよう」という主張をするのがカルト宗教団体に広く共通する性質である。「高い能力を持つ優秀な教祖」を「エリート」に置き換えると、エリート主義になる。
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最終更新:2025/12/13(土) 19:00
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