クロストリジウム

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クロストリジウムとは、細菌のグループの一つ。正確にはクロストリジウム属という。

概要

ウェルシュ菌やディフィシル菌などが含まれる細菌のグループ。

クロストリジウム属の細菌に共通している特徴としては、

• 空気（酸素）が苦手である（偏性嫌気性）。酸素がほとんど無いところでしか発育できない。
  • だからヒト（人間）・動物の腸内や土壌のような酸素が少ない環境を好む。食中毒を起こすこともあり、特に煮込み料理（カレー、シチューなど）や発酵食品、缶詰、真空パック、蜂蜜などの酸素が少ない食べ物が原因となりやすい。
• 自身にとって都合が悪い状況になると芽胞と呼ばれる強力なバリアを作って身を守る。

• 芽胞は100℃程度の高温（熱）や乾燥、アルコール消毒、強酸（胃液）、強アルカリにも耐えるほど非常に高い防御力を持つ。
• ちなみに炭疽菌やセレウス菌、納豆菌などのバチルス属も芽胞を作って身を守ることがある。

などがあげられる。

中にはボツリヌス菌や破傷風菌のように猛毒を持つ細菌もいるので注意が必要である。

主なクロストリジウム属の細菌

• ボツリヌス菌

食中毒菌の一つで、主に缶詰や真空パック、発酵食品などが原因となる。猛毒のボツリヌストキシンを産生し、重度の神経障害を起こす。

今は抗毒素血清で治療できるようになったが、大至急治療しなければ致死率が非常に高い。生物兵器として警戒されている細菌でもある。

• 破傷風菌

主に傷口から感染する（特に土壌で汚れた傷や深い刺し傷が危険）。猛毒のテタノスパスミンを産生し、激しい筋肉の痙攣を起こす。

呼吸器の筋肉が痙攣すると呼吸困難から死に至ることもある。致死率が50%に達することもあり、（ペスト菌や炭疽菌などと並び）あらゆる細菌の中でもトップクラスで危険である。

ちなみにテタノスパスミンに対する治療薬（抗毒素血清）や予防のためのワクチン（トキソイド）は一応あるが、万が一発症してしまったら大至急治療しなければならない。

• ウェルシュ菌

食中毒菌の一つ。カレーやシチューなどの煮込み料理が原因となりやすい。煮込み料理は空気をよくかき混ぜて調理したり、小さめの容器に分けたりすると（酸素が入りやすくなるため）ウェルシュ菌による食中毒の予防になる。

ウェルシュ菌による食中毒では激しい腹痛や頻回の下痢など胃腸炎の症状があらわれるが、数日程度で回復する。致死率は低い。

ただしウェルシュ菌が傷口から侵入した場合は非常に危険である。ウェルシュ菌の毒素によってガス壊疽という病気になることがある。ガス壊疽になると筋肉が壊死して（壊死性筋膜炎に似た）激しい痛みや腫れが起こり、合併症として敗血症になることも多い。早急に抗生物質や手術で治療しなければ死亡することも多い。

• クロストリジウム・ディフィシル（ディフィシル菌）

偽膜性大腸炎という病気を起こす。普段はおとなしいが、他の腸内細菌（大腸菌、乳酸菌など）が減ると暴走する日和見菌である。特に抗生物質（抗菌薬）によって他の腸内細菌が死滅した際に偽膜性大腸炎が起こりやすくなる。

大腸が爛れて激しい下痢が起こり、重症化すると大腸から出血して粘血便（下血）が出ることもある。重大な合併症として下痢による脱水症状や大腸穿孔（大腸に穴があく）などがある。特に穿孔した場合は緊急手術をしなければ死亡する可能性が非常に高い。

偽膜性大腸炎に罹った場合は原因となった抗生物質をすぐに中止し、代わりにディフィシル菌を退治するための別の抗生物質（バンコマイシンなど）を使用する。