ズムウォルト級ミサイル駆逐艦とは、アメリカ海軍が開発したぼくのかんがえたさいきょうのミサイル駆逐艦である。
様々な先進技術を注ぎこまれたアメリカ海軍の威信をかけた最新鋭の水上戦闘艦。
ステルス性を確保するために類を見ない奇抜な外見をしている。
艦級名のズムウォルトは米海軍のエルモ・ズムウォルト・ジュニア提督にちなむ。
ちなみに艦種は「駆逐艦」だがそのサイズはタイコンデロガ級ミサイル巡洋艦を超えるビッグサイズ。
駆逐艦とは一体……
「21世紀の駆逐艦、というか21世紀の海軍の仕事は何だ!」
「ハッ!火力という火力をしこたま陸上にたたき込むことであります!!」
という思想の元、火力という火力をしこたま陸上にたたき込む「対地駆逐艦」がズムウォルトである。
これらを搭載し、21世紀の最先端を走る最高峰の水上戦闘艦として完成・量産されるはずだった。
難しい要求に応えるべく船体は大型化し、艦種は「駆逐艦」だが排水量は満載でおよそ1万5000トン。
この数字はタイコンデロガ級ミサイル巡洋艦(満載9500トン程度)より遥かに大きい。
でも太平洋の対岸には「いずも」という満載2万7000トンの自称駆逐艦(DDH)がいるので問題ないよね?
2016年5月に1番艦「ズムウォルト」が米海軍に引き渡された。10月に就役する予定。
2番艦「マイケル・モンスーア」と3番艦「リンドン・B・ジョンソン」の2隻も建造中。
3隻の建造費は計約225億ドル(約2兆4700億円)に上ると予想されている。[1]
ズムウォルト級は「強力な戦闘能力で迫る敵をねじ伏せながら、艦砲とミサイルを陸にたたき込む」
という、お前は戦艦の生まれ変わりか何かかと言いたくなる漢らしいコンセプトの元に誕生した。
この無茶をかなえるべく、そして21世紀の次世代戦闘艦の姿を示すべく、先進技術が多数盛り込まれている。
先進的なステルス船体
沿岸に近づいて対地攻撃を行う任務上、その接近を悟られないためにも高いステルス性が要求された。
そこで船体は水線部が一番幅が広く、上にいくほど狭くなる、前から見ると三角形のような形になっている。
これはレーダー波を上に反射して逸らすためのもので「タンブルホーム船形」という。
上部構造物も単純な平面で構成され、各種アンテナもそれに埋め込むことでステルス性を高めている。
結果、レーダー反射断面積(RCS)はアーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦のわずか50分の1である。
その外見はまさしく海に浮かぶピラミッド。
統合電気推進の採用
ズムウォルトはエンジンでスクリューを直接回さず、電気を造ってからモーターでスクリューを回す。
電力は推進力にも各種電子機器にも必要に応じて自在に配分できる構造となっている。
これを統合電気推進(IPS)という。
一旦動力を電気に変える手間があるが、モーターでスクリューを回すため、水中に響く騒音も少ない。
その発電能力を統合電気推進ではないこれまでの艦艇と比較すると
| ズムウォルト級ミサイル駆逐艦 | 合計約77.6メガワット |
| アーレイ・バーク級イージス駆逐艦 | 合計約9メガワット |
| あきづき型汎用護衛艦 | 合計約7.2メガワット |
| ニミッツ級原子力空母 | 合計約64メガワット |
ご覧のとおりぶっちぎり。同レベルなのが原子力空母という有様。
また、既存の艦艇と桁違いの発電能力故に、大電力を装備する機器の追加搭載が可能である。
将来的には2門ある主砲のうち片方を電磁加速砲(レールガン)に変更することも検討中。
発射時の速度マッハ7、射程は300kmを超えるが、使用時には艦内電力の50%が必要になるという。
お前は波動砲か何かか。
先進的な艦制御システム「TSCE-1」(全艦コンピュータ環境)
ズムウォルトは艦内の各種システム全てをネットワーク上に連接した先進的な構成となっている。
各機器は標準化したソフトとハードを最大限に活用するため、アップデートも容易。
また、艦内ネットに接続した自動消火システムなども装備され、人員削減に大きく貢献した。
従来人力が主体の隔壁閉鎖や消火作業を大幅に省力化した画期的なもの。
戦闘システムもかのイージスシステムを新たな規格に組み直し、ネットワークに接続する。
結果、ズムウォルトは対地駆逐艦と言いつつも、艦隊防空も弾道ミサイル防衛もこなせるはずだった。
「主砲」155mm先進砲システム(Advanced Gun System:AGS)の搭載
第二次大戦以降、艦砲は戦闘艦にとってサブウェポンでしか無かったが、ズムウォルトでは違う。
徹底的な地上攻撃のためステルス性を配慮した新型砲「155mm先進砲システム」を2門装備している。
従来の127mm砲と比べ、大型化により威力射程共に大きく向上しており、強力な対地攻撃が可能である。
特にロケットアシストによる射程154km&GPS誘導を誇るLRLAP誘導砲弾は最大の特徴。
これにより従来の艦載砲では不可能な遠距離から精密で安価で継続的な対地攻撃が可能になるはずだった。
少し高価なLRLAPを使うほどでもない目標向けの通常弾も存在するはずだった。
なお従来の砲弾より倍程度の長さの誘導砲弾を扱うために、砲身を一度真上に向けてから装填する。
また口径は同じだが陸軍の155mm砲と弾薬の共通性はない。
前述のように2門のうち片方を射程300km超のレールガンに変更する計画も存在する。
「副砲」57mm砲(Close In Gun System:CIGS)の搭載
ヘリ格納庫上にスウェーデン開発のボフォース57mm単装速射砲を並列に2門装備している予定だった。
既に海軍では沿岸域戦闘艦(LCS・フリーダム級、インディペンデンス級)
ほかにも沿岸警備隊のバーソルフ級カッター(大型巡視船) で主砲として採用されている実績ある武器。
ズムウォルトでは接近してきた小型高速船やミサイルなどに対処する近距離兵装として搭載している。
スウェーデンのステルスコルベット・ヴィスビュー級同様、砲身を下に傾けてカバーに収納する方式をとった。
これによりステルス性を確保しているがここまで凝った艦はこの2艦種だけ。
ちなみに外見は先進的だが砲自体の原型は1966年採用と結構古い。砲とか銃ではよくあること。
新型ミサイル発射装置(Mk57 PVLS)の採用
大型化する新型ミサイルへの対応と、被弾時の被害極限のため、新型のMk57 PVLSを搭載する。
既存のMk41VLSよりも大型なミサイルが使える上、ハード的には既存の各種ミサイルに対応している。
最大の特徴はその設置位置。
従来のVLSは艦の外壁に接しないよう、中央付近に配置されることが多かった。
これはミサイルの至近距離での爆発の破片からミサイルを保護するのには向いている。
一方で仮に搭載するミサイルが誘爆した場合には船体に大きなダメージを受けることになる欠点がある。
ところがこのMk57 PVLSはあえて船体の外壁に接するように装備される。(今までのように中央にも積める)
正確には二重構造の船体の装甲の施された内殻と外殻の間に設置されるのだ。
これはミサイルとVLSを船体を守る防御層のひとつにするという従来とは真逆の発想によるもの。
内殻の装甲により仮に被弾し誘爆しても被害は少ない。
コイツやっぱり駆逐艦じゃなくて戦艦じゃね?
ズムウォルト級は間違いなく画期的な戦闘艦であった。
専門誌においても多数の特集が組まれ、その存在は各国海軍の次世代艦構想に大きな影響を与えた。
しかし、夢は夢でしかなかったのである。
レーダー開発の遅れとそれに伴う能力縮小
当初、ズムウォルトにはデュアルバンドレーダーと呼ばれる二種のレーダーが搭載されるはずだった。
しかし、遠距離捜索用の広域捜索レーダー(VSR)が開発段階で出力不足が判明、搭載が取りやめられた。
このため、近距離捜索&火器管制用の多機能レーダーに、広域捜索用ソフトウェアを積んで補っている。
コンピュータシステムの開発の失敗
TSCE-1は艦の戦闘システムから機関制御システム、さらには自動消火システムまで含む大規模な物である。
その開発には困難が予想されたが、案の定開発は難航。
特にソフトウェアのお化けとでもいうべきイージスシステムの膨大なプログラムの統合に失敗。
結果、前述のレーダー開発の失敗もあって艦隊防空ミサイルSM-2と弾道弾迎撃ミサイルSM-3の搭載が中止。
さらにコストダウンのためか対潜用のアスロックの搭載まで中止された。
そのため、ズムウォルトは対地攻撃用のトマホークと個艦防空用のESSMしかミサイルを使えないのである。
どうしてこうなった。
予算超過に伴い続く搭載兵器のリストラ
コンピュータシステムの開発とは関係ないが、予算超過のためか各所にコストダウンのあおりが来る。
当初は艦尾などに魚雷発射管を搭載する計画だったが、これはどうやら取りやめになった模様。
魚雷防御システムを後から装備できる余地を確保しておくだけになった。
対潜水艦攻撃力を持たない上に魚雷を装備していない…コイツやっぱり戦艦じゃないのか?
ちなみに57mm砲も予算の都合で対水上のみの30mm機関砲にダウングレードされることが決まった。
こちらは米海軍の一部にあるらしい「ESSMありゃCIWSは不要ッ!」なESSM万能論のせいかもしれない。
あと一番大事なVLSも、当初は地上攻撃艦にふさわしい120セル以上の搭載を予定していた。
が、計画が進むごとにコストカットであれよあれよと減っていき、最終的には80セルである。
ちなみにアーレイ・バーク級は合計96セル。何故ここで減らしてしまったのか?
主役の誘導砲弾LRLAPの中止とまさかの通常弾なし New!
ズムウォルト搭載武器のなかでもまさにアイデンティティといっても過言ではない155mm砲とLRLAP。
ところが建造数の削減に伴う砲弾の調達数減少のためコストが急騰。
ズムウォルトの試験用に購入された80発の導入を最後にLRLAPが中止される見込みとなった。
さらに通常砲弾も用意されていないことが判明。
ズムウォルトの155mm砲は陸軍の砲と互換性もないので現状ズムウォルトの撃てる弾がない。
まさかアメリカ海軍で「たまに撃つタマがないのが玉に瑕」となるとはこのリハクの目をもってしても(
それら諸々によるコストアップ
先進的すぎる技術をつめこみすぎたこと、開発段階での七転八倒の結果価格は高騰。
そのお値段は一隻あたり50億ドル。日本円にして約5000億円である。
これを海自護衛艦に換算すると
あたご型護衛艦3隻 or あきづき型護衛艦6隻 or いずも型護衛艦4隻
を買っておつりが来るレベルである。
また、米海軍のニミッツ級原子力空母1隻にも相当するとされる。
空母と同じ値段の駆逐艦とか……コイツやっぱり戦艦じゃ(ry
ズムウォルト級は当初、スプルーアンス級駆逐艦の後継として30隻以上の大量建造が検討されていた。
が、跳ね上がるコスト故に大量生産の計画はキャンセル。
削減後、当初は2隻のみの建造とされたが、造船所の仕事確保のため、3隻目の建造も決定された。
この展開、かつてのシーウルフ級攻撃型原潜とまんま同じである。
また、ズムウォルト級の船体を活用する予定だった準同型艦の新ミサイル巡洋艦CG(X)もキャンセルされた。
このため、スプルーアンス級とタイコンデロガ級の後継艦がほぼ未定に近いことになっている。
現状のところでは、アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦のさらなる追加建造で補う模様。
というわけでアーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦の建造数は目下のところ120隻を越える見込みである。
この数は二次大戦後の水上戦闘艦としてはぶっちぎりのトップ。
第二次大戦中の最多量産駆逐艦フレッチャー級ですら175隻なんですがこれはいったい……。
しかし、アーレイ・バーク級もいい加減に船体の設計が古く、発電能力や艦内容積の不足が深刻化。
ズムウォルトの遺産である先進技術を使った次世代装備がどこまで搭載できるか怪しいところ。
米海軍の迷走はしばらく続きそうである……。
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コラッ、そこ!「開発者たちは無能だ」と決めつけるのは時期尚早だぞ。
膨大な予算をつぎ込み、技術の粋を集め、長い時間をかけて開発した兵器が
「なんだこれは? 意味不明だぞ」
「こんなもん実験室でしか使えねーよバーカバーカ」
「やっぱり予算には勝てなかったよ……」となってしまうのは、珍しい話ではない。
ましてや、今までに無い新しいコンセプトを生み出そうとしているのだから、なおさらである。
かつて、原子力ミサイル巡洋艦「ロングビーチ」に搭載されたフェーズドアレイレーダー『SCANFAR』
それ自体は整備性と信頼性を欠く存在(早い話が失敗作)だった。
しかし、その経験が後のイージスシステムの開発に生かされているように「失敗は成功の元」なのだ。
とはいえ、ズムウォルト級と派生艦CG(X)の計画中止以降で米海軍が計画した艦は
アーレイ・バーク級イージス駆逐艦 フライト 3 & 4 このままいくと建造数120隻超え
小型水上戦闘艦SSC(Small Surface Combatant) 要するにLCS武装強化モデル
と見事に新型艦ではなく既存の改良発展型で、せっかくの新技術を活かしきれる機会がない。
ズムウォルトで大失敗したので新型艦作る予算を許してもらえないからしょうがないね。
しかも対テロ戦で舐めプしてたところに中国海軍の大増強でこの水上戦闘艦整備の問題が表面化。
それを盟友海自で護衛艦整備に関わったリアル元提督に専門誌「世界の艦船」でdisられる始末。
米海軍の明日はどっちだ!
でもどうせリアルチート米海軍ならなんとかしちゃうんだろうな。
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最終更新:2025/12/12(金) 23:00
最終更新:2025/12/12(金) 23:00
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