メアジードーツとは、日本で結構誤解されているフシが多いアメリカの元競走馬・繁殖牝馬である。
人によっては牡馬と誤解していることもある。
父はハイペリオンの傍流にして豪州で一大センセーションを巻き起こした大種牡馬Star Kingdomの血を引くNodouble、母はアレッジドの近親であるAvalanche Lilyという血統。
血統は抜群に良いわけでもないが、なんか言うほどダメな血統ではない。
ちなみに競走成績はと言えば、2歳の時にデビューするが見事に負け、その後3歳になり勝利を挙げるが、当時走っていたダートの重賞ではGⅠアラバマステークスで3着に激走したのが一番いい成績であり、芝転向となった。ちなみに13戦して4勝。一般競争のみだがそれなりには勝っている。
4歳になって芝で小開花。ついに11ハロン(2200mくらい)のGⅢヤーバブエナハンデで重賞勝利を飾る。 この年7戦3勝。
5歳になると完全に開花し、春先にGⅠで100万ドル牝馬ことザベリワンの2着に食い込むとヤーバブエナハンデ連覇を含む重賞3連勝を飾る。強い。
しかしその後実績を積んだのが逆に災いしハンデが重くなり、伸び悩む。そしてそんな中、日本から招待状が陣営に届いた。
そう、国際招待競争・ジャパンカップの第一回に招待されたのである。
「日本馬を世界レベルにするためには、世界を知らねばならない!」というお題目の元、作られたジャパンカップであったが、この第一回はいきなり本気を疑わざるを得ないことに、欧州馬にはハナから誘いすらかけていなかった。
まあ、シーズンオフなのは間違いないし、2011年になっても香港も含めた11月の競争はBCを除きカルティエ賞に何の影響ももたらさないというあたりの事情もあるので、誘ってもナシのつぶてだっただろうとは思うが。
というわけで、米を中心に必死に招致運動を繰り広げた。牝馬ながら1980年のケンタッキーダービーを制し、残る二冠も2着二回と大いに実力を見せたGenuine Risk、
さらに1981年の米二冠馬Pleasant Colony、芝ダート兼用の米古馬最強せん馬・この年に収得賞金世界記録を更新、10戦8勝GⅠ6勝を挙げたジョンヘンリー、前述の100万ドル牝馬ザベリワンらが予備登録していたが
Genuine Riskは怪我で9月に引退、Pleasant Colonyは来るわけもなし、ジョンヘンリーは激戦の疲れもあり本登録せず回避。
その結果、ザベリワンくらいしか目玉となり得る馬がいなくなってしまったのだ。日本の競馬ファンは落胆を隠さなかった。
結局アメリカ代表3頭(うち二頭牝馬)、カナダ3頭(当時からアメリカより格落ち扱い)、インド1頭(誰だオウンオピニオン)、トルコ馬1頭(直前に故障し回避、日本観光しただけ)という、なんかさもしい扱いされるメンツになったのである。
そりゃホウヨウボーイやモンテプリンスが大いに期待されたわけである。うん、期待するよね…
そんな中、メアジードーツは陣営が「水を撒け!水を!」 と回避すらちらつかせて迫るという絶好調ぶりであったが、冬毛ボーボーでみすぼらしく見えたせいか体調不良すら言われ5番人気にとどまった。なんか言われるほどしょぼい扱いはされてない。
レースはサクラシンゲキ特攻でハイペースとなり、ホウヨウボーイやモンテプリンスが戸惑う中、二番手から楽に抜けたフロストキングを外からかわして突き抜け、メアジードーツが優勝。第一回ジャパンカップ優勝馬に輝いた。
ついでに、当時の府中2400のレコードを1秒、及び2400の日本レコードも0.5秒更新した。
この結果を目の当たりにし、日本競馬界は絶望のズンドコに落ちた。「冬毛ボーボーの二流牝馬に負ける天皇賞馬とは一体」「あんなタイムで走るのかよ、二流牝馬も…」「これは10年以上ジャパンカップじゃ勝てねーわ…もう無理だ…おしまいだぁ…」
という言説が流布された。だが待って欲しい。果たしてこの結果は額面通り受け取ってよいものか。
タイムについて言えば、スプリンターであるサクラシンゲキがバカ逃げした影響が非常に大きいし、彼女はハイペース城東のダート路線でもGⅠで3着があるようにハイペース対応は慣れていた。少なくともステイヤーのホウヨウボーイやモンテプリンスよりは適性は高かったであろう。
それに、冬毛ボーボーだからといって絶対に手入れ不足とか不調とは言い切れない。実際彼女は絶好調であった。
さらに言えば、元から条件さえ整えばザベリワンに肉薄するだけのポテンシャルはあったのである。斤量背負ったら重賞でも負けてたけどそれはそれ。
おまけに陣営がJRAを脅して水を撒かせ、メアジードーツの得意なほんのり柔らかい馬場になっていたということもあった。ついでに日本の総大将ホウヨウボーイは牝馬がすっごい苦手であった。ザベリワンやメアジードーツが前にいて怯んだのでは…
ともかく、冷静に考えたら条件の揃った一世一代の大激走と思えたであろう結果といえるにも関わらず、二流牝馬にぐうの音も出ない負け方をしたという側面ばかりが強調され、日本馬も彼女もやや不当に貶められたり持ち上げられたりしたのは否めない。そもそもメンツが薄いとはいえ5番人気に推されていたんだが。
しかし、二年もしない内にキョウエイプロミスが競争生命と引換にした激走で2着に飛び込んで日本に自信を回復させ、その勢いのままカツラギエースが壁をぶち破った。 タブーとは人が作るものにすぎないのである。シービーはJC散々だったが。
話をメアジードーツに戻すが、ジャパンカップの勝利を勲章に引退し繁殖牝馬となった。米で走ってただけでは付けられないような種牡馬をあてがわれたがイマイチ結果は出せなかった。
第四子の牝馬はチリで重賞馬を産んだらしいが、現在までつながっているかは不明である。
ちなみに第一子のメアジーダンサーと、第二子ハイブリッジスルーが日本に輸入され種牡馬となったが鳴かず飛ばずであった。
1戦0勝と不出走という、言い方は悪いが母の才能の欠片もない駄馬がありがたがられたあたり、メアジードーツが与えたインパクトは本当に大きかったと実感させられる出来事であった。
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最終更新:2025/12/13(土) 22:00
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