妖怪アパートの幽雅な日常とは、香月日輪による小説作品。通称は妖アパ、妖怪アパート。
単行本版は全10巻。現在は講談社より文庫版6巻が発売中。
「月刊少年シリウス」の2011年7号より、深山和香による漫画版の連載が始まった。
概要
YA!ENTERTAINMENTより2003年から刊行され、2009年に完結した。2004年には、第51回産経児童出版文化賞フジテレビ賞を受賞している。
今作は主人公・夕士が登場人物達との交流を通し、成長していく姿を描いたものである。タイトル通り妖怪達が住むアパートで暮らしている為、周囲は妖怪やら霊能力者だらけ。なので、たまに妖怪・幽霊等と戦うこともあるにはあるが、基本的に戦闘シーンは重要な場面でしか出てこない。
なお作中、アパートでの朝食・昼食・夕食など、食にまつわるシーンが非常に鮮明に描かれているのだが、こちらに関しては番外編「妖怪アパートの幽雅な食卓 るり子さんのお料理日記」として単行本が発売されている。
香月氏による別作品「地獄堂霊界通信」シリーズとは、世界観がリンクしている為、先に地獄堂を読んでいる人にとっては、馴染み深い土地・名前が結構出てくる。もしかしたら、地獄堂を先に読んでから妖アパを読むと、より楽しめるかもしれない。
ちなみに女性キャラも出てはくるのだが、男性キャラの割合(と絡み)がかなり多い為、特定のキャラとの恋愛描写はない。むしろ見る人によっては、ボーイズラブ的描写(特に5巻以降)が多い作品だと思われる。
あらすじ
主人公・稲葉夕士は早くに両親を亡くし、祖父の家で長らく居候生活をしていた。しかし家族との折り合いは悪く、春からの高校入学と同時に祖父の家を離れ、寮生活をすると決めていた。そして高校生となったこの春、めでたく寮生活をする予定だったのだが、なんと下宿するはずだった学生寮が火事で焼失してしまう。
仕方なく格安なアパート「寿荘」に住むことになったのだが、そこに住んでいたのは少々変わった住人達だった。
妖怪・幽霊・人間が入り混じるこの「妖怪アパート」で、時には笑い、時には泣きながら、いつもとは違う不思議な日常を送っていくことになるのだが…。
主な登場人物
全登場人物を記載しているとキリが無いので、あくまで主な登場人物のみを記載する。
最初に補足しておかなければならないこととして、1~2巻までが1年生、3~7巻までが2年生、8~10巻までが3年生の時を描いている。その為、登場人物の年齢も巻によって変化していく。
妖怪アパートの住人
- 稲葉 夕士(いなば ゆうし) - 202号室
- 主人公。条東商業高校に通っている。短髪で細眉の二重まぶたをしているが、普段から色々と我慢しているのが祟って目つきが悪い。育ちの関係から結構な現実主義者であり、当初将来は公務員かサラリーマンになると決めていた。しかし、アパートに住み始めてからは、考え方に少しずつ変化が生じていく。
2巻より、ひょんなことから魔導書「小(プチ)ヒエロゾイコン」の使い手になってしまった。しかし力が無さすぎて残念な形でしか式鬼達を召喚出来ない為、ブックマスターを目指して修行の日々を送っている。
一方高校では、田代達(通称・姦し娘)3人組と一緒にいる事が多い。更に5巻よりその輪に千晶が加わった為、周囲は大賑わいと化している。
- 久賀 秋音(くが あきね) - 204号室
- 人間。生まれながらの霊能力者。夕士より一つ年上のお姉さん。性格は明るく、しかも物凄い大食い。鷹ノ台高校に通っており、夜には「月野木病院」で働いている。実は小学6年生の頃に能力を認められ授けられた偽名であり、本名は鈴木まゆこである。毎回、夕士の霊力トレーニングに付き合っている。
- 一色 黎明(いっしき れいめい) - 102号室
- 人間。詩人であり、有名な大人向け童話作家。作風は難解で高尚だが、ちゃんと熱狂的なファンがいる。一体いつ仕事をしているのか分からないが、一応本も出しているらしい。実は凄い金持ち。香月氏の別作品「僕とおじいちゃんと魔法の塔」でも一色家が登場するが、果たして関係があるかどうかは不明である。
- 深瀬 明(ふかせ あきら) - 103号室
- 人間。通称・画家。かなりワイルドな暴走族っぽい人。普段から愛犬のシガーを引き連れている。女性人気は結構凄い。海外でも人気のある画家であり、個展を開くなどもしている。…が、自身(他人)の個展会場で暴れることから「ゴジラ」だと関係者からは嫌がられているらしい。
- 龍さん(りゅうさん) - 203号室
- 高位の霊能力者。長身で端正な美形であり、長い黒髪に黒い服を着ている。立ち振る舞い等々から、夕士と秋音にとっては憧れの存在である。しかしその見た目と雰囲気、上院町に友達がいることなどから、読者には「あれ、もしかして地獄堂のあの人じゃね?」と疑われている。詳しくは「地獄堂霊界通信」シリーズを参照にすべし。
- 古本屋(ふるほんや)
- 人間。世界各地を飛び回り、怪しいものを取り扱う怪しい人。丸眼鏡をかけている。一応住人なので、たまにアパートへ帰ってくる。香月氏による別作品「下町不思議町物語」にも登場している。
- 骨董屋(こっとうや)
- 人間。東洋生まれ東洋育ちのヨーロピアン。職業は商人であるが、様々な次元を飛び回り、これまた怪しい品を探して旅をしている。こちらもたまにアパートに戻ってくる。
- まり子さん - 101号室
- 幽霊。B:89 W:58 H:90という超ナイスバディなお姉さん。幽霊になってだいぶ経つ為、周囲曰く中身はおっさん化している。現在は成仏するのを辞め、妖怪託児所にて保母さんとして働いている。
- クリとシロ
- 幽霊。クリは人間で言えば2歳くらいの幽霊。とある理由から喋ることが出来ない。一方、シロはクリに付き添う白いメス犬。元は近所に住んでいた野良犬だが、生前からクリの面倒を見ていた。ちなみに2人とも命名は一色さん。母親の霊に縛られ続けている為、成仏したくてもすることが出来ない。
- るり子さん
- 白く美しい手だけの幽霊。いつも食堂で皆に料理を振る舞っている。手だけしかないのは、殺害された後でバラバラにされた為。夕士とは基本筆談だが、秋音ちゃんなど霊能力を持った人とは手の動きやらテレパシーなどで会話しているらしい。
- 佐藤さん(さとうさん) - 208号室
- 妖怪。こちらでの偽名は佐藤幸司。見た目は40歳くらい。人間社会に溶け込み、普通に会社で働いて、普通に年を取って…というのを、本人は至って楽しんでやっている。現在は大手化粧品会社「ソワール化粧品」の経理課長。
- 大屋さん(おおやさん)
- 妖怪。その名の通り「寿荘」の大家さん。真っ黒い大きな体に、白い着物を着ている。部屋代徴収はきっちりやる。居留守など姑息な手は全く効かない。ちなみに喋ることはないが、言ってる事は伝わっているので文句は禁物らしい。
条東商業高校
- 千晶 直巳(ちあき なおみ)
- 5巻より登場。名前は女性っぽいが男性である。2年の2学期からやってきた、夕士のクラス(2年C組)の担任教師。登場当初は32歳だった。画家と雰囲気が似ている。これまたルックスがいいので、女子人気は絶大。血が薄い為、よく貧血を起こす。夕士がある事件から救って以降、急激に仲良くなり、何かと一緒にいる事が多くなった。天才的に歌が上手い。
- 青木 春香(あおき はるか)
- 5巻より登場。千晶と一緒にやってきた英語教師。清楚で美しい見た目とは裏腹に、その凄まじい偽善者っぷりから夕士達には嫌われている。一方で女子人気は物凄い…というかパッと見は宗教である。たびたび夕士達とは衝突を繰り返しているが、彼女自身が改心する気配は一切無い。
- 田代 貴子(たしろ たかこ)
- 姦し娘の1人。活発でサバサバとした女の子。1巻で夕士が事故から助けて以来、急激に仲良くなった。趣味は情報収集であり、これに限って田代に叶うものはいない。いつからか腐女子となり、夕士と千晶の関係を色々と面白がっている。この2人は田代曰く「ダーリン&ハニー」とのこと。
- 桜庭 桜子(さくらば さくらこ)
- 姦し娘の1人。性格はおっとりとしており、実は巨乳だと言われている。見た目は少々むっちりしているが、別に太ってはいない。
- 垣内 由衣(かきのうち ゆい)
- 姦し娘の1人。細見でスラっとしており、陸上部ではハードル選手を務めている。意外と短気。
その他
- 長谷 泉貴(はせ みずき)
- 夕士の親友。殴り合いの喧嘩までした仲。容姿端麗・頭脳明晰・実家は金持ちなど何かと凄い人物。将来は父の会社を乗っ取って社長になる予定である為、陰で密かに不良を従えるなど準備をしている。アパートにもよくお土産を持って遊びにくる。クリが好きすぎて堪らない模様。
関連商品
単行本、文庫版共に内容は同じ。(文庫版のみ、巻末に詳細な人物紹介が載っている)
既に完結している為、続きが気になる方は文庫版が10巻出るのを待つより、恐らく単行本版を読むのが賢明。
単行本版
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文庫版
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