宮崎をどげんかせんといかん

宮崎をどげんかせんといかんとは、都道府県対抗シリーズなどにおける宮崎県のアニメ状況を表したタグである。

なお2007年に当時の宮崎県知事（東国原英夫）が発した「どげんかせんといかん」そのものについては当該記事を参照されたし。

概要

ご当地アニメというワードが誕生し、日本各地でアニメによる聖地巡礼やイベントが行われるようになったが、当然その恩恵を授かる機会が少ない地域も存在する。特に宮崎県は「舞台としても視聴環境としても不毛」と言われており、それについて解説する。

アニメ舞台地でのどげんかせんといかん

先に述べた通り、都道府県対抗シリーズにおいて宮崎県を舞台にしたアニメは皆無に等しく、これまで『ヒャッコ』が紹介されていたが、wikipediaでは九州が舞台としているだけで宮崎県とは書いておらず、紹介する際「宮崎だけ思い浮かばないからとりあえず入れておけ」といった感じで舞台に含めていたと推測される。

さてこの「宮崎県にご当地アニメがない」状況であるが、2020年12月にソニー生命が発表した「47都道府県別 生活意識調査2020」内の「自県の好きなご当地アニメ」という項目で世間に知られることになってしまう。この調査は地元民を対象にとったいわば地元の声がダイレクトに反映されるもので、この中で宮崎県を除く46都道府県を見ると『サザエさん』が東京都と福岡県に入っていたり（波平が福岡出身東京在住なので間違ってはいないし東京は『こち亀』、福岡は『クッキングパパ』でもよかったが…国民的アニメの強さが出た）『ドカベン』が新潟県に入っていたり（確かに作者の出身地は新潟だけど…ドカベン自体は神奈川県が舞台）アニメ過疎県は無理やりご当地アニメをねじ込んだりしているが、いずれにせよ必ず1作品は名前が挙がっていた。しかしこのように無理やり感が強い状況でも、宮崎県だけ「－」、つまり47都道府県で唯一「該当なし」だったのである。一つぐらいはあるだろうと調べてみたが、他の作品で1話だけ宮崎へ遊びに来たとか宮崎の建物っぽいのが出てきたりはするが、宮崎を舞台にしてそうな作品が本当に一つもないのである。

アニメ視聴環境もどげんかせんといかん?

このようにアニメ舞台地として悲惨ともいえる状況の宮崎県であるが、視聴環境もネット視聴が広がる以前は全国でも屈指の不遇地帯であった。まず民放テレビ局が2局しかなく、うちテレビ宮崎はフジテレビを中心に日本テレビとテレビ朝日が混合しているクロスネット局である（もう一つの宮崎放送はTBS系単独）。表面的にはテレビ宮崎のおかげで日本テレビ、テレビ朝日、フジテレビの番組が見れるのであるが、役にいうと3つのネットワークを無理やり詰め込んでいるため当然放送できない番組も発生する。その割を食っているのがアニメで、どういう扱いを受けているのかというと…お察しください。

テレビ宮崎のアニメ放送状況

作品名	全国ネットでの放送局	全国ネットでの放送時間	宮崎県での放送時間
それいけ!アンパンマン	日本テレビ	金曜 10:55 - 11:25	土曜 5:15 - 5:45
名探偵コナン	日本テレビ	土曜 18:00 - 18:30	日曜 1:25 - 1:55
ドラえもん	テレビ朝日	土曜 17:00 - 17:30	土曜 4:45 - 5:15
クレヨンしんちゃん	テレビ朝日	土曜 16:30 - 17:00	（未放送）
プリキュア!シリーズ	テレビ朝日	日曜 8:30 - 9:00	（未放送）
ちびまる子ちゃん	フジテレビ	日曜 18:00 - 18:30	日曜 18:00 - 18:30
サザエさん	フジテレビ	日曜 18:30 - 19:00	日曜 18:30 - 19:00

ご覧のとおり全国ネット通りに流れるのはフジテレビ系列のみで、日本テレビ系列とテレビ朝日系列は深夜と早朝に追いやられている。クレヨンしんちゃんとプリキュア!シリーズにいたっては地上波では見れないのである。なお、TBS系列オンリーの宮崎放送はアニメイズムを全国ネットと同じ時間で放送している。

ここでお気付きだと思うが、大多数を放送しているテレビ東京系列と独立UHF放送局のアニメは一切映らない。宮崎県のケーブルテレビもお隣の鹿児島県からの再送信でテレビ東京系列と独立UHF放送局は対応しておらず、どうしても見たい場合はBSチューナーを購入するしかなかったのである。

但し最近ではネットによるアニメ視聴が整っており、独立UHF放送局系のアニメは月数百円で視聴可能で、テレビ東京系列やテレビ朝日系列で放送されていないアニメもTVerで（しかもこっちは無料）視聴可能である。

詳しく「九州七県のアニメ視聴・アニラジ聴取事情」を参照。

不毛となっている理由

まず宮崎の位置を見てわかると思うが、主な大都市から遠いことが挙げられる。一番近い福岡市ですら新幹線とバスを乗り継いで3時間、自動車で高速をひたすら走行して4時間はかかり、飛行機の路線も健在である。東京や大阪からの場合は基本飛行機で、現在においてはよほどの物好きでもない限り車や鉄道で行く者はいない。このような地理的事情から「宮崎を舞台にしよう」とする作品は出にくい状況で、モデル地として取材しようにも行きづらい。

仮に宮崎を舞台にしたとして、次の壁は「宮崎に何があるの？」である。確かに海もあるし山もあるが、宮崎の海は海流が速くて泳ぎや漁に不向き（わりと暖かく目の前に海があるのにわざわざでかい屋内プールを作ったのはそれが理由）、山にしても宮崎である理由がない。他にも宮崎を連想する単語は出てくるだろうが、「それをメディアにどう生かすの？」と突っ込まれたら言葉に詰まるだろう。さらに歴史的にも宮崎をテーマにしにくく（大河ドラマで宮崎県を舞台にした作品はゼロ。朝ドラは50年以上前に「たまゆら」が放送されたがそれっきり）、まさに「これ詰んでね？」と嘆きたくなる惨状である。

ここで栃木県（まろに☆えーる）や佐賀県（ゾンビランドサガ）みたいに「ないなら呼ぶか作ってしまえ」となったり、徳島県みたいにアニメ舞台がなくても「マチ★アソビ」というアニメイベントを開催したりという動きがあればいいのだが…宮崎県自身がそういった取り組みをする気配がない。原因は単純にテレビ局も自治体も企業もやる気がない、というか呼ぼうにも作ろうにもどうすればいいのかわからないし費用対効果が未知数のため躊躇するのも不毛になっている原因である。

宮崎の春（？〉

立て続けに発表された2つのビッグタイトル

このように嘆く事態であった宮崎であったが、2022年に宮崎を媚態にしたアニメが2つも発表された。 まず1つ目は『【推しの子】』で、2020年より「ヤングジャンプ」などで連載。宮崎が舞台の一つとなり、「かぐや様は告らせたい～天才たちの恋愛頭脳戦～」の赤坂アカが原作、「クズの本懐」の横槍メンゴが作画を務めており、どちらもアニメ化されているので期待値は高く、また「次にくるマンガ大賞 2021」でも1位になる（ちなみに2位が「ウマ娘 シンデレラグレイ」。過去の受賞実績でもアニメ化された作品多数）など宮崎を舞台にした作品で一番アニメ化に近い作品と称されていた。そして2022年6月、ついに『【推しの子】』のアニメ化が発表された。

悲願の宮崎を舞台とした作品のアニメ化で歓喜に沸く中、さらなる朗報が飛び込む。『君の名は。』で爆発的ヒットとなった新海誠の新作映画『すずめの戸締まり』で冒頭部分が宮崎県をモデルとしており、宮崎のアニメ界は「盆と正月が一気に来た」かのようなお祭り騒ぎである。

『すずめの戸締まり』は当初の期待通り大ヒットし、また『【推しの子】』も2023年4月より放送が開始されるとこちらも人気となった。また、2023年5月より新型コロナウイルスが5類に移行され、移動制限が大幅に緩和されたことから宮崎の聖地巡礼は活況に沸く・・・と誰もがそう思った。

無情な現実

しかし現実は『すずめの戸締まり』や『【推しの子】』によって宮崎が活況に沸いているとは言い難い状態である。

まず『すずめの戸締まり』であるが、2022年11月25日に宮崎県の映画館で舞台挨拶こそあったが、それ以降まったくといっていいほど音沙汰がなくなってしまった。コレボレーション企画は東京や大阪ばかりで、宮崎でやることがほとんどないのである（ちなみに宮崎同様モデル地がある熊本県や大分県、愛媛県もスルー）。理由は諸説あるが、新海誠作品のうち大ヒットしたものについては聖地巡礼でのトラブルを避けているのかご当地には消極的な様子で、「訪れてみたい日本のアニメ聖地88」でも掲載されているのはヒット前の『秒速5センチメートル』のみで、『すずめの戸締まり』は勿論『君の名は。』も『天気の子』も選ばれていない（『君の名は。』は選ばれていたが、現在は外されている）。

『【推しの子】』にいたっては漫画にはあった宮崎県要素がアニメでは消されており、Wikipediaでも「宮崎県を舞台にした作品」のタグが貼られていない。当然宮崎でコラボレーションをやることはなく、完全な肩透かし状態となっている。

その他宮崎県を舞台とした作品

ひまわりっ 健一レジェンド

2006年から2010年まで「モーニング」で連載。作者の東村アキコは串間市出身ということもあり、明確に宮崎県がモデルである施設が多数存在する。また連載終了から10年が経過した2020年に映像化もされている…が媒体がアニメではなくテレビドラマであった。詳しくは『ひまわりっ 健一レジェンド』を参照。

ちなみに東村アキコは『かくかくじかじか』という作品も連載しており、こちらも宮崎県が舞台である。但しこちらは自伝的要素が強く、アニメ化は難しいと思われる（自伝が国民的アニメにまでなった作品もあるのでゼロではない）。

カグツチ

2008年に「週刊少年マガジン」誌上で連載。2002年に出版された『死都日本』が原作で、文学では宮沢賢治賞の奨励賞、また日本地質学会からも表彰を受けるなどかなりレベルの高い作品である。

それを少年漫画向けにアレンジして漫画化したのが『カグツチ』であるが、色々アレンジしすぎて劣化してしまったなど当時の「週刊少年マガジン」の迷走を象徴する作品になってしまい（一説には『日本沈没』に影響された編集部によって漫画化されたとも）、十数話で打ち切りになってしまった。そもそも大噴火で宮崎県が壊滅するという内容で、仮にアニメ化されてもご当地にできないと思われる。

関連動画

先述の通り2020年の紹介までは『ヒャッコ』が無理やり紹介されており、これが唯一の心の拠り所であった。

しかし別の人が作った2021年の紹介では『ヒャッコ』が除外され、全都道府県で唯一「舞台となる作品が確認できませんでした」で終了している。前代未聞であるが、これが本当の姿であった。

ところが2024年版では『すずめの戸締まり』が宮崎として紹介（2020年版の人なので『ヒャッコ』も追加）され、コメントでは「宮崎が増えた」「おめでとう」というコメントがついた。

関連項目

• 九州七県のアニメ視聴・アニラジ聴取事情
• ご当地アニメ
• 都道府県対抗シリーズ
• 子供に優しい東京都
• 人も街も崩壊する神奈川
• 新聖地埼玉
• アニメ不毛の地静岡
• ゆるキャン△前の山梨
• key半島
• 西の強豪兵庫
• 懇願する長野
• 山エロ県とドH木県