2015年2月下旬にクリプトン・フューチャー・メディアよりリリース予定の、音声合成ソフトウェアのVOCALOID4製品である。
クリプトン・フューチャー・メディアからリリースされたVOCALOID2キャラクター・ボーカル・シリーズ「巡音ルカ」の アップグレード版であり、 同社の初のVOCALOID4製品となる。キャラクターイメージはクリプトン社のほかの VOCALOID3と同じくiXima氏による。
2009年1月30日にVOCALOID2での巡音ルカリリースから、6年の歳月を経てついにアップグレード迎えることとなる。 クリプトン社よりリリースされる初のVOCALOID4製品であり、従来のVOCALOIDにはなかったさまざまな機能を備える。
歌声ライブラリの元となるボイスマテリアルはV2版巡音ルカから引き続き声優の浅川悠が担当する。予約が2014年11月20日より公式サイトにて開始された。 WEB価格では17,280円(税込)ではあるが、2014年11月20日から2015年8月31日までの期間内では、指定のクリプトン社製VOCALOID製品[1] を所持していることで優待価格にて予約及び購入することが可能。販売形態としてはパッケージ版とダウンロード版、どちらも用意されている。 対応OSとしては、ボーカルエディターである「piapro studio」にてWindows、Macintoshのどちらにも対応するハイブリッド仕様。
収録ライブラリは
の二つ、クリプトン社のほかのV3製品に比べて控えめに思えるかもしれない。しかし、後述するE.V.E.C. (Enhanced Voice Expression Control)と呼ばれる機能により、Appendのように多くの歌声ライブラリを搭載するという手段とは別の方法で、 25GB(インストール時には30GB以上)の容量を擁するほどのさまざまな歌声を実現することが可能なVOCALOIDとなっている。
また、同梱ソフトとして、
が付属し、巡音ルカV4Xを購入すれば、それのみで基本的な音楽制作ができるような構成となっている。
今回アップグレードにあたり、名前に「V4X」の銘が付された。その由来は「V4」はもちろんVOCALOID4からであるが、一方、「X」の由来の方は公開されたこのデモムービーにて明かされた。
このように、更に表現の可能性を大きく広げる巡音ルカを、端的に表すに相応しい文字として「X」の1文字が選ばれることとなった 。
巡音ルカV4Xは複数の歌声ライブラリ、VOCALOID4での新機能に加えて、上述したクリプトン社独自の機能 「E.V.E.C.」により非常に豊かな表現が可能となる。日本語歌声ライブラリ、英語歌声ライブラリともに2つずつ存在し 、 それぞれ対になる形。一つのライブラリで幅広い歌声を実現できるようになり、まさに「Appendとの決別」とも言うべき形になっている。
V4Xの機能解説は公式ページに加えて、こちらも参考にされたし。
⇒ボーカルエディター Piapro Studio(ピアプロ・スタジオ) | クリプトン
以下に述べるE.V.E.C.及びVOCALOID4としての機能はクリプトン社製のボーカルエディタ「piapro studio」にて操作可能となる。ただし、通常のエディタ上でも対応した音素を入力することでE.V.E.C.機能も活用できる。
得意なテンポ:50〜170BPM / 得意な音域:E2〜F4
日本語のデータベースとしては以下の2つが搭載される。なお、E.V.E.C.機能が実際に搭載されるのは日本語デー タベースセットのみ。
日本語ライブラリには更にE.V.E.C.と呼ばれるクリプトン社独自の機能が搭載される。E.V.E.C.とは"Enhanced Voice Expression Control"の略であり、そのまま訳すと「強化された音声表現の制御」となる。このE.V.E.C.により上記の2つの日本語ライブラリは更に多彩な表現が可能となる。
具体的にはE.V.E.C.とは歌声を拡張するためのいくつかの機能群のことであり、この機能により今までの VOCALOIDでは難しかった細かい歌声の表情づけ(=Voice Color)、吐息の抜き方の調整(=Voice Release)、子音の補強(=子音拡張機能)が可能となる。主にpiapro studioのエディタ上にて各ノート(音符)に対して設定する機能になるが、通常のVOCALOID4エディタ上でも発音記号の指定によって操作は可能。
今までの複数歌声ライブラリを搭載するのみのVOCALOIDでは、歌声ライブラリを切り替えることで表情づけなどを行おうとしても、やはりそこは異なる歌声ライブラリなので違和感が出てくる部分もあった。しかしこの機能では、 一つの歌声ライブラリ内でも歌声の調整ができ、シームレスでより自然な表現が実現できる。さらに、後述のVOCALOID4の機能のクロスシンセシスとも組み合わせることも可能となっている。
一見複雑そうに思えるかもしれないが、piapro studioのGUIには様々な工夫が施されており、従来のVOCALOIDに近い感覚で、簡単に楽しく操作できるそうだ。
Voice Colorでは歌の中の音符の一つ一つに対して声の表情づけができるようになっている。以下に記す複数の声色を音符に指定することにより1つのライブラリの中でより幅広い歌声が実現することができる。同じ歌声ライブラリ上の歌声なので、異なる声色を指定しても自然な歌声になる。実質2つの日本語ライブラリのそれぞれに以下の声色が存在するので、その組み合わせは実に多種多様となる。実際にはこの機能においては、母音の音素をそれぞれの声色に対応するものに変更し音声合成することで表情づけを行っている。
| POWER | 力強い声(明) | SOFT | 柔らかい声 |
| WHISPER | ささやき声 | HUSKY | 息がかった声 |
| CUTE | 可愛い声 | FALSETTO | 裏声 |
※尚、現在もVoice Colorは調整中であり、追加及び変更の可能性があるとのこと。
Voice Releaseとは語尾の吐息の抜け方を指定することができる。それにより、言葉のあとに吐息を含むような温かみのある表現が可能となる。指定の仕方は以下の2つ。
この機能は子音を重複させることで子音の補強ができるようになる。例えば弱い発音を強く調整することなどもより簡単にできるようになり、わかりやすい発音を追求できる。
得意なテンポ:50〜170BPM / 得意な音域:G#2〜C4
英語データベースとしては以下の2つが搭載される。初の複数の英語データベースをもつVOCALOIDとなり、元祖バイリンガルVOCALOIDとしてのアイデンティティも引き継がれていると言える。
なお、クロスシンセシスとはVOCALOID4に新しく加わった機能であり、次の項目で述べる。
また、上述以外の機能にもVOCALOID4が本来持つ機能ももちろん巡音ルカV4Xにも適用可能。それらの機能 とE.V.E.C.、複数のライブラリを組み合わせることで、 表現の幅は更に拡大していく。例えば、日本語ライブラリは HardとSoftが存在するが、クロスシンセシス機能を用いればE.V.E.C.のVoice Colorによる変化に加えて、さらにクロ スシンセによりHardとSoftの中間の歌声も実現でき、より深く歌声を追求していくことが可能となる。
※VOCALOID4としてのこれらの機能もpiapro studioからの操作が可能となっている。
キャラクターイメージはクリプトン社の他のVOCALOID3のキャラクターイメージも担当しているiXima氏が担当した。
全体のイメージが公式サイト[2]で公開されており、またクリプトン社によるニュース記事[3]ではそのキャラクターイメージやロゴもダウンロード可能。そして、背面のスケッチが巡音ルカV4X制作プロデューサーのwat氏のTwitter[4]にて公開されている。 なお、この背面のスケッチは正式な設定資料画像が準備中のこと(2014年11月24日現在)。
巡音ルカV4Xは、他のクリプトン社のVOCALOID3のように従来のイメージを概ね踏襲したものではなく、VOCALOID2の巡音ルカのイメージから大きく異なるキャラクターイメージとなった。これは単純にVOCALOID4への対応のためのバージョンアップではなく、名前に付された「X」のごとく、より表現豊かに、そして更なる拡張を目指したことに対応するものだろう。
など
なお、間違い易いかもしれないがコルセットはは透けていない(→参照 )。
また、この他にも立ち絵の存在がそのシルエット画像(→twitterのイメージのページへ)にて示唆されており更なる情報公開が待たれる。
この項目では巡音ルカV4Xをとりまくこれまでの流れを記す。VOCALOID2の巡音ルカがリリースされてから巡音ルカV4Xまでの約6年間のうち、新バージョンの巡音ルカに関することを追って述べていく。
まずは巡音ルカリリースの翌年、2010年まで遡る。
この年はクリプトン社から4月に「初音ミクAppend」、12月に「鏡音リン・レンAppend」がVOCALOID2のDBとしてリリースされ、その間隔もさほど開いていなかったこともあり、自然に同じCVシリーズである巡音ルカのAppendへの期待も高まっていった。同年秋頃にwat氏のTwitterアカウントにて鏡音リン・レンAppendの開発に関するツイートがされていたが、その頃から2011年にかけては巡音ルカAppendの話が少しばかり散見された。そして、同年の2011年9月下旬リリースのコンピアルバム「VOCALOID民族調曲集」では2曲のボーカルに、及び翌2012年1月中旬リリースのコンピアルバム「VOCALO APPEND feat. 初音ミク」では1曲のボーカルに「巡音ルカ 新Appendβ」が、使用された。
しかし、これらに先立つ2011年6月にはヤマハから次期VOCALOIDエンジンである「VOCALOID3」が発表されており、同製品が10月下旬にリリースされて以後「VOCALOID2」の新DBはどこからも発売されなくなった。VOCALOID2で開発が進んでいたとみられる巡音ルカはどうなるかなど様々な憶測が飛び交う中、2012年5月にはwat氏より「ルカは開発してはいるが、英語追加に対する費用対効果の考え方が少々難しい」旨の発言もあり、結局同年12月の「KAITO V3」と「piapro studio」発表(翌13年2月に発売)まで、巡音ルカAppend(どころかクリプトン社のVOCALOID全体)リリースに関する情報自体がほぼ音沙汰がないとも言える状態になっていた。
巡音ルカ新バージョンを語る上で重要な転機の1つとして2013年07月24日に催されたVOCALOID新製品発表会が挙げられる。
先述の通り、同年2月にクリプトン社のVOCALOID1製品「KAITO」のVOCALOID3化がなされ、同じV1エンジンであるMEIKOの近々のV3化も有力視されていた(V1エンジンはサポートOSがWindows XPまでで、そのXPのサポート期限が翌14年の4月に迫っていた)中、ユーザーやファンの間ではV1エンジンでない巡音ルカの新バージョンは実現するのかという不安が広がっていった状態だった。
このVOCALOID新製品発表会はそのような状況において、まさに吉報とも言えるべきものだった。以前から叫ばれていたVOCALOIDのMac対応、初音ミクやMEIKOのV3版についての発表(ミクは同年9月、MEIKOは翌14年2月発売)が続く中、この生放送の開始から49分後(→生放送当該時間へ)頃、クリプトン社代表取締役の伊藤博之氏のプレゼンテーションにて「クリプトン社のキャラクターは全てMac対応及びV3化を行う」とのアナウンスがあった。巡音ルカについての情報が途切れて以来、初の公式からの巡音ルカ新バージョンについての言及であった。
2013年の11月上旬にはルカの新DBの話題がwat氏のtwitter上で出始め、下旬には巡音ルカの新バージョン調整が本格化しており、既に2つのDBの製作が進んでいるという内容のツイートがあり、以後「新型ルカ」に対するユーザーやファンの期待が現実味を帯びることになった。
MEIKO V3のリリースを控えた2014年1月30日、VOCALOID2の巡音ルカがリリースされてから5周年の節目を迎えたその日、巡音ルカの新バージョンのティザーサイト ("http://www.crypton.co.jp/mp/pages/prod/vocaloid/lukav3.jsp":現在はこのURLに接続しても最後の"lukav3"の 部分が"lukav4x"となるサイト=現在の公式サイトに自動的につながる)が公開され、さらにその後ほど、VOCALOID2 の巡音ルカの公式ページにも「巡音ルカV3(仮)開発中!」の文字が現れた。
その時点では、そのティザーサイトにはまだ「巡音ルカ」のロゴ、「巡音ルカV3(仮)開発中」の文字と、いくつかの予定される特徴が短い文で述べられているのみで、特にビジュアルや詳細な音声ライブラリの説明などはされずに、依然としてほとんどが謎に包まれていたままであった。しかし、2010年以来、来年こそは、来年こそはと長らく巡音ルカの新しいバージョンを待ち望んできたユーザーやファンにとって、このニュースは福音そのものであった。その日が巡音ルカの誕生日であったこともあり、各所では大いに沸いた。
1月の発表時点では発売時期は「年内で予定、そこまで遅くなることはない」とのことだったが、開発コンセプトを従来のAppend的な多DB構成から見直す方向となったこともあってか開発は長期化の兆しが見え始め、またクリプトン以外の関係先の事情も絡んだようで「発売時期未定」のまま月日が流れた。開発自体は確実に前進しているものの年内リリースは難しいのではないか、ルカの誕生月である2015年の1月に間に合うかどうか、などと言う声もささやかれていたが、巡音ルカ新バージョンのリリース自体を疑問視する声はほとんどなく、ファンの多くが希望を持って状況を見守っていたものと推測される。
余談ではあるが、ティザーサイトやwat氏のツイートなどにおける公式のコメントでは、ルカの新バージョンは常に「巡音ルカV3(仮)」あるいは「新型ルカ」とされており、一部から「もしかして巡音ルカはVOCALOID3ではないのではないだろうか」と言う小さな憶測も生んでいた。
新機能(=E.V.E.C.)についても示唆されながら、地道な開発についてwat氏によるツイートが続いていたが、次に大きな動きがあったのは2014年11月7日のことであった。
この日、ティザーサイトが同年1月30日以来初めて更新され、それまで曖昧な言及に留まっていた新しい機能が、初めてE.V.E.C.として具体的に公開された。巡音ルカ新バージョンの音声サンプル(→sound cloudへ)も公開され、また、今そのページにて公開されているキャラクターイメージのシルエットが公開されたのもこの時であった。なお、それとは別にキャラクターイメージのシルエットの公開が10月10日にあり、このツイート(→twitterへ)の立ち絵が初めて公開されたシルエットとなる。
また、その翌日発売のDTMマガジン2014年12月号でも「巡音ルカV3(仮)」と題された特集が組まれた。内容としてはE.V.E.C.の解説とそのβ版を使用したレビュー、開発についてのインタビューやwat氏とYAMAHAの剣持秀紀氏による対談など盛りだくさんの内容であった。
また、2014年10月9日から12日までアメリカ合衆国のニューヨークで行なわれたNew York Comic-Conでのクリプトン社によるパネルでは巡音ルカ新バージョンについての紹介も行われており(参照→twitter)、そこでは巡音ルカ新バージョンによる英語歌唱版のJust Be Friendsが公開されていた。
そして、2014年11月20日に行われたVOCALOID新製品発表会にて、更なる衝撃が訪れる。
まず、YAMAHAの剣持秀紀氏によって初めてVOCALOID4の存在が明らかとなったその直後、wat氏が→twitterにて「VOCALOID4のルカ」と明かし、その時までV3(仮)とされてきた巡音ルカ新バージョンが、VOCALOID4でのリリースとなることが初めて明かされることとなった。
更にwat氏によるプレゼンテーションではこのデモムービーが初めて公開され、ムービー内では巡音ルカの新バージョンの正式名称が「巡音ルカV4X」であること、イメージビジュアル、搭載DB、2015年2月下旬の発売、価格などが公開された。このデモムービー内のイメージソングは宮沢もよよ氏が担当している。またティザーサイトも更新され、そこではキャラクターイメージや日本語、英語ライブラリの詳細、VOCALOID4とも絡めた解説も新たに加えられた。他にも11月28日より毎週末新情報が追加されるとのことで、更新され次第この大百科にも情報を追加していく。
この新製品発表会におけるwat氏のプレゼンテーションでは途中から浅川悠氏も出演し、他にも開発に関する様々な話も明かされた。例えばこの発表会の時点でV2での音声収録の10倍(!)もの収録を行ってたことや、巡音ルカへの浅川氏の思いなどが打ち明けられていた。
また、巡音ルカAppendが実現できなかった理由も語られており、それは浅川氏の声の特徴が原因だったとのこと。といってもまるっきりネガティブな理由ではなく、浅川氏の声は息の成分や抑揚が豊かであり、それに加えて表情が多彩であったため、Appendのような単一の表情を持つ歌声データベースのバリエーションを増やすやり方ではその魅力をカバーしきれないとのことであり、そのような浅川氏の声の魅力を、合成音声としての魅力と加えて、新しい巡音ルカに盛り込んで更に進化させていきたいというような思いが語られた。もちろんwat氏はそのtwitterにて以前から「ルカらしさ」という言葉を何度も用いており、それについても十分考慮されているであろう。
※これら2つのVOCALOID新製品発表会は視聴期限未定であり、いつでも見られるようになっている。またタイムシフトが見られない場合は以下に示す関連リンクにて発表会の内容が記事になっている。
この放送は、巡音ルカ新バージョン開発が本格化して以来、初めてウェブサイト及びtwitter以外の映像媒体にて情報公開がされた放送。該当する話は1:35:20あたりから。その話の内容はこちら(⇒外部サイトへ)。
現在公式サイトにてすでに予約が開始されている。⇒巡音ルカ V4X | クリプトン
またダウンロード版はこちらのサイトにて案内がされている。⇒VOCALOID | SONICWIRE
紙媒体で最初に情報が公開された「DTMマガジン」2014年12月号。
幻となった「巡音ルカAppend β」の歌声が聴けるCD
なお、公式サイトにて通常価格での予約に加えて優待販売も行われており、指定のVOCALOID製品[1] の所持、及び「ライセンス登録」を行っている場合は、パッケージ版のダウンロード版のどちらでも優待価格にて予約できる。優待販売は2014年11月20日から2015年8月31日までの期間で行っているとのこと。
詳細はクリプトン社による⇒こちらのニュース記事参照。
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最終更新:2025/12/13(土) 10:00
最終更新:2025/12/13(土) 09:00
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