情報処理技術者試験の歴史では、日本の国家資格である「情報処理技術者試験」の歴史について解説する。
概要
そもそも情報処理技術者試験とは、日本で最も有名な情報技術(IT)に関する国家試験である。
この試験ではITという技術の進歩が著しい領域を取り扱っているため、各試験区分の名称や出題範囲などの制度の変更が何度か行われており、特に1994年、2001年、2009年には試験区分の再編などの大規模な制度変更が行われている。
年表
1969年〜1994年4月
1969年
プロトタイプとして以下の2つの区分の試験を実施。
- 第一種情報処理技術者認定試験
- 第二種情報処理技術者認定試験
1970年
本格的に情報処理技術者試験がスタートする。最初からある区分は以下の2つ。
当時は2つとも年1回のみの実施だった。また、午前科目は多肢選択式、午後科目は記述式だった。午後にはプログラミング言語の選択問題もあった。
学歴による受験資格の制限はないものの、レベルの目安としては第一種が大卒相当、第二種が高卒相当とされていた。
- 第一種情報処理技術者試験(大卒レベル)
- 第二種情報処理技術者試験(高卒レベル)
1971年
以下の区分が追加された。
- 特種情報処理技術者試験…25歳以上じゃないと受けられないという年齢制限があった。また、論述式の科目があった。
1986年
以下の区分が追加された。
- 情報処理システム監査技術者試験…年齢制限あり(受験資格:27歳以上)、論述問題あり
また、特に人気の高い第二種情報処理技術者試験がこの年から4月と10月の年2回実施されるようになった(第二種以外の区分は10月のみ実施)。
1988年
以下の区分が追加された。
1989年
第一種情報処理技術者試験が4月実施に変更された。
1994年10月〜2000年
1994年10月
試験区分が再編される。以下の区分が実施されるようになった。
第二種と初級シスアド以外は午後科目が記述式となっている。
- 4月のみ実施
- プロジェクトマネージャ試験(追加)…受験資格:27歳以上、論述問題あり
- プロダクションエンジニア試験(追加)
- データベーススペシャリスト試験(追加)
- システム運用管理エンジニア(追加)…受験資格:25歳以上、論述問題あり
- 第一種応用情報技術者試験…1995年からプログラミング言語の問題を削除
- 10月のみ実施
- システム監査技術者試験…受験資格:27歳以上、論述問題あり
- システムアナリスト試験(追加)…受験資格:27歳以上、論述問題あり
- アプリケーションエンジニア試験…特種情報処理技術者試験から名称変更。
- ネットワークスペシャリスト試験…オンライン情報処理技術者試験から名称変更。
- 初級システムアドミニストレータ試験(追加)…ITエンジニアではなく一般ユーザーを対象とした区分。午前・午後共に多肢選択式。1995年までは「システムアドミニストレータ試験」として実施されていた。
- 年2回実施
- 第二種情報処理技術者試験…午後科目を多肢選択式に変更。1995年からプログラミング言語の選択問題がある唯一の区分となった。
1996年
以下の区分が追加された。
- マイコン応用システムエンジニア試験…4月実施
- 上級システムアドミニストレータ試験…10月実施。ユーザー向けだが難易度は非常に高い。受験資格:27歳以上、論述問題あり
1999年
この年から、人気の高い初級システムアドミニストレータ試験が年2回実施されるようになった。
2001年〜2008年
2001年
この年から一部の区分の年齢制限が無くなった。
試験区分が再編され、以下の区分が実施されるようになった。なお、基本と初級シスアド以外は午後が記述式である。
- 4月のみ実施
- システム監査技術者試験…論述問題あり
- テクニカルエンジニア(データベース)試験
- テクニカルエンジニア(システム管理)試験…システム運用管理エンジニア試験から名称変更。論述問題あり
- テクニカルエンジニア(エンベデッドシステム)試験…マイコン応用システムエンジニア試験から名称変更
- ソフトウェア開発技術者試験…第一種情報処理技術者試験から名称変更
- 10月のみ実施
- システムアナリスト試験…論述問題あり
- プロジェクトマネージャ試験…論述問題あり
- アプリケーションエンジニア試験…論述問題あり
- テクニカルエンジニア(ネットワーク)試験
- 上級システムアドミニストレータ試験…ユーザー向けだが難易度は非常に高い。論述問題あり
- 情報セキュリティアドミニストレータ試験…新規追加。ユーザー向けのセキュリティ専門の区分。
- 年2回実施
- 基本情報技術者試験…第二種情報処理技術者試験から名称変更
- 初級システムアドミニストレータ試験…ユーザー向け
- 廃止
2005年
この年からソフトウェア開発技術者試験が年2回実施されるようになった。
基本情報技術者試験と初級システムアドミニストレータ試験に午前科目の免除制度が導入された。
2006年
以下の区分を追加。
- テクニカルエンジニア(情報セキュリティ)試験…4月実施。セキュリティエンジニア向けの区分
2009年以降
2009年4月
試験区分が再編され、以下の区分が実施されるようになった。
- 4月のみ実施
- システム監査技術者試験…論述問題あり
- プロジェクトマネージャ試験…論述問題あり
- データベーススペシャリスト試験
- エンベデッドシステムスペシャリスト試験
- 初級システムアドミニストレータ試験…2009年4月に最後の試験を実施
- 10月のみ実施
- ITストラテジスト試験…システムアナリスト試験から名称変更。論述問題あり
- システムアーキテクト試験…アプリケーションエンジニア試験から名称変更
- ネットワークスペシャリスト試験
- ITサービスマネージャ試験…テクニカルエンジニア(システム管理)試験から名称変更。論述問題あり
- 年2回実施
- 情報セキュリティスペシャリスト試験…テクニカルエンジニア(情報セキュリティ)試験から名称変更
- 応用情報技術者試験…ソフトウェア開発技術者試験から名称変更。ビジネス系の内容を追加
- 基本情報技術者試験…初級シスアドの内容の一部(ビジネス系など)を追加。プログラミング言語に表計算ソフトを追加
- ITパスポート試験…新規追加。初級シスアドに代わる一般ユーザー向けの区分
- 廃止
- 上級システムアドミニストレータ試験
- 情報セキュリティアドミニストレータ試験
2009年10月
初級システムアドミニストレータ試験が廃止された。
2011年
11月からITパスポート試験がCBT方式の随時試験に変更される。
2014年
この年からセキュリティに関する内容の出題が強化される。具体的には以下の通り。
- 全ての区分の午前科目でセキュリティの問題が必ず出題されるようになった。
- ITパスポート試験、基本情報技術者試験、応用情報技術者試験の午前科目ではセキュリティの問題数が今までより増えた。
- 基本情報技術者試験および応用情報技術者試験の午後科目でセキュリティが選択問題から必須問題に変更された。
2016年
以下の区分が追加された。
- 情報セキュリティマネジメント試験…年2回実施。ユーザー向けのセキュリティ専門の区分。午前・午後共に多肢選択式。
2017年
情報セキュリティスペシャリスト試験が情報処理技術者試験から独立し、情報処理安全確保支援士という別の国家資格になった。
2020年
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行の影響で4月の試験が中止となった。
10月から再開したが、年1回のみ(4月または10月)実施の区分に関してはここから4月と10月が入れ替わった。
この年から情報セキュリティマネジメント試験と基本情報技術者試験はCBT方式に変更された。
2023年
この年から情報セキュリティマネジメント試験と基本情報技術者試験は随時実施となった。
この年からエンベデッドシステム試験の午後に論述問題が追加された。
関連動画
関連静画
関連項目
- 情報処理技術者試験
- IT資格
- 国家資格
- 難関資格
- 経済産業省
- 情報処理推進機構(IPA)