新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に 単語

ジエンドオブエヴァンゲリオン

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新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に』とは、アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』シリーズの劇場版第2作である。1997年7月19日に公開された。

概要

総監督・脚本は庵野秀明。TVシリーズにおける第弐拾四話からの続きとなっており、前編である『Air』後編である『まごころを、君に』の二部構成。『Air』が第25話、『まごころを、君に』が第26話と設定されている。話数がテレビ版と違って数字表記なのはテレビ版の第弐拾五話、最終話との区別のため。

タイトルの『Air』は「アリア」を意味する英語で、作中でも使用されている音楽「G線上のアリア」(Air on the G String)からとられている。また、『まごころを、君に』はダニエル・キイスの小説『アルジャーノンに花束を』の1968年の映画版の邦題『まごころを君に』からとられている。

前作『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 シト新生』が1997年春の公開だったことを受け、公開当時は前作が「春エヴァ」、本作が「夏エヴァ」と呼ばれた。

英語タイトル表記は『THE END OF EVANGELION』であり、それを略してシリーズファンの間では「EOE」などとも呼ばれる。

ヱヴァンゲリヲン新劇場版の開始後は、前作『シト新生』と合わせて『旧劇場版』(略して『旧劇』)とも呼ばれるようになった。

2016年現在では、バンダイチャンネルにおいてネット配信版が数百円で閲覧可能(本記事最下部「関連リンク」参照)。

2015年8月26日に発売されたBlu-ray BOXにも、テレビ版や劇場版第1作とともに収録されている。こちらは本作ラストの台詞の別バージョンなど、未公開音声なども収録されている(こちらも「関連リンク」参照)。

背景

当時は社会現象にもなっていた人気アニメ「新世紀エヴァンゲリオン」は、そのテレビ版全24話のラスト2話において、視聴者を置き去りにするかのような、良い言い方をすれば前衛的な(悪い言い方をすれば広げた風呂敷をたたまないまま放置するかのような)終わり方をした。

これには視聴者たちからも困惑や批判の声が上がったため、制作者サイドからは劇場版で物語を回収することが告知された。

そしてまず劇場版第1作『シト新生』ではテレビ版の総集編と『Air』の前半が放送され、その数か月後に満を持しての完結編として上映されたものが本作である。

だが、上映当時のプロモーション映像などは、断末魔のような謎の絶叫音声が流れていたり、本作との関連不明の実写映像が流されるなど、かなり欝々とした雰囲気の作風が予想されるものだった(「関連動画」参照)。

果てはポスターにおいて、「だからみんな、死んでしまえばいいのに…」というネガティブにも程があるキャッチコピーが使用されていた。本作は宮崎駿監督の『もののけ姫』と同時期に公開されたが、同作のキャッチコピー「生きろ。」と対照的である。

内容

本作の映像の質自体は完成度が高いものであったが、そのストーリー展開は

  • 第弐拾四話で起きたことで心を打ちのめされ、終始戦意を失ったままの主人公。
  • 精神的に不安定になった主人公は、意識不明のヒロインのはだけた乳房を見て自慰行為を始める。その後、手についた精液を見つめて自己嫌悪の言葉をつぶやく。
  • 味方組織の本拠地が軍事組織に攻略され、次々にレギュラーキャラ含めた味方組織職員が退場していく。
  • 敵の新型機の集団によって、残虐に痛めつけられるヒロイン。

などと、視聴者を精神的に追い詰めるかのような、前情報に違わず陰鬱で重い展開の連続となっていた。

さらに劇中のクライマックスで起きる現象「サードインパクト」についても、作中での説明は独自の用語が多用された理解しづらいものであり、そして最終的な物語の結末についても、バッドエンディングともとれるような、解釈が分かれるものであった。

また後半においては、「映画館で作品を鑑賞する人々」「庵野監督を非難する過激な文が映った画面」などの実写映像までもが織り交ぜられているという、メタフィクション的な演出もあった。

ファンの反応

上記のような内容に対し視聴後のファンからの反応は困惑気味であり、「意味が分からなかった」という声も少なくなかった。上映後のファンコミュニティは単に映画の感想を話し合うだけではなく、自分たちなりの解釈を話し合う考察的な書き込みで溢れた。

実写映像のパートなどから、「新世紀エヴァンゲリオン」に熱中しすぎるアニメオタクに向けての「目をさませ」といったような否定的メッセージを含んだ作品なのではないか……という説も登場した。

しかし、もしその説が制作者の意図を言い当てていたとしたら皮肉なことだが、「解釈が分かれるスッキリしない終わり方」であったことから、その後もシリーズのファンは貞本義行による漫画版・各種ゲーム版・新劇場版などでの「別の結末」に関する期待を持ち続けることになった。また、当時黎明期だったインターネット上などでは、カタルシスが得られるような別の展開を描こうとするファンフィクション(二次創作小説)の作者/読者なども急増していたという。

ある意味では、本作が「誰からも文句が出ない綺麗な終わり方」をしなかったことが、逆に「新世紀エヴァンゲリオン」というコンテンツを注目を浴び続ける、息の長いものへと導いたと言えるかもしれない。

その他トリビアなど

  • 本作ラストでは「主人公がヒロインに馬乗りになって首を手で絞める。だがヒロインに頬を撫でられた主人公は嗚咽を漏らしながら手を離す、その後ヒロインは『気持ち悪い』と呟く」という、陰鬱にも感じられるようなシーンで終劇している。
    ヒロイン役の声優「宮村優子」の記憶によれば、この「気持ち悪い」の台詞は台本では「あんたなんかに殺されるのは真っ平よ」となっていたが、何度も録り直した挙句に現在の台詞に変更になったという。
    この変更の前には庵野監督と宮村の間に
    「宮村が部屋で一人で寝てたら眠ってる間に男が侵入してて、自分を見てオナニーしてるのを起きて発見したらなんて言う?」
    「『気持ち悪い』ですかね」
    といったような会話があったそうで、この宮村の解答を元にしてラストの台詞が「気持ち悪い」に変更されたと思われる。
  • 庵野秀明が岡本喜八の大ファンであり多大な影響を受けていることを公言していることを踏まえて、本作に岡本喜八監督の映画『激動の昭和史 沖縄決戦』からの影響が感じられる、という視聴者からの意見がある。
    例えば本作には「敵対する軍隊が火炎放射器を部屋の中へと噴射し、中にいた味方組織の職員が焼き殺される」シーンがあるが、『激動の昭和史 沖縄決戦』にも「米軍が洞窟内に逃げている者たちを火炎放射器で焼き殺す」シーンがある。
  • テレビ版からのレギュラーキャラクターが次々と退場していき、最終的に全人類が巻き込まれて消失するような大事件が起きる点などについて、富野喜幸総監督のアニメ映画『THE IDEON 発動篇』(伝説巨神イデオンの劇場版第2篇)との類似・比較がアニメファンから語られることがある。その場合、テレビ版で物語を完遂できず劇場版で補完した点、その劇場版の1篇目がテレビ版総集編で2篇目が新作である点なども両作の類似点として触れられる。
    しかし、本作が前作『シト新生』と分けられたのは「制作が間に合わなかったために結果的にそうせざるをえなかった」という苦肉の策であって、元からの構想ではない。また、イデオンの劇場版は2篇に分けられてはいるが、本作と違って同時上映されている。
  • 刺激的なシーンが多い作品だけに、長きにわたってテレビ地上波で放映されることはなかった。しかし2014年8月26日火曜に、日本テレビの深夜枠映画番組「映画天国」にて公開後約17年を経て地上波初放送された(なお「映画天国」が「月曜深夜」を標榜する番組であるため、「2014年8月25日深夜」に放映されたと記録されている場合もある)。ただし一部のグロテスクなシーンや性的なシーンが隠されるなどの処置がとられた上での放映であった。

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関連チャンネル

関連項目

  • 新世紀エヴァンゲリオン
  • Komm, süsser Tod
  • アニメ映画の一覧
  • 1997年のアニメ作品一覧
  • 最低だ、俺って・・・
  • ロンギヌスの槍
  • サードインパクト
  • 気持ち悪い
  • シン・エヴァンゲリオン劇場版:||
  • 汀こるもの (ミステリー作家。エヴァンゲリオンシリーズのファン。『まごころを、君に』と言うタイトルの著書あり。)

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