永久機関 単語


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永久機関とは、外部からのエネルギー供給などを一切必要とせずに、「仕事」をし続ける事の出来る機関である。

定義

この場合の「仕事」とは物理学(力学)の用語であり、「他の物体に何らかの力(エネルギー)を持たせること」を意味する。
エネルギーとは位置エネルギー、運動エネルギーなど様々であるが、例えば足元に置いてある段ボール箱を持ち上げて机の上に置いた場合、あなたは床から机の上の高さまでの分、段ボール箱に対して位置エネルギーを与えた事になり、仕事をしたと言う。

他者に対して仕事をするのはすなわちエネルギーの移動であるため、自身が持っているエネルギーの消費が必須である。
上記の段ボール箱を持ち上げる例で言えば、あなたの体の筋肉が持っているエネルギーを筋肉の収縮と言う形で変換し、段ボール箱に位置エネルギーとして与えているのである。

この法則から逸脱するのが永久機関である。

仕事をする物体は自身が元々持っていたエネルギーを使い果たした時点で何の仕事も出来なくなるため、仕事をし続けるにはエネルギーを外部から取り入れる必要がある。あなたは食事をすることでカロリーを摂取し熱エネルギーを生み出す事で物を持ち上げる力を保持し続けるのである。
しかし外部からのエネルギー供給を必要とせずに他者に対して仕事をし続ける事が出来る物がもし存在した場合、何も無いところからエネルギーが湧いて出ている事になり、仕事はエネルギーの移動であると言う法則を根本から覆す事になる。

古い定義

古い定義では、単に「外部からのエネルギー供給を必要とせずに、永久に運動を行い続ける機関」と考えられてきた。

「仕事」と「運動」で何が違うのかと言うと、単に「運動」をするだけならば、全く抵抗が無い場所でならば慣性の法則により一度放り投げたボールは永久にその方向に進んで行く事が分かっている。地球上では重力や空気抵抗など様々な抵抗が存在するため不可能だが、宇宙空間ならば限りなくそれに近い状態になる。

また、同じく抵抗の全く無い場所ならば球状のものが回転する際は「角質量保存の法則」により永久に回転を続ける(自転をする惑星などがその例である)。

つまり、言い換えれば「運動をし続けるだけ」ならば、それは「元々持っていたエネルギーをそのまま保持しているだけ」に過ぎず、前述のように「仕事をする」事が永久機関の定義であるとして改められた。

かつて考えられた永久機関のモデル

  1. 第一種永久機関
    第一種永久機関
    回転する物体の周囲に、一方向にしか曲がらないようにした棒を取り付け、その先に重りをつける。
    こうする事で、重りが頂点を過ぎて下降に入る事で「カックン」と勢い良く下に落下し、その位置エネルギー→運動エネルギーの変換によって物体を回転させ続けると言うモデル。
    しかしこのモデルでは、図にあるように、「持ち上げられる側」の半分の方が重りの数が多くなってしまうため、重りの「カックン」だけでは物体を回転させるに足りるエネルギーが生まれず、永久機関としては否定されている。
  2. 第二種永久機関
    簡単に言えば、「自分で生み出したエネルギーを使ってエネルギーを生み出す」装置である。
    仕事をするためにエネルギーを消費してはいるため、第一種永久機関のモデルと違ってエネルギー保存の法則を破らないが、「外部から」ではないため、これも永久機関のひとつとして考えられる。
    例としては、「海や湖の水を取り入れて熱によって沸騰させ、蒸気の力でタービンを回してエネルギーを得る」と言う装置が考えられる。タービンを回して得られるエネルギーで「水を取り入れて装置内に誘導するためのエネルギー」「水を沸騰させるだけの熱エネルギー」を補う事が出来れば永久機関になるが、実際には「水を沸騰させるために使った熱エネルギー」は実際には装置内の空気や水の容器などを熱するためにいくらか消費されているし、沸騰した水蒸気のエネルギーは全てがタービンを回転させているわけではないため、投入したエネルギーを100%回収する事自体が不可能である。
  3. 毛細血管現象による永久機関
    毛細血管現象による永久機関
    水の入った入れ物に細いストローなどを立てると、ストローの外側の水面とストローの内側の水面のそれぞれにかかる大気圧の差により、ストロー内の水面が上昇する(毛細血管現象)。
    ここで、十分な高さまで水が吸い上げられるストローを用意した上で、水面より低い位置でストローを下に曲げるなり穴を開けるなりすれば、水が落下する事で水車等を回して外部への仕事が出来ると考えられたモデル。
    しかし実際は、毛細血管現象によって十分な高さまで水を押し上げるにはストローには相当な細さが求められるが、そのような細いストローの断面or横っ腹に開けられる穴の大きさでは、大気圧に負けて水が出てこないため、永久機関にならない。
  4. 浮力による永久機関
    浮力による永久機関
    上と下に穴が開いた水がめを用意し、下からヒモで繋いだ浮きを入れる。そうすると浮きが浮力によって押し上げられ、ヒモ全体が回転すると言うもの。
    実際は、下に穴を開けた水がめの水がこぼれると言う問題はともかくとして、下から浮きを差し込むには水がめの中の水の水圧に負けないだけの力で押し込む必要が出来る(水圧があるからこそ、下から水がこぼれてくる)。もちろんこれは浮力によって得られるエネルギーよりも遥かに大きいため、ヒモが回る事は無い。
  5. オルフィレウスの永久機関
    18世紀初頭にオルフィレウス(ヨハン・エルンスト・エリアス・ペスラー)が開発したとされる永久機関。
    実機が製作され展示までされたが、展示中は厳重な警備の元に内部構造が一切公開されなかったと言う。最初の展示では機械が動き続ける様を多数の人々が確認したものの、内部構造が全く明かされなかったため疑いの目が強かった(実際、時計職人によってバネを使った簡単な装置で似たような機械を作る事が出来るという報告もあった)。
    後に、「機械を稼動させ、絶対に誰も立ち入る事ができない部屋の中に安置し、所定の期間の後に再度部屋を開封して稼動し続けているかどうか確認する」と言う方法で疑いを晴らす実験をしたとされるが、この時もやはり内部構造は秘密にされたままであった。
    構造を解明するために、当時のオーストリア皇族・カール大公が装置の買取を申し出、イギリスの王立学府と協力してオルフィレウスの提示した法外な金額を承諾。しかし買取が行われる直前に、カール大公から派遣されてきた科学者の一人が勝手に機械を調査しようとしたと言う理由でオルフィレウス自身が機械を破壊してしまったため、買取が行われる事は無く、真相は闇の中になってしまった。

フィクションの永久機関

漫画やアニメなどのフィクションにはしばしば永久機関と呼ばれるものが登場する。

  • S2機関(エスツーきかん) 新世紀エヴァンゲリオン
    正式名称「スーパーソノレイド機関」。アダムを含めた使徒の動力源になっていると考えられるもの。この機関の元になっている「スーパーソノレイド理論」(この世は全てDNAを表す螺旋構造が元になっており、螺旋の形から全てのエネルギーが得られると言う理論)によって成り立っていると考えられるが、理論そのものは仮説に過ぎず、理論の証明より先に発見された使徒の動力源がS2理論でしか説明が付かないために、理論も実質的に証明された形になっている。
    エネルギー保存の法則を完全に無視している機関であるため、第一種永久機関に分類される。
  • オルフィレウス式永久機関、フルカネルリ式永久機関 魔装機神サイバスター
    オルフィレウス式永久機関とは先述のオルフィレウスの永久機関になぞらえたものであると思われる。
    フルカネルリ式永久機関とは、オルフィレウス式永久機関に比べて数十倍のエネルギーを生み出すが、前提として精霊との契約が必要である点が異なる。また、稼動させるのに操縦者のプラーナ(オーラのようなもの)が必要であり、より高位の精霊と契約している機関を稼動させるにはより強力なプラーナが必要である。
    いずれも詳しい原理などは不明である。そもそも、精霊や魔法が普遍的に存在する世界の出来事なので…。また、後者のフルカネルリ式永久機関は精霊の力や操縦者のプラーナと言う外部エネルギーを必要としているため、永久機関と呼べるかどうかは微妙なところである。
  • 地獄昇柱(ヘルクライム・ピラー) ジョジョの奇妙な冒険
    柱の根元に溜まった油が潮汐力やその他の色々な力を利用して柱の中の穴を通り、柱の登頂まで上昇してまた落ちてくるというもの。要するに、上記3の毛細血管現象による永久機関と同じ。
    柱の男たちに滅ぼされた波紋法が云々と言う点ばかりで、作中では永久機関である事には特に触れられなかった。

関連項目

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