逆転裁判シリーズと現実の裁判や法律等の相違点一覧とは、ゲーム『逆転裁判』におけるリアルとゲームの違いをまとめたものである。
概要
『逆転裁判』は2001年よりカプコンより発売された裁判や法曹を下地にした法廷バトル物のアドベンチャーゲームである。
しかし、当たり前の話だが逆転裁判内における裁判や法律は現実におけるそれとは大きく異なる。シリーズの基礎的な部分である序審法廷制度(これについては該当記事があるので詳細はそちらに譲る)などはその典型例といえるだろう。この記事ではシリーズ内におけるその相違点をまとめていく。
相違点(シリーズ全体)
「異議あり!」について
ゲーム内ではもはや耳にタコができるほど聞くことになるこのセリフだが、現実の裁判においては言わないわけではないがその意味合いは大きく異なる。
例えば刑事訴訟法第309条では証拠調べに際して、異議を申し立てることが出来ると書かれており、裁判官に対して検察が提出した証拠とその論証に対して不服があれば弁護士は異議を申し立てることが出来るとはっきり書かれている。
だが、この条文の宛名はあくまで「裁判所」である。ゲームのように証人に対して行うことは出来ない。証拠や証言に対して事実認定を行うのは裁判所、ひいては裁判官の役目だからである。
また、証人の証言の矛盾を指摘して異議を唱えることはもはやゲームの醍醐味といえるが、これも現実の裁判では行えない。やるとしてもその証人に対して質問した検察官(弁護人)の言動や行為について裁判官に対して行い、法令などへの違反があった場合にやることで証人に直接やることは無い。刑事裁判の相手はあくまで弁護士ないし検察官であって、私人たる証人ではないからである。
法令上では異議の申立とあるので、「異議あり!」の表現にこだわる必要はなく、異議があることが伝わる表現で言えば良いのだが、逆転裁判シリーズにあこがれてか現実の裁判で異議ありという弁護士もいないわけではないようだ。また、ゲーム中では大声で人差し指を突きつけているが、現実の裁判でそんなことをすれば威迫行為ととられて裁判官から注意を受けたり、心証を悪くするのでやってはならないと指導される。
余談だが、裁判で異議ありというのは逆転裁判シリーズが初めてというわけではなく、その前から『古畑任三郎』など刑事ドラマなどではよくやられている。
裁判所の内装について
これは実際に傍聴や実際に訴訟を起こされたことに行ったことがあればわかると思うが、あのような豪華な装飾などは一切なくとにかくシンプルに作られている。以下に簡単に相違点を列挙していく(細かいところは裁判所によっても違うと思うのである程度はご容赦を)。
最高裁はさすがにやや豪華に作られているが、逆転裁判の舞台となる地方裁判所はごくシンプルである。
- 検察官の席と弁護士の席が左右逆
- 判事(裁判官)席の前には書記用の席が設けられている(3までは登場していたが、4以降はなくなっている)
- 傍聴席は上ではなく、後ろ(判事席の正反対)。被告席についても弁護人の席の前に置かれる事が多い
- 判事席の上にテミスの天秤(天秤マーク)はない。ついでにあんな豪華な周りの装飾も無い
- 判事席の左右には裁判員席が用意されている(とはいえこれは逆裁シリーズ発売当時は裁判員制度がなかったためやむを得ない)
- 被告人控室は存在しない。刑事裁判の場合は裁判官と同じ所(関係者用出入り口)から被告人が登場し、被告席に座る。
- ガベル(木槌)の類は一切置かれていない。その為、裁判官が静粛を求めることはあっても、木槌をカンカン鳴らすことはない。これはアメリカなどキリスト教圏の神の代理人として裁くイメージからできた、裁判官に対するイメージの一つを再現するものではあるが、現実の我が国の裁判では用いられない。
相違点(シリーズ別)
逆転裁判(蘇るも含める)
- 死亡所見のほぼ即死の記述と、ダイイングメッセージから成歩堂がイトノコ刑事に対して矛盾を指摘するシーンがあり、御剣はその記録は古いから通用しないと反論する箇所がある。実際のところは公判前整理手続で提出する証拠などは共有されるので、このような事態はまず起こらず、もし現実に起こっても判事はその証拠を受理することはない(2話)。
- 「給与査定を楽しみにしておくことだ」シリーズを通してのイトノコ刑事へのイジメセリフだが、検察と警察は所管の官庁が違う(警察は公安委員会、検察は法務省)ので、給与含めた人事権を直接は保有していない(2話以降)。
- 小学生の大滝九太が証言台に立って証言しているが、刑事訴訟法には特に証人の年齢制限は設けられていない為そこは問題ない。実際に交通事故などで幼児の証言が認められた例も存在する。ただし、あのように裸でカメラを持ち込むことは撮影禁止の観点から認められない(ケースなどに入れていればOKの裁判所がほとんど)。あと、常識ではありますが、姫神のキセルも駄目です(3話)。
- 当然ながら人間ではないため、オウムには証言能力がおそらく認められない(警察犬の臭気識別が証拠として認められた例はあるが、現在のところオウムにそこまでの証拠能力を認めた判例は存在しない)。そのため証人として申請しても却下される。ただし、アメリカでペットのオウムの声が証拠として検討された事はある。(4話)
逆転裁判2
- 法廷へのムチの持ち込みは禁止されている(2話以降)
- 検察と弁護人が双方認めあっているので霊媒という前提が認められたかのように見えるが、実際のところ霊媒による殺人が起こったとしても、因果関係の立証が困難(不能犯)な点と仮にそれを乗り越えて事実認定されても責任能力を喪失しているため、心神喪失で刑法39条の規定で無罪になる可能性がある(勿論、成歩堂は最初からそこを論点にしてるのではなく、綾里真宵の殺人そのものを否定することに意味を見出してることは補足する。2話)。
- 実行犯がトランシーバーで証言するシーンがあるが、一応裁判所が認めれば本人がその場に出席したり、顔を出さなくとも証言が認められることはある。ただし、それでも衝立か、ビデオリンクによる法廷内からの通信なので、法廷外からの通信が認められる例は無いと思われる(4話)。余談だが、民事裁判においては近年、コロナ禍などの影響でZOOMなどを利用した手続きや、オンラインでの訴状提出が進められている。
逆転裁判3
- 法廷内は飲食不可の為、コーヒーを飲むことはできない(2話以降)
- 御剣が成歩堂にかわって弁護士バッジを受け取って弁護人として出廷するシーンがあるが、弁護士バッジには裏に登録番号がある上に、検察官と弁護士の兼業は国家公務員法の規定により出来ない為まず認められない(5話)。だが、検察審査会での起訴相当が二回出たときという限定つきだが、弁護士から裁判所によって検察官が選ばれてその役を行うことはある。
関連項目