逆転裁判シリーズと現実の裁判や法律等の相違点一覧 単語

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今週のおすすめ この記事は第799回の今週のオススメ記事に選ばれました!
よりニコニコできるような記事に編集していきましょう。

逆転裁判シリーズと現実の裁判や法律等の相違点一覧とは、ゲーム逆転裁判』におけるリアルゲームの違いをまとめたものである。

概要

逆転裁判』は2001年よりカプコンより発売された裁判や法曹を下地にした法廷バトル物のアドベンチャーゲームである。

しかし、当たり前の話だが逆転裁判内における裁判や法律現実におけるそれとは大きく異なる。シリーズの基礎的な部分である序審法廷制度(これについては該当記事があるので詳細はそちらに譲る)などはその典例といえるだろう。この記事ではシリーズ内におけるその相違点をまとめていく。

ネタバレを含むので、プレイを予定してる人や途中の人クリアしてから見ることを勧める。

なお、逆転裁判の生みのである巧舟氏はじめ逆転裁判開発サイド現実の裁判について傍聴など取材した上で、あえてその現実とは切り離して行っていることに留意が必要である。なので、ある種この記事は野暮な側面があることをご了承いただきたい。

断りがない限り、日本国内の法律刑事裁判という前提に則って記述する。

相違点(シリーズ全体)

「異議あり!」について

ゲーム内ではもはやタコができるほど聞くことになるこのセリフだが、現実の裁判においては言わないわけではないがその意味合いは大きく異なる。

例えば刑事訴訟法第309条では拠調べに際して、異議を申し立てることが出来ると書かれており、裁判官に対して検察が提出した拠とその論に対して不があれば弁護士は異議を申し立てることが出来るとはっきり書かれている。

だが、この条文の宛名はあくまで「裁判所」である。ゲームのように人に対して行うことは出来ない。拠や言に対して事実認定を行うのは裁判所、ひいては裁判官の役だからである。

また、人の言の矛盾摘して異議を唱えることはもはやゲーム醍醐味といえるが、これも現実の裁判では行えない。やるとしてもその人に対して質問した検察官(弁護人)の言動や行為について裁判官に対して行い、法令などへの違反があった場合にやることで人に直接やることはい。刑事裁判の相手はあくまで弁護士ないし検察官であって、私人たる人ではないからである。

法令上では異議の申立とあるので、「異議あり!」の表現にこだわる必要はなく、異議があることが伝わる表現で言えば良いのだが、逆転裁判シリーズにあこがれてか現実の裁判で異議ありという弁護士もいないわけではないようだ。また、ゲーム中では大で人差しを突きつけているが、現実の裁判でそんなことをすれば威迫行為ととられて裁判官から注意を受けたり、心を悪くするのでやってはならないと導される。想像がつくと思うが、待ったやくらえも同じで、恐らくやった間に裁判官の厳しい一言と場合によっては退廷を命じられてしまうだろう(刑事訴訟法304条の2、刑事訴訟規則第199条の13)。

余談だが、裁判で異議ありというのは逆転裁判シリーズが初めてというわけではなく、その前から『古畑任三郎』など刑事ドラマなどではよくやられている。

裁判所の内装について

これは実際に傍聴に行ったことや訴訟を起こされたことがあればわかると思うが、画像の通りあのようなな装飾などは一切なくとにかくシンプルに作られている。以下に簡単に相違点を列挙していく(細かいところは裁判所によっても違うと思うのである程度はご容赦を)。

最高裁はさすがにややに作られているが、逆転裁判舞台となる地方裁判所はごくシンプルである。

  • 検察官の席と弁護士の席が左右逆……とするツッコミが見られるが、実際のところ検察官と弁護士の席の配置は法律で決まっているわけではないのでどちらでもあり得る。ただ、逆裁のように固定されているわけではないというのは留意が必要。
  • 判事(裁判官)席の前には書記用の席が設けられている(3までは登場していたが、4以降はなくなっている)
  • 傍聴席は上ではなく、後ろ(判事席の正反対)。被告席についても弁護人の席の前に置かれる事が多い。なお逆転裁判5以降の法廷には後ろにも傍聴席が用意されるようになった。
  • 判事席の上にテミス秤(マーク)はない。ついでにあんなな周りの装飾も
  • 判事席の左右には裁判員席が用意されている(とはいえこれは逆裁シリーズ発売当時は裁判員制度がなかったためやむを得ない)
  • 被告人控室は存在しない。刑事裁判の場合は裁判官と同じ所(関係者用出入り口)から被告人が登場し、被告席に座る。
  • ベル(木槌)の類は一切置かれていない。その為、裁判官が静粛をめることはあっても、木槌をカンカン鳴らすことはない。これはアメリカなどキリスト教圏の神の代理人として裁くイメージからできた、裁判官に対するイメージの一つを再現するものではあるが、現実の裁判では用いられない。

裁判全体の進行・運用などについて

全体的な流れについて

  • 開廷してすぐ、当たり前のように人や被告人質問からはいっているが、実際の裁判は事件状況の整理が優先されるため、人定質問や罪状認否が第一、冒頭陳述や客観的な拠調べが第二、そこまでやってから被告人質問や人尋問が入るので、実際はかなり後の方になる(これは自事件など較的明な事件でも一般的な流れとして定着している)。
  • 人や被告人質問なども含め、実際の裁判はある程度の基礎的な事実などは判前整理手続などで決まっていて、裁判所開法廷の場で実際に人や被告人の動静や言動を聞いた上でその"拠"が事実認定の上でどう評価するかなどを見定める事に重点が置かれる。検察官と弁護士はそれに対し、裁判官情報提供したり、考えを述べたりするのが実際の裁判となる。その為、逆裁プレイヤーに突きつけられる諸問題はまず実際の裁判では起こり得ない。しかし、裁判官相手に説きせるゲームなどやってて一般受けするとは言い切れないのでやはりこの点はオミットされている、
  • 人が最初に氏名住所を聞かれる人定質問については、これは実際にされるものの、実際のところは裁判所に入った段階で人の氏名・職業住所年齢カードに記載し、尋問の最初に相違ないかどうかを聞いて終わりという形に簡略化されている。
  • 時折、人がトランシーバーで出てきたり、段ボールをかぶっていたり人が直接法廷で顔を見せないケースが間々ある。実際の刑事裁判においては伝聞[1]の排除(刑事訴訟法320条1項)が要請されており、これは人の挙動や発言の様子の観察に際して妨げになるような要素・事物は出来うる限り排除することがめられている。その為、原則としては人が出廷せずないし、顔や姿を見せずに言することは認められない。これは、ここまで極端でなくても、帽子サングラスマスク程度のものでもアウトなので、言の際はその点に気をつける必要がある(ちなみに傍聴人も同じである)。
  • 実際の裁判においては尋問は尋問反対尋問に分かれて行われる。検察官と弁護士それぞれにとって有利な人を法廷に召喚し、最初に呼んだ側が言させたいことを質問し、人がそれに応えていくのが尋問、それに対して対立する人(検察側人ならば弁護士)が、言内容の正確性や信頼性について質問していくのが反対尋問である。逆転裁判は検察側が用意した人が出てくることが多数の為、ゲーム内でやる尋問は性質的には反対尋問に近いものである。また、反対尋問で言内容が揺らいだと考えた際に再び要した側が補充的に質問していくことを尋問と呼び、ナルホドが突っ込んだときに時折検察から飛び出る異議と、再度の人への質問がこれに近い。
  • 逆転裁判においては弁護側の尋問だけ取り上げられることがほとんどだが、実際の裁判では尋問の後に裁判官裁判員からも質問がなされる。これはに上記の尋問で不明だった点や分からない点を裁判所として確認していく作業として行われる。
  • 法廷侮辱罪という罪状は刑法には存在しない。しかし、そのかわりに法廷秩序維持法exit(正式名称は法廷等の秩序維持に関する法律)というものが存在し、その名の通り法定内で暴れたり、進行を妨した人に対して裁判所の権限で制裁を科すことができる。これは制裁裁判という通常裁判とは異なる手続きで処分されるため、監置という独特な文言が使われる。だが、あくまで秩序を乱した場合に適用されるものであって、作中のように反論を封じるために用いることはできない。

裁判における真実とデュー・プロセス

逆転裁判は全体的に「真実」を見つけ出すことを追及しており、建前上は現実刑事裁判でも大きな差異はない。客観真実すという根本的な的は逆裁でも現実の裁判でも変わらない。

ただし、実際のプロセス逆裁のそれよりもかなりシビアで、警察と検察の捜で見つけ出した拠と立に対して、弁護士が反論したりを行い、裁判官がそれを受けて事実認定と量刑判断を行うのが実際の裁判である。ここで要となるのは、実際の裁判では真実以上に、法に則った正な裁判手続きが遵守されているかどうかというのが重視されるという点(デュー・プロセスオブロー)である。その為に、これら拠はその資格を備えてるかどうかというのを必ず精される。

身も蓋もない事を言えば、仮にその拠が被告人の犯行を立する拠であったとしても、適法かつ適切な手続きに則ったものでなければ排除されてしまうのである。これは違法収集拠排除法則[2]といい、刑事裁判における極めて重要な法則である。

例えば、殺人事件が発生したとして、警察は捜する中で、ある人物を被疑者として任意同行する際、紋採取を同意なく行った。その結果、器から被疑者の紋が採取されたとしても、紋採取は必ず同意が必要となるので、これは違法収集による拠ということで拠として取り上げられなくなってしまう。裁判の拠はそれが適切な手続きによって得られた、事件との関連性がある力を備えていることが絶対条件だからである。

せっかく血を上げて警察が捜しても、それが法に則ったものでなければ事実認定どころか力すら認められずに門前払いされてしまう。それだけ、刑事裁判やそれに付随する手続きはデュー・プロセスオブローを重要視している。民から刑罰権を取り上げて、自力救済を禁止している以上、法に基づいた運用が厳格にできているかというのを特に刑事裁判では要請されるのである。また、私人と捜機関では力の均衡が明らかに捜機関によっているため、その権力に任せた自強要や冤罪の防止という意味でもこの点は重要視される。

そして、逆転裁判と異なり、神の目を持たざる現実の裁判においては客観的な真実など知りようがないので、あくまでそのような手続きに沿った地な”事実認定の積み重ねから量刑判断とその先の判決を下していくことになる。そして弁護士められるのは依頼人の希望に則って裁判を行うことで、真実を見つけ出すことではない。反対の検察側も、的は被告人を訴追して然るべき刑罰を受けさせることで、やはり真実の追及が仕事ではない。逆転裁判に憧れて法曹に入ったり法学を勉強した人がこの現実に直面して面食らうことはよく聞く話である。

それでも、先に書いた通り、刑事裁判実体的真実刑事訴訟法第1条)という、裁判外での歴史的・客観真実があることを前提に、そのすり合わせとして裁判を行っているという建前があるからまだマシなほうである。逆転裁判現実の裁判におけるその扱いの最大の相違としては、その更に上位としてデュー・プロセスの遵守が存在するという点に留意が必要だろう。ただし、一応逆転裁判本編でも、蘇る逆転の5話などでその点についても少し触れているので全く無視しているとも言い切れない点は注意。

一方の民事裁判は刑事裁判と異なり権利関係が変動したりするのが日常茶飯事なのと、当事者間の話し合いの延長という前提が働いているので、実体的真実がほとんど意識されない。例えば借金をめぐる訴訟でも、債権者や債務者がしていない事を、裁判官拠調べの結果見つけ出したとしても、それを事実認定に加えてはならないというのが民事裁判の考え方である(形式的真実義 民事訴訟法246条)。これは民事裁判はあくまで私人間の争いであり、当事者間の認識の域から出ないし、裁判所はその認識に関係のない解釈をいれてはならないとしているからである。

挙証責任

ある事実について、を裏付ける拠などをあげる責任や義務のことを、責任と言うが、刑事裁判において被告人の被疑事実の立に関しては全て検察官にある逆転裁判では当たり前のように弁護人に立が課せられるが、大半の場合全て成歩堂はそれはそちらのやるべき事ですの一言で一蹴できるのである(もちろんそんな事をすればゲームにならないので敢えてなかったことにされている)。一方の被告人に実であることの明をする積極的な責任は課せられていない。

悪名高い人民裁判魔女裁判においては被告側に実の明がめられたが、当たり前だが捜機関一般人では拠収集力に地の差があるので冤罪が多発することになった。その反省として「疑わしきは被告人の利益に」の法則が貫され、現実刑事裁判においては全て検察側に挙責任が課せられているのである[3]

序審法廷制度

詳しい説明は当該記事に任せるとして、あくまで法制度との相違点を列挙する。

最長「3日」の審理

裁判員制度導入である程度速化が図られるようになったとはいえ、いくらなんでも3日(作中ではほとんど1日で終わってしまうらしい)、逮捕からの期間で4日ほどで判決にいくことはない。裁判員制度が開始された当初の実審理期間は3.7日と逆裁とそう変わらない期間だったように錯覚してしまうが、あの審理の前提には大な検察と警察による下調べの期間や起訴までの時間、弁護士などとの調整があるため、見かけ通りの速さで判決が出てると判断することはできない。

ちなみに、裁判所が事件を受け付けてから地裁判決までの均審理期間は刑事事件全体で3.8ヶ月、裁判員裁判で12ヶ月exitという長大なものになっている(2020年)。

また、それでも事件の複雑化や熟議を尽くすために年々その期間の長期間化が問題になっており、2009年の開始当初から2022年の実審理期間を較すると3.7日から17.5日と5倍近い日数exitで、辞退率上昇の一因になってるのではないかという摘があがっている。

ただし、数少ない例外もあり、例えば交通違反などで多く用いられる略式裁判などは開廷されず検察側の資料のみで判決がでてくるので通常裁判にべて極めてく判決が出される。

序審の立ち位置

そもそも、基礎的な拠や言の段階から矛盾杜撰な点が多く見られる(ゲーム上仕方がないところもあるが)が、現実の法制度においては起訴するまでの段階で検察官は底的にそのあたりの洗い出しや精を行うため絶対に起こり得ないとまではいわないにしても、あれほどの頻度で起こることはない。2の1話で写真と被告人の漢字名前の相違に気づかないでいたり、3の3話で拠品についたケチャップを見落としていたり(これ自体は重要な伏線ではあるのだが)などの極めて初歩的なミスは大概の場合起訴するまでの段階や、判前整理手続の下準備までで弾かれる。

の検察官には起訴便宜義と言って、起訴するかどうかの裁量が広く持たれており、少しでも判を維持できる自信がなければ不起訴にしてしまうのだ(一応検察審会による強制起訴などの例外はある)。令和2年度(2020年)の犯罪白書によれば起訴率は38.2%、略式命令が多い道交法違反を除いても49.3%exitほどで一般のイメージする以上に裁判までたどり着く可性というのは低いと思われる。これに、警察段階での逮捕するかどうかまでの判断とか、微罪処分などを含めれば実際はさらに多くなる。ちなみに英国アメリカなどでは大陪審という形で市民が起訴の権利を有していたり、被害者当人が起訴する権利を有していたりするので、のように刑事裁判における起訴が検察官に基本限定されているのはしい方。

法制度や警察制度の背景には例原則や謙抑義といった、戦前の特別高等警察治安維持法などの国家権力による暴走という反省から雁字搦めにその権力行使が抑制されており、極めて慎重に事を運んでいることに留意しておこう。

また、これに対し序審は起訴までの段階を代行していて、高裁以降が通常の裁判なのではないかという摘もあったりするが、公式からはそのあたりは特にアナウンスされていないのでそのあたりの解釈はユーザーに任されている。

その他

  • 逆転裁判ゲーム中では弁護士バッジしか登場しないが、検察官にもバッジがある。……、というツッコミがよく見られていたがそれを受けてかスピンオフ逆転検事シリーズでは検事バッジが登場し、着用はしないが常に所持しているという設定が付加された。モチーフ秋霜日。ちなみに裁判官裁判所職員)にもバッジがあるがなぜかこれは登場していない。
  • 逆転裁判には法廷係官という職業が存在するが、実際にはそれそのものの名称は存在せず、裁判所事務官や書記官などと呼ばれる。その名の通り裁判を円滑に進めるための手足となって働く人々であり、裁判所に行ったときの受付にいる人などが該当する。アニメや劇中で登場する被告人を取り押さえたりする人々は現実に置き換えると、裁判所事務官に属する法廷警備員と呼ばれる人が該当する。
  • 面会で当たり前のように看守がいるが、被疑者・被告人の段階では憲法34条に定められた接見交通により弁護士との面会では一切の立会人なしで行うことができるのでこの点は現実とは異なる(刑事訴訟法39条)。ちなみにシステム上何度も面会することが出来るが、これは弁護士だけは原則として特別にその権利を有しているのでその点は問題はない。家族友人などの場合は制限がかかる事があるので注意。
  • 留置場の面会においてまるで間になにもないかのような描写が多い(握手したり、物の受け渡しがあったり)が、実際の刑事施設の面会は透明アクリル板に隔てられているためそのような事はできない。差し入れ・宅下げ(被疑者などの所持品の引取り)などは面会の際に別の受付窓口から行う。逆転裁判5以降ないし、アニメ版においてはこの点は改善され、間に透明が入るようになった。

相違点(シリーズ別)

蘇る逆転(初代の逆転裁判)

  • 死亡所見のほぼ即死の記述と、ダイイングメッセージから成歩堂イトノコ刑事に対して矛盾摘するシーンがあり、御剣はその記録は古いから通用しないと反論する箇所がある。実際のところは判前整理手続で提出する拠などは共有されるので、このような事態はまず起こらず、もし現実に起こっても判事はその拠を受理することはない(2話)。
  • 「給与定を楽しみにしておくことだ」シリーズを通してのイトノコ刑事へのイジメセリフだが、検察と警察は所管の官庁が違う(警察国家公安委員会、検察は法務省)ので、給与含めた人事権を直接は保有していない(2話以降)。
  • 小学生大滝九太が言台に立って言しているが、刑事訴訟法には特に人の年齢制限は設けられていない為そこは問題ない。実際に交通事故などで幼児の言が認められた例も存在する。ただし、あのように裸でカメラを持ち込むことは撮禁止の観点から認められない(ケースなどに入れていればOKの裁判所がほとんど)。あと、常識ではありますが、姫神キセル駄目です(3話)。
  • 綾里真宵が法廷侮辱罪逮捕された後に保釈金を払って釈放されたとする箇所があるが、保釈と釈放は全くの別物である。保釈はあくまで保金を払う代わりに勾留されている被告人を自由の身にすることであって、刑罰を終えたり疑いが晴れ自由の身になる釈放とは区別される。また、保釈は厳密には被告人、すなわち起訴されて初めて使える(刑事訴訟法90条)ものなので、逮捕された被疑者段階で保釈金を要されるのは現実とは異なる部分である。(4話)
  • 当然ながら人間ではないため、オウムには力がおそらく認められない(警察の臭気識別が拠として認められた例はあるが、現在のところオウムにそこまでの力を認めた判例は存在しない)。そのため人として申請しても却下される。ただし、アメリカでペットのオウムの声が証拠として検討された事はある。exit(4話)
  • これもよくある誤解なのだが、根高太郎については拠不十分だったのに加え、心神喪失無罪判決を受けたことになっているが、刑法39条の記事でも言及がある通り実際には”放免”とはならず医療観察法により強制的に入院措置が取られる。殺人のような重犯罪に関しては退院が認められるハードルはかなり高いため、そう簡単にでてくることはできない。先ほど述べた刑法39条の記事も参照のこと(4話)
  • DL6号事件の時効について、その成立が迫っていることが焦点になっていたが、4話の最終日時点で時効成立まであと数日程度だった。しかしこれは逆裁だけでなく刑事ドラマなどにもいえることだが、公訴時効はあくまで起訴して初めて停止する刑事訴訟法254条1項)ものなので、時効成立の一日前とか数日前に犯人逮捕されたり出頭しても起訴にはとても間に合わないので実質数週間前で時効が成立してしまうのである。これについては公訴時効の記事にもかかれているので参照のこと。
  • 終盤で狩魔が身体検を受けさせられていたが、狩魔が同意してるならまだしも全に拒否しているため状が必要になる。結果的に受けさせられているが、現実の裁判ではまず身体検状が出るまで最低でも待つことになるし、それを無視してやられたとしても事件の古さや後にあげる時効などの問題から拠不十分として処理される蓋然性が高い。あそこで狩魔が「これは人権だ!」と言っていたがあれに限ってはまさに正論になってしまうのである。どの口が言うとかはいわない(4話)
  • 逆転裁判(初代)の時間設定は2016年になっているが、周知の通り2010年殺人罪の公訴時効は撤されており、DL6号事件における時効々の話はこの時点では起こり得ない(4話)。ただしそもそもこれは制作2001年なので未来予知でも出来ない限りどうしようもない問題であることを追記しておく。成歩堂セレクションをはじめとして2010年以降に作られた作品でも、話の根幹に関わる事だからか特に修正などはなくそのまま流されている(アニメ版では時効の話そのものがオミットされている)。

逆転裁判2

逆転裁判3

  • 法廷内は飲食不可の為、コーヒーを飲むことはできない(2話以降)。法廷の写真をみればわかるが、そもそも検察官側の席に横から流せるほど長いスペースはない。
  • ある罪状で裁判をかけられて無罪判決を受けた場合はその被告人は同じ事件について裁かれることはないとする一事不再は、の法制度上では一事不再という名前になっている。(2話)
  • 優作について、真犯人による犯行と認められたので、過去の窃盗も全て無罪というあらましになっていたが、この事件において優作は確かに初回以外は脅迫による示でやっていたとはいえ、窃盗の実行犯ではあるので然るべき刑罰は受けることになる(2話)
  • ダンボールバッジでの出廷は認められない(3話)。想像がつくと思うが、裁判所に入る時点で弁護士バッジはじめ身分確認は厳格に行われているため、現実にはまずああやって当たり前のように偽物弁護士が法廷に立つことはない。
  • 法廷内で豆を投げつけてはいけない。そもそも先に書いた通り飲食禁止なので豆を手に持ってる時点でしまうように注意される(3話)
  • 真犯人に対して毒薬の入ったの色・特徴についてにハメて自ら犯行を認めさせるようなシーンがあるが、これは人が供述していない事実事実という前提の上で行うという誤導尋問にあたり、法廷で認められることはない(3話)
  • 御剣成歩堂にかわって弁護士バッジを受け取って弁護人として出廷するシーンがあるが、弁護士バッジには裏に登録番号がある上に、検察官と弁護士の兼業は国家公務員法の規定により出来ない為まず認められない(5話)。だが、検察審会での起訴相当が二回出たときという限定つきだが、弁護士から裁判所によって検察官が選ばれてその役を行うことはある。

逆転裁判4

  • みぬくという人のわずかな挙動やからゆさぶるシステムが搭載されている(1話以降)が、当たり前の話として実際の裁判でそのような事をすれば高確率で検察官から異議が飛んでくるだろう。刑事裁判における尋問では事件に関係のないことや、威嚇的な質問をしてはならないことになっている(刑事訴訟規則第199条
  • 検察官や警察官国家公務員法や地方公務員法により副業が禁止されているため、ガリューウェーブはまず存在できないと思われる(2話以降)。近年では副業を解禁する法改正の動きも見られているが、ガリューウェーブのように営利的でバンドを組むのは個人事業主に該当するためまず認められないものと推察される。ただ、実態が全て語られているわけでもないので、例えば収益をチャリティにしているなどならば的ということでほんの少しだけ認められる余地があるかもしれない。
  • マキについてだが、最終的には日本語が理解できるという設定にはなっていたが、日本語理解できない外国人の場合は必ず裁判所によって通訳人が選出される(刑事訴訟法175条)。作中ではラミロアが通訳を行っていたが、実際の外国人の裁判の場合は言の正さの観点から被告人に近しい人はまず認められないものと思われる(3話)
  • 成歩堂はでっちあげの拠品提示で弁護士資格を剥奪されたことになっている(4話)が、弁護士会による除名処分は3年間で、永久に出来なくなるものではない(ついでにいえば再登録という形なので司法試験を受け直す必要はない)。だが、再登録の際、認めるかどうかは弁護士会の裁量なので、除名処分が出た弁護士に再び資格を与えるかというとかなり厳しいものがあるようだexit。また、事情を考慮するとどちらかといえば成歩堂被害者で同情の余地があり、除名事例を見ると故意の公文書偽造や大な預り金の着といった悪質かつ重大な事犯が大半で、この程度の事例ですぐに除名処分が出るかといえば議論の余地があるだろう。
  • 被害者が殺前に書遺言を行うシーンがあるが、あれは人の他に人が2人必要なため、実際は成歩堂一人だけでは不足で、もう一人用意する必要がある(民法969条)。ちなみに人については遺言者や人との推定相続人や利関係者ではなく、未成年でなければ良いので成歩堂でも要件を満たしてはいる(4話)。
  • 被告人が人事不省のため欠席の状態で裁判している箇所がある(4話)が、地裁は事実審であるため本人が出席しない限り判を開くことはできない(刑事訴訟法285条、286条)。ただしこれは地裁だけの話で、高裁や最高裁については原則として地裁の判断が間違っているかどうかを判断する段階(法律審)の為、欠席でも行える。

裁判員制度

本作の議論を呼んだ大きな要因である裁判員制度ことメイスシステムだが、現実のそれとの乖離が著しいのは言うまでもない。メイスシステムそのものの批判は4の記事に任せるとして、以下に法律や運用上の相違点を記載する。

  • 裁判員裁判は裁判員の選定にあたって裁判員法で厳しく除外規定が設けられており、ラミロアのように弁護士母親というのは直接条文で禁止されてはいないが、裁判員法18条の運用上まず認められない可性が高い。また、裁判員選挙人名簿からランダムに選ばれるので仮にボルジニア籍から抜けていないならば、そもそも資格を得ることができない。一応、原作では事件の関係者は裁判員になることはできないというフォローはされている(成歩堂はそれについて事件発生については関係としてかわしている)ものの、現実はそれよりも厳しく設けられている。
  • 裁判員裁判はあくまで裁判官裁判員が対等な立場に立って評議や評決を行うため、作中のように裁判員だけが判決の決定権を持つということはない。また、裁判員裁判の議論の際でもよく誤解が見られるが、裁判員裁判の評決においては最低一人の裁判官裁判員裁判の対事件は複数人の判事が行う)が賛同しなければ原則としてその量刑や判決とならない(裁判員法67条1項では評議の意見が別れたときの意見の傾斜に触れられているがここでは触れない)ので、ある程度法の制御下にあるという事を押さえておく必要があるだろう。
  • 裁判は裁判員裁判であろうと、(一部例外を除き)必ず開かつ対面で行われるので、作中のように裁判の映像別所に送って判決を下すということは起こらない。非開裁判であっても傍聴人を排除するだけであくまで当事者は対面で行うため、やはり裁判員遠隔で判決を下すということはい。

逆転裁判5

逆転裁判6

日本舞台パートのみ

  • 刑事裁判における原告はである為、外の検察官が代わって法廷に立つことはできない。(2話)
  • (そもそも契約自体が詐欺・錯誤の領域なのでその時点で成立しないが)3億円の賠償請社会通念上法外な金額であり、公序良俗違反になる(民法90条)ため、仮に請されたとしても契約効である為、支払い義務は発生しない。(2話)
  • 裁判所許可・判決のない差し押さえは原則として自力救済にあたり、違法になる。また演出上全ての具や小物に差し押さえシールが貼られているが、最低限の具や生活用品などは差押禁止財産定されている(税徴収法75条)。(2話)

大逆転裁判

この項については作中の舞台明治中期(開発によれば明治30年頃)なので、大日本帝国憲法及びその下にある法律、又は当時の英国法律を基に記述する。

  • 日本側の裁判において、いきなり大審院から被告人が裁かれているが、裁判所構成法という当時の裁判所組織について定められた法律によると、大審院から裁判がはじまるのは大逆罪や内乱罪などの国家体制そのものに関わる罪科のみである。その為、外国人相手とはいえ殺人罪で大審院からはじまることは明治時代法律においては起こらない。もっとも特例という扱いなので法規外の運用がされた可性はある。
    実際に大津事件においては外の皇族相手の殺未遂ということで本邦皇族へのそれに擬制して一審は大審院からはじまっている。(1-1,2-1)
  • 作中において日条約で領事裁判権は撤されたとあるが、史実においては日通商条約である。確かにこの条約で領事裁判権は撤され、外国人であっても法律で裁けるようにはなったが、発効は締結から五年後の1899年になっている為、史実を前提に考えると時系列の計算が合わない場合もある。このあたりはあまり厳密に考えても野暮かもしれない。(1-1)
  • 法廷にを持ち込んではいけないのは当然として、そもそも1876年にがでているので警察官と軍人以外が帯することは禁じられている。余談だが、実はについては士族だけでなく、儀礼的な慣習としてを持つことは町民階級にも浸透していたので巻き添えに摘発された例も結構ある(1-1)
  • 裁判所構成法によれば、法とよばれる法曹界における制服が存在し、現在では裁判官がそれを踏襲しているのみだが、この頃においては弁護士や検察官にもその着用が義務付けられていた。もちろん、大逆転裁判のような学生服と肩衣といったものではなく、裁判官の法のような襟周りに刺繍がほどこされた上衣と制帽という組み合わせで、検察官は襟が色、弁護士は襟が白色というのが特徴であった。(1-1,2-1)
  • 係官という役職が存在しないのも現在と同じでこの頃は廷吏ないし廷丁とよばれていた。これが現在裁判所事務官に引き継がれている。(1-1,2-1)
  • 英国の陪審制についてだが、大逆転裁判においては6人となっているが、実際の英国は制度が確立した18世紀後半から現在にいたるまで12人が任命されることになっている。また、評決についても長時間に及んだ場合などを除き全会一致であることが原則になっている(1-2以降.2-2以降)

つまりどういうこと?

ケース1

ナルホド「異議あり! 人の言はムジュンしています! この監視カメラデータによれば(以下略)」

御剣「何ッ……聞いてないぞ」

サイバンチョ「弁護側の異議を却下します。その監視カメラ記録事前拠として提出されていない為、本法廷において認めることはできません。それになんですか。人を威嚇するようにをつきつけてはいけません!」心ゲージボーン


ケース2

御剣「では、被告人がその場にいなかったことを明できるのか? 成歩堂。やれるものならやってみせるといい」

ナルホド「異議あり。被疑事実の立は全て検察側の責任にあり、弁護側に立の義務はありません」

サイバンチョ「異議を認めます。検察側は質問を変えるように」

御剣「ム……」


つまりは現実の裁判に則ってやるとなるとこんな風になるのである(わかりやすいように厳密な裁判での言い方ではないことはご容赦願いたい)。

見ててわかると思うが、これではムジュンを暴く爽快感など得られるはずもなく、ゲームとして非常に地味で煩雑だ。故に逆転裁判ではゲームに落とし込む上でそういうのを排除しているわけである。

最後に

色々と書きましたが、逆転裁判はあくまでショー劇場としての演出であり、現実の裁判はそれとはかけ離れたとっても地味で地な作業の連続です。

しかし、そのような冗長ともいえる慎重な手続きの積み重ねがあればこそ、法治国家として秩序と自由の均衡の取れた社会が作られるということを決して忘れないでください。

そして、もしもあなたが裁判の人として呼ばれたり、もしかすれば何らかの事件に巻き込まれて被告人やもしかすれば原告として立つことになったり、裁判員となって法廷に関わる事となった場合、逆転裁判のようなさはない一方、大で人差しをつきつけられたり、ムチでぶたれたり、コーヒーりがをくすぐったり、ギターの音が聞こえたり、が飛び回ったりするようなことはないので、安心して出廷してください。でも偽罪はちゃんとあるので気をつけて。

DSには法曹界に監修を依頼現実の裁判の流れを極めて忠実に再現した有罪×無罪』というゲームもあるので、逆転裁判との違いを確かめてみるのも良いかもしれない(ただしこちらは弁護士ではなく裁判員視点ゲーム)。

主に参照した法律など

法律

  • 刑事訴訟法exit - 刑事裁判を語る上で不可分である重要な法律刑法に規定された法律をどう裁くのか、どう手続きするのかなどが事細かに定められている。これを法学上では手続法と呼ぶ。
  • 刑法exit - ここに書かれている罪を犯したらどれだけの刑になるのか。どういうに量刑を規定するのか、どこまでを範囲とするのかなどが定められている。このような法的な関係を定めた法律実体法と呼ぶ。
  • 裁判所法exit - 裁判所の組織や権限、事務の取り扱い、裁判官や職員の人事などを定めた法律
  • 裁判員法exit - 裁判員制度施行に伴い制定された、裁判官の選定から手続き、裁判の関わり方などを定めた法律
  • 憲法exit - この記事はあくまで裁判や法律の実体について書かれた記事なので直接は登場しないが、上記にかかれた法律の上に立ち、法の礎となっているいちばん重要な法律。全ての法律憲法的を達成するために作られたといっても過言ではない。

リンク集

具体的なリンクは避けるが、法律事務所サイト一般人向けにわかりやすく法律解説している所が多く、法律を知る上でのテキストベースのとっかかりとしては良い。文書はちょっとという人は弁護士youtubeを開設してたりするので覗いてみるのもよいかもしれない(ただし見る前に必ず免責事項や投稿者の素性などを確認すること)。

関連項目

脚注

  1. *言者本人の記憶からではなく、又聞きだったり、テレビメディアなど、他人からの情報を元にした情報に基づく拠。一応例外もあり、被告人が同意してたり反対尋問の機会などがあれば伝聞拠でも拠として採用される。
  2. *ただしこれも違法だったらすぐにアウト。というわけではなく「義の精神を却するような重大な違法があり、これを拠として許容することが、将来における違法捜抑制の見地からして相当でないと認められる場合」という要件がある(最判昭和53年9月7日判決)
  3. *但し刑法207条の同時傷の特例や、刑法230条の2に規定される、名誉毀損真実相当性の明など例外はある。これを責任の転換という。
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