74式戦車とは (ナナヨンシキセンシャとは) [単語記事]

74式戦車とは、陸上自衛隊で運用されている主力戦車(MBT)である。

概要

開発は三菱重工業。
いわゆる戦後第二世代に属する主力戦車であり、陸上自衛隊61式戦車の後継として開発された。

105mmライフル砲、避弾経始重視の曲面装甲砲塔、レーザー測距儀や弾道計算コンピューターなど西側第二世代戦車の特徴をそなえ、61式戦車に比べ大幅な能力向上をとげているが、登場時期は第2世代戦車としては最後発の部類に属する。その意味で2.5世代戦車と分類されることもある。

また、山岳部などでの戦闘を想定しているためか、独自の機構として油気圧式サスペンションを装備している。これにより車体を前後左右に傾斜可能で、稜線射撃を活用した防御戦闘を優位に運べる（90式戦車にもこの技術は応用されている。車体の左右傾斜は10式戦車で復活した）。

改良並びバリエーション

既存の74式は改良が施されていないと評されがちであるが、初期生産型から比較すると火器管制装置をAPFSDS（初期は米国のライセンス品、その後に国産品）やHEAT-MPに対応するよう改修、車内に高分子ライナーを添付するなど、細部の改良は数度にわたって実施されている。詳細はwikipediaをはじめとして情報を記載しているwebサイトを調べて貰うとして、大まかに変遷を記載すると以下の通り。

初期生産型（後にA型と呼ばれる）→74式戦車照準用暗視装置付or74式戦車ドーザ付（両方を備えた車両は「74式戦車照準用暗視装置、ドーザ付」）

A型→B型（APFSDS対応）→C型（塗装をOD色から二色迷彩に）→D型（砲身熱歪み防止用サーマルスリーブ装着）→E型（HEAT-MP対応の為FCS改良）→F型（92式地雷原処理ローラ装備対応。生産数は10両以下）→G型（これまでの改修と異なり記載に「改」「改修」の記載されたモデル）

ほぼ全てがD型に改修された後、さらにその8割がE型に改修されたと言われている。

G型こと74式戦車(改)は費用対効果に見合わないとして、試作車一両と量産型四両が製造されたのみで、制式化された量産型四両（制式化された四両をG型と分類している）以降の採用は見送られた。G型は富士学校戦車教導隊に、1個小隊が配備されている。

ERA(爆発反応装甲)の増加装甲案もあると言われるが、これも採用は見送られている。これは、ERAに被弾した際に破片などをまき散らすため、随伴する普通科(歩兵)などに被害を与えるためであると見られる。（そもそも、西側諸国ではERA自体あまり使用しようとしていない）

なお74式(改)の近代化内容は暗視装置をサーマルイメージャーに、レーザー測距儀を悪天候に強いYAG方式に変更。弾道計算機をデジタル式に換装することで、射撃精度を夜間や悪天候でも大幅に改善。同時に発煙弾発射機と連動したレーザー検知器、スカート装甲を搭載することで、間接的な防護力を高めるものであった。更には起動輪を新型に換装することにより、履帯脱落の事故防止も図られている。

上記のような改修型の他、78式戦車回収車、87式自走高射機関砲、91式戦車橋は74式戦車の車体をベースに開発されている。

74式のあれこれ

後継は90式戦車であるが、90式の配備が北海道を中心としているため、陸上自衛隊全体としてみれば数の上での主力は現在でも74式である。これらの74式は現行最新となる10式戦車によって代替されることになっている。

90式戦車の配備が偏っているため、74式戦車のほうが各地の駐屯地で目にする機会が多い上、曲面で構成された優美な砲塔の形などからファンが多い戦車とも言える。また、空冷2サイクルディーゼルの音は非常に独特であり、数度耳にしていると自然と聞き分けがつく。これは同じ車体と駆動系を用いた87式自走高射機関砲、91式戦車橋等でも同様である。

余談だが、北部方面隊戦車競技会などで、雨天時は74式戦車に搭載されている105mmライフル砲の命中率が、90式戦車に搭載されている120mm滑腔砲の命中率を上回ることがあったらしい。(戦車搭乗員が見せた職人芸のなせる技ではないかと思われる)

実際、砲弾の安定に安定翼を用いる滑腔砲は、ライフル砲に比べ気象や砲弾自体の工作精度によって射撃精度に影響を受けやすい。なお、74式も90式も砲弾に関しては、徹甲弾はダイキン工業が。多目的対戦車榴弾は小松製作所が開発ないしライセンス製造を行っている。但しAPFSDSやHEAT-MPといった砲弾自体は、ライフリングに一定のストッパーを効かせて発射しており、有翼砲弾としての弱点は滑腔砲とさして変わりない。

災害派遣という実戦投入

1991年の雲仙普賢岳噴火災害において、量産型の途中から装備されるようになった車載アクティブ投光器を用いて、夜間に火砕流発生の警戒監視活動を行う目的で派遣されており、戦闘車両でありながら災害派遣の実績をもつ。この車載アクティブ投光器だが、赤外線フィルターを外すと夜間1.5km先でも本が読めるほどの明るさをもつ。

そして74式戦車は就役37年目にして「実戦」を経験している。東日本大震災において、依然として放射性物質が多数残留する原発周辺にて、第1戦車大隊第2中隊所属の2台が78式戦車回収車を伴い、ドーザーを用いて瓦礫撤去支援などを行っている。これは74式が90式と異なり、内外の気圧差を変更することで外気を遮断可能な、充実したNBC防護装置を有していたこと。50トンの90式戦車を運ぶには時間がかかることも影響していた。

総評

恐らくは今後、程なくして退役を余儀なくされるであろう74式戦車であるが、冷戦時代を通じて抑止力を終始形成し続けたこと。我が国の機甲戦力技術を世界水準の近くまで向上させた功績は、特筆に値すると称しても過言ではないであろう。余談ではあるが90式戦車が空包を使用しえないため、各地の駐屯地一般公開では機甲科の空包射撃を一手に引き受けていた。それを聞く際には耳栓が必須である。古びたとはいえ105mm戦車砲の圧力と砲声は想像を絶する。