イーサリアム(Ethereum)とは、アプリケーション開発やネットワーク通信のためのプラットフォームの一つである。日本では、その中で使われる仮想通貨(暗号資産)「イーサ」(Ether)のことを「イーサリアム」と呼ぶ場合も多い。
概要
ヴィタリック・ブテリン氏の構想によって2014年に構築された、ネットワーク上のプラットフォーム(様式の統一された環境)である。言うなれば「Windows」などに近い。このプラットフォーム内では分散型アプリケーション(Decentralized Applications: DApps)やスマート・コントラクト(smart contract)などを開発・運用することができる。
イーサリアム環境の中で通用する通貨として「イーサ」(Ether)が存在する。「イーサ」が略号っぽいからなのか、日本ではこの「イーサ」のことを「イーサリアム」と呼ぶ習慣が広がっている。これは「日本円」のことを「日本社会」と呼んでいるのに近く、本来は少しおかしいのだが、「USBメモリ」のことを「USB」と呼ぶ習慣に通じるものがあり、既に広まってしまっており、また「イーサ」の存在は知っているが「イーサリアム」のことはよくわからないという人も多いと思われ、訂正は難しいかもしれない。
イーサリアムそのものはアプリケーションのためのプラットフォームの一つに過ぎないが、最大の特徴はこの通貨「イーサ」の存在がプラットフォームに一体化されている点にある。
現状はインターネットと実在の通貨とが分離して存在し、インターネットが実在通貨をやりとりする場の一つであるのに過ぎないが、そうではなくアプリケーション自身とその中で使える通貨とが同じ枠組みの中で共存し、金銭移動を伴うアプリケーションが日常生活と同じのように当たり前に、安全に行える、という新たなインターネットのあり方を規定するとても壮大なコンセプトである。よって通貨「イーサ」ありきのプラットフォームであるともいえ、その動向を追うには通貨「イーサ」の動向も追わなければならない。
イーサリアムプラットフォームにおいては多様な利用者によって様々なプロジェクトが走っている。何らかの機能を自動的に果たすことを目的とした分散型組織(Decentralized Autonomous Organization、略してDAOなどと呼ばれる)、例えば暗号資産の分散型取引所(Decentralized Exchange、略してDEX)の運用、イーサリアムプラットフォームを基盤としたオリジナルの暗号通貨(Tokens、トークンと呼ばれる)の発行など。中には単なるゲームといった意外なものも開発・運用されている。
イーサリアムクラシック
2016年に、イーサリアムのネットワーク内で大規模な暗号通貨盗難事件、通称「The DAO事件」が発生した。
この「The DAO」とは、名前からもわかるように上記の「Decentralized Autonomous Organization: DAO」の中でも代表的なものとなるはずだった、投資ファンドのような役割をする非常に大規模な分散型組織を立ち上げるプロジェクトだった。しかしその「The DAO」において、コードのバグを突かれたことで、集めた投資資金に相当する多額の暗号通貨が盗難に遭ったのである。
それまでDAOは「コードされたことから外れることが原理的にできないために運用者が不正を働く心配がない」という意味で「トラストレス」つまり「誰か(運用者)を信頼する必要が無い画期的な組織」と考えられていた。だが「そもそもコードに脆弱性が無いことは信頼せねばならず、その信頼が裏切られることもある」という認識の重要性が広まった事件でもあった。
この「The DAO」事件の後に、「盗難が無かったことにするために”時計を巻き戻す”処理を行うかどうか」という議論が巻き起こった。賛否両論が巻き起こる中、イーサリアムの開発者たちはこの"時計を巻き戻す"処理を行って、「盗まれた」という出来事が無かったことになった(つまり盗難被害者が損害を取り戻した形となる)ブロックチェーンを新たな「イーサリアム」としてリリースすることとなった。
この処理の際に、「The DAO事件を経て盗難に遭ってしまった」という出来事を「巻き戻さずにそのまま受け入れて継続する」ブロックチェーンも「イーサリアムクラシック」として存続するようになった(イーサリアムクラシック内の通貨は「イーサクラシック」で、「イーサ」とは独立して存在する)。
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関連項目
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