実質とは、次の意味を指す言葉である。
- 物事を構成する内容や性質のこと。
- 経済学で使われる表現で、インフレーションやデフレーションといった物価の変動の影響を含まないことを意味しており、英語のrealの訳語である。反対の概念は名目(nominal)。
- 医学や生物学で使われる表現で、臓器の本来の生理機能を営む組織。反対の概念は間質。
この記事では1.や2.について解説する。
1.の概要
通常の使われ方
実質という言葉自体は、その物や構成している内容・性質の事を表す。例えば、「豆腐は実質たんぱく質で構成されている」「ダイヤモンドの実質は炭素である」「報告は進んでいるように聞こえるが実質が伴っていない」と言った使われ方をする。
大手通信会社のキャッチコピーにおいて「実質0円」といった謳い文句の一部として使われる。「本来のサービスには代金が掛かっているが他のキャンペーンでその代金分を値引きしている」という意味で、「本来のサービスは高い品質を伴っており0円の価値ではない」と主張して「安かろう悪かろう」の危惧を払拭する効果を持つ。
また、政府の目標において「実質排出量0」といった謳い文句の一部として使われる。製品を生産するときに二酸化炭素を排出しているが森林を育成することで二酸化炭素を削減しているので二酸化炭素の排出量を合計で0に抑制できるという意味である。
ユーモアの一環
Twitterなどで「ドーナツには穴が空いているので実質0カロリー」(→カロリーゼロ理論)など、「どう考えても違う」とツッコんでもらいたいようなボケをかますときに「実質」と言うことがある。
また、「呪術廻戦は実質『Fate』」「ガンダムジークアクスは実質『高い城の男』」などのように、特定の作品が好きな人に別の作品を布教する際の(ともすればややこじつけめいた)宣伝文句としても「実質」が使われる。つまり、Fate/stay nightを好む人に呪術廻戦を勧めるときに上の例を使う。
これらは単なるユーモアであると解釈されるが、しかし我々は普段から似たような思考をしてしまっては居ないだろうか? 神の実在を証明するとき、あるいはある種の哲学的な思考をするとき、同様のこじつけをしてしまっていないか注意することが必要であろう。
2.の概要
経済の状況を示す数値のなかでインフレーションやデフレーションといった物価の変動の影響を除外したものを実質値という。実質利子率、実質為替レート、実質賃金、実質資本レンタル料、実質GDPなどがそうした例である。
物価が伸縮的で変動する長期においては、名目値と実質値が乖離するため、実質値による考察をすることを強いられる。たとえば、小国開放経済の長期を分析するときはタテ軸実質利子率・ヨコ軸国民貯蓄のモデルを使う。
一方で、経済の状況を示す数値のなかでインフレーションやデフレーションといった物価の変動の影響を除外していないものを名目値という。名目利子率、名目為替レート、名目賃金、名目資本レンタル料、名目GDPなどがそうした例である。
物価が硬直的で固定される短期においては、名目値と実質値が一致するため、名目値による考察をすることが可能になる。たとえば、小国開放経済の短期を分析するときはタテ軸名目為替レート・ヨコ軸実質GDPのマンデル=フレミングモデルを使うことができる。
「実質値はモノに換算できる数値であり、名目値はお金だけで表現する数値である」と言われることがある。
関連項目
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