ベルヌーイの不等式とは、数学において 1+x のべき乗に関する次の不等式である。
「 x > -1 のとき r ≧ 1 または r ≦ 0 ならば (1+x)r ≧ 1+rx
0 < r < 1 ならば (1+x)r ≦ 1+rx 」
次の形で認識されていることもある。
「 x > 0 のとき r ≧ 1 または r ≦ 0 ならば xr - 1 ≧ r(x-1)
0 < r < 1 ならば xr - 1 ≦ r(x-1) 」
また、x1,...,xn ≧ 0 のとき
(1+x1)(1+x2)...(1+xn) ≧ 1+x1+x2+...+xn
が成り立つが、こちらもベルヌーイの不等式と言われることがある。これは先ほどの不等式で r を整数とした場合の拡張になっている。帰納法により容易に示せる。
名前の由来となったのはスイスの数学者ヤコブ・ベルヌーイである。いろいろな場面で現れる重要な不等式で、ベルヌーイの不等式から様々な有名不等式が得られる。というか、ベルヌーイの不等式からヤングの不等式が導かれ、ヤングの不等式から相加相乗平均の関係、コーシー・シュワルツの不等式、ヘルダーの不等式、ミンコフスキーの不等式などが導かれる。逆に、相加平均≧相乗平均を使ってベルヌーイの不等式を導くこともできる(後述)。
いくつか証明を紹介する。r=0,1のときは自明に成り立つので言及しない。
rが自然数のときに帰納法を用いて示す方法は有名だろう。
(1+x)n+1 = (1+xn)(1+x) ≧ (1+nx)(1+x) = 1+(n+1)x+nx2 ≧ 1+(n+1)x
とすればよい。
また、r>1 , x>-1 の場合だけ示せば、次のようにして他の場合が示される;
まず 0<r<1 のとき。1/r > 1 なので x≧-r (>-1) ならば (1+x)1/r ≧ 1+x/r となり 1+x ≧ (1+x/r)r が得られる。ここで x を rx で置き換えれば x > -1 のとき 1+rx ≧ (1+x)r となる。
r<0 のときは 1-r>1 であり、x > -1 ⇔ -x/(1+x) > -1 なので
(1+x)r = (1+x)(1-x/(x+1))1-r ≧ (1+x)(1-x(1-r)/(1+x)) = 1+rx (x>-1)
となり、以上より示される。
従って以下では x>-1 , r>1 の場合のみ示す。
微分法を用いる。
f(x) = xr-1 - r(x-1) とおき f'(x) = rxr-1-r = 0 とすれば x=1 が得られるので f(x) は x=1 で極小値となり f(x) ≧ f(1) = 0 。
よって xr-1 ≧ r(x-1) (x>0) がわかるので x を x+1 で置き換えると定理が従う。◻︎
相加平均≧相乗平均を用いる。r=p/q , p>q , p,q∈N とし 1+(p/q)x ≧ 0 とする。
(1+x)p/q = (q*(1+(p/q)x) + (p-q)*1)p/q ≧ ((1+(p/q)x)q1p-q)1/q = 1+(p/q)x
となるのでこのとき成立。
-q/p > x > -1 のとき (1+x)p/q > 0 > 1+(p/q)x となり、以上より r>1 , r∈Q のとき定理が成立することがわかる。r が実数となるように極限をとれば r>1 のときが示されるので以上より定理が従う。◻︎
まず、(1+x)n ≧ 1+nx は帰納法により示せる。これより (1+x/n)n ≧ 1+x (x>-n) がわかり、ここで n→∞ とすると ex ≧ 1+x (x∈R) がわかる。さらに e-x ≧ 1-x より xex ≧ ex-1 (x>0) がわかるので、以上より
ex ≧ (ex-1)/x ≧ 1 (x>0)
がわかる。同様に 1 ≧ (ex-1)/x ≧ ex (x<0) もわかる。
さてこれより (et-1)/t ≧ 1 ≧ (ex-1)/(xex) (x,t>0) を得る。変形して、
xex(et-1) ≧ t(ex-1) ⇔ x(ex+t-1) ≧ (x+t)(ex-1) ⇔ (ex+t-1)/(x+t) ≧ (ex-1)/x
となる。ここで t=x(r-1) >0 とおくと (erx-1)/(rx) ≧ (ex-1)/x を得るので整理して
(erx-1)/(ex-1) ≧ r (x>0)
となる。ex>1 を x>1 と置き直せば (xr-1)/(x-1) ≧ r ⇔ xr-1 ≧ r(x-1) (x>1) を得るので、
x>0 のとき (1+x)r ≧ 1+rx
を得る。
x,t<0 とすれば (ex-1)/(xex) ≧ 1 ≧ (et-1)/t となるのであとは全く同様にして
(erx-1)/(ex-1) ≦ r (x<0)
を得て、0<ex<1 を 0<x<1 と置き直せば (xr-1)/(x-1) ≦ r ⇔ xr-1 ≧ r(x-1) (0<x<1) がわかるので、
-1<x<0 のとき (1+x)r ≧ 1+rx
を得る。
前に述べたように、ベルヌーイの不等式からヤングの不等式 ap/p + bq/q ≧ ab (a,b≧0,p,q>1,1/p+1/q=1) を導くことができる。
(a/b1/(p-1))p ≧ p(a/b1/(p-1)-1)+1 = pa/b1/(p-1)-p/q がベルヌーイの不等式から得られるので p/(p-1) = q に注意すると
ap/p ≧ bp/(p-1)(a/b1/(p-1) - 1/q) = ab - bq/q
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最終更新:2025/12/16(火) 21:00
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